みちのわくわくページ

○ 映画(2014年)

<見た順(降順)>
ジョン・ウィック、 超高速!参勤交代、 ジャージー・ボーイズ、 鳥の道を越えて、 フューリー、 荒野はつらいよ アリゾナより愛をこめて、 フライト・ゲーム、 るろうに剣心 伝説の最期編・京都大火編(2本)、 イン・ザ・ヒーロー、 イントゥ・ザ・ストーム、 ルパン三世、 GODZILLA ゴジラ、 オール・ユー・ニード・イズ・キル、 ポンペイ、 ラストベガス、 名探偵コナン 異次元の狙撃手(スナイパー)、 ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅、 ラッシュ/プライドと友情、 相棒 −劇場版V− 巨大密室!特命係絶海の孤島へ

ジョン・ウィック  JOHN WICK
2014年 アメリカ・カナダ・中国 101分
監督:チャド・スタエルスキ
出演:ジョン・ウィック(キアヌ・リーズス)、ヴィゴ・タラソフ(ミカエル・ニクヴィスト)、ヨセフ・タラソフ(アルフィー・アレン)、オーレリオ(ジョン・レグイザモ)、ウィンストン(イアン・マクシェーン)、マーカス(ウィレム・デフォー)、ヘレン(ブリジット・モイナハン)
録画を見る。
元殺し屋のジョン・ウィックは、病気で愛妻を失い、失意の日々を送るなか、亡き妻からの贈り物である子犬のデイジーをかわいがって心を癒していた。ある日、マフィアのボスの息子ヨセフが、町でみかけたジョンの愛車のマスタングを気に入り、譲るよう迫ってくるが、ジョンは断る。そのことを根に持ったヨセフは、ジョンの家に押し入り、彼を襲い、愛犬のデイジーを殺し、車を奪って逃げる。怒りに燃えるジョンは、復讐に立ち上がる。
ヨセフがジョンの車を持ち込んだ盗難車処理屋の男が、車を一目見てジョン・ウィックの愛車だと気づく。ヨセフの父親ヴィゴは、息子があの伝説の殺し屋ジョン・ウィックを怒らせたと知って慌てて事態の収拾に向かうが、ジョンの怒りは収まらず、両者の戦いは激化の一途をたどっていく。妻が殺されたのでなく、妻は病死で殺されたのは子犬、というのが新しい。しかもねらう相手は軽薄な若者一人。このしょぼい動機と目的に対して、大げさすぎるマフィア対一人の壮絶な殺し合いが展開するのだが、ここまでやると一層潔い。銃を持って、中国武術のように一人で多勢の敵を相手に立ち回るジョン・ウィックのアクションが一番のみどころ。(2019.11)


超高速!参勤交代

2014年 日本 公開:松竹 119分
監督:本木克英
出演:内藤政醇(佐々木蔵ノ介)、荒木源八郎(寺脇康文)、秋山平吾(上地雄輔)、鈴木吉之丞(知念侑李)、増田弘忠(柄本時生)、今村清右衛門(六角精児)、雲隠段蔵(伊原剛志)、お咲(深田恭子)、相馬兼嗣(西村雅彦)、徳川吉宗(市川猿之助)、松平輝貞(石橋蓮司)、松平信悦(陣内孝則)
続編公開にあたり、テレビ放映したのを見る。
享保年間、八代将軍徳川吉宗の治世。
福島の小藩湯長谷藩の藩士たちは1年の江戸詰めを終えて国元に帰ってくるが、のんびりする間もなく、幕府から再度の参勤交代の命が下される。藩の金山に目を付けた強欲な老中松平信悦の陰謀だったが、5日以内に藩主藩士そろって再び江戸に行って釈明しないと藩はお取り潰しになってしまう。それでなくても、参勤交代は人出も金もかかり、藩にとってはかなりの負担となる。藩主内藤政醇(まさあつ)は、知恵者の家老相馬兼嗣に、できるだけ金のかからない方法で、通常8日かかる道のりを5日で行くための策を講じるよう命じる。かくして、街道を通らず近道となる山中を走り、大きな宿場町を通るときのみエキストラ的な人たちを雇って大行列に見せる、という作戦が決行される。
雲隠段蔵という忍者が道案内に雇われる。最初は金目当てだったが、藩主藩士らのあまりの人のよさにほだされて、真の助っ人になるという、ハン・ソロ的アウトロー儲け役の定番を伊原剛士が余裕で演じている。
途中、信悦が放つ刺客に襲われたり、みんなと分かれた政醇が宿場町で見かけた遊女のお咲を助けたり、待ちくたびれたエキストラたちがストをおこして行列ができなくなったりと、道中はハラハラどきどきが続いて飽きさせず、思ったよりもチャンバラがあって楽しかった。(2016.9)

ジャージー・ボーイズ JERSEY BOYS
2014年 アメリカ 134分
監督:クリント・イーストウッド
出演:フランキー・ヴァリ(ジョン・ロイド・ヤング)、トミー・デヴィート(ヴィンセント・ピアッツァ)、ボブ・ゴーディオ(エリック・バーゲン)、ニック・マッシ(マイケル・ロメンダ)、ジョーイ(ジョゼフ・ルッソ)、ジップ・デカルロ(クリストファー・ウォーケン)、ボブ・クリュー(マイク・ドイル)、メアリー(レネー・マリーノ)、ロレイン(エリカ・ピッチニーニ)、フランシーヌ(17才フレヤ・ティングレー、4才グレース・フィッツジェラルド、7才エリザベス・ハンター)
映画公開中に見るのを逃し、キネ旬ベストテン、第1位映画鑑賞会と表彰式で見る。
ブロードウェイ・ミュージカルの映画化。60年代から70年代に活躍したニュージャージー出身の4人組ヴォーカル・グループ、フォー・シーズンズの誕生と成功と分裂と収束の物語。
「シェリー」「君の瞳に恋してる」など大ヒット・ナンバーの数々とともに描く。
フォー・シーズンズのメンバーが、カメラを向いて状況説明をする方式が何度も使用されるが、これがなかなかおもしろかった。
クリストファー・ウォーケンが、ヴァリの歌のファンのマフィアの親分を好演。若者たちの喧嘩の場に居合わせてオロオロする姿がよかった。
名曲が生まれる過程が描かれるのは大変興味深いが、ボブがフランキーらに会う前に作っていた曲がタモリ倶楽部のオープニングソングだったのにはびっくり、「ショート・ショーツ」という曲だということを初めて知った。 (2015.2)

