みちのわくわくページ

西部劇

<1950年代の西部劇 2>
1953年 カラミティ・ジェーン シェーン 大砂塵 叛逆の用心棒 ブラボー砦の脱出
1954年 悪の花園 ヴェラクルズ 帰らざる河 荒野の追跡
1955年 星のない男 六番目の男
1956年 捜索者 七人の無頼漢 必殺の一弾 誇り高き男
1957年 OK牧場の決闘 決断の3時10分 無法の王者ジェシー・ジェームズ

カラミティ・ジェーン Calamity Jane
1953年 アメリカ 103分
監督:デヴィッド・バトラー
出演:カラミティ・ジェーン(ドリス・デイ)、ワイルド・ビル・ヒコック(ハワード・キール)、ケイティ・ブラウン(アリン・アン・マクレーリー)、ダニー・ギルマーティン少尉(フィリップ・ケリー)、アデレード・アダムス(ゲイル・ロビンス)、フランシス・フライヤー(ディック・ウェッソン)、ヘンリー・ミラー(ポール・ハーヴェイ)
挿入歌:1.The Deadwood Stage 2. I Can Do Without You 3. Black Hills of Dakota 4. Just Blew In From The Windy City 5.A Woman's Touch 6. Higher Than a Hawk  7. 'Tis Harry I'm Planing to Marry 8. Secret Love(シークレット・ラブ)
ドリス・デイ主演のミュージカル。
男勝りの女ガンマン、カラミティ・ジェーンがワイルド・ビル・ヒコックに恋をして変わって行く様子をコミカルに描く。(2004.6)

録画で久しぶりに見る。
テンポよく、陽気で、カラフルで楽しい映画。後半は、少女マンガのような展開になる。
カラミティのドリス・デイがいい。ハワード・キールも、役柄のせいもあるが「アニーよ銃をとれ」よりずっとよかった。見終わっても挿入歌をほとんど全部覚えていた。(2021.5)

シェーン Shane
1953年 アメリカ 118分
監督: ジョージ・スティーブンス
出演: シェーン(アラン・ラッド)、スターレット(ヴァン・ヘフリン)、マリアン(ジーン・アーサー)、ジョーイ(ブランドン・デ・ワイルド)、 ウィ ルソン(ジャック・パランス)、クリス(ベン・ジョンソン)、ライカー(エミール・メイヤー)
ワイオミングの開拓地に現れた流れ者のガンマン、シェーン。
彼と開拓民一家との触れあいが大自然をバックに描かれるのだが、夫(ヘフリン)、妻(アーサー)、少年(デ・ワイルド)に対し、それぞれ違った微妙な危う さを持って接せざるを得ないところに、シェーンの宿命のようなものが感じられる。
対立する牧場主が雇った黒づくめの殺し屋ウィルソンとの対決は、西部劇屈指の名決闘シーンである。
ラストシーンは、ヒーローを呼ぶ少年の、天にまで届くのではないかと思われるほどの澄み切った声の高さが感動を呼ぶ。(2003.2)


大砂塵 Johnny Guitar
1953年 アメリカ 109分
監督:ニコラス・レイ
主題曲:「ジャニー・ギター」唄:ペギー・リー
出演:ヴィエンナ(ジョーン・クロフォード)、ジャニー・ギター[ローガン](スターリング・ヘイドン)、エマ(マッセデス・マーケンブリッジ)、ダンシ ング・キッド(スコット・ブラディ)、ジョン・マッカイヴァー(ワード・ボンド)
高校時代に初めてテレビで見た時は愕然とした。両親から「歌はいいけど映画はつまらないよ。」と言われたにも関わらず、原題から、ギターを持った渡り鳥の ガンマンがかっこよく活躍して去っていく話だと信じて疑わなかったからだ。
何年もたってから二度目に見た時は覚悟ができていたし、だいぶ屈折した見方もできるようになっていたので、女同士の戦いをわくわくしながら楽しんだ。マー ケンブリッジが憎しみに取り憑かれた女を怪演している。(2004.6)

このひと言:「金や銀に血まなこになる男がいる。土地や牛に夢中になる男もいる。酒と女が好きだという男もいるだろう。だが、男が真っ先に手を出したの は、一本の煙草と一杯のコーヒーだった。」(ジャニー・ギター)

