みちのわくわくページ

○ 映画(2012年)

<主に見た順 (降順)>
007 スカイフォール、 人生の特等席、 あなたへ、 アルゴ、 リンカーン/秘密の書、 プラチナデータ、 のぼうの城、 アウトレイジ ビヨンド、 るろうに剣心たとえば檸檬、 踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望、 鍵泥棒のメソッド、 デンジャラス・ラン、 ダークナイト ライジング、 崖っぷちの男、 ハングリー・ラビット、 宇宙兄弟、 旧支配者のキャロル、 裏切りのサーカス、 バトルシップ、 ドライヴ、 宿敵 因縁のハットフィールド&マッコイ
ドラゴン・タトゥーの女
<原作小説と映画2作の内容の違いについても記載>

人生の特等席 TROUBLE WITH THE CURVE
2012年 アメリカ 111分
監督:ロバート・ロレンツ
出演:ガス・ロベル(クリント・イーストウッド)、ミッキー(エイミー・アダムス)、ジョニー(ジャスティン・ティンバーレイク)、ピート・クライン(ジョン・グッドマン)、ヴィンス(ロバート・パトリック)、フィリップ・サンダーソン(マシュー・リラード)、ボー・ジェントリー(ジョー・マッシンギル)、マックス(エド・ローター)、スミティ(チェルシー・ロス)、ルシアス(レイモンド・アンソニー・トーマス)、ビリー・クラーク(スコット・イーストウッド)、ブルース・ミュージシャン(サミー・ブルー)

DVDで見る。
メジャーリーグのベテラン・スカウトマンのガスは、パソコンを使わず、昔ながらのやり方で、自分の目で見て選手を発掘していたが、ITを駆使したデータ分析が主流となり、球団との契約も延長は望めそうになかった。
最後の仕事として、ドラフトの選手をスカウトする旅にでる彼に、娘のミッキーが付き従う。ミッキーは、幼いころはガスのスカウト旅行に連れて行ってもらったが、やがて親戚に預けられ、学校入学と同時に寮生活となり、長いこと捨て置かれたという思いから父とは疎遠になっていた。彼女は、弁護士となり、そのキャリアにおいて大事な時期にあったが、ガスの友人ピートから彼が身体を患っているらしいと聞き、心配して、駆けつけたのだった。
ぎくしゃくしている二人の前に、ライバルチームの新米スカウト、ジョニーが現れる。彼は、かつてガスに見いだされてドラフト入団を果たした選手だったが、けがをして引退し、新たな人生を始めようとしていた。
三人がそれぞれの思いを抱える中、注目の4番バッターのいる高校の野球チームの試合が始まる。視力が弱まっているガスは、ミッキーに代わりの目となってもらいつつ、音で選手の技量を判断するのだった。
チームは打者より投手を欲しがっているという話と、有望視され天狗になっている打者にバシッとピーナッツの袋を投げるピーナッツ売りの青年を見て、いつこの子が投手としてガスに目をかけてもらえるのかと、楽しみに待っていた。
最後の逆転はうまく行き過ぎる気もするが、めでたしめでたしということで、よしとする。(2017.2)

あなたへ
2012年 日本 公開東宝 111分
監督:峰旗康男
出演:倉島英二(高倉健)、倉島洋子(田中裕子)、南原慎一(佐藤浩市)、田宮裕司(草なぎ剛)、濱崎多恵子(余貴美子)、濱崎奈緒子(綾瀬はるか)、大浦拓也(三浦貴大)、大浦吾郎(大滝秀治)、塚本和夫(長塚京三)、塚本久美子(原田美枝子)、警察官(浅野忠信)、杉野輝夫(ビートたけし)
ちょっと前にテレビ放映したのを録画してそのままにしておいたのを、見た。その後ほどなくして、高倉健の訃報を耳にした。
健さん81歳、大滝秀治87歳、田中裕子57歳のときの映画だという。
長年、富山の刑務所で指導技官をしてきた男が、死んだ妻の遺言に従い、遺骨を妻の故郷である長崎の海に散骨するため、車で旅をする。引退後、妻と二人で国内を旅するために用意したキャンピングカーで北陸の富山から九州の長崎まで移動するのだが、その道中、様々な人に出会う。意外な正体が明かされる自称国語教師(ビートたけし)、陽気でお調子者のリーダー(草なぎ剛)と無口な年上の部下(佐藤浩市)という実演販売のコンビ、食堂を営む母子(余貴美子、綾瀬はるか)など。
富山、飛騨高山、京都、竹田城、瀬戸内、下関、北九州・門司、長崎・平戸など行く先々の風景と、健さんと他の豪華キャストを見るのは楽しいが、旅での出会いや挿しはさまれる妻との思い出は、いずれもありがちな感じで取り立てておもしろいものではない。強いて言えば草なぎくんのハイテンションぶりが可笑しかったくらい。
映画撮影中の様子を盛り込んだ、NHKのドキュメント番組が映画公開当時に放映された(「プロフェッショナル 仕事の流儀 第192回 高倉健スペシャル」2012年9月18日放映)。番組の中で、高倉健が大滝秀治の演技にひたすら感じ入っていた。妻の散骨のため海に船を出してくれた大滝が、海から戻ってきて港での別れ際に、「久しぶりにきれいな海ば見た」と言う。その演技がすごかったというのだ。映画を見ながら、そこを注視してしまった。が、大滝は、ごくあっさりと、こともなげに、そのセリフを言うのだった。それはよかった。(2014.11)


アルゴ ARGO
2012年 アメリカ 120分
監督:ベン・アフレック
出演:トニー・メンディス(ベン・アフレック)、ジョン・チェンバース(ジョン・グッドマン)、レスター・シーゲル(アラン・アーキン)、ジャック・オドネル(ブライアン・クランストン)、
ボブ・アンダース(6人のリーダー。監督役。テイト・ドノバン)、ジョー・スタッフォード(スクート・マクネイリー)、キャシー・スタッフォード(美術担当役。ケリー・ビシ)、コーラ・ライジェク(脚本家役。クレア・デュバル)、マーク・ライジェク(クリス・デナム)、リー・シャッツ(カメラマン役。ロリー・コクレイン)、
ケン・テイラー(カナダ大使。ヴィクター・ガーバー)、ジョン・ベイツ(タイタス・ウェリバー)、ジャック・カービー(マイケル・パークス)、ハミルトン・ジョーダン大統領首席補佐官(カイル・チャンドラー)、サハル(シェイラ・ヴァンド)
★ねたばれあります!★
1979年に実際にあった、CIAによるイランからの大使館員救出作戦の顛末を描く。社会派的な題材だが、アメリカがどうとかイランがどうとか言った主張は一切なく、ただ、6人の命を救うということにのみ主眼をおいているのが押しつけがましくなくていい。
1979年11月、イランの過激派によりテヘランのアメリカ大使館が占拠される。混乱の中、6人の大使館職員が脱出し、カナダ大使テイラーの私邸に身を隠す。
アメリカ大使館では52人の職員が人質に取られ、イラン側は癌治療のためアメリカに入国したパーレビ前国王の身柄を要求する。
国務省は、CIAに応援を要請する。6人を救出するため、自転車での国境越えや外国人教師らになりすましての脱出などさまざまな作戦が提案されるが、CIAの人質救出の専門家トニー・メンディスは、それぞれの作戦の欠点を指摘し却下する。
彼は、自宅で、別居中の幼い息子と電話で話し、彼が今テレビで見ているという映画「最後の猿の惑星」にチャンネルを合わせる。未来の地球の荒涼とした砂漠の風景を見ているうちに、メンディスは、イランの風景はアメリカのSF映画のロケ地に最適であることに気づき、6人をにせ映画のスタッフに偽装して脱出させるという突飛なアイデアを思いつく。
前半は、ハリウッドの映画業界の協力者を得て、にせ映画の企画をでっちあげ、製作発表を行うまでのいきさつがてきぱきと描かれる。「アルゴ」はこのにせ映画のタイトルで、いかにも「スター・ウォーズ」の二番煎じという感じなのが可笑しい。(実際に「アルゴ」という映画のポスターや広告などが残っていて、最後のクレジットのときに見せてくれる。)協力者となる特殊メイクの専門家チェンバースと、プロデューサーのレクターの二人のやりとりがいい。
後半は、メンディスが単身イランに乗り込み、テイラー宅にかくまわれている6人に接触し、作戦を実行する。最後はメヘラバード空港でのスリルとサスペンスにあふれた脱出劇となる。
メンディスは、6人に映画スタッフ偽装作戦の説明をするが、あまりの珍案に6人は難色を示す。最後まで強固に拒んでいたスタッフォードに対し、メンディスは本名をはじめ自分の個人情報を伝えて説得する。
いよいよ作戦決行という段になって、国務省から中止命令が出る。6人を見捨てて帰国せよという指令に悩むメンディスは、これを無視し、彼等の救出を決意する。物静かで声を荒げたりすることのないメンディスがうちに秘めた堅固さを見せる瞬間である。このとき、彼の決心を知った上司のオドネルのすばやい決断と実行がまた感動的だ。6人を出国させるにはカーター大統領の許可が必要なため、オドネルは、大統領の子どもが通う学校の教師の名を調べさせ、その名を騙って大統領と電話で直接話し、許可を要請する。この許可が出るまでの経緯と、空港のカウンターで航空券発券の手続きをするメンディスらの様子が交互に描かれ、取り消された6人の予約の復活が間に合うか否かというサスペンスで盛り上がる。この現場と司令室の息のあった連携プレーは、たとえば「アポロ13」のような(これも実話だが)宇宙船側と管制室側のやりとりを描いた、宇宙を舞台にしたSF映画を見ているようでもあり、このへんも「アルゴ」だと思ったりもした。
こうした空港での難関は、3つあって、航空券を得た7人は、次は出国手続きの際に入国時に書くことになっている個票の控えがないってことで窓口でのやりとりがあり、空港を警備する兵士たちの検問では、ハリウッドの事務所を留守にしていたレクターとチェンバースが電話に出られるかどうかといったサスペンスではらはらどきどきする。さらに、彼等の逃避行と同時に、シュレッダーで裁断された大使館職員の顔写真が協力を要請されたこどもたちの手によって復元されつつあることが示される。細長く切られた紙の断片が集められ、6人の顔が徐々にはっきりと浮かび上がってくる。
秀逸なサスペンス、気の利いたセリフの応酬、無駄のない物語展開、地味ながら味のある登場人物たちと、見ていて実に気持ちのいい映画だった。(2012.11)
このひと言(No.57)
−格言にあったな。「人生は喜劇に始まり、悲劇に終わる。」
−いや、逆じゃなかったか。
−誰が言ったんだ?
−マルクスだろう。
−グルーチョか?
(「このひと言 No.57」では、他にもいくつか「アルゴ」のセリフを紹介してます。)