鳥の道を越えて
2014年 日本 公開:工房ギャレット 93分
監督:今井友樹
キネ旬のベストテン、第1位映画鑑賞会と表彰式でみる。
たんたんとして、誠実な感じの映画だった。記録映画はあまり見る機会がないが、見るとたいがい味わい深く、おもしろい。
カスミ網猟のくだりが特によかった。
地名とかあまり覚えていないので、HPのURLを書いておく。(2015.2)
http://www.torinomichi.com


フューリー FURY
2014年 イギリス 135分
監督:デヴィッド・エアー
出演:ドン・コリアー/ウォーダディー(ブラッド・ピット)、ノーマン・エリソン/マシン(ローガン・ラーマン)、ボイド・スワン/バイブル(シャイア・ラブーフ)、トリニ・ガルシア/ゴルド(マイケル・ベーニャ)、グレイディ・トラビス/クーンアス(ジョン・バーンサル)、ワゴナー大尉(ジェイソン・アイザックス)、マイルス軍曹(スコット・イーストウッド)、エマ(アリシア・フォン・リットベルク)、イルマ(アナマリア・マリンカ)
第二次世界大戦末期、ベルリン攻略を目指す連合軍司令部の命により、ドイツに進軍した戦車隊の凄惨な戦いを描く。
ドン・コリアーが率いるシャーマン戦車「フューリー号」の乗組員チームは、過酷な戦闘を生き抜いてきたベテラン揃いだが、副操縦士を失い、新兵のノーマンが新たに配属されてくる。戦車の操縦どころか人を撃った経験もないノーマンは、チームメイトから冷ややかに迎えられる。いきなり激しい前線に立たされ、あまりにも厳しい状況に戸惑い恐れる。ドンは捕虜となったドイツ兵の射殺を命じ、嫌がるノーマンに無理やり銃を持たせるのだった。
強力な武器を持った人と人の群れが面と向かって戦い殺し合うとはこういうことだと、いやと言うほど見せつけられる映画である。
ブラピが、頭の回転が速く、粗野で、存在感のある歴戦のプロを演じている。ドイツの町で、女二人の住むアパートに押し入ったときは、彼が一体何をしようとしているのか、ちょっとしたサスペンスがあって、どきどきした。
他のチームの面々もそれぞれいい。戦場にきてすぐノーマンは「誰とも親しくなるな。」と釘を刺されるが、彼ともども、私たちも映画を見ているうちに、メンバーひとりひとりの見分けがついてきて名前も覚えて、嫌な奴だと思っていた奴もいいとこあるじゃんと思ってきてしまうので、やはりラストはつらく悲しいのだった。
戦車が話題になっている。ドイツのティーガーがちょっとだけ出てくる。戦車のことはあまりよく知らないが、造形や動きは気を引くものがあり、「フューリー」が、天辺だけでなく、2つの操縦席の上にも蓋があって顔を出せるようになっているのが興味深かった。(2014.12)

るろうに剣心 伝説の最期編

2014年 日本 公開ワーナー 135分
監督:大友啓史
原作:和月伸宏「るろうに剣心 明治剣客浪漫譚」
出演:緋村剣心/心太(佐藤健/福崎那由他)、斎藤一/藤田五郎(江口洋介)、四乃森蒼紫(しのもりあおし。伊瀬谷友介)、柏崎念至/翁(田中泯)、巻町操(土屋太鳳)、志々雄真実(藤原竜也)、瀬田宗次郎(神木隆之介)、佐渡島方治(さどじまほうじ。滝藤賢一)、悠久山安慈(丸山智己)、駒形由美(高橋メアリジューン)、神谷薫(武井咲)、相楽左之助(青木崇高)、高荷恵(蒼井優)、明神弥彦(大八木凱斗)、伊藤博文(小沢征悦)、比古清十郎(福山雅治)

★ネタバレというか、内容バレしてます。
続編にして完結編二部作の後編である。
国盗りをもくろむ志々雄一味の船(「煉獄」というらしい)から、夜の海に落とされた薫の後を追って海に飛び込んだ剣心が、海岸に漂着し、謎の男に発見され、かつがれていくところで終わった前編からの続き。
謎の男は、剣心に剣を教えた師匠比古清十郎だった。
前半は、清十郎のもとで飛天御剣流の奥義を習得するまでの剣心の修行の様子が、後半は「煉獄」での志々雄との対決が描かれる。その間に、剣心と蒼紫の対決、薫と佐之助・弥彦の再会、志々雄に脅された明治政府の裏切りによる剣心の逮捕などがある。
海に落ちた剣心がたまたま師匠に拾われ、薫もたまたま漁船に拾われ、師匠は奥義を習得するために剣心に欠けているものは「生きようとする心」だと言うが、わたしとしてはさほど目新しくも思えず、きっと原作漫画ではいろいろ出番があったのであろうと思われる脇役らはちょっとずつ姿を見せては消化不良のまま消え、伊藤博文は言動に無理があるなど、話としてはふにゃふにゃな感じが否めない。
が、痛快なアクションと、それを披露する佐藤健始め、伊瀬谷、江口、藤原、神木ら俳優たちの姿や表情を楽しむための映画であり、それは見る価値のあるものだと思う。
最期の「煉獄」での対決は、志々雄一人に対し、剣心、斎藤、蒼紫、佐之助と4人掛かりの勝負となる。昔見た「プロジェクトA」(1983年)の海賊との対決を思い出した。ジャッキー・チェン、サモ=ハン・キンポー、ユン・ピョウが挑んだ相手は巨漢の悪漢だったが、志々雄は全身火傷の細身の男。それでも斬った相手を燃やすというすごい技を持っていて、とにかく強いから、4対1でもなかなか倒せない。男前の4人が入れ替わり立ち替わり立ち向かっていくのがいいし、一人で受けて立つ包帯だらけの藤原達也がまたよかった。
あと、こんな細部はどうでもいいのだが、一応。対決が終わり、佐之助に抱えられてきたぼろぼろで血だらけの剣心を見て、「剣心、無事だったのね。」という薫殿はいかがなものか。生きててよかったと言いたいのだろうが、「無事」とは言わんだろう。この天然ぶりは可笑しい。それと、伊藤博文、「抜刀斎は死んだ。」と言っても、散々極悪人人斬り抜刀斎として「緋村剣心」の名前を世間に周知してるんだから、ちゃんと訂正とお詫びの文を出してねと思った。(2014.9)

