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西部劇

<1950年代の西部劇 3>
1958年 カウボーイ 大いなる西部 ゴーストタウンの決闘 死の砦 縄張り 左ききの拳銃
1959年 ガンヒルの決闘 騎兵隊 決断 リオ・ブラボー ワーロック

大いなる西部 The Big Country
1958年 アメリカ 166分
監督:ウィリアム・ワイラー
主題曲:ジェローム・モロス
出演:ジム・マッケイ(グレゴリー・ペック)、スティーヴ・リーチ(チャールトン・へストン)、ジュリー(ジーン・シモンズ)、パット・テリル(キャロ ル・ベイカー)、ルファス・ヘネシー(バール・アイヴィス)、ヘンリー・テリル(チャールズ・ビクフォード)、バック・ヘネシー(チャック・コナーズ)、ラモン(アルファンソ・ベドヤ)
西部の牧場主の娘パットと恋に落ちて婚約した元船乗りの男ジム・マッケイが、東部から西部にやってきて、長年に渡る地元の一族同士の争いを終わらせようとする話。
パットの故郷では、水場を巡って二人の勢力者、牧場主であるパットの父親テリル少佐と谷に一家を構えるヘネシーが対立していた。水場は、祖父から財産を受け継いだ若い女性ジュリーが所有権を有していたが、彼女は両家の争いの激化を防ぐため、中立を保っていた。
両家の抗争を中心に、東部男の目を通して西部の自然とそこに生きる人々の姿を描く。
テリルに忠実な牧童頭リーチを若きヘストンが演じ、素朴で野性味あふれる西部男の魅力を発散させている。
彼とグレゴリー・ペックとのえんえんと続く野外での殴り合いは見せ場のひとつ。(2004.6)

鎌倉にある川喜多映画記念館で、 「映画の都ハリウッド 〜華やかなるスターの世界〜」と題した企画展を開催、併せて館内のシアターで3日ごとに計14本の映画を上映した。そのラインナップに「大いなる西部」もあって、初めて劇場で見た。
東部男のマッケイは、常に冷静でやることも言うことも筋が通っていて正しいんだけど、なんだかどうもすかした奴というか、物言いがいちいちカチンと来るというか、これは昔見た印象と同じだった。
粗野で実直な牧童頭のリーチの方が好きだったが、今回見てもやっぱりかっこよかった。
部下たちに見放されても一人で戦うぞと気張って行っちゃう頑固なテリル少佐を追って行くとこはやはりいい。少佐に追いついて二人並んで馬を駆るところ、少佐は「やっぱり来たな」と我が意を得たりという感じでにんまりし、一方リーチは「しょーもない親父だけど見捨てるわけにもいかねえしっ!!」という感じの表情でそれがなんとも言えずよかった。
チャック・コナーズは見た目はかなり男前なのに、救いようのない馬鹿息子の役で気の毒。
あと、メキシコ人の馬丁ラモンが、とぼけた感じのいい味を出していた。(2012.5)


カウボーイ Cow Boy
1958年 アメリカ 92分
監督:デルマー・デーヴィス
出演:フランク・ハリス(ジャック・レモン)、トム(グレン・フォード)
西部に憧れる東部の青年が、過酷なカウボーイの生活を通して成長していく。
牧童頭のグレン・フォードが頼りがいのある西部の男を渋く演じている。(2004.6)


ゴーストタウンの決闘 The Law and Jake Wade
1958年 アメリカ 87分
監督:ジョン・スタージェス
出演:ジェイク・ウィード(ロバート・テイラー)、クリント・ホリスター(リチャード・ウィドマーク)、ペギー(パトリシア・オーエンス)、ウォルテロ (ロバート・ミドルトン)
元無法者の保安官ジェイクは、強盗仲間だったクリントを死刑から救うために脱獄させる。が、クリントは昔奪った金のありかを言えとジェイクに迫り、二人は 金が隠してあるゴーストタウンに向かうことに。コマンチ族の襲撃から逃れた二人は一対一の対決をするが……。
悪党クリント役のリチャード・ウィドマークが光る。(2004.6)

このひと言:「銀行強盗やりすぎるとアルプス山脈に行けない。」(クリント・ホリスター)

