みちのわくわくページ

○ 映画(2018年)

<見た順(降順)>
クワイエット・プレイス、 インクレディブル・ファミリー、 アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー、 ランペイジ 巨獣大乱闘、 寝ても覚めても、 ウインド・リバー、 カメラを止めるな!、 ジュラシック・ワールド 炎の帝国、 ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー、 空飛ぶタイヤ、 万引き家族、 ピーターラビット、 レディ・プレイヤー1、 シェイプ・オブ・ウォーター、 15時17分、パリ行き、 スリー・ビルボード、 ダークタワー、 スター・ウォーズ 最後のジェダイ、 

クワイエット・プレイス  A QUIET PLACE
2018年 アメリカ 90分
監督:ジョン・クラシンスキー
出演:リー(エミリー・ブラント)、エヴリン(ジョン・クラシンスキー)、リーガン(ミリセント・シモンズ)、マーカス(ノア・ジュープ)
海外旅行の際に飛行機の中で見た。音を立ててはいけない、静かな環境で見るべき映画なのに、飛行機のエンジン音や人の話し声が常に聞こえてくる中での鑑賞となったうえ、気が滅入るような設定に途中でやめようかと思ったのだが、新作だしせっかくだからと思って見続けていたら後半はどんどん緊迫感が高まってきて、最後まで見てしまった。
以前見てかなり好きだった能天気なアメリカの田舎怪物映画「トレマーズ」のシリアス家族愛ヴァージョンといった感じか。
音を立てるとすぐさまそれに反応して襲ってくる凶暴な怪物の出現により荒廃したアメリカの町。どうやら世界規模の災難らしいのだが、怪物がなんなのか、なんでこんなことになったのかといった説明は一切なく、物語は、孤立した田舎の一軒家で怪物に怯えながら極力音を立てずに暮らす若い家族の受難の日々を描いていく。
一家は、父親のエヴリン、母親のリー、長女のリーガン、長男のマーカス。手話とささやき声でのみ言葉を交わす家族のやりとりは、見ていてなんとも息苦しい。
エヴリンは、地下室に通信機を置きSOSを発信しているが、助けが来る気配はない。リーガンは、幼い弟のボーを亡くしたことでエヴリンとの関係がちょっとぎくしゃくしている。マーカスは、か弱そうな少年でいつも怯えている。そしてリーは、あろうことかこの状況下で妊娠して臨月を迎えつつある。
ある夜、家の外でリーガンとマーカスが怪物に襲われ、エヴリンが救出に向かう。同じころ、リーは家の中で破水し、侵入してきた怪物の目をかいくぐって独りで出産に挑む。
いろいろ無理があるように思える部分もあり、特に赤ん坊は生まれ出た瞬間産声をあげるという誰もが知っている事実を前になんでこんな中で妊娠するかなと突っ込みたくもなるが(この災難の前にすでに妊娠していたということなのか)、結婚前の娘から妊娠を告げられた親になったような気分でとにかくできちゃったものは仕方ないと、恐ろしく危険な事態である出産を迎え彼女は一体どうするのか?という展開にぐいぐい乗せられてしまった。
怪物の弱点が、昔のSF映画っぽくてよい。
エヴリンは、リーに子どもたちを守るよう強く依頼されたわけだが、これからも家族を守っていかなきゃならないのだから捨て身にならずにもうちょっと違う方法が取れなかったのかと悔やまれる。(2018.10)