るろうに剣心 京都大火編
2014年 日本 公開ワーナー 139分
監督:大友啓史
原作:和月伸宏「るろうに剣心 明治剣客浪漫譚」
出演:緋村剣心(佐藤健)、斎藤一/藤田五郎(江口洋介)、四乃森蒼紫(しのもりあおし。伊瀬谷友介)、柏崎念至/翁(田中泯)、巻町操(土屋太鳳)、新井赤空(しゃっくう。中村達也)、新井青空(せいくう。渡辺大)、志々雄真実(藤原竜也)、瀬田宗次郎(神木隆之介)、佐渡島方治(さどじまほうじ。滝藤賢一)、刀狩の張/沢下条張(さわげじょうちょう。三浦涼介)、悠久山安慈(丸山智己)、駒形由美(高橋メアリージュン)、神谷薫(武井咲)、相楽左之助(青木崇高)、高荷恵(蒼井優)、明神弥彦(大八木凱斗)、大久保利通(宮沢和史)、伊藤博文(小澤征悦)、謎の男(福山雅治)

★ネタバレあります!

続編にして完結編だそうだが、二部作なので前編である。
幕末の人斬り抜刀斎の名を捨て、不殺(ころさず)の誓いを立てた剣心は、江戸にある薫の道場で仲間の恵や弥彦や左之助とともに平穏な日々を過ごしていた。が、ある日、明治新政府の内務卿となった大久保利通に呼び出され、志々雄真実を殺してほしいと依頼される。
志々雄は、幕末に剣心の後継者として人斬りになった男で、維新後新政府の裏切りで焼き殺されかけるが、灰の中から生還し、仲間を集めて新政府の転覆を目論んでいた。斎藤は警官隊を率いて一味を襲撃するが返り討ちに会う。大久保は、剣心を最後の頼みの綱としたのだった。不殺(ころさず)の誓いを立てた剣心であったが、討伐隊の惨状を目にし、会見後間もなく大久保が暗殺され、しかも隠された真犯人が志々雄の配下十本刀の一人瀬田宗次郎であることを知ると、単身、志々雄一味のいる京都へ旅立つのだった。
道中、志々雄一味に襲われた村での1対多勢の戦い、志々雄との対面、宗次郎との軽めの対決、その後の十本刀の沢下条張との対決を経て、剣心は京都に到着。旅の道づれとなった元御庭番衆の操の家である料亭に身を寄せる。左之助と薫と弥助も剣心を追ってくる。
立ち回りは前作同様、スピード感にあふれ、見ていて爽快である。
逆刃刀(さかばとう)を巡る刀匠赤空・青空親子と剣心との関わりあいもよかった。
志々雄役の藤原達也は、幕末の回想シーンでしか素顔を見せず、全身に火傷を負って包帯だらけで登場する。最近のこの人の本領発揮の壊れた悪役どころである。
しかし、彼が企て、映画のタイトルにもなっている「京都大火」は、いまひとつ。
事前に情報を知り、剣心も斎藤や御庭番衆らとともに志々雄一味を待ち受ける。乱戦となり、それぞれが戦って見せ場があり、特に剣心打倒に燃えるあまり修羅と化した蒼紫とトンファーを駆使する柏崎翁との元御庭番衆同志の対決はおもしろい。
が、やがて特にきっかけもなく、剣心と斎藤が気づく、志々雄の狙いは京都にはないと。この展開がどうもおもしろくない。前哨といえども、映画1本のクライマックスとしては、なんとなくわかるのではなく、それなりに順を踏んで志々雄の真意が暴かれていって、そうだったのか!と思いたいし、「大火」で盛り上がりたいところである。マンガを読んだ人によれば、原作では船が燃えて大火となるらしいのだが、映画では結局大火とはならないのだった。
「不殺の誓い」を立てた凄腕の剣士という矛盾を抱えたヒーローを、どう活かし、魅せるのか。後編に期待である。(2014.8)
※余談だが、柏崎翁の田中泯(吉田東洋)、青紫の伊勢谷(高杉晋作)に、最後に謎の男で福山雅治(龍馬)が登場、NHK大河ドラマ「龍馬伝」の顔ぶれがさらに増殖している。
関連作品:「るろうに剣心」(2012年)


イン・ザ・ヒーロー
2014年 日本 公開:東映 124分
監督:武正晴
出演:本城渉(唐沢寿明)、一ノ瀬リョウ(福士蒼汰)、大柴美咲(黒谷友香)、海野吾郎(寺島進)、真鍋満(草野イニ)、森田真澄(日向丈)、門脇利雄(小出恵介)、元村歩(杉咲花)、元村凛子(和久井映見)、スタンリー・チャン監督(イ・ジュニク)、石橋隆生(加藤雅也
)、松方弘樹(本人)、西尾(及川光博)

