みちのわくわくページ
時間

○タイムトラベルの本  アンソロジー


<出版年順>
タイムトラベルSF傑作選(星敬編) タイムトラベラー(伊藤典夫・浅倉久志編)
 
時の娘 ロマンティック時間SF傑作選(中村融編) 
不思議の扉 時をかける恋、不思議の扉 時間がいっぱい、[時間SF傑作選]ここがウィネトカなら、きみはジュディ(大島望編)
時を生きる種族 ファンタスティック時間SF傑作選(中村融編)

タイムトラベルSF傑作選
星敬編 集英社文庫(1985年)
☆発明奇譚 横田順彌著
タイムマシンづくりにはげんだ博士のおとぼけ談。
☆時間の輪 石原藤夫著
タイムマシン作りに励む博士がみつけた直径ゼロの時間の輪。
☆インタビュー 森下一仁著
時空連続体干渉装置によって「町」ごと「干渉」された住民たちへのインタビュー。
☆親殺しのパラドックス 石川喬司著
自殺の方法として、過去へ戻って「親殺し」を企てた娘はどうなったか。
☆ABCとXYZ 眉村卓著
若い頃の自分にあって現在の妻との結婚を思い止まるように言ったらどうなるか。
☆レーシング・ドライバーの自画像 高齋正著
レース中の自分のベスト・ショットを撮るため、過去に戻ったレーサー。
☆決定的瞬間 福島正実著
第三次世界大戦を引き起こしたのは何処の国か? 歴史の謎を探るため、過去に旅立った未来人はそこで思いがけない真実に遭遇する。
☆敵艦見ユ 広瀬正著
1905年、日本艦隊とロシアのバルチック艦隊が対馬海峡で海戦。日本艦隊の旗艦三笠艦上にタイムトラベルを敢行した航時研究所の所長と研究員は、歴史に 干渉せず、世紀の対戦を目にすることができるのか。
☆幼児誘拐作戦 小松左京著
第三次世界大戦勃発を阻止するため、時間管理局員が受けた指令は、乳幼児の誘拐だった。
☆ペニシリン一六一一大江戸プラス 光瀬龍著
江戸時代にペニシリンを持ち込んだ犯人を追うタイムパトロール員の活躍。普段は中小企業でさえない社員として働いているのがなんともおかしい。
☆白村江 豊田有恒著
日本書紀に記されたタイムトラベラーとおぼしき人物の描写。日本人のタイムパトロール員大月雄は、不本意ながらもコーカサイド(白人)の同僚ヴィンス・エ ベレットと手を組んで違反者を追うことに。二人は、大化の改新後の中大兄皇子ら一族の後継者争いを間のあたりにしたあと、朝鮮半島の百済に飛んで白村江の 戦いで、歴史改変をもくろむ犯人を発見する。
なにかにつけて白人のエベレットに反感を抱く大月の東洋人としてのプライドの高さが今となってはなつかしい。(2006.10)



タイムトラベラー −時間SFコレクション−
伊藤典夫・浅倉久志編 新潮文庫 1987年
時間ネタを扱ったSFアンソロジー。
☆しばし天の祝福より遠ざかり Absent Thee from Felicity Awhile...
ソムトウ・スチャリトクル作(1981) 伊藤典夫訳
高度な文明を持つ異星人の実験材料にされた地球で、人々は同じ一日を何度も何度も繰り返すことになってしまった。
☆時間層の中の針 Needle in a Timestrack
ロバート・シルヴァーバーグ作(1983) 山田順子訳
時間旅行に出かけた観光客が、過去に戻って、ちょこっと歴史を変えて現代に戻ってくる、そのせいで現代でちょこっと何かが変わる。そんな”移層”と呼ばれ る現象に、人々は不快と思いつつも慣れてしまっていたのだが。
☆遙かなる賭け The Long Chance
チャールズ・シェフィールド作(1977) 伊藤典夫訳
不治の病の恋人を冷凍睡眠カプセルに入れ、未来への長い長い旅に出た男の話。遠大なラブストーリー。
☆ミラーグラスのモーツァルト Mozart in Mirrorshades
ブルース・スターリング&ルイス・シャイナー作(1985) 伊藤典夫訳
利益を求め続ける人類は、過去の世界の資源までも搾取するようになっていた。
パンクなモーツアルトに、みだらなマリー・アントワネットが登場。