インクレディブル・ファミリー INCREDIBLES 2
2018年 アメリカ 117分
監督:ブラッド・バード
登場人物(声の出演):ボブ・パー/Mr.インクレディブル(クレイグ・T・ネルソン)、ヘレン・パー/イラスティガール(ホリー・ハンター)、ヴァイオレット・パー(サラ・ヴォーウェル)、ダッシュ・パー(ハック・ミルナー)、ジャックジャック・パー(イーライ・フチーレ)、
ルシアス/フロゾン(サミュエル・L・ジャクソン)、エドナ・モード(ブラッド・バード。デザイナー)、リック・ディッカー(政府組織NSAの一員)、トニー(ヴァイオレットと同じ学校に通う学生)
ウィンストン・デイヴァー(実業家)、イヴリン・デイヴァー(ウィンストンの妹。発明家)、スクリンスレイヴァー
カレン/ヴォイド(ソフィア・ブッシュ。異次元のポータルを開くことのできるスーパーヒーロー)、クラッシュアー(触れずにものを潰すスーパーヒーロー)、コンクリーシア・コニー・メイソン/ブリック(体をレンガのように大きく強くできるスーパーヒーロー)、ガス/リフラックス(胃酸で物を溶かすことができるスーパーヒーロー)、ヘレクトリクス(電気を自由自在に操れるスーパーヒーロー)、スクリーチ(暗闇でも目が見え空を飛べるフクロウのような能力を持つスーパーヒーロー)、
アンダーマイナー(ジョン・ラッツェンバーガー。地底に住み巨大ドリルに乗って町を襲う犯罪者。)
飛行機で移動中に見る。「Mr.インクレディブル」(2004)の続編。スーパーヒーロー家族の話らしいが、1作目は見ていない。
今回は、どちらかというとママのヘレン、イラスティガール大活躍の巻である。
悪者との戦闘でものを壊しすぎてヒーロー活動が法律で禁じられてしまった中、ヒーロー好きの実業家ウィンストンは、マスコミを利用して再びスーパーヒーローに活躍してもらうための作戦を考え、手始めにヘレンに話を持ち掛ける。通常なら影の悪役はこのウィンストンなのだろうが、そこはひとひねりあって、敵は他にいる。
ボブは、今回は脇に回り、家事と育児と思春期の娘の恋の行方を案じて大わらわとなるのだった。
スーパーヒーロー活動も楽じゃないという、ピクサーならではの裏話に笑っちゃうということなのだろうが、どうもここまでビジネスライクだと、物をこわしまくってストレートに悪を退治するスーパーヒーローが懐かしい気もする。(2018.10)

アベンジャーズ インフィニティ・ウォー  AVENGERS: INFINITY WAR
2018年 アメリカ 150分
監督:アンソニー・ルッソ
出演:トニー・スターク/アイアンマン( ロバート・ダウニー・Jr)、ソー(クリス・ヘムズワース)、スティーブ・ロジャース/キャプテン・アメリカ(クリス・エヴァンス)、スティーヴン・ストレンジ/ドクター・ストレンジ(ベネディクト・カンバーバッチ)、ナターシャ・ロマノフ/ブラック・ウィドウ(スカーレット・ヨハンソン)、ジェームズ・“ローディ”・ローズ/ウォーマシン(ドン・チードル)、ヴィジョン(ポール・ベタニー)、ワンダ・マキシモフ/スカーレット・ウィッチ(エリザベス・オルセン)、ピーター・パーカー/スパイダーマン(トム・ホランド)
ティ・チャラ/ブラックパンサー(チャドウィック・ボーズマン)、
サノス(ジョシュ・ブローリン)、ガモーラ(ゾーイ・サルダナ)、ネビュラ(カレン・ギラン)、
ロキ(トム・ヒドルストン)、
サム・ウィルソン/ファルコン(アンソニー・マッキー)、バッキー・バーンズ(セバスチャン・スタン)、ヘイムダル(イドリス・エルバ)、オコエ(ダナイ・グリラ)、エイトリ(ピーター・ディンクレイジ)、ウォン(ベネディクト・ウォン)、マンティス(ポム・クレメンティエフ)、ドラックス(デイヴ・バウティスタ)、ペッパー・ポッツ(グウィネス・パルトロー)、コレクター(ベニチオ・デル・トロ)、ピーター・クイル/スター・ロード(クリス・プラット)、ロス(ウィリアム・ハート)、シュリ(レティーシャ・ライト)、ロケット(アライグマ)、グルート(木)
気になりつつも、中途から加われずにいたシリーズの最新作を、海外旅行の際に飛行機の中で見る。
アイアンマンとスパイダーマンは単独の映画を観たことがあるが、「アベンジャーズ」本編を見るのは初めて。ブラックパンサーもガーディアンも予告編で見ただけ。マイティ・ソーは、劇画の絵を見たことがある程度だった。
異形異能のヒーローが次から次へと出てきて、誰が誰やら、誰と誰がグループなのか、皆目ついていけない。(後で、マーベルを検索して、名前と顔をざっと確認した。)
それでも、これだけたくさんいるヒーローたちを交通整理してそれぞれ見せ場をつくっていて、名前はわからなくてもこれはさっきの彼で、これはあのときの彼女ね、といったことはわかるので、さほど混乱なく見られた。
クリス・プラットが陽気なアメリカ野郎的なピーター・クイルを演じていてうれしい。
大勢のヒーローに対して、敵はサノスとその部下若干名。サノスは、養女のガモーラを実は愛していて、巨悪の大ボスなのに苦悩している。
ヒーローたちが次々に倒されて、どうなるんだと思ったら、完結せずに終わってしまった。続きが気になるようにできているのだった。(2018.10)