★クライマックスでのネタバレ、というか手法バレあり!!
戦隊ものなどでヒーローや怪獣の中に入ってアクション部分の演技を受け持つスーツアクターを題材にした映画。
ベテラン、スーツアクターの本城渉は、戦隊もの劇場版に出演が決まった売り出し中のアイドルスター一ノ瀬リョウにアクションを教えるよう依頼される。裏方を見下し、礼儀を知らない傍若無人な若者に見えたリョウだったが、やがて熱い思いを胸にスーツアクターを続ける本城と心を通わせていく。
東映らしい冒頭の戦隊ものがちゃんとしていて楽しい。
唐沢の熱い人ぶりが、暑苦しいはずなのに清々しくていい。
本城が迷いを振り切って決断するときに踏切を渡るというべたな表現はなかなかいいが、走り出すとともにスローモーションになって歌ががんがん流れるのはちょっとやだなと思っていたら、これは前振りだったのだ。
クライマックス、ハリウッド映画「ラストブレイド」で白忍者に抜擢された本城の大立ち回りのシーン。CGなし、ワイヤーなし、ノーカットでの殺陣ということになっていて、多くの人が「蒲田行進曲」の階段落ちを引き合いに出す、とても危険なアクションなのだが、これが、ワイヤー使って(気づいたのは殺陣の相手で本城ではないが)、カット割っているのは(映画の中で映画を撮っているカメラとは別なのねと思えば)いいとして、せっかくの白忍者会心の殺陣の最後の最後で、スローモーションになって日本語の歌が大音量でかぶさるのは、いかがなものか。好みの問題だと思うが、わたしはがくっとなってしまった。狂喜する監督の様子は写ったが、監督が「カット!」と叫ぶ声は聞こえなかった。「アクション!」で始まったら、「カット!」で終わるんじゃないのか。これはもう、「ルパン三世」で五ェ門に斬鉄剣で斬られた車がまっぷたつに割れなかったのとともに、わたし的には今年の邦画二大無念の一つと言っていい。
それをのぞけば、とても興味深く、いい映画だった。(2014.9)

イントゥ・ザ・ストーム INTO THE STORM
2014年 アメリカ 89分
監督:スティーヴン・クエイル
出演:ゲイリー(リチャード・アミティッジ)、ドニー(マックス・ディーコン)、トレイ(ネイサン・クレス)、ケイトリン(アリシア・デブナム=ケアリー)、
ピート(マット・ウォルシュ)、アリソン(サラ・ウェイン・キャリーズ)、ダリル(アーレン・エスカーペタ)、ジェイコブ(ジェレミー・サンブター)、ルーカス(リー・ウィテカー)、
ドンク(カイル・デイヴィス)、リービス(ジョン・リーブ)

アメリカ中西部の町を巨大な竜巻が襲う。
町に住む高校生の家族、竜巻の映像を撮ることを目的とする竜巻ハンターチーム、そしておまけ的に動画を流して注目されることに命をかけるおばか冒険野郎のユーチューバー2人組に的を絞って、未曾有の災害に見舞われた人々の救命劇を描く。
高校性のドニーは、母が病死してから、教頭先生である父親のゲイリーとの関係がギクシャクしている。卒業式の日、タイムカプセル用に25年後の自分へのメッセージというテーマで卒業生や町の人々にインタビューしたビデオを撮影をするよう、ゲイリーから指示されていた。が、意中の女の子ケイトリンがレポート提出のため廃工場に行くのに付き合うことにし、卒業式には出ず、ビデオ撮影を弟のトレイに押しつける。
一方、竜巻の撮影に執念を燃やすピートをボスとするハンターチームは、竜巻仕様の装甲車に乗り込んで、気象学者のアリソンの分析によって導き出される竜巻の発生場所と通過ルートを目指していた。
映画自体のカメラと別に、ドニーとトレイがタイムカプセル用の映像を撮るビデオ、ハンターチームが竜巻を撮るためのビデオ、ユーチューバーらのビデオ、さらにドニーとケイトリンが危機に陥ったときに遺書代わりに残す携帯の動画など、めまぐるしいほどに、映画の中で動画が飛び交う。
が、そうした手法はおもしろくはあっても煩わしくはなく、物語はいたってオーソドックスに、細部にわたって行き届いた気配りを伴って進む。
廃工場の陥没穴に落ちて危機に陥るドニーとケイトリンを、ゲイリーが救出にいくのだが、どう見ても間に合いそうにないのに間に合ってしまう、「最後の救出」カットバック(危機が迫っている側のカットと救出に向かう側のカットをかわりばんこにつないでサスペンスをもりあげる)を久しぶりに観た気がする。
竜巻撮影に執念を燃やすピートをリーダーとするハンターチームの竜巻仕様の装甲車タイタスがおもしろい。チェーンを繰り出すレンチも、地面に車体を固定するドリルも、あらゆる方向から竜巻が撮れる全方位型風防も、紹介された機能がすべていちいち活用されるのがよい。
以前「ツイスター」(1996年)で大型トラックが吹き上げられるのを見て、ああなんてすごい竜巻だと思った。通常地上にあるものを空中に飛ばすことで竜巻の凄さを表しているのだなと思ったが、今回は、航空機が飛ぶ。本来、空を飛ぶものをあえて飛ばしたということだ。自力で飛ぶのでなく、他の力によって飛ばされてぶつかりあう航空機の映像は、なかなかショッキングであった。
有名な俳優は一人も出ていないが、びしっとした豪快なアクション映画だった。(2014.9)

ルパン三世
2014年 日本 公開東宝 133分
監督:北村龍平
プロデューサー:山本又一朗
原作:モンキー・パンチ
出演:ルパン三世(小栗旬)、峰不二子(黒木メイサ)、次元大介(玉山鉄二)、石川五ェ門(綾野剛)、銭形警部(浅野忠信)、マイケル・リー(ジェリー・イェン、吹替:加瀬康之)、ピエール(キム・ジュン、吹替:小野賢章)、ドーソン(ニック・テイト、吹替:坂口芳香)、ジロー(山口祥行)、ロイヤル(タナーヨング・ウォンタクーン、吹替:佐藤美一)、サーベル(吉田和剛)、マリア(中山由香)、ナローン(香港警察。ウィッタヤ・バンスリンガム、吹替:伊藤洋三郎)、モムラーチャオ・プラムック(ニルット・シリンチャンヤー 吹替:菅生孝之)、ミス・ヴィー(ラター・ボーガム、吹替:大和田美帆)、アジット(吹替:津田寛治)、CA(山田優)