叛逆の用心棒 The Stranger Wore a Gun
1953年 アメリカ 82分
監督:アンドレ・ド・トス
出演:ジェフ・トラヴィス(ランドルフ・スコット)、ジョジー(クレア・トレヴァ)、ジュールズ・ムレット(ジョージ・マクレディ)、カース(リー・マー ヴィン)、スレイガー(アーネスト・ボーグナイン)、ジェーソン・コンロイ(ピエール・ワトキン)、シェルビー・コンロイ(ジョーン・ウェルドン)、ジェ イク(コンロイの御者)、デガス(アルフォンソ・ベドヤ)、ショーティ(ジョセフ・ヴィタール)
南北戦争中、トラヴィス中尉は、南軍のカントレル少佐 の命を受け、ローレンスの町にスパイとして潜入し、軍隊を手引きする。が、実は軍から離れゲリラとなっていたカントレルは、暴虐無人な振る舞いを行い、嫌 気が差したトラヴィスは、彼と袂を分かつ。終戦後、南軍の元スパイとして追われる彼は、知り合いのジュールズがいるプレスコットの町へ赴く。そこでは、 ジュールズが、デガス一派を追い出して町を牛耳り、手下たちには駅馬車強盗をやらせていた。ジュールズは、トラヴィスに、町のコンロイ駅馬車中継所に潜入 し情報を流すよう依頼する。トラヴィスは探偵になりすまし、コンロイと駅馬車を警護する契約を交わす。彼は、ジュールスに偽の現金輸送の情報を流し、さら に、彼と敵対するデガスにも同じ情報を伝え、彼らが現場で鉢合わせをするよう仕組むのだった。
町にやってきたよそ者が、対立する二つの悪の陣営をかみ合わせて共倒れさせようと画策する、という話の展開を聞けば、黒沢明監督の「用心棒」(1961 年)を思い出すところだが、これは用心棒が作られるよりも前の映画。となると、出所は、用心棒の元ともいわれるハメットのハードボイルド小説「血の収穫」ではないかと思われる。(「血の収穫」はコンチネンタル探偵者の探偵 が主役だが、そのさらにその大元ともいえる中篇小説「新任保安官」は、派遣されてきた保安官が主役の現代西部ものである。)スコットが、探偵になりすます というあたりからもその気配は濃厚である。
「用心棒」をぱくって、「荒野の用心棒」「続・荒野の用心棒といったマカロニ・ウエスタンが作られ、さらに「ラストマン・スタンディング」などのアメリカ映 画がつくられたことは周知の事実だが、「用心棒」のできる8年も前に、ランドルフ・スコット主演で「血の収穫」ネタの 西部劇が作られていたというのは、西部劇ファンとしてうれしい発見だった。
ジュールズの手下役でリー・マーヴィンとアーネスト・ボーグナインが顔を見せている。ランドルフ・スコットは、知恵が回るだけでなく、銃の腕もたしか。ス コットの口八丁にしてやられる単細胞のボーグナインは憎めない。マーヴィンは、いつものように危ないチンピラを演じて良い味を出している。スコットに背後 から銃を向けられ、が、彼が丸腰の自分を撃たず、決闘に持ち込むつもりであることを知って、振り向きざまにやりと笑うところはやはりいい。そのあとあっさ り撃ち殺されるのもいい。
ほかに、「駅馬車」のクレア・トレヴァがスコットを慕う女賭博師役で出演。スコットを追って来な がら、道中駅馬車でいっしょだったテガスとことさら仲良さげに見せたり、駅馬車会社の若い娘シェルビーにやきもちを焼いたりと、鉄火肌でありつつもいじら しい女性を演じている。
カントレルの部下だったジュールズを演じるマクレディ、終始へらへらとしながら人を食ったようなメキシコ人の悪党デガスを演じるベダヤの二人の悪玉の対照 もおもしろい。
唐突なもの投げカットが目に付く。出演者らがたいまつや、花瓶や、ランプや、バケツをやたらと投げる。それも画面に向かって。これは、公開当時3D映画と して上映されたためらしいのだが、とってつけたように挿入されるのが、変だった。(2009.4)


ブラボー砦の脱出 ESCAPE FROM FORT BRAVO
1953年 アメリカ 98分
監督:ジョン・スタージェス
出演:<北軍>ローパー大尉(ウィリアム・ホールデン)、ビーチャー中尉(リチャード・アンダーソン)、オーウェン大佐(カール・ベントン・リード)、ベイリー(ジョン・ラプトン)、
<南軍捕虜>マーシュ大尉(ジョン・フォーサイス)、キャンベル(ウィリアム・デマレスト)、ヤング(ウィリアム・キャンベル)、
カーラ(エリノア・パーカー)、アリス(ポリー・バーゲン)、ワトソン(ハワード・マクニア)
メスカレロ族