リンカーン/秘密の書  Abraham Lincoln: Vampire Hunter
2012年 アメリカ 105分
監督:ティムール・ベクマンベトフ
原作:セス・グレアム=スミス「ヴァンパイアハンター・リンカーン」
出演:エイブラハム・リンカーン(ベンジャミン・ウォーカー)、ヘンリー・スタージス(ドミニク・クーパー)、メアリー・トッド(メアリー・エリザベス・ウィンステッド)、ジョシュア・スピード(ジミ・シンプソン)、ウィル・ジョンソン(アンソニー・マッキー)、アダム(ルーファス・シーウェル)、バーツ(マートン・チョーカシュ)、ヴァドマ(エリン・ワッソン)
DVDで見た。
ゲティスバーグの演説で有名なアメリカ第16代大統領エイブラハム・リンカーンが、実はバンパイア・ハンターだったという、めちゃくちゃで楽しい設定で描かれる吸血鬼狩りホラー時代アクション。
母をバンパイアに殺されたエイブラハムは、復讐のため、バンパイア・ハンターとなり、斧を武器に、バンパイアたちをやっつけていく。これがなかなか爽快である。
彼の師となるヘンリーは、実はバンパイアであるという展開もおもしろい。エイブラハムに協力する雑貨屋主人のスピードは、気のきいた脇役で、余談だが、時代と言い役どころと言い名前の響きと言い、マンガ「ジョジョの奇妙な冒険」の初期に出ていたスピードワゴンさんを思い出させる。
奴隷解放宣言が、バンパイアの餌食となっている黒人たちを救うためということになっていて、そうなると、有名な「人民の、人民による、人民のための」というフレーズも、捉え方が違ってくるのだった。(2014.10)

プラチナデータ
2012年 日本(公開東宝) 134分
監督:大友啓史
原作:東野圭吾「プラチナデータ」
出演:神楽龍平/リュウ(二宮和也)、浅間玲司(豊川悦司)、水上利江子(鈴木保奈美)、志賀孝志(生瀬勝久)、白鳥里沙(杏)、蓼科早樹(水原希子)、蓼科耕作(和田聰宏)、戸倉稔(遠藤要)、那須真之(中村育二)、神楽昭吾(萩原聖人)
★ねたばれしてます。重要なのも!
テレビ放映を録画して見る。
近未来。警察庁の科学捜査機関である特殊解析研究所は、犯人の遺留品から取り出したDNAを分析することで、犯人の特定ができるDNA捜査システムを開発した。殺人事件の捜査にあたっていた警視庁刑事の浅間は、若手科学者神楽龍平が同システム試用の際にデータ分析によって犯人を割り出し、逮捕した男の性格や身体的特徴が分析結果とことごとく合致した様を目にする。
が、その後、新たなる殺人犯のDNA分析をした結果、犯人が神楽と特定される。自分の開発したシステムが出した意外な答えに衝撃を受けつつも神楽は必死の逃亡を図り、浅間らに追われる身となる。
政府は極秘裏に全国民のDNAデータを入手し、捜査に利用する計画を立てていた。プラチナデータと呼ばれるそのリストにより、全国民のDNAが政府によって管理されることになるのである。しかし、そのシステムには隠された秘密があった。「真のプラチナデータ」を巡って、神楽と「敵」との攻防が始まる。
が、神楽が逃亡してすぐ、彼が実は二重人格者であることが明かされ、物語は想像したのと違う方向に進む。精神障害を抱えながら特定の分野で優れた能力を持つ者たちが収容されている施設のような病院が出てきて、彼のもうひとつの人格であるリュウや、施設で知り合った蓼科兄妹との話が出てきて、なんだか個人的には一気にテンションが下がってしまった。
DNAデータによって管理される未来社会と警察の捜査というのはなんだかフィリップ・K・ディックの小説っぽいし、能力者育成施設はなんとなく「アキラ」を思い出すし、二重人格の主人公が出てきて実は彼は主人格ではなく副人格の方だったというのは、ヘレン・マルロイの「殺すものと殺される者」でもやっていたし、いろいろ継ぎ合わせたような物語展開だった。
主演の2人、二宮の神楽と浅間の豊悦が好きで、2人をかっこよく撮っているので十分楽しめはしたが、わたしとしては、複雑な心理学的な問題が絡むよりも、単純に、国家の最新管理システムの機密に触れてしまったちょっと嫌味な若手科学者が犯罪者にしたてられ、たたき上げのベテラン刑事に追われながら陰謀を暴く、近未来SFサスペンスアクションでよかったのにと思った。
最後の部分がよくわからなかったので、検索して確認した。浅間は龍平の身柄を確保したが、龍平では真相がわからないので、リュウから聞き出すためにアトリエに戻してリュウを登場させ、水上とリュウの間で何があったかを聞き、その後でリュウは龍平に戻り、警察に返された、ということではないかということらしい。説明不足はきらいではないが、これはちょっとわかりにくいだろうと思った。(2014.4)