言わずと知れた人気アニメの実写化。マンガやアニメの実写映画化にあたっては、オリジナルの人気が高ければ高いほど、観る前からだめだという人が多いと思われる。冒涜という言葉を聞くこともしばしばだ。別物と考えればいいのにといつも思っていたのだが、でも、ここに至ってちょっと考えが変わった。小栗旬や玉山鉄二や綾野剛や黒木メイサや浅野忠信が、あのルパン三世の登場人物たちを演じるのを、実にわくわくと楽しみながら観たのだが、これは例えば、国民的マンガ「ONE PIECE」のイベントで、キャラクターに扮した役者が舞台劇を演じ、ファンが大喜びで彼らと記念写真を撮る、その思いに共通するものがあるのではなかろうかと思った。無名の役者でもそうなのだから、名だたる俳優が演じるとなれば、さらに盛り上がるというものだ。アトラクション的というか、「ルパン」というみんなが知っているお祭りの一環としての映画というか。
画面からあふれるのは、作り手と演者たちの、「ルパン」への愛と敬意である。浅野忠信がなんてハツラツと銭形警部を演じていることか。だから、五右衛門が斬鉄剣で切ったのに、車がいつまでたってもまっぷたつにならないのを見ると、「え!?」と驚いてたしかにがっかりするのだが、瞬時にさぞかし無念であったろうと作り手たちの心情に思いを馳せてしまう。(それもこれもこっちが勝手に思っているだけだが。)
車は斬れなかったが、アクション続きで、楽しかった。次元が、アニメと同じポーズで銃を撃ちながら、吹っ飛ぶのはうれしかった。当人同士しか声がきこえないガラス張りの中での、マイケルとプラムクの取引は緊迫していてよかった。マイケルの人物像がおもしろみに欠けるのが難点だったが、台湾や韓国やタイの俳優を起用して、吹替えをふんだんに使った無国籍ぶりもよかった。
上映前の、「ノーモア映画泥棒」が、ルパン仕様だった。かねてよりセンスが悪すぎると思っていた「映画泥棒」だが、初めてちょっと楽しいと思った。(2014.9)

GODZILLA ゴジラ GODZILLA
2014年 アメリカ 123分
監督:ギャレス・エドワーズ
出演:フォード・ブロディ(アーロン・テイラー=ジョンソン。少年時代:CJ・アダムス)、芹沢猪四郎博士(渡辺謙)、ヴィヴィアン・グレアム(サリー・ホーキンス)、ウィリアム・ステンツ司令長官(デヴィッド・スタラザーン)、エル・ブロディ(エリザベス・オルセン)、サム・ブロディ(カーソン・ボルデ)、ジョー・ブロディ(ブライアン・クランストン)、サンドラ・ブロディ(ジュリエット・ビノシュ)
ハリウッド版ゴジラ。1998年の軽快なラプトル型ゴジラとはだいぶ変わって、重量級の巨大ゴジラである。
1954年の東宝のオリジナル作品では、ゴジラは水爆実験によって突然変異した怪獣だったと思うが、今回のゴジラは太古の昔から存在した放射能を浴びて育つ生きもの。水爆実験はゴジラを倒すために行われたということになっていて、人類の核の使い過ぎによって生まれたのは、ムートーというギャオス型の番いの怪獣である。
1999年、日本の原子力発電所で謎の振動が起こり、放射線漏れの事故が発生、科学者のジョー・ブロディは、同所スタッフだった妻のサンドラを亡くす。このときの夫妻の扉越しの別れは切ない。15年後、彼らの一人息子のフォードは米海軍の大尉となっていた。ジョーは、侵入禁止区域に入り込んで、15年前の事故のデータを手に入れようとして逮捕される。彼の身柄を引き取るため、休暇中だったフォードは日本を訪れる。そこでムート―が目覚め、ムートーを追ってゴジラもやってくる。彼は、海軍に合流し、怪獣退治の作戦に加わる。
渡辺謙が、原爆で父を亡くした日本人生物学者芹沢猪四郎博士を演じる。アメリカ人に怪獣の名前を聞かれて、”We call him Godzilla!“と答える。「Godzilla」(ゴ、ズィーラ)ではなく「ごじら」と発音するのが、うれしかった。しかし、彼は対応策は何も提案せず、ほとんど役に立たない。とりあえず居て、いろいろと解説をする役どころである。
ムート―の登場までが長く、さらにゴジラの登場までが長いので、ちょっと眠くなってしまった。
全身を現したゴジラは、前評判でも言われていたことだが、少々太めで、ちょっと蝦蟇ガエルっぽかった。放射線を吐き、そのとき背びれが光るのが懐かしかった。
私にとって、これはこの背びれを見るための映画のように思えた。海を行くゴジラの背びれだけが海面に突き出したカットや、夜の街で背びれが浮き出て見えるカットを予告編で目にしたときからずっとわくわくしていた。1954年の東宝オリジナルのゴジラの、サンゴの枝のような樹枝結晶のような背びれもよかったが、今回の水晶の結晶のような、荒涼とした奇岩群のような造形もかなり気に入った。
映画は、全体的に暗いトーンで、悪くはないが、地味めである。フォードや海軍の指揮官や芹沢博士などの登場人物も控えめだった。音楽は伊福部調を取り入れたアメリカ映画音楽だった。(2014.8)
関連作品:「シン・ゴジラ」(2016)、「ゴジラ・モスラ・キングキドラ大怪獣総進撃」(2001)、「ゴジラ」(1954)