南北戦争中。北軍のブラボー砦には南軍の捕虜が収容されていた。ローパー大尉は、脱走した南軍捕虜のベイリーを捕らえ、馬に乗せずに縄で引いて歩かせて帰還する。その非情なやり方は、南軍捕虜だけでなく北軍からも非難されたが、本人は気にかける様子はない。
砦の指揮官オーウェン大佐の娘アリスとその友人のカーラが砦を訪れる。アリスは砦に駐屯するビーチャー中尉の婚約者である。カーラは、実は南軍のマーシュ大尉の恋人で、彼ら捕虜の脱走計画の手助けをするためにやってきたのだった。
秘密裏に脱走計画を進めつつ、それを隠すためカーラはローパーの気を引こうとする。堅物のローパーもカーラの魅力になんなく陥落するが、一方、カーラもローパーに惹かれてしまうのだった。その気持ちを振り払うように、カーラは、脱走するマーシュらの一行に加わる。カーラにだまされたことを悟ったローパーは一行を追う。が、彼らの行く手には、アパッチ族の一派であるメスカレロ族が待ち受けていた。
前半、南軍捕虜脱走計画が進む一方、堅物のローパー大尉とカーラとの男女のやりとりが描かれ、後半は、荒野の窪地に追い詰められた南軍捕虜と追跡者のローパー大尉らの過酷な戦いが描かれる。戦いなれしたメスカレロ族が情け容赦なく窪地に降らせる矢の雨は、迫力がある。
巨大な奇岩がそそり立つ西部の風景も見ごたえがある。(2021.8)


悪の花園 Garden of Evil
1954年 アメリカ 101分
監督:ヘンリー・ハサウェイ
脚本:フランク・フェントン
出演:フッカー(ゲイリー・クーパー)、リー・フラー(スーザン・ヘイワード)、フィスク(リチャード・ウィドマーク)、ビンセンテ(ビクトル・マヌエル・メンドゥーサ)、デイリー(キャメロン・ミッチェル)、ジョン・フラー(ヒュー・マーロウ)、リタ・モレノ(酒場の歌手)

DVDで何十年ぶりかで見る。
メキシコの町ミゲル。フッカーとフィスクは、リー・フラーという女性から護衛の仕事を持ちかけられる。彼女は、金鉱でけがをして動けない夫を連れ帰りたいが、それにはアパッチのいる土地を抜けていかなければならないという。さらにビンセンテとデイリーという二人の男が加わり、5人は危険な旅に出る。一人の美女と4人の男の一行の旅は、道中、アパッチの襲撃だけでなく、色と欲の入り混じった男女間のトラブルにも見舞われるのだった。
岩山の崖っぷちの道の途切れたところを、一行の面々が馬で跳びこして行くのだが(行きは、一人一人を下からの大あおりで撮るショットがある)、ここが安全な場所と危険な場所の境目という感じでよい。
フィスクは、ギャンブラーで詩人。彼にトランプをカットしろと言われたメキシコ人のビンセンテがトランプを引きちぎるところは愉快。
タイトルは、金鉱のことだそうだが、悪女というわけではないのに、美貌ゆえに男たちを不幸にするリーのことも表しているのだろう。が、彼女の魅力はいまいち私にはわからず。
ウィドマークは、撮影現場にあまりいられなかったのか、一行の5人のうち、4人はよくいっしょに映っているのに、ウィドマークだけいないカットが多くて、あれ、フィスクはどこにいるの?
と思うことがしばしばあった。
「地球が金でできていれば、人は一握りの土で死ぬだろう」「夕陽が沈む。毎日だれかを連れて。今日は俺の番だ。」など、印象に残るかっこいいセリフが出てくる。(2021.3)

ヴェラクルス  Vera Cruz
1954年アメリカ 94分
監督:ロバート・アルドリッチ
出演:ベンジャミン・トレーン(ゲーリー・クーパー)、ジョー・エリン(バート・ランカスター)、
マリー・デュヴァル(デニス・ダーセル)、アンリ・デラボルデ公 爵(シーザー・ロメロ)、ダネット大尉(ヘンリー・ブランドン)、マクシミリアン皇帝(ジョージ・マクレディ)、
ドンネガン(アーネスト・ボーグナイン)、テックス(ジャック・イーラム)、リトル・ビット(ジェームズ・マカリオン)、アビリーン(ジェームズ・シーイ)、ピッツバーグ(チャールズ・ブロンソン)、バラッド(アーチー・サヴェージ)、ニナ(サリタ・モンティール)
南北戦争直後のメキシコで、元南軍大佐のクーパーと無法者のランカスターが、伯爵令嬢と黄金の護送を引き受ける。二人は対立しつつも、次第に相手を認め合 うようになるが。
全身黒づくめのランカスターが、白い歯をむき出してにっと笑うのがたまらない。
主演のクーパーは食われまくり、と言われるが、二人揃っての好対照といえる。
ランカスターのガンさばきとラストの決闘シーンに着目。(2003.2)