死の砦 Fort Dobbs
1958年 アメリカ 90分
監督:ゴードン・ダグラス
脚本:バート・ケネディ、ジョージ・W・ジョージ
音楽:マックス・スタイナー
出演:ガー・デイヴィス(クリント・ウォーカー)、セリア・グレイ(ヴァージニア・メイヨ)、クレット(ブライアン・キース)、チャド・グレイ(リチャード・エヤー)、保安官(ルス・コンウェイ)
往年のテレビ西部劇「シャイアン」シリーズで知られるクリント・ウォーカーが逝去し、彼の映画は1本も見ていないと言ったら、西部劇ファンの大先輩がDVDを送ってくれたので、見る。
追われる身の男ガー・デビスは、コマンチ族の襲撃を受けた牧場の女主人セリアと幼い息子のチャッドを連れて、砦を目指す旅に出る。
デビスは、追手から逃れるため、コマンチ族に殺されていた男と上着を交換して身代わりとするが、その上着が夫のものだと気づいたセリアは、デビスを夫を殺した犯人だと誤解する。
途中、デビスの知り合いで武器商人のクレットが登場し、3人の男女関係がもつれる。
やっと、たどり着いた砦はすでに襲撃を受け、守備隊は全滅していた。そこに幌馬車隊が逃げ込んでくる。隊長はデビスを追っていた保安官だが、彼らはともに、コマンチを迎え撃つため手を組むのだった。
インディアンはひたすら襲ってきて、追われる身のヒーローと美しい牧場主の妻の間では誤解がなかなか解けず、腕は立つが悪党の友人はいろいろちょっかいをだし、頑固な保安官は最後に情けを見せる、と往年の西部劇の要素が詰め込まれている。(2018.7)

縄張り The Sheepman
アメリカ 1958年 86分
監督:ジョージ・マーシャル
出演:ジェイソン(グレン・フォード)、デル(シャーリー・マクレーン)、ベッドフォード少佐/ジョン・ブレッドソー(レスリー・ニールセン)、ミルト (エドガー・ブキャナン)、アンジェロ(ペドロ・ゴンザレス=ゴンザレス)、ジャンボ(ミッキー・ショーネシー)、チョクトー(パーネル・ロバーツ)
牛の牧畜がさかんな西部の町で、羊を飼おうとする男ジェイソンが巻き起こす騒動を描く、明るく軽快なウェスタン。
牛を放牧している土地に羊を入れようするジェイソンは、町の権力者であるベッドフォード少佐と対立する。実は、二人は古い知り合いで、しかもわけありだった。
辛い過去を隠し、ひょうひょうと振る舞いながら意志を貫こうとするジェイソンを、グレン・フォードが気持ちよさそうに演じている。彼に惹かれていく牧場主の娘デルとのやりとりも楽しい。
町の酒場にたむろするミルトや羊飼いのアンジェロなど、戦わない脇役がいい味を出している。(2008.2)


左ききの拳銃 The Left-handed Gun
1958年 アメリカ 白黒 102分
監督 アーサー・ペン
出演 ポール・ニューマン
ポール・ニューマンが西部に名高い実在の無法者ビリー・ザ・キッドを独自の魅力で演じた。
暴走して破滅していく若者の姿が胸をしめつける。暗いトーンであまりわくわくはしないが、いい映画だと思う。(2003.2)