のぼうの城
2011年 日本 公開東宝(2012年) 145分
監督:犬童一心、樋口真嗣
脚本:和田竜
主題歌:エレファントカシマシ「ズレてる方がいい」
出演:成田長親(ながちか)(野村萬斎)、甲斐姫(榮倉奈々)、正木丹波守利英(佐藤浩市)、酒巻靭負(ゆきえ)(成宮寛貴)、柴崎和泉守(山口智充)、成田氏長(西村雅彦)、成田泰季(平泉成)、珠(鈴木保奈美)、たへえ(前田吟)、かぞう(中野明慶)、ちよ(尾野真千子)、ちどり(芦田愛菜)、和尚(夏八木勲)、石田三成(上地雄輔)、大谷吉継(山田孝之)、長塚正家(平岳大)、豊臣秀吉(市村正親)
戦国時代。豊臣秀吉の小田原城攻めに伴い、関東に在する北条氏の支城も豊臣軍を迎え討つこととなった。周囲を湖に囲まれた忍城(おしじょう)では、城主成田氏長が小田原に援軍に向かい、城代の成田泰季が城を預かることとなった。が、泰季は病に倒れてしまい、息子の長親が城代となる。長親は、ぼうっとした性格から「でくのぼう」の「のぼう」をとって「のぼう様」と呼ばれていた。
実は、城主氏長は、豊臣勢への内通を決心しており、忍城は豊臣軍が攻めてきたら直ちに降伏開城するよう指示を受けていた。2万の豊臣軍に500の兵しか持たない忍城が対抗できるはずもなく、武将の丹波始め、城の面々は遺憾ながらも降伏を了解する。が、石田三成率いる豊臣軍が表れ、使者としてやってきた長塚正家(平)の横柄な態度にカチンときた長親は、降伏がいやだとごね始める。もともと降伏をよしと思っていなかった丹波ら武将たちはこれに乗り、正家に対し、開城ではなく、開戦の意を告げる。
ここまでの流れが、状況説明や人物紹介を交えて、スムーズに心地よく語られ、長親のわがままのようにもとらえられる決断が実に痛快である。
このあと、決戦シーンや、水攻めによる悲惨な場面も見られるが、一貫して、勢いがあり、見ていてわくわくする。
佐藤の丹波始め武将たちの活きがいい。成宮演じる若武者の靭負は経験不足だが頭がよく策を練り、山口の和泉は体型のせいもあって三国志の張飛を思わせるような豪傑ぶりを見せる。武将たちが有能なせいで、長親は何もせず戦況の報告を待っているばかりであるが、主はこういうものかもと妙に納得したりもする。
敵陣前に浮かべた船上での田楽披露は、野村萬斎の本領発揮、「のぼう様」の命がけの踊りにじんと来る。
甲斐姫との恋愛が実にあっさりしているのも好感が持てた。
敵方の、上地演じる若い三成は、できるのかできないのかよくわからない感じがよく、彼をサポートするよう秀吉がつけた二人の対照的な武将、吉継(山田)と正家もよかった。(2012.12)


アウトレイジ ビヨンド
2012年 日本 ワーナー オフィス北野 112分
監督:北野武
出演:大友(ビートたけし)、加藤(山王会会長。三浦友和)、石原(山王会若頭。加瀬亮)、舟木(山王会幹部。もとボディガード。田中哲司)、富田(山王会幹部。中尾彬)、白山(山王会幹部。名高達男)、五味(山王会幹部。光石研)、木村(元村瀬組若頭。中野英雄)、嶋(木村のとこの若いもん。桐谷健太)、小野(木村のとこの若いもん。新井浩文)、西野(花菱会若頭。西田敏行)、中田(花菱会幹部。塩見三省)、布施(花菱会会長。神山繁)、城(花菱会組員。高橋克典)、片岡(マル暴刑事。小日向文世)、繁田(刑事。松重豊)、張大成(チャン・テソン。韓国人フィクサー。金田時男)、李(張の用心棒。白竜)
★ねたばれあります!!★
血で血を洗うヤクザの抗争を描いた「アウトレイジ」の続編。
第1作から5年後。先代を密かに殺して二代目の会長となった加藤の手により、山王会は勢力を広げ、国土交通省の役人を手玉にとるほどになっていた。が、若手の石原を若頭として重用する加藤のやり方に、古参幹部の富田、白山、五味らは不満を募らせていた。
マル暴の刑事片岡は、山王会の富田を、関西の暴力団花菱会幹部らに合わせ、関東と関西の巨大暴力団を対立させようと画策する。
一方、元山王会配下大友組の組長大友は、服役中に死んだと噂されていたが、実は生きていた。
片岡は出所した大友を元村瀬組幹部の木村に引き合わせる。二人は以前は敵同士だったが、今の二人にとって共通の敵である山王会に立ち向かうため、手を組む。片岡は、富田の企みが加藤にばれて富田が殺されると、今度は大友と木村を煽って、花菱会に接触するようけしかける。
前作同様、男たちは怒鳴りまくり、殺しまくり、殺されまくる。唐突な銃撃、陰惨な殺し方のいろいろが披露される。
関東と関西の言葉のぶつかりあいをやってみたかったということを、朝日新聞夕刊の記事で監督が言っているのを読んだ。タケシの映画といえば、とにかく無口という印象があるので、ちょっと楽しみにしていた。
大友と木村が花菱会に乗り込むところ、たしかに関西と関東の言葉がはげしく飛び交う。が、関西側は「指詰めるんやったら、道具がいるやろ、なんにするんや! ドスか、包丁か!」(セリフは未確認。だいたいの内容)ってなんかヘンな方向に気張るし(まあこれは、木村が道具もなしにカタをつけるっていう展開につながるのだが)、大友(タケシ)の方は、「馬鹿野郎、この野郎! 殺ってみろ!」と繰り返し怒鳴るのみ。しかし、これはこれで妙に納得してしまうのだった。
一番動くのは、片岡だ。刑事ということもあって、真っ向から「血の収穫」ネタ(悪の二大陣営の対立を煽り、戦わせて共倒れにする企み)のために奔走する。
彼についてまわる部下の繁田(松重)は、片岡(小日向)よりだいぶがたいがいい。横から二人を撮ったショット、大人と子どもほどの身長差が、二人にはある。自分より遙かに背の高い部下を見上げて、さんざん毒づく片岡がなかなかいいと思ってしまった。身体のでかさや腕力じゃなくて年季だなと思わせる見事な毒づきぶりだった。(この人も結局身も蓋もないことになるのだが。)
花菱会が大友に貸した刺客集団が怖い。集団でやってきて標的を襲撃する。セリフもほとんどなく、顔もよくわからなかったのだが、リーダーっぽい一人がやっとアップになって男前だな高橋克典みたいだなと思ったら本人で、後から確認したら役名もあるのだった。こういう人のこういう起用は、使う方も使われる方もかっこいいと思った。 (2012.10)

関連作品:「アウトレイジ

るろうに剣心
2012年 日本 公開:ワーナー 134分
監督:大友啓史
原作:和月伸宏「るろうに剣心  明治剣客浪漫譚」
出演:緋村剣心/人斬り抜刀斎(佐藤健)、鵜堂刃衛(偽抜刀斎。吉川晃司)、藤田五郎/斉藤一(江口洋介)、武田観柳(香川照之)、神谷薫(武井咲)、相楽左之助(青木崇高)、明神弥彦(田中偉登)、高荷恵(蒼井優秀)、外印(仮面の男。綾野剛)、戌亥番神(クリスチャンの武道家。須藤元気)、山県有朋(奥田瑛二)、警察署長(斉藤洋介)
幕末、「人斬り抜刀斎」として恐れられる討幕派の暗殺者がいた。
明治維新から10年後、抜刀斎は緋村剣心と名乗り、不殺(ころさず)の誓いを立て、刃と峰が逆になった特別誂えの逆刃刀を帯びて、流浪の旅を続けていた。
が、再び残虐な斬殺者として「人斬り抜刀斎」という名が世間を騒がす。偽者が抜刀斎の名を騙って事件を起こしていたのだ。彼(鵜堂)を用心棒として雇う実業家武田観柳は、地上げの邪魔になる道場をつぶそうとしていた。亡き父の道場を引き継ぐ少女薫は道場を守ろうとして鵜堂に戦いを挑むが、力及ばず、剣心に助けられる。剣心は薫の道場に身を寄せる。
観柳は闇のアヘン売買による金儲けをもくろみ、医師一族の生き残り恵をアヘン精製の技術者兼愛人として取り込んでいた。恵は、観柳のもとを抜け出し、彼女もまた薫の道場に居候をすることになる。一方、警官となった元新撰組の斎藤一は、観柳の悪事を暴こうとしていた。陸軍大将の山形有朋と彼は、剣心に協力を要請するが、殺さずの誓いを立てた剣心はこれを拒否する。
が、観柳の手は剣心に伸び、また鵜堂は剣心との一戦を切望していた。
監督及びキャストを見ると、一昨年のNHK大河ドラマ「龍馬伝」をどうしても思い出してしまう。剣心役の佐藤健は「龍馬伝」では人斬り以蔵、観柳役の香川照之は岩崎弥太郎、恵役の蒼井優は長崎の隠れキリシタンの芸者お元を演じていて、役柄もけっこう重なる。香川は、貧民からのし上がる岩崎を怪演していたが、ここでは悪行に手を染めた悪玉実業家を演じてさらに絶好調である。「龍馬伝」で後藤象二郎を快演していた青木は、絵にかいたような豪快な儲け役左之助をこれまた気持ちよさそうに演じている。
江口の斉藤一と吉川の仇役がしっかり脇を固めているが、なんといっても主演の佐藤健が魅力的だ。普段はゆるりとしつつも、剣を持つときりっとなる、影のある青年剣士を好演している。「ござる」の言い回しが変という意見もあるが、立ち居振る舞いから、ひしひしと切なさが伝わってくるのだった。
チャンバラの殺陣というのとは毛色が違うのだろうが、ワイヤーアクションを駆使した立ち回りは見ていて楽しい。(2012.9)

