みちのわくわくページ
時間旅行 タイムトラベルの本(日本)

<初出版年順>
果しなき流れの果に、時の顔(小松左京)、 マイナス・ゼロ(広瀬正)、 光の塔(今日泊亜蘭)
美亜へ贈る真珠(梶尾真治)、 産霊山秘録、およね平吉時穴道行(半村良)、 思い出エマノン(梶尾真治)、  
タイムトラベルSF傑作選(星敬編)、 
ドラえもん「ガラバ星からきた男」(藤子・F・不二雄)、 蒲生邸事件(宮部みゆき)、 酔歩する男(小林泰三)

果しなき流れの果に
小松左京(1966年) ハルキ文庫
大原まりこ子によるあとがきによれば、こういう小説をワイドスクリーン・バロックというらしい。
白亜紀の岩層から発掘された四次元砂時計に端を発し、十億年もの時空を超えた壮大な物語が展開する。
謎を追う男と彼を待ち続ける恋人。静かでもの悲しいラストが印象的だった。(2003.2)


時の顔
小松左京著(1998年 ※所収作品は60〜70代なのでこの位置に置いた))
ハルキ文庫/角川春樹事務所
1960年代から70年代にかけて書かれた時間ネタSFの短編集。
秀逸な作品ばかりであるが、個人的には、特に「骨」と「ホムンよ故郷を見よ」に感銘を受けた。
戦争に関わる描写も多く、作者の中に戦争がいかに色濃く影を落としているのかが窺える。(2010.11)

☆時の顔(1963年)
40世紀の時間局員タケは、奇病に苦しむ幼なじみのカズミを救うため、病の原因を求めて江戸時代にタイムトラベルをする。
実は、カズミは、タケの上司である時間局員の父が、江戸時代から連れてきた子どもだったのだ。
カズミの出生の秘密を探るタケは、彼に双子の兄弟がいたこと、その兄弟が別れた女に呪い殺されたことを知る。その女はキリシタンお蝶と呼ばれていたのだった。
江戸時代の実在の人物や、呪術による殺人などが絡んだ、タイムパラドックスもの。ハインラインの「輪廻の蛇」を思わせる「時の環」が描かれるが、幼なじみを救うため、「時の環」の中に身を投じるタケの思いが切なく、「輪廻の蛇」ほど息苦しい閉塞感は感じなかった。

☆御先祖様万歳(1963年)
現代、と言ってもこの作品が書かれた1968年(昭和34年)と幕末をつなぐトンネルが、とある地方の山肌に発見される。
その山の持ち主である老婆の孫で、幕末の志士の子孫にあたる青年の目を通して、幕末の日本人と現代の日本人とのやりとりなど、タイムトンネルを巡る騒動が、軽快に、しかしいくばくかの愁いを交えて描かれる。

☆地には平和を(1963年)
昭和20年8月15日に玉音放送が無かった世界の話。前半は、日本が降伏せず、全国各地に敵軍が上陸し、悲惨な戦闘が繰り広げられる様子が描かれる。後半は、時間犯罪者が狂わせた歴史をもとに戻そうとする時間局員が登場し、小気味のいい時間SFとしての展開をみせる。
☆痩せがまんの系譜(1963年)
古風で気骨のある独身女性真紀子は、現代の軟弱な男性には興味がなく、昔気質の武士のような男を求めていた。
先祖の女性に子どもを生んでもらわないと自分が存在しなくなってしまうという危機感から、彼女の子孫が未来から時間旅行してきて、彼女の結婚相手をみつけようと奮闘する。

☆哲学者の小道(フィロソファーズ・レーン)(1965年)
仕事や家庭を持つ三十代の男たちが、ひさしぶりに再開。
学生時代を懐かしんで、京都の哲学者の小道を散策するが、そこで彼らは自分たちによく似た若者3人に遭遇する。
若い頃にはわからないこと、大人になってから若いころの自分の姿を見るとどう感じるのか、といったテーマがなかなか興味深い。

☆愚行の輪(1964年)
身も知らぬ金持ちの中年男に恋人を奪われた若い男は、復讐のため、男の殺害を企てる。
が、その男は、自分が若い頃に犯した愚行を悔やむあまり、タイムトラベルで昔に戻り、若いころの自分の行為を妨害しようとしていた未来の自分なのだった。