ランペイジ 巨獣大乱闘 RAMPAGE
2018年 アメリカ 107分
監督:ブラッド・ペイトン
出演:デイビス・オコイエ(ドウェイン・ジョンソン)、ケイト・コールドウェル博士(ナオミ・ハリス)、クレア・ワイデン(マリン・アッカーマン)、ブレット・ワイデン(ジェイク・レイシー)、ハーヴェイ・ラッセル(ジェフリー・ディーン・モーガン)、バーク(ジョー・マンガニエロ)、ケリー・アトキンズ博士(マーリー・シェルトン)、ネルソン(P・J・バーン)、ブレイク大佐(デミトリアス・グロッセ)、ジョージ
飛行機の中で見る。
遺伝子実験中の宇宙船が不時着して危険な遺伝子ワクチンのサンプルが拡散し、それを浴びたゴリラと狼とワニが巨大化。その三匹が都会で暴れまくる、巨大動物破壊アクション。
巨大化していく白いゴリラ(アルビノである)の名はジョージ。サンディエゴの動物保護区で彼のことをよく知るのは、霊長類学者でありながらなぜか筋肉隆々の元特殊部隊隊員のデイビスで、ジョージとは手話を通して意思疎通ができる。(ドウェイン・ジョンソンは、「ロック様」と呼ばれる元WWE世界王者のプロレスラーらしい。)宇宙での秘密実験に使われていた遺伝子ワクチンは、動物を巨大化させるだけでなく狂暴化させる。話のわかる温厚なジョージも強大化とともに狂暴になっていくのだった。
ワクチンと開発しているのは金儲けしか頭にないエナジン社のワイデン姉弟で、どこか抜けている悪役コンビである。彼らは巨大化した動物たちを退治するため、シカゴの電波塔(高層ビル)から低周波を発して彼らを呼び寄せ、軍に攻撃させようとする。三匹の巨大化した動物は、町を破壊しながら塔に向かう。デイビスは、軍の攻撃から相棒を救うため、女性学者のケイトとともに三匹を追う。
デイビスは、特殊部隊にいたときの能力を発揮して、塔の上で悪い姉弟をやっつけ、ジョージに解毒剤を飲ませることに成功、ジョージはでかいままではあるが、元の気のいいやつに戻るのだった。
ゴリラと狼は動物がそのまま大きくなったのに、ワニだけちょっと怪獣化している。とにかく彼らは気持ちいいほど豪快に街を壊しまくり、ラストは3匹の乱闘となる。
話はストレートに小気味よく進み、大味で能天気だが、デイビスとケイトの主役の二人、ワイデン姉弟、要所で味を出す捜査官ラッセルなどの人物描写も行き届いていて、楽しい娯楽アクションであった。(2018.10)

寝ても覚めても
2018年 日本 ビターズ・エンド=エレファントハウス 119分
監督:濱口竜介
原作:「寝ても覚めても」柴崎友香
出演:丸子亮平/鳥居麦(東出昌大)、泉谷朝子(唐田えりか)、串橋耕介(瀬戸康史)、鈴木マヤ(山下リオ)、島春代(伊藤沙莉)、岡崎伸行(渡辺大知)、平川(仲本工事)、岡崎栄子(田中美佐子)

★どんな話か、あらすじ書いてます★

大阪で学生時代を送っていた泉谷朝子は、写真展で出会った鳥居麦(ばく)と恋に落ちる。
が、麦はある日突然いなくなり、朝子はその痛手を負ったまま東京に出てきてカフェで働く。コーヒーの出前先の酒造会社で、朝子は麦に瓜二つの青年丸子亮平と知り合う。自分を見て不自然な反応をする朝子に、亮平はどんどん惹かれていく。朝子は亮平から離れようとするが、やがて二人はつきあうことに。
5年後、麦のことは忘れて、今は亮平が好き!と言っていた朝子だが、そこに売れっ子モデルとなった麦が姿を見せるや、彼女はあっさり亮平を捨てて麦についていく。のだが、結局、麦はやっぱ違うと思って、亮平の許に帰ってくるのだった。という話。
麦と亮平は、東出の二役である。麦は風来坊であまり周りのことは考えない自由人だが、それと対照的に、亮平は気さくな関西人で真面目なサラリーマンで気配りの利く人で、ひょろっと背の高い体つきも含め、かなり感じのいい青年である。
ヒロインの魅力がよくわからなかった。ある種こういう女性が好みの男性にはたまらないタイプなんだろうかと想像するしかない。でも、朝子が、麦と再会するや否やなんのためらいもなく彼についていくのは、そういうものかもしれないと思ってしまった。
撮り方がすぐれているということで、映画を作る人が見るといろいろ面白いらしい。
麦が朝子の住むアパートにやってくるちょっとホラーなとことか、麦と別れて東北の防潮堤の上に立つ朝子とか、走る亮平と追う朝子の延々と続く超ロングショットとか、人によってはだいぶよいらしいのだが、わたしとしては悪くはないけどそんなでもなかった。
ちょっとの間はぐらかしてじらすようなところや、思っていたのとちょっとだけ違う展開に持っていくようなところがあって、それが通り一遍でなく新鮮なのかもしれない。
震災直後の人が路上にあふれている様子はああ、あのときはこうだったと瞬時に当時を思い出させるものがあるし、終りの方、亮平を追ってきた朝子が家の玄関の扉を叩いて待っていると、ドアが開いて捨てたはずの猫がぬっと差し出されるところも、猫好きではないが、とても気が利いていると思った。そういうところがいいのだろうなと思うのだが、だからといって、「ここ、すごくいい!」というところはなかった。(2018.9)