続編:「るろうに剣心 京都大火編」「るろうに剣心 伝説の最期編」(2014)

たとえば檸檬
2012年 日本 ドッグシュガー 138分
監督:片嶋一貴
出演:カオリ(韓英恵)、若い巡査(白石準也)、石山(綾野剛)、カオリの母(室井滋)、ミナ(佐藤寛子)、吉野(渡邉紘平)、ヨーコ(松本若菜)
香織(有森也美)、河内(伊原剛志)、疑惑の実業家(古田新太)、精神科医(内田春菊)、神津(信太昌之)
★ネタバレあり!!!★
「母と娘の話だから、娘であり、娘の母でもあるおまえにぜひ観てほしいんだよ」と学生時代の先輩である監督から電話でじきじきに言われ、これはもう「行かねば」と思い、首都圏での上映はこれが最後だというので、伊勢佐木町まで見に行った。
20歳のカオリは、専門学校で彫金の勉強をしているが、学費が払えず、退学の危機にある。カオリのために人生を台無しにされたと嘆く母から虐待を受けてきた彼女は、家を出たいと望みつつも、母親から逃れられずにいた。カオリは、チーマーのリーダーである石山という男と知り合う。石山にはミナという恋人兼パトロンがいたが、石山はカオリに興味を抱き、2人はつきあうようになる。
一方、40歳の香織は、商社で重役秘書として働いていたが、会社を出ると派手な化粧とファッションで街に出て、ホストに貢いでセックスをし、万引きを繰り替えしていた。20歳になる娘と暮らしていたが、娘はずっと部屋に引きこもっている。ある日、万引きをしているところに居合わせた河内という刑事に、万引きの常習は病気だと指摘される。彼女は精神科で治療を受け、境界性パーソナリティ障害という診断をされる。彼女も母親に虐待された過去があり、その母は20年前に自殺していたのだった。
二人の「かおり」は、徐々に、20年の歳月を隔てた同一人物だということがわかってくる。20年前と現代が入り交じる構成はとても斬新だが、そうしたせっかくの試みがいまいち効果を発揮していないように思えてしまってどうにも惜しい。こっちがいろいろひねくれてしまっているせいか、「ああ、そうだったのか!!」と驚きたかったのに驚けなかったのが、残念だ。
ただ、子役ならまだしも、20代の人間の20年後をいちいち別の役者が演じて見かけがかけ離れた人間になっているという二人一役の戦法は、おもしろいと思った。綾野剛が古田新太になってるなんて、「仁義なき戦い」で千葉真一が刑務所入って出てきたら宍戸錠になっていたのを観たとき以来の衝撃だ。
画面は過激だ。アップの連続と揺れる画面は見ていて酔いそうにもなる。ヒロインはげえげえと嘔吐し絶叫し毒づくし、室井滋はヒステリックで超迷惑な母親を憎々しげに演じる。「八重の桜」で悲劇の若殿を「空飛ぶ広報室」で心優しき自衛官を演じた綾野剛は暴力的で刹那的な不良を演じ、サンタクロースの衣装でロックな「きよしこの夜」を熱唱する。
この剛腕でかっこうつけな(賛辞です)画面は、私の知っている片嶋監督のものだ。そしてそうした男っぽさは、昨今の日本の創作全般においてだいぶ稀少なものに思える。
また、自転車をこぐ20歳のカオリのショットがしつこく何回も出てくる。何度見せられても苦にならないくらい、自転車をこぐ韓英恵の姿は清々しくて気持ちがいい。これもかなりの男の子目線だ。
母親は水の中からカオリを救い出し、表題にもある檸檬は母の愛をストレートに表しているが、香織が母から受けた心の傷は深刻で、結果も決してハッピーとは言えない。母と娘の話、特に娘が心に負った傷の深さを描くことに比重が置かれているが、その女を男が助けようとする話でもある。
心引かれたのは伊原剛志の刑事である。罪を負いつつ、ずっと一人の女を救うために生きながらえてきたような男。彼だけが、20年を経て、若いときより渋くかっこよくなっているのだ。
監督は姿のいい男優を使う。今回の綾野剛もそうだが、「ハーケンクロイツの翼」(2003年)もブレーク前の小栗旬が主演だった。伊原剛志については、「十三人の刺客」での伊原があまりにもカッコよかったからダメモトで打診したという。これからもかっこいい男をかっこよく撮ってほしい。と、「母と娘」というテーマから若干外れたところで思うのだった。。(2013.9)



鍵泥棒のメソッド
2012年 日本 128分
監督・脚本:内田けんじ
出演:桜井武史(堺雅人)、コンドウ/山崎信一郎(香川照之)、水嶋香苗(広末涼子)、工藤純一(荒川良々)、井上綾子(森口瑤子)、香苗の父(小野武彦)
娘がDVDを借りてきたので、いっしょに見た。
安アパート暮らしの若者桜井は、生活に窮し自殺を図るが失敗し、わずかに残った小銭を持って銭湯に行く。殺し屋のコンドウは、一仕事終えた後、血を洗い流したくなって目にとまった銭湯に入るが、石鹸で足を滑らせ転倒、意識を失って病院に運ばれる。
貧困の極みにあった桜井は、コンドウの衣服と財布と車を盗む。財布には大金が入っていた。
一方、病院で目覚めたコンドウは、記憶喪失になっていて、自分を貧乏青年の桜井と信じる。
桜井が、棚からぼた餅的に手に入った大金をただ浪費するだけのだめ青年なのに対し、殺し屋のコンドウは、極貧にあってもまじめでポジティブ、気になったことは几帳面にノートに記録し、桜井が売れない役者だったらしいと知ると、演技の勉強を始めたりする。
まじめな女性編集長の水嶋香苗は、入院中の父親を見舞った際に病院の入口でコンドウと知り合い、そんな彼に好意を抱く。
立場が入れ替わった2人の男に、婚活中の香苗が絡み、犯罪と恋が入り混じった愉快なドラマが展開する。
現実的ではないけど物語ならこんなこともありといった適度に意外な展開が、いちいち気が利いている。
テンポがよくなくて、「間」がもたつく感じには、私はどうもなじめなかったが、概ね楽しかった。
堺雅人が主演のような扱いだが、いつになく抑え気味の香川と、まじめな不思議っ子を嫌みなく演じた広末がよかった。(2013.8)