☆比丘尼の死(1966年)
三十前後と思われるその尼僧は、長い長い時代に渡って、様々な男たちと関わってきた。
八百尼僧の伝説に基づく、永遠に歳をとらない尼僧の話。
しかし、彼女が庵を結ぶ山は、いまや情け容赦のない開発によって切り崩され、爆破されようとしていた。エコな話題が現代の環境問題に通じて不思議な余韻を残す。

☆骨(1972年)
庭に井戸を掘ろうと穴を掘り始めた男は、次から次へと人の屍を掘り出していく。
時代は石器時代から縄文時代、弥生時代へと、下層へいくほど時代が新しくなっていき、膨大な量の人骨は、むごたらしい死に様を語り続ける。
異様な発掘を続けた果てに男がたどりついたものは。人類の愚行に対する痛烈な批判をこめた、極上のホラー。

☆お茶漬けの味(1963年)
長い旅を終えて地球に帰還した恒星航行用宇宙艇『富士』。
旅の間に、艇内時間で12年、地球時間で125年の歳月が過ぎていた。地球に着いた乗組員達は、120年の間に大きな変貌を遂げた地球を目の当たりにする。全自動システムが発達したあげく、都市は機械が支配し、人間の姿はどこにも見あたらなかった。わずかに生き残った人々は、山中でひっそりと暮らしていたのだ。
前半は、帰還直前の艇内の様子を、主に艦長吉岡の目を通して描く。宇宙航行が始まったばかりの時代に飛行士となった吉岡は、全自動システムが導入された宇宙艇に違和感を覚え、機械を信じ切っている若い世代の乗組員達がどうにも頼りなく見えるのだった。
後半は、様変わりした故郷の状態にとまどう乗組員達が、生き残った人々と出会い、彼らとともに自然の中で暮らし始めるまでを描く。
『富士』のコックで、乗組員の中で最年少の七浦は、田舎の小料理屋で板前をしていた祖父の影響で、この時代には稀少な天然食品による料理を好んでいた。絶望的な状況の中で、彼は、山中で出会った老人が植えた茶の木を見て、祖父に食べさせてもらったお茶漬けの味を再現するという希望を見いだすのであった。
機械化が進み、機械に押しやられた人間が、自然の中で生きる喜びを見出すという、古典的なテーマを扱っているが、お茶漬けというごく庶民的な食べ物がポイントになっているのがおもしろい。ごはんにのせた茄子の漬物のあざやかな紫が目に浮かんでくる。

☆失われた結末(1973年)
昭和13年、戦時中の日本のある一家。
晩ご飯時になっても小学生の次男が帰宅せず、心配し始めた家族のもとに、見知らぬ老人が訪ねてくる。彼は、自分はこの家の子どもだと主張し、次男のしげるしか知らないことを知っているのだった。老人が持っていた本には、昭和47年までのことが書かれている年表が載っており、それによると日本は昭和20年に敗戦したことになっていた。
知人の警察官は老人を危険人物とみなし、警察の特高課に連行する。
老人の持ち物の中には、手書きの原稿の束があった。それには、今までの出来事が、三男のまもるの目を通して書かれていたのだった。
老作家が、小説を書くため、自分が子供だった戦時中の実家にタイムトラベルすることを思いつくが、タイムトラベルをした先の洞窟にたまたま来ていた子ども時代の次兄と激突、心と体が入れ替わってしまったのだ。
こどもの心のまま身体は未来から来た老人となって特高に連れて行かれた次男のしげるには、どう見ても悲惨な行く末しか待っていないように見えるが、作家はここで作品を投げ出す。締め切りに間に合わず、結末のないまま、小説はぶつりと途切れるのだった。