ポンペイ POMPEII
2014年 アメリカ/カナダ/ドイツ 105分
監督:ポール・W・アンダーソン
出演:マイロ(キット・ハリントン)、カッシア(エミリー・ブラウニング)、アティカス(アドウェール・アキノエ=アグバエ)、セヴェルス(ジャレッド・ハリス)、アウレリア(キャリー=アン・モス)、アリアドネ(ジェシカ・ルーカス)、コルヴス元老院議員(キーファー・サザーランド)、グラエカス(ジョー・ピング)、ベラトール(クリー・グラハム)、プロキュラス(サッシャ・ロイズ)
★あらすじについての言及かなりあり★
西暦79年。ヴェスヴィオ火山の大噴火により、一瞬にして壊滅した古代都市ポンペイを舞台とする歴史スペクタクル&アクション&ラブロマンス。
いま何故ポンペイなのかわからず、巷での評判も芳しくないようなのだが、私としては、このようなB級活劇の精神にあふれた映画を見ると、とてもしあわせな気分になるのだった。
冒頭のローマ軍によるケルト民族虐殺シーンから、田舎の場末の店での剣闘試合で奴隷でありながら無敵の剣士となったヒーロー(マイロ)の登場、旅の途上でのヒロイン(カッシア)との出会い、牢の中での屈強なライバル(アティカス)との出会い、ポンペイの有力者(セヴェルス)にローマへの服従を迫ると同時にその娘であるヒロインも無理やり自分のものにしようとする憎まれ役元老院議員(コルヴス)の登場、馬を通して一気に恋に落ちるヒーローとヒロイン、そしてコロセウムでの剣闘試合では、奴隷の剣闘士たちがローマ軍の兵士をやっつけ、ポンペイ市民の支持を得て大いに盛り上がる。
そうしたドラマが展開する間、ポンペイの街の背後に聳え立ち、絶えず不穏な空気を漂わせていたヴェスヴィオ山が、遂に火を噴く。
街が崩壊し、人々が逃げ惑う中、コロセウムではローマ軍の騎士プロキュラスとアティカスが最後の対決を行い、マイロは騎乗して、カッシアを連れて逃げるコルヴスの馬車を追う。飽きない。
アティカスが名を尋ねても、殺し合う相手の名は知らなくていいと言って、マイロがなかなか名乗らないのがいい。
山間で大規模な土砂崩れから逃れてきて興奮して暴れているカッシアの馬を、騎馬民族ケルトの血を持つマイロがなだめるのもいいし、馬に乗ったマイロがついカッシアに手をさしのべ、カッシアもちょっと迷ってからえいやとそれに応えて、二人で馬に乗って疾走するところなどは、すごく昔の映画っぽくてよかった。
2時間に満たないことも、有名な俳優があまり出ていないのも、ヒロインを美しく撮ることにさほど熱心でないのもB級ぽい。キーファー・サザーランドがコルヴスを演じているが、古代ローマの衣装が似合わず、「24(トゥエンティ・フォー)」のジャック・バウアーがひょんなことから古代ローマにタイムスリップしてしまったの巻きといった感が否めないのだが、それもまた楽しというところ。
こんなふうに書くと褒めすぎの感があるが、こうゆうの好きなわたしは楽しめたということです。
※噴火の火砕流や津波の映像は迫力があり、否が応にも雲仙普賢岳や東北大震災を思い出すので、そういう映像に抵抗を感じる人は、控える方がいいかもしれません。(2014.6)
<おまけ:同じような題材の作品>
●映画(制作年降順):
・「ポンペイ最後の日」THE LAST DAYS OF POMPEII 1960年イタリア/スペイン/モナコ/西ドイツ 監督:マリオ・ボンナルド、脚本:ドゥッチオ・テッサリ、セルジオ・コルブッチ、セルジオ・レオーネ、出演:スティーブ・リーヴス
・「ポンペイ最後の日」LES DERNIERS JOURS DE POMPEI/THE LAST DAYS OF POMPEII/GLI ULTIMI GIORNI DI POMPEI 1948年 フランス/イタリア 監督:マルセル・レルビエ、パオロ・モッファ、出演:ジャック・カトラン
・「ポンペイ最後の日」THE LAST DAYS OF POMPEII 1935年アメリカ 監督:アーネスト・B・シュードサック、出演:プレストン・フォスター
・「ポンペイ最後の日」THE LAST DAYS OF POMPEI 1926年イタリア 監督:カルミネ・ガローネ、出演:マリア・コルダ
●小説:「ポンペイ最後の日」エドワード・ブルワー・リットン(イギリスの作家)1834年

ラストべガス  LAST VEGAS
2013年 アメリカ 105分
監督:ジョン・タートルトーブ
出演:ビリー(マイケル・ダグラス)、パーディ(ロバート・デ・ニーロ)、アーチー(モーガン・フリーマン)、サム(ケヴィン・クライン)、ダイアナ(メアリー・スティーンバージェン)、
ロニー(ロマニー・マルコ。ホテルマン)、ディーン(ジェリー・フェラーラ。若者)、ミリアム(ジョアンナ・グリースン。サムの妻)、エズラ(マイケル・アーリー。アーチーの息子)、リサ(ブレ・ブレア。ビリーの婚約者)、ソフィー(パーディの妻)

青春時代をいっしょに過ごした4人の男が、58年後、ラスベガスに再結集して楽しいひとときを過ごす。マイケル・ダグラス、ロバート・デ・ニーロ、モーガン・フリーマン、ケヴィン・クラインという顔ぶれ始め、何かとゴージャスな、青春ラブコメディ高齢者版である。
70代半ばまで独身を通してきたビリーは、友人の葬儀に出席の際、老い先短い自分の孤独な未来を憂い、30代のガールフレンド、リサにプロポーズする。
ラスベガスで結婚式をするビリーのため、友人のサム、アーチー、パーディが集まる。パーディは、妻のソフィーの葬儀に来なかったことでビリーを恨んでいたが、他の二人に無理やり連れてこられる。
4人は、ホテルのバーで歌う歌手ダイアナと知り合う。ビリーとパーディが彼女に魅かれていく。
いつまでたってもチャラいビリー、最愛の妻の死から立ち直れないパーディ、身体を患い息子からなにかにつけて口やかましく言われるアーチー、日々の暮らしに倦みべガスで羽目をはずしたいサム、4人の老人は、ギャンブルをし、クラブに繰り出し、プールサイドでビキニコンテストの審査員をし、ホテルのスイートに若い娘をたくさん招待して結婚式前夜にパーティを開いてどんちゃん騒ぎをする。パーティ用に服を新調した4人は実にかっこいいおじいさんたちだが、中でも真っ赤なタキシードが似合うフリーマンがすごい。
パーティの間にかつてのソフィーとビリーとパーディの関係が明かされ、ダイアナとビリーとパーディの関係が進展する。一気に昔と同じ状況になる運びは見事である。
老人同士、久しぶりに電話があると、開口一番「前立腺か?」と訊くのが、申し訳ないが、可笑しかった。病気や老いを笑い飛ばすユーモア感覚がいい。
冒頭、ラスベガスの街の様子が出てきたときに、昔なつかしいカウボーイとカウガールのネオンサインがちらっと映ってうれしかったが、さすがに古びていて、それはちょっとさびしかった。
物思うデ・ニーロが、夜のべガスの街を行くカット。両手を腰にかけてちょっとうつむいて歩く様子は、「タクシードライバー」の有名なスチール写真を思い出した。