デンジャラス・ラン Safe House
2012年 アメリカ・南アフリカ共和国 115分
監督:ダニエル・エスピノーサ
出演:トビン・フロスト(デンゼル・ワシントン)、マット・ウェストン(ライアン・レイノルズ)、リンクレーター(ヴェラ・ファーミガ)、デヴィッド・バーロウ(ブレンダン・グリーソン)、ハーラン・ウィットフォードCIA本部副部長(サム・シェパード)、カルロス・ヴィラー(ルーベン・ブラデス)、アナ(ノラ・アルネゼデール)、キーファー(ロバート・パトリック)、ウェイド(リーアム・カニンガム)、ケラー(ジョエル・キナマン)、ヴァルガス(ファレス・ファレス)
★ちょっとねたばれあり★
試写会で見た。
よくわからない邦題がついているが、原題は、「隠れ家」の意。映画では、CIAが各地に設置している秘密の「客室」を指す。一見普通の住居内に、最新式のセキュリティ・ロックや衛星通信装置が備えられ、「客室係」の捜査官が常駐し、必要に応じて「客」を収容する。が、「客」はいつ訪れるかわからず、「客室係」はただ待機しているだけの日々を過ごすこともある。
CIAを裏切って世界各国から指名手配を受け、伝説の極悪人となっている元工作員トビン・フロストは、南アフリカ共和国のケープタウンで、知人のMI6諜報員ウェイドからある重要機密データが入ったカプセルを受け取る。追手に追われるトビンは、アメリカ領事館に逃げ込んで身柄を拘束され、CIAの隠れ家に収容される。「客室係」の新米捜査官マットは、CIA本部が派遣した尋問チームが行う拷問のような捜査に疑問を抱くが、隠れ家は重武装した謎の男たちの襲撃に遭い、チームは全滅する。マットは、「客」であるトビンを連れ出し、二人の逃避行が始まる。
トビンは、マットの心に不信を植えつけるような言葉を繰り返し、マットは、それを聞き入れまいとするのだが、凶悪な謎の追手の存在やCIA本部の対応は、彼の疑惑を増大させていく。
マットが駅で、恋人のアナに自分の正体を明かすところがいい。普通のフランス人の若い女性が、いきなり恋人に「実は僕はCIAの捜査官なんだ」と言われたらこうなるだろうなという、アナの反応のしかたや思い詰めた表情を強調するようなメイクがよかった。
工作員としての技能は一流で組織の汚れた部分を知りつくした老練なトビンと、まっとうで有能だが経験の浅いマットが、行動を共にするうちに互いに相手を認めていく。トビンは、デンゼル・ワシントンという俳優のイメージもあってか、「おまえは悪魔と逃げている」というコピーから連想されるような極悪人の感じはあまりない。
最初の隠れ家襲撃から続く激しいカーチェイス、サッカーの試合で賑わうスタジウムでの逃走劇、トビンの旧友カルロスの家のバラック街での銃撃など、アクションのみどころはたくさんある。
田舎の隠れ家での最後の攻防は、地味だけど、マットもトビンも血だらけになって見るからに痛そう。最後の対決相手となるCIAの汚職捜査員が渋い悪役ぶりを見せる。(2012.9)

このひと言 No.56:「よくやった。後は任せろ。そう言われたら、君はだまされているんだ。」

崖っぷちの男 MAN ON A LEDGE
2011年 アメリカ 102分
監督 アスガー・レス
出演:ニック・キャシディ(サム・ワーシントン)、リディア・マーサー(エリザベス・バンクス)、ジョーイ・キャシディ(ジェイミー・ベル)、アンジー(ジェネシス・ロドリゲス)、マイク・アッカーマン(アンソニー・マッキー)、ジャック・ドハーティ(エド・バーンズ)、ダンテ・マーカス(タイタス・ウェリヴァー)、スージー・モラレス/レポーター(キーラ・セジウィック)、デイヴィッド・イングランダー(エド・ハリス)、ホテルのボーイ(ウィリアム・サドラー)
タイトルに引かれて見た。
ニューヨークの高層ホテル、地上21階の外壁を背にわずか30センチの張り出しに立つ一人の男。自殺志願者に思えた彼の真の思惑とは? というワンアイデアで、展開する痛快名誉回復活劇。
男は、交渉人に女刑事リディア・マーサーを指名し、彼女との壁越しのやりとりに応じるが、一方で、そのすぐ隣のビルに男の弟とその恋人が潜入し、ある目的を果たそうとしていた。
やがて男の身元は、刑務所を脱走した元警官の犯罪者ニック・キャシディであることが判明する。彼は、身の潔白を証明するため、入念な計画をたて決行に踏み切ったのだった。
回想を交えて描かれるので、ニックがただの自殺願望者でないことは早いうちにわかる。が、隣のビルで起こっていることとの関連性やニックの狙いがなんなのか判然としないため、前半はその謎でぐいぐい引っ張られる。
ニックが立つ壁の内側のホテルの一室では、交渉人のマーサー、同僚のドハティ、悪徳警官らしいマーカスや、ニックの同僚アッカーマンなどの警察関係者が入り乱れてああでもないこうでもないとやっているのがいい。
マスコミを利用した、目立ちたがりの派手な戦略は、アメリカ映画っぽい。
後半はちょっと話がうまくいきすぎる感があって、え?と思う真相暴露もあったが、ストレートに楽しめたので、まあいいかなと思った。
主演のワーシントンが出ている「アバター」「タイタンの戦い」は両方ともみていないのだが、姓に聞き覚えがあったので何だったろうと検索したら、「ターミネーター4」で準主役の機械人間マーカスを演じた人だった。
ニックの弟を演じるのは「リトル・ダンサー」のジェイミー・ベル、彼とその恋人役のジェネシス・ロドリゲスの若いカップルがたいへんよかった。ロドリゲスは、ちょっとコミカルなアジア映画を思わせるような素っ頓狂な感じがあって、キュートだった。(2012.7)


ハングリー・ラビット Seeking Justice
2011年 アメリカ 106分
監督:ロジャー・ドナルドソン
脚本:ロバート・タネン、トッド・ヒッキー
出演:ウィル・ジェラード(ニコラス・ケイジ)、ローラ・ジェラード(ジャニュアリー・ジョーンズ)、サイモン(ガイ・ピアース)、ジミー(ハロルド・ベリー)、トゥルディ(ジェニファー・カーペンター)、ダーガン警部補(サンダー・バークレイ)
★ねたばれあり。「ハングリー・ラビット」という謎の言葉についても書いてます★
ニコラス・ケイジ主演の巻き込まれものサスペンス。
ニューオリンズの高校で英語を教えている教師のウィルは、チェロ奏者の妻ローラと地味だが幸せに暮らしていた。
ある夜、ローラが暴漢に襲われ、重傷を負う。
ショックを受け落ち込むウィルにサイモンと名乗る謎の男が、不穏な申し出をしてくる。ちょっとした簡単な作業と引き換えに、犯人に報復をしてやるというのだ。
迷ったウィルは報復を依頼し、やがてローラを襲った犯人は何者かに射殺される。
サイモンは、私的に犯罪者を抹殺する組織、警察に変わって被害者の無念をはらす、“正義”の集団の支部長だったのだ。
半年後、サイモンはウィルに見知らぬ他人の殺害を要求してくる。
殺人を拒み続けたウィルだが、指定の場所に出向いたことから、殺人犯として追われる身となる。彼は、逃亡しながらも、わずかな手がかりからサイモンとその組織の正体を探っていく。
眉間にしわを寄せて高校生たちにシェイクスピアを説く高校教師のウィルと同様、映画も始めから終わりまで生真面目である。罠にはまって窮地に陥ってから反撃に出てサイモンとの対決に至るまで、全く遊びやのんびりしたところがなく、人によってはそれが平板に映ってしまうようだ。
私としては、終始手に汗を握る感じで楽しんだ。ウィルが敵の手から逃れようと高速道路を横切るシーンでのアクションなどかなり見応えがあった。
また、サイモンの指示で病院の自販機でチョコを買うシーンは、単にチョコを買う様子が大まじめに撮られているのが可笑しかったし、謎の警部補の尋問で「好きな色は?」と聞かれ、寄りによって「紫」と答えるのもなんだか可笑しかった。
が、なんといってもこの映画で効いているのは、邦題ともなっている、“The hungry rabbit jumps.”(飢えたうさぎは跳ぶ)という奇妙なフレーズである。何度も口にされるこの言葉は、組織の符帳である。頭文字を取って”hungry”は”human(人間)”、 “rabbit”は”reason(理性)”、 “jumps”は”justice(正義)”を表すという、アルファベットならではの暗号といった感じである。「ハングリー・ラビット」と意味不明の言葉が口にされるだけで、組織の人間であることや、組織の存在を知っていることが瞬時にわかる。合い言葉とはたいへん興味をそそられるものであるが、常々映画の中では今ひとつ活かされていないように感じていた。その妙味を存分に味わえたという点だけでも、観てよかったと思える映画だった。(2012.7)