☆ここがウィネトカなら、きみはジュディ If This Is Winnetoka, You Must Be Judy
F・M・バズビイ作(1974) 室住信子訳
個人的には、本短編集でもっとも印象深かった作品。
主人公は、意識と実際の時間軸がかみ合わず、タイムスキップを繰り返して、細切れに順不同の人生を生きる。
荒唐無稽と言われればそれまでだが、「1968年から70年の9月まではもうやった」などと言うことになったらどうなのか、考えるだけで頭がおかしくなりそうだが、想像力は大いにかきたてられる。

☆若くならない男 The Man Who Never Grew Young
フリッツ・ライバー作(1949) 伊藤典夫訳
時間が逆流する世界で、なぜか一人若くならない男の話。
☆カッサンドラ  Cassandra
C・J・チェリイ作(1978) 深町真理子訳
周囲の人間がすべて透けて見える中で、女は唯一実体を持った男に出会う…。
☆時間の罠 Time Trap
チャールズ・L・ハーネス作(1948) 浅倉久志訳
時間の輪に陥った世界を救うため、男は、気の遠くなるような抵抗を試みる。
☆アイ・シー・ユー I See You
デーモン・ナイト作(1976) 浅倉久志訳
場所、時間を問わずあらゆるシーンを覗き見できる機械が発明された。
☆逆行する時間  Redeem the Time
デヴィッド・レイク作(1979) 深町真里子訳
男は、タイムマシンで百年ほど後の未来に向かったはずなのに、着いたのは、百年前の過去だった。
人類は、こんなに律儀にきまりを守れるものなのだろうか。

☆太古の殻にくるまれて Incased in Ancient Rind
R・A・ラファティ作(1971) 浅倉久志訳
湿気に満ちた色のない地球で暮らす未来の金持ちたちの異様な晩餐会。
☆わが内なる廃墟の断章  Sketches Among the Ruins of My Mind
フィリップ・ホセ・ファーマー作(1973) 伊藤典夫作
時間は正常に流れていくのに、人々の意識だけが逆行していく。スタートレック(TVシリーズ)の脚本家が見せる悪夢のような世界。
☆バビロンの記憶 We Remember Babylon
イアン・ワトスン作(1985) 佐藤高子訳
アメリカの砂漠にバビロンの都が再現された。
大学の研究員グループのメンバーである男は、古代人の装いで調査に赴くが、やがて古代の都に魅せられていく。(2003.2)



