みちのわくわくページ

○ 本 ライトノベル

<作家姓あいうえお順>
龍盤七朝DRAGONBUSTER01(秋山瑞人)、  「マーベラス・ツインズ」シリーズ(古龍)
ブギーポップは笑わない(上遠野公平)、
タザリア王国物語 影の皇子、タザリア王国物語2 黒狼の騎士(スズキヒサシ)、
涼宮ハルヒの憂鬱、エンドレスエイト(「不思議の扉 時間がいっぱい」所収)(谷川流)、
魔神探偵脳噛ネウロ 世界の果てには蝶が舞う(松井優征、東山彰良)、 
此よりは荒野(水無神智宏)、

ブギーポップは笑わない Boogiepop and Others
上遠野公平(かどのこうへい)(1998年)
電撃文庫 メディアワークス
図書館で衝動借り。
宇宙のどこかから地球人を生かすか殺すか決めるために送られてきた使者(エコーズ)が、地球人に捕らえられ、地球人は実験で彼のクローンをつくるが、クローンは人を食い殺すモンスター(マンティコア)となって暴走する。それに気づいた生身の人間の正義の味方が、人々の知らないところで、モンスターをやっつける。というファンタジー。
舞台となるのは、男女交際が禁止されている共学の高校。敵も味方も被害者も高校生である。そしてメインキャストは全て女子、男子は脇に徹している。ライトノベルにありがちな、心に傷を持ち、男言葉で話す、クールでかっこつけな戦う美少女キャラがここでも登場(霧間凪)、というかこの作品がその走りなのか。ライトノベル事情はよくわからないが、この手の美少女キャラは、どうにも苦手だ(といっても、そんなに読んでないのだが)。そしてタイトルロールのブギーポップに至っては、二重人格の少女の隠された人格、心は男でもみかけは男言葉のコスプレ少女というんだから、違和感はさらに募る。
ということで、ファンタジーの設定はふつうだし、二人の主要登場人物像にもなじめないのだが、ザッピングと呼ばれる異視点同時進行の物語構成がユニークで読ませる。(2011.4)

☆イントロダクション [怪物、少年][新刻]
男子生徒が、少女を殺した怪物と遭遇する物語の導入場面。
風紀委員長新刻(にいとき)の、全てが終わった後のナレーション。

☆第1話 浪漫の騎士 [竹田啓司(高3)、宮下藤花(高2)、ブギーポップ]
語り手は、風紀委員で、デザイン会社に弟子入り就職することが決まっている竹田。筒型の黒い帽子にマントをまとった謎のヒーロー、ブギーポップと出会い、屋上で話をする仲となる。ブギーポップともっともよく言葉を交わすのはこの竹田である。
ブギーポップが出現するのは、人類が危機にあるときのみ。敵は、竹田が知らないところで、現れ暴れ退治される。この章で、このあと出てくる人々が一通り顔を見せている。

◇間奏[マンティコア]
マンティコアの人食い場面。
☆第2話 炎の魔女、帰る [末真和子(高2)、霧間凪(高2)]
語り手は、読書家で心理学に詳しい女子生徒の末真。学校の生徒が次々に行方不明になる一方、不良女子生徒の霧間が殺人を犯しているという噂が流れる。末真は、霧間と接触し、彼女がたった一人で、正体不明の敵に戦いを挑もうとしていることを知る。メサイア・コンプレックス(救世主同一化志向。末真によれば誇大妄想の一種)だと自覚する彼女は、学校を故意に停学になって、敵を追っているのだった。
◇間奏 [エコーズ、紙木城直子(高3)]
紙木城が、路頭に迷う宇宙からの使者エコーズと出会い、かくまう。大事なシーンだ。ほれっぽくて奔放で人のいい紙木城には好感を抱く。
☆第3話 世に永遠に生くる者なし [早乙女正美(高1)、マンティコア、百合原美奈子(高2)]
語り手はなし。早乙女とマンティコアの出会い。マンティコアは、優等生の百合原を食い殺し、彼女になり代わる。早乙女はマンティコアに協力し、二人は人食いの餌食となる高校生を物色していくが、早乙女のねらいは世界征服だ。二人は愛し合っている。
☆第4話 君と星空を [木村明雄(高2→大学生)、紙木城直子(高3)、田中志郎(高1)]
語り手は、大学生になった木村。マンティコアの事件から2年経っていて、木村は、突如行方不明となった紙木城との出会いやつきあっていたころのことを回想する。最初は2年後という時間の飛躍がしっくりこなかったが、女好きで軽いノリの彼が、月日を経てなお紙木城へ断ち切れない思いを抱いているというところに切なさが感じられていい。
☆第5話 ハートブレイカー [新刻敬(高2)、霧間凪(高2)、田中志郎(高1)、早乙女正美(高1)、マンティコア、 エコーズ、ブギーポップ]
語り手は、風紀委員長の新刻。夜の学校で、関係者がほぼ勢揃いして、クライマックスの対決を迎える。エコーズが、最後の決断を下す。その翌日の放課後、校門でのシーンが第1話と重なる。