宇宙兄弟
2012年 日本(公開東宝) 129分
監督:森義隆
原作:小山宙哉「宇宙兄弟」
主題歌:コールドプレイ「ウォーターフォール〜一粒の涙は滝のごとく」
出演:南波六太(小栗旬、子ども時代:中野澪)、南波日々人(岡田将生、子ども時代:中島凱斗)、伊東せりか(麻生久美子)、古谷やすし(濱田岳)、溝口大和(新井浩文)、真壁ケンジ(井上芳雄)、福田直人(塩見三省)、星加正(堤真一)、鶴見徹太郎(吹越満)、権田原さくら(堀内敬子)、南波母(森下愛子)、南波父(増岡徹)、バズ・オルドリン(本人)
★ネタばれというか、ラストどうなるかについて書いてあります!
原作漫画は読んでいないのだが、小栗旬だし、宇宙だし、NASAだし、ということで見た。
南波六太(ムッタ)と日々人(ヒビト)の兄弟は、幼いころにUFOを目撃し、二人して宇宙飛行士になろうと約束をする。JAXA(独立行政法人宇宙航空研究開発機構)に通い詰めていた2人は宇宙好きな兄弟として、JAXAのスタッフにも知られる存在となる。
それから19年、日々人は夢を追い続け、宇宙飛行士となってNASAのミッションに参加するまでになった。史上最年少、日本人として初めての月面ミッション・クルーということで、彼は一躍時の人となる。
一方、六太はカーデザイナーの仕事をしていたが自動車会社を解雇され、職探しの毎日を送っていた。ある日、JAXAから宇宙飛行士試験の書類選考合格通知が届く。日々人が六太が失業していると聞き、内緒で応募したのだ。弟に大きな遅れをとっていた兄は、忘れていた夢の実現のため、一念発起して宇宙を目指す。
JAXAの全面協力やNASAのケネディ宇宙センターにおける大型ロケにより、宇宙関連施設の内部や宇宙飛行士の試験の様子などが見られて楽しい。CGによる月面や月面から見た地球の映像も美しい。
小栗旬は好きだが、映画「」やテレビドラマなどを見ていると、さわやかな役よりは多少皮肉屋っぽい役の方が合っている印象があるのでムッタ役はどうなんだろうと思ったのだが、弟に引け目を感じているという事情があり、またもじゃもじゃ頭の三枚目といった要素が、男前な部分といい感じで混じり合っていたと思う。
宇宙飛行士になるための試験もたいへん興味深かったし、狭い空間で共同生活を強いられる他の受験者の面々もそれぞれいい味を出していたと思う。
ただし、話全体としてみると、どうにもゆるい感じは否めなかった。
ラストは、ざざざっとダイジェストになって、宇宙好きの兄弟は二人揃って本物の宇宙飛行士になりました、ということで終わる。タイトルにふさわしく、宇宙服を着た兄と弟が肩を並べる絵は必須だったのかもしれないが、うまくいきすぎて、逆に居心地の悪さを感じないでもなかった。
それよりは、月面で遭難した日々人の救出劇をもっと克明に描いて、宇宙飛行士と言う仕事の過酷さと、救助を試みる管制室の人々の奮闘ぶりなどを伝えてほしかった気がする。
日々人の打ち上げの際、六太にロケットの動力源について語る老人がよかった。月面を歩いた男だと言ったことから、アームストロング船長かそのチームの人なんだなと思って見ていたのだが、なんと、バズ・オルドリン大佐その人だったということを、後からHPを見て知った。彼は、1969年、アポロ11号の乗組員としてニール・アームストロング船長についで2番目に月に降り立った男である。何度も出てくる実写記録の月面の足跡は彼のものらしい。日々人の打ち上げを複雑な気持ちで見つめる六太に対し、大佐は、ロケットを飛ばす動力源は関わっている多くの人々の情熱や様々な思いであり、君のそのもやもやした複雑な気持ちも、ちょっとだけロケットを飛ばす役に立っているのだ、と語るのだった。(2012.5)


旧支配者のキャロル
2012年 日本 映画美学校 47分
監督:高橋洋
出演:黒田みゆき(松本若菜)、早川ナオミ(中原翔子)、村井(津田寛治)
高橋監督は、「狂気の海」、「おろち」(これは脚本)、「恐怖」とここんとこ続けざまに女と女の対決を描いている。
私はどっちかというと、人間ドラマよりは痛快娯楽アクション、対決するなら男と男の方が好みで、「キャロル」公開にあたっての「衝撃のエロティック!縛られた美女が自ら脚を広げる!」という特報のコピーからも、正直あまり見たいという気持ちにはならなかったのだが、試写の機会を頂き、見に行ったところ、そうした自分のアンテナの感度は、なんて鈍かったのだろうと思い知らされるはめに陥った。
試写の前のあいさつで監督が、これまでホラーばかり撮ってきたが、初めて人間ドラマを撮った、自分に言わせれば最近の人間ドラマはぬるすぎる、と言った。
その発言通り、「旧支配者のキャロル」は、とてつもないパワーを持った作品だった。
おそらくホラーならではの大げさな表現が、ハードな人間ドラマにぴったり噛み合って、ぐいぐいと人を引き込んでいくのだろう。映画のタイトルが出た時点ですでに「やられた」と感じた。
話は、映画学校の学生たちが映画を作る話。強烈な個性を持つ鬼のような講師にしてベテラン女優である早川ナオミが、監督に抜擢された学生のみゆきをとことん追い詰めていく。
中原翔子が天晴れの怪演! のっけから悲壮感を漂わせているヒロインの松本若菜も、ナオミの相手役となる学生村井を演じている津田寛治もいい。
試写のあと、男とか女とか実はもうどうでもよくなっていたのだが、監督と話す時間があったので、「女と女の戦いが多いけど、どうして男じゃないのか」と訊いたら、「おそらく僕の根底には「大砂塵」があるんだと思う」という答えが返ってきた。
大砂塵」は、1953年のニコラス・レイ監督による西部劇。ヒーローであるはずのジャニー・ギター(スターリング・ヘイドン)を差し置いて、ラストに、ヴィエンナ(ジョーン・クロフォード)とエマ(マッセデス・マーケンブリッジ)の二人の女が壮絶に戦う。まっとうな西部劇のオールド・ファンの方々は、たいがい「音楽はいいけど、映画はあんまりおもしろくなかったなあ」といった感想を抱いている異色作である。
高橋監督は、この映画に大きな衝撃を受けたということだ。
青少年にトラウマと言ってもいいほど大きな衝撃を与える映画が、最近は少なくなったように思う。「旧支配者のキャロル」は、そうした希少な映画のひとつ、すさまじい重量感で腹の底にずしんと響いて来る映画だ。撮影5日間、ロケ場所はほぼ一箇所、出演者の数も少ない、わずか47分の尺に、ブラックホールと化す寸前の星のごとく凝縮された重量がこめられている(大仰に言ってみた)
お茶の間では見ることのできない、そういう映画を見に劇場に足を運ぶというのは、映画ファンにとっては、大きな喜びだ。(2012.5)


裏切りのサーカス TINKER TAILOR SOLDIER SPY
2011年 イギリス・フランス・ドイツ
監督:トーマス・アルフレッドソン
原作:ジョン・ル・カレ「ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ」
出演:ジョージ・スマイリー(ゲイリー・オールドマン)、パーシー・アレリン/鋳掛け屋(トビー・ジョーンズ)、ビル・ヘイドン/仕立屋(コリン・ファース)、ロイ・ブランド/兵隊(キアラン・ハインズ)、トビー・エスタヘイス/貧乏人(デヴィッド・デンシック)、ジム・ブリドー(マーク・ストロング)、ピーター・ギラム(ベネディクト・カンバーバッチ)、リッキー・ター(トム・ハーディ)、イリーナ(スヴェトラーナ・コドチェンコワ)、コントロール(ジョン・ハート)、コニー・サックス(キャシー・バーク)、レイコン次官(サイモン・マクバーニー)、カーラ
原作者のル・カレは、007と対極のスパイものを書く作家と言われる。だいぶ前に「寒い国から帰ってきたスパイ」「スマイリーと仲間たち」を読んだはずだが、ほとんどおぼえていないのだった。本作は、「裏切りのサーカス」という邦題の方が映画の内容をよく現しているが、ル・カレの読者にとっては、少々奇妙な響きを持つ原題の方がなじみ深い。
「ティンカー、テイラー、ソルジャー」と、「プアマン」は、二重スパイの容疑をかけられた英国諜報部サーカスの幹部4人のコードネーム。サーカスのトップ、コントロールは、サーカス内に長年潜んでいるロシアの二重スパイ“もぐら”の正体をつきとめようとするが、失敗して失脚、その片腕だったジョージ・スマイリーも辞職する。が、やがて、スマイリーは、英国政府次官レイコンより、もぐらの正体をつきとめる極秘捜査の指令を受ける。腹心の部下ギムロを実働要員に迎え、スマイリーは、組織内部の調査に乗り出す。
おじさんばかりがでてくる、渋い映画だった。冷戦下の諜報活動という任務の過酷さと同時に、年輩の男たちの裏切りや友情がもの静かに淡々と描かれている。
話が追えなくなるので、集中してみるようにと言われていたのだけど、それでもやはりよくわからないところがあった。次から次へといろいろな人物が出てきて、さらにふっと過去の場面やスマイリーが知らない現在の工作員の状況がさしはさまれたりするので、混乱する。
例えば、コントロールの指令によりブタぺストでもぐらの正体を聞き出そうとした工作員ブリドーは、銃撃を受け、敵の手に落ちて拷問を受けた後、送還されて田舎で学校の教師をしながらひっそりと暮らしているのだが、突然授業のシーンが出てきて面食らう。このブリドーがなかなかよかった。内気な教え子のビルとの関係が、原作ではきちんと描かれているそうだが映画では触りだけなので、少々物足りなく思える。
スマイリーが、任務に嫌気がさし始めていたギムロに対し、宿敵であるソ連の大物スパイ、カーラとの出会いを語るところもよかった。(2012.5)