☆ホムンよ故郷を見よ(1963年)
星間文明が栄えるバルファ系と呼ばれる星系を舞台にしたいつとも知れない時代の話。
バルファ星系の辺境の惑星カンピア10番には、ホムンと呼ばれる先住民がいた。薄青色の肌を持つバルファ星系人に対し、ホムンは、にごった茶色や紫色のくすんだ色の肌をし、そして十一本の指を持っていた(片手で11本である)。
ホムンたちは、カンピア10番にある集落でひっそりと暮らしていたが、バルファ系の人々との同化を望んでいた。十一指(11番目の指)を切り落としたり、肌の色をバルファ系人に似せたりする者もいた。遊星総督のタオリもそうした彼らの方針を支持していた。
が、観光でカンピアを訪れた中央星間資料局の学者ノルと局員のウリギアは、自分たちの文化を守ろうとするホムンの青年医師コルバトと知り合う。彼らは、ホムンの歴史を探求する老人ヤムの依頼により、ホムンたちがどこから来たのかその起源を探るため、ホムンの先祖がカンピア10番にやってきたときに乗ってきたという宇宙船らしき遺跡の発掘調査を進めるのだった。
ホムンの故郷の星が判明し、そこに旅をして、初めてタイムマシンが登場。ホムンたちは、自分たちの星系の太陽が高温化し居住不可能になったとき、過去に逃れたようなのだ。ノルたちは、タイムマシンで過去に向かい、ホムンたちに会って真相を知る。彼らは、循環型文明に陥ることを覚悟の上で、大部分が過去に逃れる道を選んだのだが、外宇宙を目指し他の星系に逃れた人々もわずかながら存在し、そのうちの一部がカンピア10番にたどり着き、ホムンとなったのだった。
そこで明かされる「十一指」の秘密に、あっと驚く。

(以下ネタばれ!)
バルファ系人の指は4本だったのだ。つまり彼らバルファ系人が用いている数の数え方は四進法で、彼らのいう「10」は十進法の「4」、「11」は「5」ということになる。11本の指とは、つまり片手に5本の指ということになる。見事な種明かしである。が、私はたまたま、素人向けの数学の本で、「指の数は、その文明の数の数え方に大きく関わる」ということを読んだばかりだったのでピンときたが、「あなた方は四進法をつかっておられるのですな。さよう、ここでは哺乳類の基本型は五指型ですよ」というあの地球人の説明だけで理解するのはけっこう難しいように思う。

マイナス・ゼロ
広瀬正(1970年) 集英社文庫
タイムマシンに乗って、自分の少年時代を訪れた男。
昭和20年(ゼロ)、昭和38年(プラス18)、昭和7年(マイナス13)を行き来し、昔の自分、今の自分、昔の思い人、今の彼女、昔のその他の人々、今 のその他の人々、が入り乱れる。
時間旅行ものの醍醐味を存分に味わいながら、昭和時代がなつかしめる。(2003.2)


光の塔
今日泊亜蘭著(1962)
早川文庫(1975)

ずっと前に、雑誌かなんかで日本のSF名作とあったので、古本で買ってずっと放置していたものを読む。
時代設定ははっきり書いてないが、昭和初期が100年くらい前とあるので、2020〜2040年ごろか。未来の地球人は火星に進出して、知能は高いが運動能力の低い火星人とそれなりの友好関係にあるようだ。宇宙での戦争には核兵器が使われている。地球上では日本の都市も発展していて、東京には環状線(山手線らしい)が陸上と地下を巡り、渋谷は新都心となって宇宙省の新旧ふたつの高層ビルも建てられている。東海村は、巨大な原子力施設をメインとする都市となっていて、浦和にはでっかい塔が立っている。浦和の塔も東海村も謎の光る円盤によって消滅させられるのだが、東海村を破壊した円盤は、ついでに近隣にある世界最大の工場都市となった日立も4分で壊滅してしまうのだった。1960年代初期に想像された未来の日本はなんだかパラレルワールドを見ているようで興味深い。
水原(みのはら)宇宙少佐(軍に属している宇宙医)が、長い火星勤務から地球に戻ってきたとき、地球は何者かによって「光」の攻撃を受ける。
最初は、ささやかな電気系統の障害だったが、やがて、渋谷の展示施設から宇宙船が消失し、地球上の各地に空を飛ぶ光る物体が現れ、都市を破壊し始める。
敵は、ヒトデのような不定形の光につつまれた謎の人型の生物で、異星人と思われた。
水原は、宇宙軍第5局(司法検察部)の柴田中佐、大学の同期で保安庁局長の照岡仍次とともに「光」の正体を探ろうとする。
宇宙船消失の場で、これも旧知の男、賀藤守介に再会するも、光の攻撃を受けて彼は光に飲み込まれてしまう。その際に、賀藤はなぞの言葉を残すが、それは火星語を交えた暗号だった。軍の秘密情報員である彼の言葉は、軍の極秘計画について水原に明かし、協力を依頼するものだった。彼の言葉の謎を解き、水原は、賀藤がかくまっていた火星人を発見する。
火星人をみつけるまでの謎解きはミステリっぽく、火星人をみつけてからは、日活アクションに出てきそうな生きのいい若者竜太郎が出てくることで軽快な活劇めいてきて、インドの科学者が出てきて「光」の本拠である塔に地底から侵入していくあたりは、オールドSFの醍醐味満載となる。
異星人だと思っていた強力な敵が実は未来の地球人で、しかも核戦争のせいで肉体的に醜悪で劣悪な状態になっているという種明かしがある。今となってはあまり目新しくなく、衝撃の真実に驚愕することはかなわなかったが、敵は実は未来の自分たちという設定は、これが初めてということはあるまい。どこのなにが最初のそれだったのだろうか。(2021.1)