セリフを二つ引用。(このひと言No.62にも記載)
Billy: We were 17, you now, five minutes ago.
ビリー「おれたちは17歳だった。5分前まで。」
時の流れと身体の衰えに頭がついていけないというビリーの訴え。

Sam: The thing is... It's crazy, but whenever something spectacular happens to me, the first thing I want to do is tell my wife about it. And, after 40 years of marriage, if I can't tell her about something wonderful that happened to me, it sort of stops being wonderful.
サム「ばかげているようだが、何か特別なことがあったときはいつもまず最初に妻に伝えてきた。結婚して40年、すばらしいことが起こってもそれを妻に伝えられなかったら、それはすばらしいことではなくなってしまうんだ。」
言ったのはサム。あれほど望んでいた若くてセクシーな娘といよいよことに及ぶにあたって、急に女の子を押しとどめて言う。女の子は怒ることなく、「あなたのような人と結婚したい。」とつぶやくのであった。夫の鑑のような言葉だ。(2014.6)

ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅 NEBRASKA
2013年 アメリカ 白黒 115分
監督:アレクサンダー・ペイン
出演:ウディ・グラント(ブルース・ダーン)、デイビッド・グラント(ウィル・フォーテ)、ケイト・グラント(ジューン・スキッブ)、ロス・グラント(ボブ・オデンカーク)、エド・ピグラム(ステイシー・キーチ)、マーサ(デイヴィッドのおば。メアリー・ルイス・ウィルソン)、レイ(デイヴィッドのおじ。ランス・ハワード)、バート(デイヴィッドの従弟。ティム・ドリスコル)、コール(デイヴィッドの従弟。デヴィン・ラトレイ)、アルバート(デイヴィッドのおじ。ロナルド・ヴォスタ)
★ネタばれというか、筋書きについての言及あり!
アメリカ、モンタナ州に住む老人ウディ・グラントは、100万ドルの宝くじに当たったという手紙を受け取る。手紙は詐欺まがいのDMだが、ちょっとボケ始めていて、元々何ごとも信じやすい性格のウディは、賞金をくれるという会社があるネブラスカ州のリンカーンまで歩いて行こうとする。次男(30代くらい、独身)のデイヴィッドは最初はそれを止めようとするが、やがてうそだとわかりつつも親父の旅につきあう決心をする。
二人は、車でモンタナからワイオミング、サウスダコタを経てネブラスカへと旅をする。
ネブラスカでは、リンカーンに行く前に、ウディの生まれ故郷の町に立ち寄る。そこでウディは親戚の人々と何十年ぶりかの再会をする。デイビッドの母親のケイトと兄のロスが合流し、一族は久々に顔を合わせる。
ウディとケイトの旧知の町の人々は、ウディが100万ドルを当てたと聞くとそのおこぼれにあずかろうと昔の話を持ち出してくる。ウディの元仕事仲間のエド(ステイシー・キーチが演じている)は、借金を返せとデイヴィッドを脅迫してくる。
ケイトは若い時の自分がいかに男にもてたかとか、町の人々がいかにだめなやつだったかとか、デリカシーの欠片もないおしゃべりをえんえんと続ける。
デイビッドは、ウディを取材したいという町の新聞社で編集長をしている老婦人ペグに会って話を聞き、ウディが朝鮮戦争で戦闘機乗りだったことや、負傷して心身ともに傷つき酒を飲むようになったことなどを初めて知る。
白黒で、地味で、静かで、美人がでてこない(ペグは若いときはきれいだったろうと思わせるが)、ユーモアもそんなには効いてなくてけっこう滅入る話だが、エドを始め、出てくる人々が悪人でも善人でもないその辺の人たちという感じがいい。ウディが飲んだくれてみんなに迷惑をかけたのはきっと本当のことなんだろうと思われるし、ケイトはきっとセクシーな女の子だったのだろう。
ウディは、終始一貫してウディである。きっとこれまでもこんな感じ。若い頃は見場がよくて、ペグやケイトの気を引いたのだろうが、特に自分でどうこうしようという気はなかったのだろう。感情を表に出さず、無口である。
ウディも映画も、寡黙で理解されがたいかもしれないが、時折見せる本心にじんわりとくる。若いころの彼らの映像が一切流れないのは、映画としては斬新かも知れない。
おとなしい性格のデイヴィッドが、エドの言動に腹がすえかねてぶんなぐるところもいい。
ラスト、ウディは念願だった自分のトラックを所有し、ハンドルを握って故郷の町のメインストリートを行く。日がな一日車を見て過ごしているアルバートが手を振ってくる。彼の姿が、トラックバックで遠ざかる。
Woody Grant: So long, Albert.
Uncle Albert: So long, Woody
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アメリカ中西部の、乾いた、だだっ広い風景がたくさん出てくるので、そういうのが好きだとさらに味わい深い。 (2014.3)