バトルシップ BATTLESHIP
2012年 アメリカ 130分
監督:ピーター・バーグ
出演:アレックス・ホッパー大尉(テイラー・キッチュ)、ナガタ一等海佐(浅野忠信)、レイクス(リアーナ)、ストーン・ホッパー中佐(アレキサンダー・スカルスガルド)、シェーン提督(リーアム・ニーソン)、ビースト(ジョン・ツイ)、オーディ(ジェシー・プレモンズ)、サマンサ・シェーン(ブルックリン・デッカー)、ミック・キャナルズ退役中佐(グレゴリー・D・ガドソン)、キャル・ザバタ(ハミッシュ・リンクレイター)
★ねたばれあり!!★
自堕落な生活を送っていた若者アレックスは、兄ストーンのすすめで海軍に入隊する。ハワイ沖で大規模な軍事演習(環太平洋合同演習RIMPAC)が行われることになり、世界各国から軍艦が集結する。大尉となったアレックスも演習に加わるが、日本の将校ナガタが気に入らず、騒動を起こして、恋人サマンサの父シェーン提督の不興を買うなど、海軍でもトラブルメーカーぶりを見せている。
演習中、ハワイ沖に謎の物体が現れる。それは宇宙から飛来した巨大な宇宙船だった。異星人との交信を目的としたビーコンプロジェクトによって地球から発信された電波に応じるようにやってきた彼らはしかし、強力な兵器で地球を攻撃し始める。
母星と通信をするため、ビーコンプロジェクトの通信装置をねらうエイリアンたちは、巨大なドーム型バリケートを張ってハワイ諸島を封鎖する。バリケード内には、アレックスの乗る駆逐艦JPJと、ナガタが率いるみょうこう、ストーンが艦長を務めるサンプソンの3隻のみが残される。敵の攻撃を受け、サンプソンとみょうこうは大破される。指揮官を失ったJPJで臨時の艦長となったアレックスは、ナガタとともに、得体の知れない巨大な敵に立ち向かう。
エイリアンの攻撃が始まってからは、戦闘に次ぐ戦闘の派手な海戦映画となる。バリケード内で孤立したアレックスらが、強すぎる敵といかにして戦うか。犬猿の仲だったアレックスとナガタがいかにして手を組むか。「やればできる子なのに」と言われ続けただめ若者のアレックスが、能力を発揮していくという展開は定番だが、彼がよんどころない状況へ持ち込まれていく様子が無駄なくてきぱきと描かれ、気持ちが良い。
CGを駆使した宇宙船の造形や戦闘シーンは迫力があるが、ハイテクの対極をいく、ブイを利用しての襲撃や、記念艦となって真珠湾に設置されていた戦艦ミズーリを復活させての最後の襲撃など、アナログな戦法を駆使するあたりが、なんとも心憎い。初めの方で、演習の開会式に招かれていた退役軍人である老人たちが、ミズーリの艦橋に鈴なりに立っているあたりから、ぞくぞくしてきた。軍艦のことはほとんど知らないが、ボイラーを炊いて発進するマイティ・モーこと戦艦ミズーリの雄姿を見て、胸が熱くなってしまった。(「ミズーリ」は、太平洋戦争での日本の降伏調印式場となった軍艦。映画にあるように、実際に1999年からハワイ州パールハーバーで記念艦として保存されているという。ウィキペディアより)
浅野忠信は、冷静で有能な自衛官ナガタを演じてかっこいい。小柄で口達者できびきび動く女兵士レイクスもよかった。地上でエイリアンの通信基地占拠を阻止しようと動くサマンサと傷痍軍人ミックとへっぽこ科学者キャルもそれぞれにいいところを見せてくれる。
SF的には、最初に正体不明の巨大宇宙船に遭遇するところで、どきどきした。(2012.4)

このひと言(N0.54)「いやな予感がする。」


ドライヴ DRIVE
2011年 アメリカ 100分
監督: ニコラス・ウィンディング・レフン
出演:キッド/ドライバー(ライアン・ゴズリング)、アイリーン(キャリー・マリガン)、ベニシオ(ケイデン・レオス)、シャノン(ブライアン・クランストン)、スタンダード・ガブリエル(オスカー・アイザック)、バーニー・ローズ(アルバート・ブルックス)、ニーノ(ロン・パールマン)、クック(ジェームズ・ビベリ)、ブランチ(クリスティナ・ヘンドリックス)
自動車修理工として働く男キッド(名前と言うより呼び名。クレジットは、ただの「ドライバー」となっている)は、卓越した運転技術を活かし、ハリウッド映画のカー・アクション・シーンのスタントをする一方、「逃し屋」という裏稼業にも手を染めていた。逃走用の車を用意し、警察の追跡を振り払って、犯人らを逃す仕事である。
★ネタばれあり!!
彼は、アパートの隣人である母子、アイリーンとベルシオと知り合い、アイリーンに心を惹かれていく。が、彼女には服役中の夫スタンダードがいて、やがて彼は出所してくる。服役中に囚人仲間に借金をした彼は、出所するや否や借金返済のため仲間が計画した強盗に実行犯として加わるよう強要される。事情を知ったキッドは、一味に逃し屋を申し出る。が、この強奪計画には裏があった。盗んだ金は、聞いていたよりもずっと高額で、地元に侵出をもくろむマフィアのものだった。強奪計画は彼らの侵出を歓迎しない地元のギャングのボス、ニーノが仕組んだものだったのだ。巨額の金を抱えたキッドは、マフィアに命を狙われるはめに陥る。
冒頭の請負逃走シーンは、たいへんおもしろくわくわくするので、カーチェイスがばんばん出てくる痛快なアクション映画かと思っていたら、その後の展開はそうでもなく、全体の印象としては、物静かな犯罪映画という感じだった。キッドは無口でほとんどしゃべらない。長いセリフは、依頼人にする仕事の説明くらいだ。
おだやかに愛する人をみつめていた男が、後半、爆発的な暴力を駆使する。シャイな青年の叶わぬ恋の映画といった描写が続いて若干かったるかった空気が一転、一人の男が、犯罪のプロに立ち向かう、男気と切なさに満ちたバイオレンス映画と化す。
アイリーンとアパートのエレベーターに乗ったときに、刺客の男と乗り合わせるシーンがいい。男が拳銃を所持していることに気付いたキッドは、とっさにアイリーンにキスをし、男と彼女の間に入りこみ、キスが終わると、男を襲う。アイリーンの眼の前で、男を容赦なく攻撃する。愛する人と結ばれるよりも彼女を守ることに徹する決意をした瞬間である。ぐっとくる。(2012.4)