タザリア王国物語 影の皇子
スズキヒサシ著(2006年)電撃文庫(メディアワークス)
登場人物:ジグリット(ジューヌの影武者) リネア(皇女) ジューヌ(皇子) タスティン(皇子。庶子)クレイトス・タザリア(国王) グーヴァー(炎帝騎士団団長。嵐世の騎士) ファン・ダルタ(冬将の騎士) マネスラー(教師) アンブロシアーナ(少女神(コレツエオス))
次女が高校生だったときの高校の図書委員便りで、男子学生が紹介していたのを覚えていたので、図書館で衝動借り。戦記ファンタジーというジャンルに入るらしいが、超常現象やモンスターは出てこない。
中世ヨーロッパっぽい世界の大陸の王国を舞台に、皇子と瓜二つの貧民窟育ちの少年が、皇子の影武者として教育され、やがて皇子に成り代わる。
城のみんなから見下されていたジグリットが、持ち前の才気を発揮して周囲を驚嘆させる様子は痛快だが、それがいちいち皇女リネアの反感を買う。
執拗にジグリットをいたぶるリネアは、クラシカルな意地悪キャラという趣。ジグリットに惚れていて自分では気づいていない。陰湿でめんどくさい女だが、この強烈さがなかなか人気らしい。
騎士たちが魅力的。(2012.11)


タザリア王国物語2 黒狼の騎士
スズキヒサシ著(2006年)電撃文庫(メディアワークス)
登場人物:ジグリット(密かにジューヌ皇子になり代わった影武者の少年) リネア(皇女) クレイトス・タザリア(国王) グーヴァー(炎帝騎士団団長。嵐世の騎士) ファン・ダルタ(冬将の騎士) マネスラー(教師) アンブロシアーナ(少女神(コレツエオス)) ナターシ(エスタークの貧民街でのジグリットの友人。誤解からジグリットを憎んでいる)
ジグリットは、死んだジューヌと入れ替わり、皇子として城での日々を過ごしていた。
ある日、近衛隊長のフツと諍いを起こしたことから、罰として、フツとともにジリス砦に赴くことになる。ジリス砦は、ゲルシュタイン帝国との国境沿いにあり、二国間には緊張が高まっていた。ジリスは、砦の責任者となっているファン・ダルタに再会するが、彼は、付近の廃村にうごめく亡霊たちに取り憑かれ、憔悴して生命の危機に瀕していた。また、砦で働く労働者たち劣悪な環境で過酷な労働を強いられていた。皇子の身分を隠し、新兵として砦に入ったジグリットは、ファン・ダルタを立ち直らせ、使用人の少女アイーダを窮地から救い、侵入してきたゲルシュタインの刺客を倒す。
一方、アルケナシュ公国の聖都フランチェスカでは、アンブロシーナと、踊り子となったナターシが知り合う。少女神とのつきあいに戸惑うナターシだったが、二人は次第に親しくなっていく。
ジグリットらは砦から城に戻る。王のクレイトスは死病を患っていた。王は、ジグリットに、その正体に気づいていることを告げ、その上で彼に王国の将来を託して、世を去る。
王の死後、ジグリットが王位を継承することとなったが、アルコンテス(上流階級)の名門十一家はこれをよしとせず、ジグレットの謀殺を計る。が、ジグリットは、ファン・ダルタとともに刺客を撃退する。
身分の低いもの、虐げられたものが王子となって能力を発揮するという設定にあって当然期待する、胸がすくような痛快感が、思うほど感じられないのはなぜだろう。(2012.11)