美亜へ贈る真珠
梶尾真治(1971年)
ハヤカワ文庫「美亜へ贈る真珠 梶尾真治短篇傑作選ロマンチック篇」(2003年)所収
「航時機計画」というよくわからない計画のため、同じ時間を生きることができなくなった恋人たち。美亜は、違う時間を生きる恋人を半生にわたって見守り続 ける。
時間に裂かれた二人の恋はちょっと甘すぎ。
むしろ、恋人を見守る美亜をさらに見守り続けてきた男の、いささか倦怠に満ちた語り口が興味深い。(2004)


産霊山秘録 
半村良(1972年) ハルキ文庫
はるか昔から日本には、三種の神器によって時空を瞬間移動する能力を持つ”ヒ”と呼ばれる一族がいた。
本能寺に、関ヶ原に、幕末に、東京大空襲に、日本の歴史の陰に暗躍するヒの一族の姿を描く、大歴史SF。(2003.2)


およね平吉時穴道行
半村良著 「半村良短編集1」(1976年)所収
角川文庫
江戸時代の戯作者兼絵師であった山東京伝に興味を持つ「私」は、広告会社に勤める傍ら、京伝の資料を集めて研究をしていた。ある日、知人から京伝にまつわ る文書を譲りうけた「私」は一枚の素人絵を発見する。絵を描いた平吉の日記を読んでいくうちに、京伝の妹およねの存在と彼女が謎の失踪をとげたことを知 る。
古い文書に書かれた記録から次第に謎が浮かびあがっていくとともに、現代での思わぬ出会いによって真相が解き明かされていく過程がおもしろい。
松平不昧公(風流人として知られた松江藩の七代目藩主)の弟雪川公との悲恋を嘆くおよねやおよねを慕う平吉の思いが、時空を越えて現代の広告マンに伝えら れる。(2007.3)


