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<作家姓あいうえお順>リボルバー(原田マハ)

リボルバー
原田マハ著
2021年 幻冬舎

画家ゴッホの拳銃自殺の謎に迫る小説。タイトルは、ゴッホが自殺に使ったとされる拳銃で、ルフォーショーのミリタリー・リボルバー7ミリ口径のことを言う。
高遠冴は、フランスのオークション会社CDC(キャピネ・ド・キョウリオジテ)に勤務している。社長のギローと同僚のジャン=フィリップだけの小さな会社だ。学生時代の友人莉子は、大手の ササビーズで働いている。ある日、サラ・ジラールという女性が、鉄サビの塊のような拳銃を持ちこんでくる。1890年7月、ゴッホが自殺した際に使われた拳銃だというのだ。
ゴッホとゴーギャンの研究者である冴は、拳銃の真偽を追って、図書館で膨大な資料にあたり、ゴッホとゴーギャンの関係についてより深いところを調べる。アルルで二人が同居していたのはわずか2ヶ月ほど、有名な「アルルの耳切り事件」で二人は袂を分かち、その後会うことはなかったというのが、一般に知られている事実である。冴は、ギローとジョン・フィリップとともに、ゴッホが自殺をしたパリ近郊の小村オーヴェール=シュル=オワーズに赴くのだった。
この物語における「真相」は、途中からやすやすと予想できてしまい、ミステリとしてのおもしろさはあまりない。フランスにおける絵画のオークションの様子や、ゴッホとゴーギャンについて知らなかったことをいろいろ教えてくれるので、そうした知識をえられることを楽しむ小説かなと思った。
ゴーギャンがタヒチで次々に十代の少女を金で買い、絵のモデルと同時にセックスの相手にもしていたことが書かれていて、少女たちはゴーギャンが好きでそれを進んで受け入れたように書いてあるが、それはどうなのと思った。それだけでなく、いい話でまとめようとしているのにちょっと無理を感じた。ゴッホやゴーギャンの強烈な人物像に対し、現代の登場人物、冴や莉子やギローやジョン=フィリップらが通り一遍であまり魅力が感じられず、残念だった。(2023.2)

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