時の娘 ロマンティック時間SF傑作選
中村融編 創元SF文庫(2009年)
時間旅行もの海外SF短編集。個人的には、「時が新しかったころ」がかなり好みである。(2010.8)
★チャリティのことづて A Massage from Charity
ウィリアム・M・リー作(1967年) 安野玲訳
アメリカ、マサチューセッツ州アンズタウンを舞台に、265年の時を経て交わされる少女と少年の心の交流を描く。熱病を患ったことがきっかけとなり、1700年の11歳の少女チャリティと1965年の16歳の少年ピーターは、テレパシーで交信ができるようになる。互いに相手の心を通して違う時代の様子を見ることもできる。魔女裁判にかけられるチャリティを、ピーターは町の古い資料を調べて助けようとする。
★むかしをいまに Backward, O Time
デーモン・ナイト作(1966年) 浅倉久志訳
交通事故で死んだ瞬間に「生まれ」、人生を逆に過ごしていく男サリヴァンの物語。この世界では、現象はすべて逆の因果律によって生じる。彼らにとって、私たちが過ごす通常の因果律(過去から未来へ向かう時間の流れ)はありえないものであり、サリヴァンは学生時代に大学の「授教」(教授を逆さにしてある)と架空の世界の因果律として語り合ったりもする。サリヴァンはどんどん若返っていく。逆に流れる時間についての小説はいろいろあるが、逆戻りの現象を描いてもそれ自体は実はそんなにおもしろくないというのが私の正直な感想である。しかし、本作品は、その徹底ぶりと、センチメンタルな感動と若干のおぞましさが入り交じった出会いがラストに控えている点で、興味深い。
★台詞指導 Double Take
ジャック・フィニイ作(1965年) 中村融訳
1960年代、映画のロケのスタッフが、撮影用に調達した旧式のバスに乗って夜のニューヨークの街にでかけたつもりが、実は1920年の街を走っていたという話。若く美しい女優のたまごが、1920年で出会った青年に愛の告白をされるが、1960年に戻って再会した男は告白のことをすっかり忘れていた。彼女は、愛のはかなさを知り、俳優としても成長する。
★かえりみれば Backward, Turn Backward
ウィルマー・H・シラス作(1970年) 中村融・井上知訳
ミセス・トッキンが不思議な時間旅行の経験について話す。シリーズの第1作らしい。
30歳の女性(トッキン)が、ある教授の力によって、意識は30歳のまま15歳の時代に戻る。当時には知られていなかった科学の知識を披露したりして、学校や家でさわぎを起こす。

★時のいたみ Backtracked
バート・K・ファイラー作(1968年) 中村融訳
妻のサリーとハイキングにでかける日の朝、夫のフレッチャーは10年後の未来から時をさかのぼってきて、一気に10年分老けた姿となってサリーの前に現れる。時間旅行に際してその動機は忘れてしまうことになっているので、フレッチャーが何のためにそのようなことをしたのか本人もわからなくなっている。やがて明かされる真相はロマンチックだが、その後に訪れる苦い展開を彼はすでに知っていたと考えると、なんとも切ない。
★時が新しかったころ When Time Was New 
ロバート・F・ヤング作(1964年) 市田泉訳
紀元2156年の時間調査員カーペンターは、北米古生物学協会が見つけた時代錯誤遺物(現代人らしき死体)の調査をするために、爬虫類型ビーグルのタイムマシンに乗って、七千九百六万二千百五十六年前の白亜紀の地球を訪れる。恐竜が闊歩するジャングルで、彼は、幼い姉弟マーシーとスキップに出会う。彼らは火星の古代文明が隆盛を誇っていた時代の天才児で、グレーター・マーズ技術理想化研究所の進学準備校から、誘拐されて地球に連れてこられ、犯人のすきをついて逃げ出してきたのだった。カーペンターは、二人を保護し、誘拐犯の追跡をかわそうとする。
感情除去制度によって、感情を失いかけていた二人の子どもが、カーペンターと野宿をして過ごすうちに、人間らしさを取り戻してくる。プテラノドン型の誘拐犯の巡航機、トリケラトプス型のカーペンターのビーグル、そして本物の恐竜が、古代のジャングルで攻防を繰り広げる。窮地にあっても、カーペンターの対応はおおらかで陽気だ。
長い長い時を経て恩人を救おうとする姉弟の思いが胸を打つ。タイムトラベルに愛を絡めた小説は数多いが、その中でも突出した傑作である。甘さに浸ることなく、冒険アクションとタイムトラベルものの面白さを発揮しているところがよい。

★時の娘 Child by Chronos
チャールズ・E・ハーネス作(1953年) 浅倉久志訳
タイム・パラドックスを駆使し、異様な母娘関係を描く。ハインラインの「輪廻の蛇」を思わせるが、一人の男を違った状況、違った立場から愛するというヒロインの視点の移り変わりが斬新である。
★出会いのとき巡りきて
C・L・ムーア作(1936年) 安野玲訳
冒険に次ぐ冒険で波瀾万丈の人生を送ってきた青年エリックは、友人の学者が発明したベルト型タイムマシンで悠久の時間の旅に出る。彼は、行く先々の時代で出会うスモークブルーの美女に恋をする。彼女は時代を経た生まれ変わりなのか、出会うたびに彼女の方もエリックを認識するようになっていく。が、彼女は危機的状況に置かれていることが多く、エリックはその都度彼女を失う。
理屈もへったくれもない話なのだが、壮大なスケールで描くのはただラブストーリーのみというのが潔く、細かいことはまあいいかという気になる。