久しぶりにDVDで見直す。短い中に無駄なくおもしろさがいっぱい詰まっている。ジョーとトレーンのやりとりはどれもいい。ジョーの親の仇にして育ての親のエースの話が何度も出てくるのがいい。今見ると、ボーグナインのほかにも、イーラム、ブロンソン、ブランドンと西部劇の顔が揃っている。ガトリング銃も出てきた。(2020.5)

帰らざる河 The River of No Return
1954年 アメリカ 90分
監督:オットー・プレミンジャー
主題曲:「帰らざる河」ケン・ダービー作詞 ライオネル・ニューマン作曲、マリリン・モンロー唄
出演:ケイ(マリリン・モンロー)、マット・コールダー(ロバート・ミッチャム)、マーク(トミー・レッティグ)、ハリー・ウェストン(ロリー・カルホー ン)
生き別れた9才の息子マークを訪ねて西部の町にやってきたマット。息子と再会を果たした彼は、酒場の歌姫ケイと知り合う。最初はケイを軽く見ていたマット だが、次第に彼女に惹かれていく。が、ケイに思いを寄せる無法者のハリーはそれが気にくわない……。
ケイ、マット、マークの3人が、「帰らざる河」と呼ばれる急流を筏で下るシーンに、はらはらどきどきさせられる。
真っ赤な下着を身にまとい、切なげな表情で「帰らざる河に消えた恋人を想う」という内容の主題歌を歌うモンローは、とってもセクシーでキュート。 (2004.6)


荒野の追跡 Ride Clear of Diablo
1954年 アメリカ 80分
監督:ジェシー・ヒップス
原作:エリス・マーカス
脚本:ジョージ・ザッカーマン
出演:クレイ・オマラ(オーディ・マーフィ)、ホワイティ・キンケイド(ダン・デュリエ)、ローリー・ケニヨン(スーザン・キャボット)、フレッド・ケニヨン(ポール・パーチ)、トム・メレディス(ウィリアム・プーレン)、ジェド・リンガー(ラッセル・ジョンソン)、トム・ロウェリー)ジャック・イーラム、ケイト(アビー・レイン)、ムーアヘッド牧師(デンバー・パイル)

オーディ・マーフィ主演の西部劇をほとんど見たことがないと言ったら、知人に勧められた。
鉄道会社に勤めるクレイ・オマラは、故郷にいる父と弟が牛泥棒に襲われ、殺されたという知らせを受け取る。急ぎ帰郷したクレイは、町の保安官ケニヨンと知らせをよこした弁護士メレディスに会うが、犯人はわからなかった。彼は、保安官助手となって、犯人探しを始める。
早撃ちで悪名高い無法者のキンケイドを逮捕して連れ帰ったことで、クレイは町の人の注目を集める。キンケイドはクレイの仇ではなく、彼はクレイに捕らえられたにも関わらず、自分より早く銃を抜いた若者のクレイに好感を抱くようになる。クレイは、ケニヨンの姪ローリーと知り合い、二人は次第に惹かれ合っていく。しかし、実は、悪者はケニヨンとメレディスで、ケニヨンはロウェリー牧場のトムらと結託してオマラの牛を盗ませ、彼らを追うオマラ父子をメレディスが撃ち殺したのだった。
銃の腕がたつ、きりっとした若者を演じるオーディ・マーフィもかっこういいだが、なんといっても、豪放な一匹狼のお尋ね者キンケイドを演じるダン・デュリエが魅力的だ。「ヴェラクルス」のジョー・エリン(バート・ランカスター)と並ぶくらいいいと思ったら、どちらも1954年の製作で、こういう無法者像が流行っていたのかもしれない。
話の展開がわかりやすくてテンポがよい。最初の方、墓場からの道を牧師とクレイが下りてきながら話すところはスクリーンプロセスの背景が見事だと感じた(普段はそんなこと考えないのだが)。パーティで、ローリーとクレイが互いに相手に気付きながら、目を合わせるまで気づかないふりをするところなども、恋するふたりの気持ちが出ていていい。クレイとキンケイドの会話や、キンケイドと昔の女ケイトとのやりとりなど、セリフも気が利いている。撃ち合いシーンも迫力がある。これぞ良質な西部劇というものだ。(2021.4)