ウインド・リバー WIND RIVER
2017年 アメリカ 107分
監督:テイラー・シェリダン
出演:コリー・ランバート(ジェレミー・レナ―)、ジェーン・バナー(エリザベス・オルセン)、ベン(部族警察長。グレアム・グリーン)、ナタリー・ハンソン(ケルシー・アスビル)、マーティン・ハンソン(ギル・バーミンガム)、チップ・ハンソン(マーティン・センスメイア―)、アン・ハンソン(アルシア・サム)、ウィルマ・ランバート(ジュリア・ジョーンズ)、ケイシー・ランバート(テオ・ブリオネス)、ダン・クロウハート(アペサナクワット)、アリス・クロウハート(タントゥー・カーディナル)、マット・レイバーン(ジョン・バーンサル)、ピート・ミケンズ(ジェームズ・ジョーダン)
アメリカ北部のワイオミング州ウインド・リバー先住民居留地。
雪原で若いインディアン女性の死体が発見される。発見したのは猟師で合衆国野生生物局員のコリーである。
部族警察には殺人事件の捜査の権限がないため、FBIから捜査官が派遣される。が、やってきたのは、フロリダ生まれの新米の女性捜査官ジェーン一人だけ。
死者はコリーの亡くなった娘エミリーの友人ナタリーであり、死因は極寒の中を走り続けて冷気を吸い込んだことによる肺出血と判明する。
同時に彼女は数人にレイプされていたことがわかる。しかし、レイプを取り締まるのは州警察だが、居留地は連邦政府の管轄で、殺人事件でないとFBIが捜査をすることはないという決まりがある。(つまり、居留地で起こったレイプ事件を捜査する機関はないということになる。)
殺人事件でないことが分かると捜査が打ち切られるため、ジェーンはFBIから応援を呼ぶことができず、コリーの協力を得て、単身、捜査に乗り出すのだった。
現代の話であるが、インディアン居留地は、警察やFBIの手が届かない、だだっ広い無法地帯となっていて、みんなが銃を持っている。西部劇さながらの状況にある。
麻薬売人の若者たちのアジトでの突然の銃撃、部族警察のメンバーと石油掘削所の警備員らとの一触即発の状態から抜け出たと思った矢先の激しい銃撃戦に度胆を抜かれる。
監督のシェリダンが脚本を手掛けた「ボーダーライン」では、颯爽と登場した女捜査官が過酷な状況の中でどんどん怯えた傍観者になっていって活躍することなく終わってしまったが、こちらのヒロインは骨のあるところを見せてくれる。
ナタリーの父であるインディアンのマーティンとコリーは友人同士である。自分も娘を亡くした過去を持つコリーが、娘の死を悲しむマーティンに率直で厳しい言葉をかけるシーンがあって、そこもよかったが、ラスト、二人が雪の中に座って語り合うところがたいへん趣深い。
娘の死を悼んでか、自らも死のうと思ってか、マーティンは、顔に青と白の塗料を塗って死化粧をしているが、やり方を知らないので自己流でやってみたと言う。そうした一言にも、文化が継承されず、僻地に追いやられたインディアンの悲壮な歴史が垣間見られると思った。(2018.9)