★インキーに詫びる Apology to Inky
ロバート・M・グリーン・ジュニア作(1966年) 中村融訳
音楽家の男が、少年時代の心の傷を探るため時を溯る。現実の時間と、彼の心が生み出す過去への時間旅行が交錯する。
中年の男ウォルトンは二十年前に別れた恋人モイラに再会して、少年時代、彼女の母親が彼の飼い犬インキーを車で跳ねた事故の真相を知ろうとする。故郷のドラッグストアを久しぶりに訪れ、かつての恋人と再会した彼は、その同じ店内で、少年時代の13歳の自分と彼女、若く美しかった彼女と戦争帰りで松葉杖をついた陸軍大尉だった23歳の自分、老いた自分と老いた妻を見かける。それぞれの時代のウォルトンとモイラが入り乱れるこのシーンは、技巧の限りを尽くしていて面白い。やがてこれまで語られた断片のひとつひとつが一筋の物語を形作っていくのだが、初めて読む時点ではわけがわからないまま読み進むしかなく、後から前の方を読み返してポイントを拾い直さないと全貌がわからない。実験的な作品という気はするが、読み応えはかなりある。
事故の起こった1931年(ウォルトは13歳)、戦場で負傷し戦争から戻った1941年(同23歳)、そして故郷で元恋人に再会した1965年(同47歳)、それぞれの時代が、ヒット曲や映画俳優や道を走る車の型によって示されるのが、とてもアメリカらしいと思った。



不思議の扉 時をかける恋
大島望編 角川文庫(2010年)
古今東西の時間ネタを絡めたラブ・ストーリー集。(2011.5)
★美亜へ贈る真珠 
梶尾真治著(1971年) 「美亜へ贈る真珠 梶尾真治短篇傑作選ロマンチック篇」(2003年、ハヤカワ文庫)所収
★エアハート嬢の到着
恩田陸著 「ライオンハート」(新潮文庫)所収。
逆に流れる時間を生きる男女のロマンスを描いた連作集「ライオンハート」の第1作とのこと。
少女と青年の出会い。少女にとっては、男は愛しい恋人だが、男にとっては見知らぬ少女でしかない。みかけは無邪気な美少女であるエリザベスが、心の中には大人の女の悲しみを抱え、恋人エドワードを気遣っている。ちょっと懐かしい少女漫画のようなテイストのファンタジーだ。

★Calling You 
乙一著 「君にしか聞こえない Calling You」(2001年、スニーカー文庫)所収
人づきあいの苦手な孤独な女子高生リョウ。親しい友人がいない彼女は、通話したりメールしたりする相手がいないので携帯電話を持たずにいたのだが、頭の中に想像上の携帯電話を思い描くようになる。
ところが、ある日、頭の中の携帯電話に着信がある。野崎シンヤと名乗る相手の少年は、北海道に住む、実在の高校生だった。他にもう一人、年上の女性原田とも電話がつながる。リョウと通話する二人との間には、時間のずれがあった。通話中のシンヤはリョウより1時間前の世界を生きているのだ。
リョウと二人との頭の中の携帯電話でのやりとりが始まり、リョウは初めてうち解けることのできる相手を得る。やがて、シンヤは、リョウと実際に会うため上京するが。
切ないながらもさわやかな一遍。通話相手との時間差が大きなポイントとなる、良質の時間ネタファンタジーになっている。