おまけ: ビリー・ザ・キッドが左ききだったと言われるのは、写真のネガが裏返しになっていたためで実は右ききだったという話を聞いたことがある。

ガンヒルの決闘 The Last Train from Gun-Hill
1959年 アメリカ 94分
監督:ジョン・スタージェス
音楽:ディミトリ・ティオムキン
出演:マット・モーガン(カーク・ダグラス)、クレイグ・ベルドン(アンソニー・クイン)、リック・ベルドン(アール・ハリマン)、
ベーロ(牧童頭。ブラッド・デクスター)、スカッグ(ビング・ラッセル)、リー(リックとボーレイに行ったカウボーイ。ブライアン・ハットン)、
リンダ(キャロリン・ジョーンズ)、スティーヴ(バーテン。ヴァル・アヴェリー)、キャサリン・モーガン(マットの妻。ジバ・ロダン)、ピーティ・モーガン(マットの息子。ラース・ヘンダーソン)、ケーノ(キャサリンの父。チャールズ・スティーヴンス)
保安官マット・モーガンは妻を殺した犯人を追ってガンヒルの町にやってくる。
やがて、犯人は町のボスでマットの親友であるクレイグ・ベルドンの息子リックであることが判明する。
クレイグは息子を見逃すよう懇願するが、マットは承知しない。帰りの汽車が到着するまで数時間、事態は急速に緊迫していく。
リックのあごにショットガンを突きつけて汽車に乗ろうとするマットとそれを阻止しようとするクレイグ。両雄の対決がみもの。
ラスト、遠ざかっていく町のトラック・バック・ショットが印象に残る。(2004.6)

久しぶりに見直す。
マットの妻キャサリンと幼い息子ピーティを載せた馬車が無頼漢に襲われる冒頭のシーンから、一転、ポー例の町の保安官事務所の前でマットが子どもたちに武勇談をせがまれているほのぼのしたシーンに移り、そこに馬とピーティが戻ってくる。一挙に物語が展開していく。
マットは、ボーレイからガンヒルへ。妻を襲った男が残した鞍にあったCBのイニシャルから、馬の主が旧知のクレイグ・ベルトンであることを知り、必死の抵抗をしたキャサリンに鞭でつけられた頬の傷から、その息子リックが犯人であることを知る。
リックを連行して9時の汽車に乗ろうとするマットを、ベルドンが阻む。
マットはリックののど元にショットガンの銃口を突きつけ、二人は立ったまま馬車に乗って駅に向かう。そのあとをリンダ(ベルドンの愛人だがマットに味方する)、ベルドン一家の男たち、町の人々がぞろぞろとついていく。緊迫したシーンだった。(2021.5)



騎兵隊 The Horse Soldiers
1959年 アメリカ 119分
監督:ジョン・フォード
出演:マーロウ大佐(ジョン・ウェイン)、ケンドール(ウィリアム・ホールデン)、ハンナ(コンスタンス・タワーズ)、カービィ(ジャドソン・プラッ ト)、ブラウン(フート・ギブソン)
南北戦争中、北軍は南軍の補給拠点攻撃を計画、マーロウ大佐の部隊に指令が下される。
一行に軍医ケンドールが同行する。彼とマーロウは、そりが合わず反目しながらも、次第に互いを認め合っていく。
南部の鉄火女ハンナをコンスタンス・タワーズが好演。
激戦の末、追いつめられた南軍はついに士官学校幼年部?の児童からなる部隊を出動(おたふく風邪で2名欠席)させる。幼い子供を相手にできずやれやれと いった面もちで大佐が撤退の指令をくだす場面はほほえましい。(2004.6)


決断 THE HANGMAN
1959年 アメリカ 白黒 86分
監督:マイケル・カーティス
脚本:ダドリー・ニコルズ
出演:マッケンジー・ボヴァード(ロバート・テイラー)、シーラ・ジェニソン(ティナ・ルイーズ)、バック・ウェストン保安官(フェス・パーカー)、ジョニー・ビショップ(ジャック・ロード)、マーフィ(ジーン・エバンズ)、アル・クルーズ(ミッキー・ショーネシー)、キティ・ビショップ(シャーリー・ハーマー)、ペドロ(ホセ・ゴンザレス=ゴンザレス)