星のない男 Man Without a Star
1955年 アメリカ 89分<
監督:キング・ヴィダー
主題歌:「星のない男」フランキー・レイン唄
出演:デムプシー・レイ(カーク・ダグラス)、アイドニー(クレア・トレヴァ)、ジェフ(ウィリアム・キャンベル)、リード・ボウマン(ジーン・クレー ン)、スティーブ・マイルド(リチャード・ブーン)
「人には星が決まっている。みんなそれを拠り所にして生きている。」というデンプシーだが、彼自身は自分の星を持たずさすらって生きる男。タイトルはそう した彼の生き方を表している。
辛い過去の経験から他人と関わることを避けてきた流れ者が、牧場同士の争いに巻き込まれ、それまでの生き方を改めて男を見せる。彼にきつい言葉を投げかけ 励ます西部の鉄火女を「駅馬車」のクレア・トレヴァが好演。(2004.6)

このひと言:「有刺鉄線はきらいだ。それを使う奴はもっと嫌いだ。」(デムプシー)

六番目の男 Backlash
1955年 アメリカ 85分
監督:ジョン・スタージェス
出演:ジム・スレーター(リチャード・ウィドマーク)、キャリル・オートン(ドナ・リード)、ジョニー・クール(ウィリアム・キャンベル)、ボニウェル (ジョン・マッキンタイア)、レイク軍曹(バートン・マクレーン)、トム・ウェルカー(ジョージ・パターソン)、トニー・ウェルカー(ハリー・モーガ ン)、ジェフ・ウェルカー(ロバート・J/ウィルク)
インディアンに5人の男が襲われ、騎兵隊員が彼等を埋葬したが、中に二人身許不明の者がいた。
父の行方を追う男ジム・スレーターと、夫の行方と夫が持っていた金を追う女キャリル・オートンは、5人の男の中に捜し人がいるのではないかとやってきて、 墓の近くで知り合う。が、ジムは、その場で一人の男に襲われ、返り討ちにする。襲ってきたのはウェルカーという男で、ジムはその兄弟から敵として狙われる はめになる。
5人の男の中に父や夫がいたかどうか、真相を知りたいジムとキャロルは、交易所に騎兵隊のレイク軍曹を訪ねる。が、5人を埋葬したレイク軍曹は何故か言葉 を濁す。現場には6番目の男がいて、そいつが仲間を裏切り、金を持って逃げたということがわかってくる。
果たして6番目の男は誰なのか。やがて、意外な真相が暴かれる。複雑な思いを胸に父を探す孤高のガンマン、ウィドマークがかっこいい。
当初は計算高そうだったキャロルは、徐々にジムに惹かれていく。ジムの肩の傷の手当てをするシーンでは、キスを交わすまでのお互いに好意剥き出しの二人の 様子がたいへんいい。(2008.7)

ひと言:「男には知らなければならないこととやらなければならないことがある。そして、それをするには一人の方がいい。」(ジム・スレーター) "There's things a man has to know and has to do, and it's best that he does them alone."

捜索者 The searchers
1956年 アメリカ 119分
監督:ジョン・フォード
出演:イーサン(ジョン・ウェイン)、マーティン(ジェフリー・ハンター)
ローリー(ベラ・マイルズ)、デビー(ナタリー・ウッド)、クレイトン(ワード・ボンド)、アロン(ウォルター・コーイ)、マーサ(ドロシー・ジョーダ ン)、トニー・グリーン(パット・ウェイン)、スカー(ヘンリー・ブランドン)
元南軍大尉のイーサンが久しぶりに故郷を訪れると、兄一家はコマンチ族の襲撃を受けていた。兄のアロンとその妻マーサ、長男と長女は殺され、幼い姪のデビーは連れ去られてしまった。
イーサンは、インディアンとの混血の若者マーティンとともに、デビーを追う旅に出る。5年間の捜索の後ついに発見するが、しかしコマンチに育てられた彼女はすっかりコマ ンチの娘になっていた。
2人に逃げろと伝えるため、広大な砂漠の丘を一気に駆け下りてくるデビーを捕らえたロングショットが見事だった。
デビーを殺そうとするイーサンと、それを必死で止めようとするマーティン。
映画全体は沈んだ暗いトーンで覆われている。未熟で率直なマーティンの存在が明るい光の部分となって救いをもたらすが、同時にそれはより一層イーサンのも つ影の部分を際だたせる。
「ご飯くらい食べてから行けばいいのに」とつい思ってしまったラストシーン。痛いほどの孤独を背負って再び即座に旅立つイーサンの後ろ姿が印象的だ。 (2004.6)