涼宮ハルヒの憂鬱
谷川流著(2003年) 角川文庫
登場人物(SOS団のメンバー):
※ネタバレ:(  )にはそれぞれの登場人物についての説明が記されています。ドラッグすると読めますが、 もろにネタバレなので気をつけて下さい。
涼宮ハルヒ(情報フレア発信源、時間の歪みの中心、未完 成の神)、
キョン(普通の高校1年生男子、語り手)、
長門有希(銀河を統括する情報思念総合体によって造られた対有機生 命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェース)、
朝比奈みくる(未来人)、
古泉一樹(「機関」から派遣されてきた超能力者
涼宮ハルヒは、ひたすら「おもしろいこと」を追及する変人女子高生。クラスが同じでたまたま彼女の前の席になった普通の男子高校生キョンは、彼女と言葉を交わしたことから、破天荒な彼女の行動につきあわされるはめに陥る。
ハルヒは、宇宙人や超能力者や未来人との接触を夢見てSOS団なるものを結成し、文芸部部室をのっとり、パソコン倶楽部からパソコンを強奪し、「萌え」要素100%の美少女朝比奈みくるを強引に仲間に引き込み、バニーガールのコスプレで団のチラシを配り、休日にはみんなを招集して「非日常」探しを敢行する。しかし、非日常を求めるハルヒは、本人が気づかないだけで、とんでもない非日常を周囲に取り込んでいたのだった。
実はこれはとてつもなく甘いラブ・ストーリーで、文字通り愛が世界を救う話である。それに「気づかない」のは、ハルヒだけではない。キョンも、周囲の非凡人たちも、気づいていないというところがポイントだ。一番のんびりしてそうな朝比奈みくるだけが察することになるのだろうが、それも先のことである。(2007.9)

関連作品:「エンドレスエイト」(「不思議の扉 時間がいっぱい」所収)

此よりは荒野
水無神智宏著(2008年) 小学館ガガガ文庫
西部劇である。両親と幼い妹を殺された少年アラン・グリーンウッドは、復讐を誓いつつ、キングスウェイという町で保安官を務める叔父ディヴィッド・グリーンウッドの助手をしている。町では、牧場経営者クレイトンと鉱山主フィーズルの一派が対立している。 ある日、名うての賞金稼ぎガーランドが町にやってくる。アランは、ガーランドに銃の撃ち方を教わる。やがて、悪者が町を襲い、住人との戦いが繰り広げられる。最初はアランをばかにしていたガーランドも、ともに戦ううち、彼を認めるようになってくる。戦いのあと、一人町を去ろうとするガーランドをアランが追う。
敵の手にかかり無惨に殺された母と妹、町の実力者の対立、自警団の結成、渓谷での銃の練習(空き缶を撃つ、両手を打つより早く銃を抜くなど)、リンチと絞 首刑、その寸前での馬の暴走による救出など、西部劇ではおなじみのシーンがぞくぞくと出てくる。
ただし。この西部には、人間でないものもうじゃうじゃと登場する。小人鬼(ゴブリン)や穴居人(トロール)が坑夫として鉱山で重労働を強いられ、淫魔(サ キュパス)と呼ばれる魔族の女が売春宿で男の精気を吸い取り、ティンカーベルのような小妖精(スプライト)が郵便配達をしている。襲ってくる無法者は人狼、悪の元締めは美しく優雅な吸血鬼(ノスフェラトゥ)で、「城塞列車」に乗ってやってくる。他にも、食屍鬼(グール)、食人鬼(オーガ)、醜鬼(オー ク)、有翼魔像(ガーゴイル)、吸血鬼(バンパイア、同じ吸血鬼でもノスフェラトゥより格下らしい)など、「ロード・オブ・ザ・リング」やハリー・ポッター・シリーズあたりで耳慣れた亜人や怪物の名称が次々に出てくる。
そして、早撃ちの賞金稼ぎエステル・ガーランドは、「屍人殺しのステラ」と呼ばれるティーンエイジャーの少女である。彼女の標的は、亜人や魔族であり、彼女のコルトSAAには銀の弾がこめられている(それで死なない相手には、妖精銀、フェアリーシルバーという幻の銀の弾を使う)。そして彼女とアランの家族の仇は、「不死者秘儀団」と呼ばれる魔物たちの一団である。
時としてしっとりとした流麗な文章は、西部の乾いた風土よりは、魔物たちが跋扈するダークファンタジーの世界にこそ似つかわしい。が、西部劇の要素は盛りだくさんで、アクションも楽しめる。保安官の持っているライフルに「千に一つ」のフレーズが刻まれていたり、 ピンカートン探偵社の名とそのモットー「我々は眠らない」が貨車に掲げられたりなどついにんまりしたくなる細部も見られる。(2009.3)

※“Gunning for Nosferatus 1”となっているので、続編が期待できる。

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