東京国際映画祭で野外上映された西部劇特集で見る。
ハングマンと呼ばれる腕利きの連邦保安官ボヴァードは、ジョニー何某という名のお尋ね者を捕まえるため、彼がいる町に赴く。ジョニーを特定するため、彼の知人の女性シーラに証人になるよう依頼するが、彼女はジョニーを裏切れないと拒む。が、ボヴァードは、町へのきっぶを彼女に渡し、後から来るよう告げて一足先に発つ。
物語は、ボヴァードの思惑通りに、シーラが町にやってくるかどうかという軽いどきどきの後、やってきたシーラは本当に証言するかどうか、町のみんなに好かれているジョニーはほんとうに犯罪を犯したのか、彼は逮捕され処刑されてしまうのか、と言ったはらはらどきどきが続く。仕事がら人を信じられなくなったボヴァード、夫を亡くし貧困にあえぎながらも元カレのジョニーをかばおうとするシーラの主要な二人のほか、犯罪者として追われながらも人々から好かれているジョニー、シーラに惚れジョニーをかばう気のいい保安官のバック、嫌な奴だと思っていたジョニーの仕事仲間のマーフィも実はジョニーの味方とわかるなど脇の人たちがきちんと描かれて気持ちがよい。貧しくてぼろぼろの服しかなかったシーラが新しいドレスを着たとたん彼女の美しさが際立ち、町行く男たちみんなの注目を集め、ジョニーが彼女を知っているかどうかを試す際に、ジョニーが彼女を無視したのを見て、ボヴァードが逆にそれを不自然だと思うあたり、うまくできていると思った。
収監されたジョニーを、仕事仲間が、西部劇の古典的手法で脱獄させるシーンに、今となっては感激してしまった。(2019.11)

リオ・ブラボー Rio Bravo
1959年 アメリカ 135分
監督:ハワード・ホークス
曲:「皆殺しの唄」ディミトリ・ティオムキン作曲(原曲:メキシコ民謡 De Guello「首斬り」)、「ライフルと愛馬」ディミトリ・ティオムキン作曲、ディーン・マーティン唄
出演:ジョン・T・チャンス(ジョン・ウェイン)、デュード(ディーン・マーティン)、コロラド(リッキー・ネルソン)、フェザース(アンジー・ディキン スン)、スタンビィ(ウォルター・ブレナン)、パット(ワード・ボンド)、ハロルド(ハリー・ケリーJR)、ネーザン(ジョン・ラッセル)、ジョー(ク ロード・エイキンズ)、
西部劇の痛快娯楽作品。
頼りになる保安官チャンス、銃の使い手でありながらアル中に身を持ち崩したデュード、二挺拳銃の若者コロラドの主要の三人がそれぞれみごとに個性を発揮し て活躍する。
たんつぼのシーンから始まって、植木鉢のシーン、犯人が逃げ込んだ酒場にデュードが乗り込むシーン、人質交換からダイナマイトが炸裂するまでのクライマッ クスなどなど、きちっと計算されたアクションが次から次へと気持ちよく展開していき、しかもそのあいまに、デュードの心の葛藤やチャンスと女賭博師フェ ザースと恋の駆け引きなどが巧みに挿入されていく。
保安官事務所の前で「皆殺しの唄」を聞くシーンの男たちの位置のなんと決まっていることか。
シーンのひとつひとつを思い出してもいちいちわくわくする傑作だ。
ホークスの西部劇三部作の1作目。他に「エル・ドラド」と「リオ・ロボ」。(2004.6)

「早稲田松竹クラシックスVol.91ウエスタン・カーニバル」で見た。全編通してみるのはたぶん30年ぶりくらいだが、この映画はあまり印象が変わらない。が、フェザース(アンジー・ディキンソン)とチャンス(ジョン・ウェイン)のシーンになると、軽快な西部劇活劇が、一気に都会的なソフィシケイテッド・ラブ・コメディの様相を呈してくるという印象はあったのだが、これほどまでとは思わなかった。完全にディキンソン主演のラブ・ストーリーみたくなっている。
保安官事務所の玄関先のサイドウォークで、チャンスとデュード(ディーン・マーチン)とコロラド(リッキー・ネルソン)が話しているところに「皆殺しの唄」が流れてくるシーンや、植木鉢のシーンや、デュードが「皆殺しの唄」を聞いて酒を瓶に戻して「あの曲を聞いたら指の震えが止まったぜ。」というシーンや、人質を歩かせる人質交換シーンが大変好きである。(2014.9)