★眠り姫 
貴子潤一郎著 「眠り姫」(富士見ファンタジア文庫)所収
奇病に侵され眠り続ける女性と、彼女を愛し見守り続ける男の話。
高校生の聡美は、新陳代謝の異常により、人よりも多くの睡眠時間を必要とする身体になってしまう。やがて、聡美が眠る時間はどんどん長くなり、目覚める回数と時間はどんどん少なくなっていく。彼女の恋人修司は、医師になる決意をし、彼女が目覚める一瞬の時を待ち続ける。

★浦島さん
太宰治著(1945年) 「お伽草子」(1972年、新潮文庫)ほか所収
昔「お伽草子」の中の一遍として読んだ記憶がある。
あまり覚えていなかったが、今読むと、なんともデカダンスというか、竜宮城での乙姫の最高のおもてなしが、酒と食事を与えて後はほったらかしというのがすごい。
竜宮城での時間の流れと故郷の村の時間の流れが違うということが時間ネタなのだが、なんとかして玉手箱効果を浦島にとって良きものと解釈しようとしているのが興味深い。

★机の中のラブレター The Love Letter
ジャックフィニィ著(1959年) 大島望訳 「ゲイルズバーグの春を愛す」(1980年、ハヤカワ文庫、福島正美訳)に「愛の手紙」という邦題で所収。
これもジャック・フィニイの短編集「ゲイルズバーグの春を愛す」で読んだことがある。
古い机の隠し引き出しにあった19世紀に書かれた手紙。不本意な結婚をすることになった若い女性ヘレンが、架空の恋人に助けを求める内容のものだった。
机を買った現代の青年ジェイクは、手紙の内容に打たれ、届く宛てもないと思いながらも彼女に返事を書き、古い切手を貼って、古くからある郵便局のポストに投函する・・・。
フィニイらしく、19世紀のブルックリンへのノスタルジーに満ちた、しっとりとしたささやかなラブ・ストーリー。



不思議の扉 時間がいっぱい
大島望編 角川文庫(2010年)
大島望編による時間SF短編集の第2弾。7作中3作が同じ時間を繰り返すタイムリープものであるにも関わらず、SFあり、ホラーあり、ハルヒあり、文芸ありで、ヴァラエティに富んでいる。
(2011.6)