おもいでエマノン
梶尾真治著(1983年)
徳間デュアル文庫
地球に生命が発生してから現在までのことを全て記憶している少女エマノンを主人公とする連作シリーズ。彫りの深い顔立ちに長い髪、ざっくりとしたセーター にジーンズ、煙草くわえてナップザックひとつでさすらうエマノンは、かなり魅力的な女性であるかのように描かれているが、私としては残念ながらあまり魅か れなかった。進化の過程をたどる生物の代々の記憶を全て記憶している十代後半から二十代前半の女性という設定にどうしても馴染めないし、知り合う男たちが (おばさんや子どもも)すべてそんな彼女にひれ伏してしまうのもなんかなあという感じでした。(2007.4)
☆おもいでエマノン
1967年。恋に破れて傷ついたSF好きの大学生が、九州北部へ向かうフェリーの船中でエマノンに出会う。短い出会いのあいだに、エマノンは自分の持つ記 憶について語る。「ぼく」は、彼女の壮大な記憶の中に自分が加わったことを喜びに思う。
☆さかしまエングラム
交通事故現場に居合わせたエマノンは、負傷した少年と血液型が合致したことから輸血を頼まれる。エマノンの血を体内に入れた少年は、エマノンと同じ膨大な 過去の記憶を持ち、その重みに悩まされる。催眠術による心理療法によって、彼は記憶をどんどん遡り、ついには地球の原初の生物にいきついてしまう。
☆ゆきずりアムネジア
エマノンの記憶は、エマノンの娘に受け継がれ、受け継がれると同時にエマノンは記憶を失ってしまう。エマノンに関わった二人の男が語る、エマノンの思い 出。
☆とまどいマクトゥーブ
人の心を読み鋭い頭脳と特殊な体質を持った高校生神月潮一郎は、自分を新しい人類の先駆けと信じ、人類の新しい進化を遂げる自分にふさわしい相手であると して、やはり高校生だったエマノンに結婚を申し込む。何年か後、多国籍復合企業のトップとなった彼に再会したエマノンは、人類の“種”が彼に課した残酷な 本当の役割りを知ることに。
☆うらぎりガリオン
アメリカの砂漠の真ん中にある研究所。遠い昔、宇宙から不時着した生物が、自分が故郷に帰還するため人類を利用しようとしていたが、エマノンがそれを阻 む。
☆たそがれコンタク
人類の未来を知ることができる能力を持つヒデノブは、自らその能力を封印していた。地球上に生物が誕生して以来の全ての過去の記憶を持つエマノンの存在を 知った彼は、人の思考を読む能力を持つ友人ヨシフミの力を借りて、エマノンとの接触を試みる。
☆しおかぜエヴォリューション
九州、天草の海岸沿いの町。石油基地建設予定地となった森で、不思議な現象が起こる。かつて地球上に生育し今は絶滅してしまった植物たちが次から次へとも のすごい勢いで生えてきたのだ。植物が放つフィトンチッドという物質を通して、エマノンと植物アイオンは、悠久の記憶を持つもの同士、語り合う。
☆あしびきデイドリーム
突然、輝良(あきら)の目の前に現れ、ともに暮らし、そしてまた突然失踪した謎の女性暉里(ひかり)。彼女の行方を追う輝良は、エマノンに会い、暉里の秘 密を知る。暉里は、時を越える能力を持つ少女だった。エマノンと暉里の出会いは、十二億年前に遡るのだった。

時尼に関する覚え書
梶尾真治(1990年)
ハヤカワ文庫「美亜へ贈る真珠 梶尾真治短篇傑作選ロマンチック篇」(2003年)所収
保仁が初めて出会ったとき、時尼(ジニィ)は初老の婦人だった。その後再開するたび彼女は若くなっていく。
「過去からの時間と未来からの時間が、すれちがう刹那の愛」を描くロマンチックな時間ネタ小説の秀作。(2004)


ドラえもん「ガラパ星からきた男」
藤子・F・不二雄作 小学館 「ドラえもん45巻」(1996年)収録
欲しいゲームがあるのにお小遣いがたりない。のび太は、自分の貯金箱から前借りしようと、タイムマシンで1カ月後に向かったが、そこでは何か事件が起こっ ていた……。
時間旅行を駆使したドタバタ劇。細部への気使いが行き届いていて見事です。
この挿話は、たまたま家にあったコミックスでたまたま見つけたのだが、「ドラえもん」には、このような話がほかにいくつもある。コミックスで「時間旅行 編」が出てくれないものだろうか。(2003.2)


蒲生邸事件
宮部みゆき(1996年) 毎日新聞社
昭和十一年の東京の情景が懐かしい。
昔の情緒が味わい深いという点で、「マイナス・ゼロ」や「ふりだしに戻る」と同じような空気を感じさせる。二・二・六事件はあくまでも背景で、その近くの 屋敷で起きた事件の謎解きが中心。
ミステリーと思って読んだら、思いがけず時間旅行を楽しめて嬉しかった。(2003.2)


酔歩する男
小林泰三(1996年) 角川書店 「玩具修理者」収録
タイムスリップするたびにその後の時間の流れが変わり、世界が変わる。
様々な時間の世界での出来事は、時間旅行者である男の記憶としてしか残らず、男は圧倒的な孤独の中で、死ぬことさえもかなわぬ時間を生き続ける。 (2003.2)

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