七人の無頼漢 Seven Men from Now
1956年 アメリカ 78分
監督:バット・ベティカー
脚本:バート・ケネディ
出演:ストレード(ランドルフ・スコット)、マスターズ(リー・マーヴィン)、アニー・グリー(ゲイル・ラッセル)、ジョン・グリー(ウォルター・リー ド)、パイト・ボーディン(ジョン・ラーチ)、クレタ(ドナルド・バリー)、騎兵隊中尉(スチュワート・ホイットマン)
英語版のDVDで見た。
町の銀行が7人の強盗に襲われ、妻を殺された元保安官ストレードは犯人を追跡する。彼は幌馬車でカリフォルニアへ向かうグリー夫妻と知り合い、道連 れとな る。やがて、ストレードを知るガンマン、マスターズと相棒のクレタが一行に加わるが、マスターズの狙いは銀行強盗が持ち去った2万ドルの金だった。
若妻のアニーが、コーヒーポットを持って、”More coffee?”と訊ねながら男たちの間を往き来してコーヒーをついで回るシーンが繰り返されるのが妙に印象的だ。その彼女を、3人の男、夫のジョン、妻 を亡くしたばかりのストレード、悪漢マスターズが、それぞれの思惑でみつめている。
比較的ゆったりと道中が描かれる前半とは対称的に後半は一気に盛り上がる。
2度に渡る岩場での撃ち合いがすばらしい。ランドルフ・スコットが入り組んだ岩の隙間に入り込み、岩と岩の間から見え隠れする相手の姿を捉えて撃つ。
しかし、この映画でしびれたのは、なんと言ってもリー・マーヴィンの悪漢ぶりだった。腕にガーターを巻き、薄ら笑いを浮かべた、めちゃくちゃ早撃ちの非情 なガンマン。銃を逆向きにホルスターに差した二丁拳銃でもって酒場で早抜きの練習をして、居眠りをしていたバーテンを驚かすところなどのりにのっている。 協力するとみせかけておいた強盗団のボスをあっさり裏切り、死んだ相棒が銜えていた煙草をとって自分の煙草に火をつける。
そしてストレードとの決闘。ストレードは足を打たれ、ライフルを杖代わりにして立っている。マスターズは金の詰まった箱から離れ、自信たっぷりで相手と向 き合う。次の瞬間、銃声がして「信じられない」という表情になる。(ストレードが銃を撃つ瞬間は見せない。)マスターズは驚愕の表情のまま倒れる。倒れな がら金箱の錠に手をかけ、最後まで金に執着する。いい。(2007.10)


必殺の一弾 THE FASTEST GUN ALIVE
1956年 アメリカ 92分
監督:ラッセル・ラウズ
出演:ジョージ・テンプル/ジョージ・ケルビー・ジュニア(グレン・フォード)、ドーラ(ジーン・クレイン)、ヴィニー・ハロルド(ブロデリック・クロフォード)、ハーヴェイ・マクスウェル(アリン・ジョスリン)、ルー・グローヴァー(町のリーダー格。リーフ・エリクソン)、テイラー・スウォープ(ジョン・デナー)、エリック・ドゥーリトル(ラス・タンブリン)、ディンク・ウェルズ(ノア・ベアリー・ジュニア)、ボビー(少年。クリストファー・オルセン)

昔のテレビ放映吹き替え版のDVDコピー版を知人にいただいて見る。
銃の早撃ちを競う西部の男たち。無法者のヴィニーが、早撃ちとして名を上げる。クロスクリークの町で雑貨商を営むジョージは、ヴィニーのうわさを聞くと、いてもたってもいられなくなって、実は自分がものすごい早撃ち名人であることを町の人たちに明かす。宙に放った2枚の金貨の真ん中を打ち抜くという早撃ちの技を見せる。が、早撃ちの男がいると知ったら、腕を競いたがるガンマンがやってくる。日曜日、教会に集まった町の人たちは、町を出ていくというジョージを引き留め、皆に箝口令を敷く。が、仲間と町にやってきたヴィニーは、町の少年ボビーからジョージのことを聞き、早撃ちナンバーワンを決めるため、ボビー一家を人質に決闘を申し込んでくる。
ジョージは、かつて凄腕で知られた安官の息子で、早撃ちの腕を猛訓練させられたせいで誰よりも早く抜き撃ちをすることができるが、実は一度も人を撃ったことがなかった。恐怖のあまり、決闘に応じることができなかったジョージだが、町のリーダー格で、ジョージを町に引き留めようと言い出したグローヴァ―が、ジョージの代わりに決闘に赴くと言うにあたって、ジョージは戦う決心をする。
何度も引っ越しを繰り返し、また同じことをするのという妻の言葉にどんな暗い過去を持っているのか、今までどれだけの人を殺してきたのかと思ったら、人を撃ったことがないから怖いという理由で決闘に及び腰な早撃ちのガンマンだったという設定、なかなか珍しくて興味深かった。ジョージについて教会で話し合う町の人たちのやりとりもアメリカっぽくてよかった。
途中ダンスパーティのシーンで、町の若者役のラス・タンブリンが踊る。けっこう長い間、一人で踊りまくって、ダンスを披露する。(「略奪された七人の花嫁」が1954年、「ウエストサイド物語」が1961年である。)(2017.12)