★しゃっくり
筒井康隆著(1965年) 「東海道戦争」(中公文庫)所収
オートバイを飛ばしすぎて交差点で警官に呼び止められた男は、やがて警官から解放され再びオートバイに乗って次の角を左折し、さらに次の角を右折しようとした。が、次の瞬間、またも前の交差点で警官に呼び止められ、注意を受ける。原因不明の時間のループにはまった世界で、人々は、何度も同じ10分間を繰り返す状況に陥る。成り行きは、その都度様々に展開するが、10分経つとまた元に戻り、そのたびごとの記憶はすべて人々の頭の中に蓄積されていく。交差点の人々ひとりひとりと顔なじみになり、繰り返される時間にうんざりした男は、すさんだ行動に出る。時間が戻ったときの、男に対する人々の対応と、彼が彼らに対して抱く気まずい感じが、いい。
★戦国バレンタインデー
大槻ケンヂ著 「ゴシック&ロリータ幻想劇場」(角川文庫)所収
ゴスロリ少女が戦国時代にタイムスリップ。戦火の中で、お姫様の恋をとりもち、お姫様にゴスロリファッションをさせるという、愉快軽快SF。
★おもひで女
牧野修著 「異形コレクション 時間怪談」「忌まわしいハコ(もうりょうのやつね)」所収
思い出の中に突如現れた謎の女。女は、男の遠い思い出から徐々に近い思い出へと時間を追って出現するようになり、今に近づいてくる。秀逸なアイデアながら、ラストがちょっと肩すかしで残念。女の様相も、怖いというよりは、不快。
★エンドレスエイト
谷川流著(2003年) 「涼宮ハルヒの暴走」(角川スニーカー文庫)収録
期せずしてハルヒを読むことに。1作目しか読んでいないが、おもしろかった覚えがある。これもまた見事なハルヒもの。永遠に続く夏休みという、多くの日本人が共有しているであろうイメージをどんと柱に据えて、ハルヒが起こした超現象にSOS団の異能メンバーたちが気づき、なんとかしようとして結局凡人のキョンがなんとかするという、おなじみ?(1作目しか読んでないが)の展開で、びしっと決める。今回は、1作目と違って恋は絡まないのがちょっと残念。
関連作品:「涼宮ハルヒの憂鬱
★時の渦
星新一著(1966年) 「白い服の男」(新潮文庫)所収
同じ1日を繰り返すことになった人類たち。占い師は未来を占えず、コンピュータによる長期予測も、気象庁による天気予報も、国際試合のスケジュールを組むこともできなくなった。とにかくその日から先の人類の未来は空白となったのだ。一方、同じ1日を経るごとに遡って死んだ人間が蘇り、人々はこれまでの歴史を振り返り、自らの行いの是非を問う。ひねりのラストは、あの日が実際に訪れるとしたらどんなだろうとあれこれ考え巡らして、こんなんもありかなといったところなんだろうか。
★めもあある美術館
大井三重子著(1961年) 「新版水曜日のクルト」(偕成社)所収
小学校の国語の教科書に載ったという名作ファンタジーとのこと。人の思い出が絵として飾られている美術館というイメージが、とても美しく、やさしい。
★ベンジャミン・バトン 数奇な人生 The Curious Case of Benjamin Button
スコット・フィッツジェラルド著(1922年) 永山篤一訳
「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」(角川文庫)所収
ブラッド・ピット主演の映画(見てない)で一躍有名になった、時間を逆に生きる男の話。原作である本著は、風変わりで、短くごくあっさりとしている。70歳の老人として生まれたベンジャミンは、年をとるごとに若返っていく。(大人の身体の大きさを持った老人がどうやって母体から生まれ出たのか、どうしても腑に落ちないが。)家族は彼の逆行に戸惑い、同年代になったときだけ、親しくなる。当初は、祖父と、次は父と、そして息子と、つかの間友人のように親密になり、やがて離れていく。なんともやるせない物語だ。