ワーロック Warlock
1959年 アメリカ 20世紀FOX 121分 
製作・監督:エドワード・ドミトリク
原作:オークレー・ホール
出演:クレイ・ブレイズデル(黄金の銃を持つ男。ヘンリー・フォンダ)、トム・モーガン(ジェームズ砦の毒蛇。賭博の元締め。アンソニー・クィン)、ジョニー・ギャノン(サンパブロ牧場のカウボーイから郡保安官に。リチャード・ウィドマーク)
ジェシー・マロ―(炭鉱主の娘。ドロレス・ミッチェル)、リリー・ダラー(ニコルソンの恋人。ドロシー・マローン)、
マキューン(サンパブロ牧場主。トム・ドレイク)、カーリー(カウボーイ。デフォレスト・ケリー)、ビリー(カウボーイ。ジョニーの弟。フランク・ゴーシン)、ケード(ジェームズ・フィルブルック)、ポニー(デヴィッド・ガルシア)、チェット(ジョー・ターケル)、カルホーン(ドン・レッド・バリー)
ホロウェイ判事(ウォーレス・フォード)、トムソン郡保安官補、マーチ(モーガンの用心棒。ジョエル・アシュレー)、ベン・ニコルソン(リリーの恋人。クレイに射殺される。)、ボブ・ニコルソン(ベンの弟)
西部の町ワーロックを舞台に、町を荒らす無法者たちと彼らに立ち向かう男たちの戦いを、複雑な人間関係を絡めて描く。
近隣にあるサンパブロ牧場の持ち主マキューンと彼に雇われているカウボーイたちは、集団でやってきては町を荒らして去っていく。住民たちは集会を開いて、町を守るため「黄金の銃を持つ男」と呼ばれる凄腕ガンマンのクレイ・ブレイズデルを保安官として雇うことに決める。その相棒で賭博師のトム・モーガンがクレイとともにやってきて、賭博サロン「フランス宮殿」を開設する。
一方、マキューン一味のジョニー・ギャノンは、マキューンの極悪非道なやり方に嫌気がさしていた。仲間と町に来た際に彼はいっしょに帰ろうという弟のビリーを振り切って町に残る決心をする。さらには郡保安官に志願するのだった。
クレイは、ヒーローとして町の人々に迎えられるが、彼は、これまでの苦い経験から、無法者たちをやっつけて町が平和になれば、邪魔者扱いされやがて町から追い払われる運命にあるということを知っている。相棒のモーガンは、クレイの行く先で賭博場を開いて金を儲け、クレイの後ろ盾となってきた。彼らはこれまでそうして町から町へと渡り歩く生活をしてきたのだが、モーガンは、クレイに対して金儲けの種というだけでなく、度を越えた友情を抱いている(昨今の評論家はきっとゲイだというだろう)。彼との生活を続けるため、彼はクレイの知らないところで二人の邪魔となる者たちを死に追いやってきた。クレイを敵と憎む女性リリーの恋人ベン・ニコルソンはモーガンの画策でクレイに射殺され、彼女とクレイを追ってきた弟のボブ・ニコルソンはマキューン一味のしわざと見せかけてモーガンが撃ち殺したのだった。
サンパブロ牧場のカウボーイたちは、極悪な無法者集団という感じではなく、ボスのマキューンが悪らつなために無法化しているように思われる。町の人たちも彼らを一束ひとからげに嫌ってはいず、「カーリーとビリーはいいやつだ」と言ったり、一味だったジョニーの郡保安官就任を認めたりしている。ジョニーは、マキューンの下で、アパッチを装ってメキシコ人たちを皆殺しにした襲撃事件に加わってしまったことがトラウマになっていることを、リリーに打ち明ける。
町で結婚式があった日、モーガンとジョニーが店先のサイドウォークで言葉を交わすシーンがいい。クレイは式に呼ばれたが、呼ばれなった男二人が結婚について話す。結婚なんてすべきじゃないというモーガンの発言は、やがて判明していく彼のクレイへの思いを表しているかのようだ。
立場を異にする3人の男たちの事情が複雑に絡まって、娯楽西部劇とは思えない濃厚な人間ドラマになっている。ジョニーは、仲間たちから離れ、町のために戦う孤高の保安官だが、いかんせん、陰気すぎる。世間慣れした商売女のリリーが、どんくさいジョニーに惹かれるのはよかったねと思いつつも不思議に思った。一方、なぜか若い女の身で町の集会への出席権を持つジェシーが(亡くなった炭鉱主の父の代わりということなのか)、クレイに惹かれるのはなんとなくわかる。最後がクレイとジョニーの決闘にならず、クレイが去っていくことで丸く収まるのは、拍子抜けと思う人もいるかもしれないが、私としてはよかった。(2023.2)


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