このひと言(No.53)「銃は持たない。運転をする。」

ドラゴン・タトゥーの女 HE GIRL WITH THE DRAGON TATTOO
2011年 アメリカ 158分
監督:デヴィッド・フィンチャー
原作:「ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女」スティーグ・ラーソン著(2005年)
出演:ミカエル(ダニエル・クレイグ)、リスベット・サランデル(ルーニー・マーラ)、ヘンリック・ヴァンゲル(クリストファー・プラマー/ジュリアン・サンズ[壮年期])、ディルク・フルーデ(スティーヴン・バーコフ)、マルティン・ヴァンゲル(ステラン・スカルスガルド/サイモン・レイズナー[十代])、ハリエット・ヴァンゲル(モア・ガーペンダル)、セシリア(ジェラルディン・ジェームズ)、アニタ(ジョエリー・リチャードソン)、グスタフ・モレル元警部補(ドナルド・サンプター)、エリカ・ベルジュ(ロビン・ライト)、ドラガン・アルマンスキー(ゴラン・ヴィシュニック)、プレイグ(トニー・ウェイ)、ホルゲル・パルムグレン(ベンクトゥ・カールソン)、ニルス・ビュルマン(ヨリック・ヴァン・ヴァーヘニンゲン)、ハンス=エリック・ヴェンネルストレム(ウルフ・フリベリ)
ベストセラーとなったスウェーデン製のミステリ小説三部作の第一作をハリウッドでリメイク。
失意にある中年の経済ジャーナリストと、背中に龍の刺青を彫った若い女性調査員が、スウェーデンのノールランド地方の孤島で40年前に起こった財閥の美少女失踪事件の謎を追う。
★以下ネタばれあり!!
経済誌「ミレニアム」の記者ミカエルは、大物実業家ヴェンネルストレムの不正を暴こうとして逆に彼の罠にはまり、名誉毀損で有罪判決を受ける。
彼は、大企業グループの前会長ヘンリック・ヴァンゲルから、甥ゴートフリートの娘ハリエットの調査を依頼される。40年前、16歳だったハリエットは、一族の住む島が橋の事故により密室状態にあった中で、忽然と姿を消した。ヘンリックは、彼女は何者かに殺されたという考えのもとに、40年間捜査を続けてきたのだった。ミカエルは、島に滞在して、調査を始める。
それと並行して、セキュリティ会社で非常勤の調査員として働くリスベット・サランデルの様子が描かれる。彼女は、身体のあちこちに刺青を入れてピアスをつけ、革ジャンを着てバイクを乗り回す。パソコンを自在に使うハッカーでもあるが、調査員としての腕は抜群、過去になんらかの事件を起こし、後見人制度によって後見人をつけられている。
二人はやがて出会い、ともに調査をすることになる。
この筋書きは、原作とオリジナルの映画とほぼ同じ。古い写真とハリエットが書き記した謎の番号から連続殺人犯に近づいていく過程も、解き明かされるハリエットの真相も、同様である。
ハリエットが、失踪した日にパレードの行列の向こうに見つけた人物は誰か。彼女が書き記した番号が示す女性連続殺人の犯人は誰か。原作でもオリジナル映画でも焦点となるこの謎を、本作では、リスベットとダニエルが、それぞれ別の場所で同時に追及していく様子がカットバックして描かれる。ヴァンゲル・グループの資料室で、リスベットが、古い企業の記録をたどっていって連続殺人犯がだれであるかを突き止めていく一方、ゲストハウスでは、ミカエルがパレードの行列の写真とヘンリックの兄のハラルドが撮った一族の写真から、ハリエットがパレードの行列の向こうに見た人物が誰であるかを突き止めていく。リスベットが一族のある男を、ミカエルがその息子を、それぞれ追って行く。この時点では、特に誰かに危機が迫っているわけではないのだが、サスペンスフルでどきどきするカットバックだった。そして、この後、一気に犯人との対決に突き進むのであった。
ダニエル・クレイグの北欧の中年ジャーナリストがいい。これまで007(「007 慰めの報酬」)とエイリアンと戦うカウボーイ(「カウボーイ&エイリアン」)の役で見たが、私としては、今回が一番しっくりきた。原作のミカエルは女性に関してだいぶ節操がなく、オリジナル映画のミカエルは悪くないのだがだいぶ地味だった。ダニエルのミカエルは、適度にかっこよくて知的で頼りにもなるが情けないとこもあって良い感じだ。
リスベット役のルーニー・マーラは、オリジナル盤のノオミ・ラパスより小柄で線が細い。原作やノオミのリスベットが、不遇な環境で育ち誤解を受けながらも強く生きてきたヒロインだったのに対し、マーラのリスベットは、とても危なっかしい感じがする。
原作でもオリジナル映画でも、ミカエルとリスベットのチームはそれぞれいい感じだったが、ここでもこの二人はいい感じだ。ただ、ミカエルにとってはミレニアム編集部が自分のいるべき場所で、そこに戻った彼を見るリスベットの思いは切ない。
見比べてみると、ノールウェイ地方の孤島が舞台であることや、ミカエルとリズベットというまるで接点のない男女がチームを組むという設定は原作のおもしろさ、映画としてのメリハリはスウェーデンの映画に、ミカエルの魅力は今回のリメイク作品にあるかなと、私は思った。(2012.2)
このひと言(No.):「わたしに触っていて。」
関連作品:「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」(2009年 スウェーデン/デンマーク/ドイツ)
 *   *   *  
<原作小説とスウェーデンのオリジナル映画とアメリカのリメイク映画の内容の違い>
原作を読んで、スウェーデンのオリジナル映画を見て、それからアメリカのリメイク映画を見た。続けて見たので、いろいろ比べてみる。リメイクの方が、原作に忠実な点が多いように思う。
○リメイク映画と原作の違う点
リメイク作品が原作と大きく違う点は、ミカエルが幼少のころにハリエットに会っていないこと、ミカエルが実刑判決を受けておらず、禁固刑に服さなくてもいいこと、リズベットは施設に母を訪ねず、元後見人のパルムグレンを見舞うこと、そしてラストのハリエットの居場所である。
・原作では、ミカエルは幼少のころ、家族で島に滞在し、ハリエットに会ったことがあるのだが、幼すぎて彼女のことを覚えていない。オリジナル映画では、ミカエルはハリエットのことを覚えていて、調査の最中に何度となく、若く美しい彼女の面影と思い浮かべる。本作ではそうしたことは一切出てこない。
・原作でもオリジナル映画でも、ミカエルは実刑判決を受ける。原作では、調査の途中に収監され、なんということもなく出所する。オリジナル映画では、ハリエット失踪事件が解決したあとに収監される。本作では、実刑判決は受けなくてよかったねということになっている。
・リスベットには、精神を患って施設で暮らしている母がいる。原作では、リスベットは何度となく母を訪ねる。オリジナル映画では、ハリエットは事件解決後に初めて母を訪ねる。本作では母は全く出てこず、リスベットは元後見人のパルムグレンが自宅で倒れているのを発見し、病院に運び、退院後に彼を見舞う。原作ではパルムグレンについては説明のみがなされていた。
・ハリエットの居どころについては、リメイクではなぜこうしたのか、あまりよくわからない。原作やオリジナル映画では、オーストラリアの牧場が出てくる。日焼けした精悍な女牧場主よりも、色白のエレガントな女性でいてほしかったということか。
・島に住むセシリアと妹のアニタは、原作とオリジナル映画では仲がいいが、リメイク作品では不仲である。この、アニタが親族との連絡を一切断っているという辺りで、ハリエットのことが、なんとなくわかったように思えたのだった。
○原作とリメイク映画では同じだが、オリジナル映画では違っている点
オリジナル映画では原作と変えた点を、リメイクでは原作通りに描いているところが結構ある。
・原作とリメイクでは、ハリエットの書き記した謎の番号を聖書と結びつけるのは、ミカエルの娘である。オリジナル映画では、ミカエルのパソコンをハッキングしていたリズベットが、番号の謎に気づき、このことをメールで知らせたたことがきっかけとなって、ミカエルはリズベットと出会う。が、リメイクでは、原作と同様、ミカエルはヘンリックの弁護士フルーデとセキュリティ会社の社長アルマンスキーを通して彼女の存在を知ることになる。
・ミレニアムの編集長エリカとのミカエルとの愛人関係は、オリジナルではあまりはっきり示されなかったが、リメイクでははっきり示される。が、原作のように、エリカの夫公認であるかどうかは定かではない。
・原作では、ミカエルは、島に来て割とすぐヴァンゲル一族のセシリアと関係を持つが、オリジナルでもリメイクでもそれはない。リメイクではむしろミカエルはセシリアに疎まれている。
・絵に描いたような卑劣漢ビュルマン弁護士に制裁するためリスベットが施す刺青は、オリジナルでは当然スウェーデン語だったが、リメイクでは、舞台はスウェーデンなのだがアメリカ映画なので英語だった。
・モレル警部は、原作とリメイクではヘンリックと同年代で、とうの昔に引退しているが、オリジナル映画では、定年を間近に控えつつも、まだ現役である。
・原作とリメイクでは、危機にある「ミレニアム」社に、ヘンリックが経営上の支援を申し出る話がある。オリジナル映画にはそうしたビジネスがらみの話は出てこない。
○リスベットの過去
・リスベットの過去は、小説第一作でははっきり示されない。オリジナル映画では、彼女が父親らしき男が乗った車に火を放ち、また母が彼女に父のことで謝罪するシーンがある。リメイクでは、リスベットがミカエルに対し、自らの過去を語る。

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