[時間SF傑作選]ここがウィネトカなら、きみはジュディ 
大島望偏 ハヤカワ文庫(2010年)   (2011.11)
★商人と錬金術師の門 The Merchant and the Alchemist’s Gate
テッド・チャン著(2007年) 大島望訳
二十年後の自分に出会い話をして富を築く男。二十年後の自分から金を盗み富を得る男。二十年前前の夫を助けようとする妻。ワームホールをくぐってタイムトラベルを果たした人々の悲喜こもごもの人生が、アラビアンナイト風に語られる。見た目はおとぎ話だが、中身はかちっとした時間ネタSFであるというところが妙味。
★限りなき夏 An Infinite Summer
クリストファー・プラマー著(1976年) 吉沢嘉通訳
このまま時間が止まればいいのに」と幸せの絶頂にある恋人たちがつぶやく言葉をストレートに実現してみた時間ネタラブストーリー。自分だけ「解凍」してしまった男は「凍結」した恋人の姿を見守り続ける。時間を止める「凍結者」たちの正体も、彼らがなぜそのようなことをするのかも明かされない。
★彼らの生涯の最愛の時 The Beloved Time of Their Lives
イアン・ワトソン&ロベルト・クアリア著(2009年) 大島望訳
60代の女性と恋に落ちた十代の少年は、失った恋人に会うため、時を遡って若かったころの恋人に会いにいく。逆に進む時の流れの中で出会いを重ねる恋人たちの物語は、「時尼に関する覚え書き」(梶尾真治著、ハヤカワ文庫「美亜へ贈る真珠 梶尾真治短篇傑作選ロマンチック篇」所収)や「エアハート嬢の到着」(恩田陸著、新潮文庫「ライオンハート」及び角川文庫「不思議の扉 時をかける恋」所収)など、他にもいくつか思い当たる。本作では、最後は10代の女性が60代の男性と恋に落ち、冒頭ときれいな対照をなす。途中、彼らが果たすつかの間の邂逅は、場所がマクドナルド、間を引き裂くのがめちゃめちゃ太った男女という辺りに、著者がまじめなのか人を食っているのか判然としないようなところがあるが、大体に置いては、編者がいうようにロマンチックなラブストーリーなのか。
★去りにし日々の光 Light of Other Days
ボブ・ショウ著(1966年) 浅倉久志訳
過ぎ去った日々の光景を映し出すスロー・ガラス。妻の妊娠によって関係がぎくしゃくしていた夫婦は、山の斜面にあるスロー・ガラス屋に立ち寄り、ある光景を目にする。先は読めてしまうが、そこはかとない切なさが残る。
★時の鳥 The Bird of Time Bears Bitter Fruit
ジョージ・アレック・エフィンジャー著(1985年) 浅倉久志訳
時間旅行が可能になった時代に、紀元前48年のエジプト、アレクサンドリアの図書館に旅行を試みる青年の話。しかし、彼が行ったアレクサンドラは現代感覚にあふれていていんちきくさかった。過去とは、時間の流れとはなんなのか、最もらしい物言いがユニーク。
★世界の終わりを見にいったとき When We Went to See the End of the World
ロバート・シルヴァーバーグ著(1972年) 大島望訳
世界中で世界の危機のような現象が起こる中、「世界の終わり」を見るツアーに出かけた人々は、なぜかそれぞれ違った「世界の終わり」を見学して帰ってくる。
★昨日は月曜日だった Yesterday Was Monday
シオドア・スタージョン著(2005年) 大島望訳
月曜日の夜に眠りついた男が、目覚めると水曜日になっていた。奇妙な小人たちがいたるところで者を修繕したりわざと傷跡をつけたりしている。世界の舞台裏を見てしまった「役者」は、「舞台」に戻ろうと「プロデユーサー」に掛け合うが、「監督官」のミスで辺土に送られてしまう。奇妙でのんきなテイストのファンタジー。
★旅人の憩い Traveler’s Rest
デイヴィッド・I・マッスン著(1965年) 伊藤典夫訳
戦場を離れた兵士は、移動するたびに時間の流れが遅くなる地に降り立ち、最後に行き着いた街で仕事を得、結婚して家族を持つ。やがて、再び招集の知らせが。時間の立つ速度が変わるというのは興味深く、こちらが先なのだろうが、どうしても映画「インセプション」を思い出してしまう。
★いまひとたびの Time and Time Again
H・ビーム・パイパー著(1947年) 大島望訳
第三次世界大戦のさなかに爆撃を受けた大尉は、死の直前に十三歳の自分に戻っていた。身体は十三歳、周りの時代も住んでいる場所も、十三歳の時のものだが、意識だけは43歳のおじさんなのだった。歴史を変えられることを知った彼は、人格者の父を動かして第三次世界大戦を阻止する決意をする。
★12:01PM 12:01P.M.
リチャード・A・ルポフ著年(1973年) 大島望訳
12時1分から1時間経つとまたその日の12時1分に戻ってしまう。時間のループに陥った世界で、一人だけそのことに気づいている男キャッスルマンは、なんとかループから抜け出そうと、毎回1時間の中で奮闘するが。テレビ。ムービ「タイム・アクセル」の原作らしいが、あちらは24時間で話の内容もだいぶふくらませている。
★しばし天の祝福より遠ざかり…… Absent Thee from Felicity Awhile…
ソムトウ・スチャリトクル著(1981年) 伊藤典夫訳
短編集「タイムトラベラー」で読んだことがある。主人公が役者だったことなど細かいことは殆ど忘れていたが、なかなか楽しめた。(前出)
★夕方、はやく Early, in the Evening
イアン・ワトソン著(1966年) 大島望訳
朝から夜にかけて毎日800年分の人類の歴史が繰り返される世界。朝、草葺屋根の家に住んでいた家族は、午後早くの産業革命を経て、夕方には家電の揃った便利な生活を得る。が、翌日はまた過酷な農耕生活で始まる。やがて、時間はどんどん遡り、人々は文明を忘れ、さらにはヒトでさえなくなっていくのであった。奇妙な遡上現象を描いた、風変わりな一遍。
★ここがウィネトカなら、きみはジュディ If This is Winnetka, You Must Be Judy
F・M・バズビイ著(1974年) 室住信子訳
短編集「タイムトラベラー」で読んだ。印象深い作品である。(前出)

