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本 メモ

アメリカの原理主義
河野博子著(2006年) 集英社新書
<メモ>
○9.11以前
・「極右」ドメスティック・テロリズム 自国内の不満分子によるテロ
・ミリシア:白人男性、銃による自営訓練、@反連邦政府感情、A国連、新世界秩序への拒否感、B伝統的な家族・倫理へのこだわり、C銃規制反対、D反ユダヤ・白人優越主義
・ジ・アーミー・オブ・ゴッド(神の軍隊):中絶クリニック爆破
・クリスチャン・アイデンティティ:水面下で極右を支えるイデオロギー
・炭疽菌事件(2001年10月)
○2004年のブッシュ大統領再選
・映画「華氏911」2004年公開。
・この選挙において重要視されたのは、道徳的価値観
 共和党支持 レッド・ステーツ 中西部・南部 深い信仰心
 民主党支持 ブルー・ステーツ 東海岸・西海岸大都市部 知性
 「信仰心が篤い人、つまり『絶対的な真実や善悪を求める人』はブッシュ大統領および共和党、『何を信じて大切に思うかは個人の自由と考える人』はケリー上院議員及び民主党に票を投じると決まっているようだ。」(ジョン・ホワイト アメリカ・カトリック大学政治学教授)
○宗教右派(あるいはキリスト教右派、宗教保守と呼ばれるグループ)
・信心深い保守。プロテスタント福音派(米国成人人口の25%。アメリカのキリスト教徒は人口の80%以上。うちプロテスタントが59%でさらにその中で様々な教派に分かれる。)
・道徳・倫理問題。政教分離に不満。
・中絶反対 プロ・ライフ(命を守る)←→女性解放運動 プロ・チョイス(女性が選ぶ)
・同性婚反対
→「自分の体をコントロールするのは自分、だから体の中の胎児を中絶することもできる、あるいは、同性と関係を持つこともできる」というように、中絶も同性愛も『自分の心身をコントロールするのは自分』が基本になっている。キリスト教原理主義者たちは、これが許せない。キリスト教の教えでは、神は自らに似せて人を作った。だから、人は神が作りたもうた体を自分の勝手にはできない。ヘロインで自分の体を破滅させることは許されないし、自ら命を絶つことも許されず、同性と関係することもできない、ということになる。」ジェミエル・テリー(1980年生まれ。養父とともに宗教右派で同性結婚反対運動を展開。2004年、正反対の団体に加わり、運動を開始。ゲイであることを養父に言えずにいた。)
・禁欲教育(←純血主義)
・「多様性」(ダイバーシティ)の大切さを否定→マルチカルチュラリズムを攻撃
○アメリカン・エクセプショナリズム「アメリカ例外論」
・アメリカ人であることの強い意識。ジョージ・ワシントンの肖像画。建国の歴史。
@ アメリカは特別な国、A西洋文明のルーツ・思想を教えることが重要。
・「アメリカは特別な国で、神の使命を帯びてその力を使い、世界中のほかの地域、幸少ない人々にアメリカシステムによる繁栄の便益をもたらす責任がある」(ジョナサン・クラーク イギリス人、ケイトー研究所)
・例外論の起源は、「われわれは特別の精神的および政治的使命――新世界に教会とすべての国のモデルとなるような社会の建設――を担っている」という認識に遡る。(デボラ・マドソン著「アメリカ例外論」(1998年))
←「丘の上の都市(a city upon the hill)」という概念:植民地開拓者で初代マサチューセッツ総督のジョン・ウィンスロップが、1630年、旗艦アルベラ号上で入植者達を率いて上陸する際に言った言葉。←「神の使命」入植者たちの中心的思想
・ベンジャミン・フランクリン:アメリカの使命から宗教色を薄め、ヨーロッパの政治と社会から腐敗を取り除き、純化した世俗的国家を作ることを再定義。
・19世紀。「明白な使命」(マニフェスト・デスティニー)byジョン・オサリバン。西部開拓・土地買収の正当化。
○アメリカの原理主義
・ネオコン:東部イーストコースト中心の知識人集団。国際的コンセンサスの軽視、軍事力行使に躊躇なし。→宗教右派と結合。
・「レフト・ビハインド」(全12冊)が6500万冊以上のヒット(2003、4年ごろ)。キリストの再臨→ハルマゲドン→千年王国の7年間をスリラータッチで描いた終末論小説。
・原理主義(ファンダメンタリズム):聖書に書いてあることが歴史上の事実、予言されたことが起こるとする信条。進化論反対。
→宗教右派:聖書にしがみつく頑迷な人々というイメージを払拭、極右の反ユダヤ、白人主義と袂を分かち、現代の幅広い層に受け入れられるように発展してきた、連邦政府の干渉、規制を斥ける建国の原理原則をベースに、「世界政府」を忌み嫌いつつ、米国の使命としての自由の拡大に邁進する姿勢、情緒的思考は現代アメリカの原理主義を形作る。

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