誇り高き男 The Proud Ones
1956年 アメリカ 94分
監督:ロバート・D・ウェップ
製作:ロバート・L・ジャックス
主題曲「誇り高き男」ライオネル・ニューマン作曲、スリー・サンズ演奏
出演:カス・シルバー(ロバート・ライアン)、サッド・アンダーソン(ジェフリー・ハンター)、サリー(ヴァージニア・メイヨ)、サッド・アンダーソン(ジェフリー・ハンター)、ジェイク(看守。ウォルター・ブレナン)、ジム(保安官助手。アーサー・オコンネル)、
バレット(ホテル・酒場経営者。ロバート・ミドルトン)、ディロン(ジョージ・マシューズ)、パイク(殺し屋。ケン・クラーク)、チコ(殺し屋。ロドルフォ・アコスタ)
バーロー医師(エドワード・プラット)、ビリー(酔っ払い。ポール・E・バーンス)
失明の恐怖にさらされながら、かねてから因縁のあった悪漢一味に立ち向かう保安官と、彼を父の仇とね らいながらも彼の生き方に心動かされていく若者。 対立しながらもやがて友情が芽生えていく歳の離れた二人の男を、ロバート・ライアンとジェフリー・ハンターが演じている。(2004.6)
NHKBSで放映したものを録画して見なおす。
牛の群れが到着し、活気づく町を舞台に、保安官と酒場の経営者一味との対決を描く。
カス・シルバーが保安官を務める町は好景気に沸き物価も急上昇、新しい酒場が建設される。が、その経営者バレットはカスにとって暗い因縁のある男だった。以前いた町で、カスは、バレット一味と対立していたが、恋人サリーに説得され対決を避けて逃げてしまったのだ。
牛を追ってきたカウボーイの一団の中には、サッド・アンダーソンという若者がいた。彼は、かつてカスに父のジョンを殺され、仇であるカスを憎んでいた。
カスは、サッドの父はバレットが雇った殺し屋で自分を殺そうといていたと告げるが、サッドはカスの言うことが信じられない。しかし、カスは、サッドを気にかけ、保安官事務所の仕事を世話し、保安官助手としての心得や銃の撃ち方を教示してやる。
そんな中、カスは、頭のケガが元でときどき目が見えなくなる症状に見舞われる。
カスの目が見えなくなることとも関係してか、音がポイントとなる。パイクとチコがカスを襲おうとするとき、チコは、再度ウォークを歩く拍車の音で位置を知られることを避けるため拍車を外す。また、ジェイクが保安官事務所の入口で撃鉄を立ててカスの反応をためす。このあと、チコは丸腰を装いつつ、隠し持っていた銃の撃鉄を立てる音でカスに悟られ、撃たれる。同じことがサッドの父ジョンとカスの間にも起こったであろうことが暗示される。納屋での撃ち合いでも、撃鉄を立てる音が何回か出てくる。そしてラストでは、サッドが、バレットが隠し持っていた銃の撃鉄を立てる音を耳にして、反撃するのだ。
失明の不安を抱えつつも失った誇りを取り戻そうとする保安官と、彼を信じていいかどうか迷う若者、初めての子どもの誕生を控えて仕事を辞める保安官助手、保安官に惚れている商売女のヴァージニア・メイヨはいいけどあまり店があなく、飄々とした老人の看守を演じるブレナンはでも殺されてしまう、など、「リオ・ブラボー」と似ているようで似ていない、どことなく歯切れが悪くすっきりしない感じが逆にライアン主演作らしい味となっている西部劇、といえばよいか。(撃鉄の音の件も、話をしっかり作り込んでいいるのに、わかりづらい。)
チョイ役では飲んだくれのビリーが地味ながらいい。酔っぱらって保安官事務所の牢屋で一夜過ごした後、保安官に小銭をねだって恵んでもらうのがパターンとなっているが、酔って騒いだふりをして、殺し屋がねらっていることをカスに告げるなど役に立つこともしている。ラストはサッドがビリーに小銭をやることで、保安官が代替わりしたことが示される。(2023.7)

このひと言:「男は誇りに生きるものだ。おれは運がいい。失った誇りを取り戻すチャンスがあるんだ。」(カス・シルバー)

「夜は暗がりを歩き、昼間は太陽を背にする」(カス・シルバー)