時を生きる種族 ファンタスティック時間SF傑作選
R・F・ヤング、フリッツ・ライバーほか著 中村融編
創元文庫(2013)
★真鍮の都 The City of Brass
ロバート・F・ヤング作(1965) 山田順子訳(1986)
「千夜一夜物語」をモチーフにした、エキゾチック感満載のロマンチックな時間ファンタジー。子どものころに読んだきりの「アラビアンナイト」をちゃんと読んでみたくなった。
★時を生きる種族 The Time Dweller
マイケル・ムアコック作(1964) 中村融訳(2013新訳)
人々は限られた空間の中で、時間に縛られて生きていた。そんな中、一人の異端な男が、空間の広がりに見切りをつけ、時間にその広がりを見出そうとする。
★恐竜狩り A Gun for Dinosaur
L・スプレイグ・ディ・キャンプ作(1956) 中村融訳(2013新訳)
時間旅行が可能になった時代、恐竜狩りツアーを実施する猟師兼ガイドの語りで、恐竜のいる時代へのタイムトラベルと壮絶な恐竜狩りの様子が、生き生きと描かれる。時間旅行については、自然法則が働いて近い時代への移動はできず、また一時期に違う時代から来た同一人物が複数存在することは許されない、そのタブーを犯そうとした男に対し自然の法則は残酷な鉄槌を下す。
★マグワンプ4 Mugwump 4
ロバート・シルヴァーバーグ作(1959) 浅倉久志訳(1974)
電話の混線から、時間を超え、さらに異次元空間を超えて時空のループにはまってしまった男。語り口は軽妙でユーモラスだが、永遠に抜け出すことのできない反復現象は考えるだに恐ろしい。
★地獄堕ちの朝 Damnation Morning
フリッツ・ライバー作(1959) 中村融訳(2013初訳)
アル中の男の幻想とも現実ともつかぬ、時を超えた離脱、なのか。
★緑のベルベットの外套を買った日 The Day of the Green Velvet Cloak
ミルドレッド・クリンガーマン作(1958) 中村融・橋本輝幸訳(2013初訳)
こうゆうのを珠玉の短編というのだろうか。気の進まない結婚を控え、高価な緑のベルベットのコートを衝動買いしてしまった女性。古本屋でビクトリア時代の淑女の古い日記を手にした彼女は、店主の青年の奇妙な言動を目にする。長い長い時を超えて届けられる馴染みの品物。「バック・トゥ・ザ・フューチャーV」など、時折り時間ものSFで使われるネタのオリジナルはこれだったのだろうか。
★努力 E for Effort
T・L・シャーレッド作(1947) 中村融訳(2013新訳)
過去のあらゆる出来事について、時代と場所を選んで撮影することができる機械をつくってしまった男マイク(ミゲル・ホセ・サパタ・ラビアダ)と、場末の映画館でその映像を目にした男エド・レフコは、ハリウッドでチームを組んで、歴史映画の製作を開始する。正真正銘の史実を、観客が受け入れやすいように、人類の記録に残る「歴史」に合わせて一部作り変えた映画は、大ヒットし、二人は大儲けをする。が、実は、二人は悲壮な決意を胸に、人類を不毛な戦争から救うためのとてつもない計画を企ていた。彼らは周到な用意の後、それを実行する。が、事態は彼らの望む方には進まなかった。痛烈なラストが心に突き刺さる、社会派SF。問題となる機械についてハードSF的な根拠はほぼ示されずあり得ない道具でしかないのだが、著者の主眼はそこにはないと思われる。
(2017.2)

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