ラッシュ/プライドと友情 RUSH
2013年 アメリカ 124分
監督:ロン・ハワード
出演:ジェームズ・ハント(クリス・ヘムズワース)、ニキ・ラウダ(ダニエル・ブリュール)、スージー・ミラー(ジェームズの妻。オリヴィア・ワイルド)、マルレーヌ(ニキの妻。アレクサンドラ・アリア・ララ)、クレイ・レゴッツォーニ(イタリア人レーサー。ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ)、ヘスケス卿(ジェームズのスポンサーの資産家。クリスチャン・マッケイ)、ルイス・スタンリー(デヴィッド・コールダー)、看護士ジェマ(ナタリー・ドーマー)、アラステア・コールドウェル(スティーヴン・マンガン)、スターリング・モス(アリスター・ペトリ)、バブルス・ホースリー(ジュリアン・リンド=タット)、デティ・メイヤー(コリン・スティントン)、エンツォ・フェラーリ(アウグスト・ダラーラ)
★ネタばれというか、内容についての言及あり!
実在のF1レーサー、ジェームズ・ハントとニキ・ラウダ。サーキットでの戦いを中心に、対照的な2人の男の関わりを描く。
イギリス人のジェームズは、陽気で女好き、繊細な部分もあるが、いきあたりばったりで、死を身近に感じれば感じるほど生きている実感を味わえると言い、勝つために命をかけることも厭わない。
オーストリア人のニキは、マシンの整備に自ら関わり、レースに際しても緻密な分析を行う、死の確率が20%を超えるレースには参戦しない、慎重な頭脳派で、頭がいい分いけすかない奴でもある。フェラーリの車を「豚だ」とけなして徹夜で整備させたり、車幅が規定と1.5センチ違うと通告してジェームズの優勝を取り消させたりするのだ。
フォーミュラ3(F3。メジャーリーグでいう3Aみたいなものか)のレースで初めて顔を合わせた2人は、以来、相手を強く意識し、ライバル同士となる。
2人はレーサーとして名を上げ、F1で活躍するようになる。1976年、チャンピオンのニキと、彼を王座から引きずりおろすことを悲願とするジェームズは、熾烈なトップ争いを繰り広げる。が、悪天候の中、決行された第10戦ドイツブランプリで事故が発生、ニキは全身火傷の重傷を負う。
肺からの吸引と言う過酷な治療を行うニキは、ジェームズがレースに勝ち続け、自分に迫ってくる様子をテレビのニュースで目にし続ける。
皮膚を移植し、傷跡が残る身体で、ニキは事故からわずか42日で復活、日本グランプリでの決戦に臨む。
F1については殆ど何も知らないのだが、レースのシーンはわくわくどきどきして見た。車があれだけ速くあれだけたくさん走っているのに、途中でそんなにわけがわからなくならなかった。
ニキが後に妻となる女性マルレーヌと出会うシーン。乗り合わせたイタリアのミーハーのあんちゃん2人がまたいい。彼らはマルレーヌに、ニキは有名なレーサーだと言うが、彼女は信じない。「レーサーは、長髪でセクシーでシャツのボタンを外している」もので、必要ないからと安全運転に徹するニキの運転ぶりを見て「おじいちゃんみたい」とまで言う。冷静沈着なニキが、女にいいところを見せるため、一般道でいきなり暴走するのは痛快だ。
復活して火傷のあとも生々しい姿で記者会見を行ったニキに対し、絵に描いたように嫌な質問をするジャーナリストを、後でジェームズがぶんなぐる。ニキがそのことを知らないのがいい。
あっさりした、男の友情を描いたドラマを久しぶりに見た。
説明過剰なセリフはなく、画面で伝える。でも肝心なことはちゃんと言う。
号泣はないが、じわじわくる。演者も観客も涙涙のドラマより、こういう方が私は好きだ。
最後のイタリアの小さな飛行場でのニキとジェームズのシーンは、場所がいいし、小型飛行機の周囲を移動しながら話すのがいいし、ジェームズが仲間に呼ばれてちょっとせかされているのがいいし、お互いに「チャンプ」と呼び合って別れるのがいい。
James Hunt: I'll see you on race day, champ.
Niki Lauda: You will, champ.
命がけの体験を共有し、互いに認め合った相手とさらりと別れる。アメリカのアクション映画の王道的ラストシーンだと思った。(2014.3)

相棒 −劇場版V− 巨大密室!特命係絶海の孤島へ
2014年 日本 公開:東映 114分
監督:和泉聖治
出演:杉下右京(水谷豊)、甲斐亨(成宮寛貴)、捜査一課の3人、米沢守(六角精児)、伊丹憲一(川原和久)、三浦信輔(大谷亮介)、芹沢慶二(山中崇史)、大河内春樹(神保悟志)、中園輝生(小野了)、月本幸子(鈴木杏樹)、笛吹悦子(真飛聖)、内村完爾(片桐竜次)、神戸尊(及川光博)、甲斐峯秋(石坂浩二)
神室司(伊原剛志)、高野志摩子(釈由美子)、綿貫孝雄(風間トオル)、多賀周治(渡辺大)、岩城純也(瀬川亮)、若狭道彦(宅麻伸)、八丈署刑事(六平直政)、栗山朔太郎(吉田鋼太郎)
テレビ放映で見る。伊豆諸島八丈島の近くにある孤島「鳳凰島」を舞台に、死亡事故の究明にあたる特命係の杉下右京と甲斐亨の活躍を描く劇場版第3作。
鳳凰島は、個人所有の島だが、そこでは元自衛隊員からなる民兵集団が、共同生活をしながら軍事訓練をしていた。本土から短期で訓練に来ていた会社員が厩舎で死亡する事故が発生。馬に蹴られたものと判断されるが、島の実態を密かに探るよう警察庁の甲斐次長の密命を受けた杉下は、亨とともに島に送り込まれる。杉下らによる名目ばかりの調査はしかし、事故死ではなく殺人事件の様相を帯びてきて、一方、民兵たちの手によって密かに進められている作戦も明らかにされていく。
伊原剛志が、足の負傷により自衛官を退いた民兵のリーダー神室を演じ、彼を慕う女性兵士高野を釈由美子が演じる。
特命係を追って捜査一課3人組が島に送られ、特命係も彼らも正規の自衛隊によって強制送還される辺りはそこそこ可笑しかったが、民兵集団というのがどうにもピンと来ず、生物兵器についてもリアリティが感じられず、ラストの神室と杉下の言い合いもなんだか盛り上がらなかった。
絶海の孤島として使われたのは、伊豆諸島ではなく沖縄の座間味島だそうである。(2016.10)
<関連作品>
相棒-劇場版- 絶体絶命!42.195km 東京ビッグシティマラソン (2008)
相棒-劇場版II- 警視庁占拠!特命係の一番長い夜 (2010)
相棒-劇場版IV- (2017)


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