OK牧場の決闘 Gunfight at the O.K.Corral
1957年 アメリカ 122分 
監督:ジョン・スタージェス
主題歌:「OK牧場の決闘」ネッド・ワシントン作詞、ディミトリ・ティオムキン作曲、唄フランキー・レイン
出演:ワイアット・アープ(バート・ランカスター)、ドク・ホリディ(カーク・ダグラス)、ローラ(ロンダ・フレミング)、ケイト(ジョー・バン・フリー ト)、ヴァージル・アープ(ジョン・ハドソン)、ジョニー・リンゴー(ジョン・アイアランド)、アイク・クラントン(ライル・ベトガー)、ビリー・クラン トン(デニス・ホッパー)、エド・ベイリー(リー・ヴァン・クリーフ)、トム・マクローリー(ジャック・イーラム)
荒野の決闘」と同じく西部史に残る「OK牧場の決闘」の顛末を描いた娯楽アクション。
ランカスター演じるワイアット・アープは、精悍で男らしく、肺病を患っているはずのドク・ホリディも元気だ。アープ兄弟とドク・ホリディが4人並んで決闘 に赴く場面はわくわくする。
ワイアットは、作家バントラインから贈呈されたと言われるめちゃくちゃ銃身の長いコルトを撃って見せている。
フランキー・レインがろうろうと歌い上げる主題歌が耳に心地よい。(2004.6)


決断の3時10分 3:10 to Yuma
アメリカ 1957年 92分
監督:デルマー・デイヴィス
原作:エルモア・レナード
出演:ベン・ウェイド(グレン・フォード)、ダン・エヴァンス(ヴァン・ヘフリン)、エミー(フェリシア・ファー)、アリス(レオラ・ダナ)、アレック ス・ポッター(ヘンリー・ジョーンズ)、チャーリー・プリンス(リチャード・ジャッケル)、バターフィールド(ロバート・エムハート)、ボブ・ムーン (シェリダン・コメレート)
駅馬車を襲った無法者一味のリーダー、お尋ね者のベン・ウェイドが逮 捕され た。駅馬車会社のバターフィールドは、彼をユマ刑務所に護送することを提案し、町の有志を集めて、3時10分発ユマ行きの汽車に乗せるため、彼を駅のある 町コンテンションまで連行することとなった。干ばつが続き苦しい生活を強いられていた牧場主のダン・エヴァンスは、200ドルの報酬と引き換えに護送隊に くわわる。
2007年にリメイクされた作品を先に見てから見た。大筋はいっしょだが、 リメイクを観たあとだと、こちらはだいぶコンパクトにてきぱきと話が進む印象を受ける。グレン・フォード演じるウェイドは、無法者と言っても駆け引きです む話ならそれにこしたことはないが、どうしてもだめなら銃にものを言わせる、と言った感じの政治家タイプのボス。
リメイク作品では、コンテンションまでの旅のあいだに、ウェイドとエヴァン スがお互いのことを知っていくという展開だったが、こちらは旅というほどのものではなく、コンテンションの町にはあっという間についてしまい、汽車を待つ ホテルの一室でのふたりのやりとりに重点が置かれている。
ウェイドは、兄の仇として自分を襲った若者をエヴァンスが手際よく押さえる のを見て彼に一目置き、いろいろと駆け引きを試みる。
結局、エヴァンスはたった一人でウェイドを駅まで連れて行 くことになる。
待ちに待った汽車が到着。邪魔者のエヴァンスを撃つため「伏せてくださ い、ボス!」と叫ぶ手下を前に、ウェイドがとった行動に思わず拍手を送りたくなる。リメイクとは違う展開だが、こちらの方が自然な感じがする。
最後に雨が降る。干ばつを終わらせる雨である。夫の身を案じて駆けつ けたア リスが天を仰ぐ。その姿が、町を出る汽車からの見た目で遠ざかる。フランキー・レインのキレのいい歌声がかぶさる。とてもいいラスト・シーンだ。 (2008.2)

関連作品:「3時10分、決断のとき」(2007年)

無法の王者ジェシイ・ジェームズ The True Story of Jesse James
1957年 アメリカ 93分
監督:ニコラス・レイ
出演:ジェシイ・ジェームズ(ロバート・ワグナー)、フランク・ジェームズ(ジェフリー・ハンター)、ジー(ホープ・ラング)、サミュエル夫人(アグネ ス・ムーアヘッド)、コール・ヤンガー(アラン・ヘイルJR)、レミントン(アラン・バクスター)、ベイリー(ジョン・キャラダイン)、ドクター・サミュ エル(バーニー・フィリップス)、ジム・ヤンガー(ビフ・エリオット)
ニコラス・レイ監督による「地獄への道」のリメイク。
回想形式で、西部の無法者ジェシー・ジェームズの生涯を描く。(2004.6)

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