カメラを止めるな!
2018年 日本 ENBUゼミナール 96分
監督・脚本:上田慎一郎
出演:濱津隆之(日暮隆之)、日暮真央(真魚)、日暮晴美(しゅはまはるみ)、神谷和明(長屋和彰)、松本逢花(秋山ゆずき)、細田学(カメラマン役。細井学)、山ノ内洋(助監督役。市原洋)、山越俊助(録音マン役。山崎俊太郎)、古沢真一郎(ゾンビ・チャンネルのラインプロデューサー。大沢真一郎)、笹原芳子(ゾンビ・チャンネルのテレビプロデューサー。竹原芳子)、吉野美紀(AD。吉田美紀)、栗原綾奈(AD。合田純奈)、松浦早希(撮影助手。浅森咲希奈)、谷口智和(カメラマン。山口友和)、藤丸拓哉(録音マン。藤村拓矢)、黒岡大吾(監督役。イワゴウサトシ)、相田舞(メイク役。高橋恭子)、温水栞(特殊メイクスタッフ。生見司織)
★犯人は出てきませんが、どんな映画なのか、内容をバラしています。構成を前もって知るとおもしろさ半減とも思えるので注意!★

大ヒットの映画製作もの映画。
のっけから、長回しによる低予算の自主製作っぽいゾンビ映画が始まる。ゾンビ映画製作中に、ほんとにゾンビが出てきて俳優、スタッフがゾンビに襲われ、ゾンビになっていく、というホラー映画である。首や腕がぶった切られて血が飛びまくるが、お金がかかってないので、そんなにはえぐくない。

*   *   *

この短い映画が終わり、そのあと、この映画がどのようにつくられたかの裏話へと続く。なんか普通のホームドラマになったかと思ったら、続いて映画製作現場に移り、ここからが愉快。本編中感じた変な間とか、変なアングルとか、ちりばめられた伏線がビシバシ回収されていくのが小気味よい。
監督が監督役とならざるを得ない状況に乗じて女優と男優に対し、日ごろのうっぷん晴らしのようにアドリブで罵声を浴びせたり、元女優の監督の奥さんの護身術の掛け声がやたら「ぽん」「ぽん」フレームの外からも聞こえるほど出てきたり、最後は、壊れた機材の代わりに人間ピラミッドで俯瞰ショットを撮ったりなど、笑いあり、アクションあり、クリエイターの意地あり、そして父と娘の家族の絆あり、と、バランスよく充実している。
誰もが映像の作り手の心意気を感じられるようにできているのだった。(2018.8)


ジュラシック・ワールド 炎の帝国 JURASSIC WORLD: FALLEN KINGDOM
2018年 アメリカ 128分
監督:J・A・パヨナ
製作総指揮:スティーヴン・スピルバーグ、コリン・トレヴォロウ
キャラクター創造:マイケル・クライトン
出演:オーエン・グレイディ(クリス・プラット)、クレア・ディアリング(プライス・ダラス・ハワード)、フランクリン・ウェブ(DPGコンピュータ技術担当。ジャスティス・スミス)、ジア・ロドリゲス(DPG医療担当。ダニエラ・ピネダ)、メイジ―・ロックウッド(ベンジャミンの孫。イザベラ・サーモン)、ベンジャミン・ロックウッド(財団設立者。ジェームズ・クロムウェル)、アイリス(ジェラルディン・チャップリン)、イーライ・ミルズ(ロックウッド財団運営者。レイフ・スポール)、エヴァーソル(兵器密売人。トビー・ジョーンズ)、ヘンリー・ウー博士(B・D・ウォン)、ケン・ウィートリー(傭兵。テッド・レヴィン)、シャーウッド上院議員(ピーター・ジェイソン)、イアン・マルコム(ジェフ・ゴールドブラム)
「ジュラシック・ワールド」の騒ぎから4年後。テーマパークは閉鎖されたが、恐竜たちはイスラ・ヌブラル島で生きていた。が、島の火山が噴火活動を始め、恐竜たちは生命の危機にさらされることに。
恐竜を保護すべきかどうかといった問題が持ち上がるが、アメリカ合衆国政府は何もしないことを決める。恐竜保護グループDPG(Dinosaur Protection Group)を設立していたクレアは、ロックウッド財団の助成を受けて、恐竜救出のため、DPGのチームとオーエンを連れて島に飛ぶ。しかし、財団の運営を担うミルズのねらいは、恐竜を捕獲して本土に運び、武器として闇市場で売りさばくことだった。
 前半は、島での恐竜救出、後半は、本土のロックウッドの大邸宅の地下に作られた闇市場会場で恐竜たちが大暴れという展開となる。前作で登場したインドミナス・レックスよりもさらにパワーアップしたハイブリッド恐竜インドラプトルが新たに登場して、暴れる。
ロックウッドの孫娘メイジ―が、なかなかかわいくてけなげ。ミルズの陰謀に気づいた彼女は、屋敷に潜入したクレアとオーエンらと合流し、彼らは恐竜の襲撃からひたすら逃げ回る。
 出し惜しみなく恐竜がたくさん出てくる。冒頭、豪快に登場する海竜モササウルス、火山の島に置き去りにされ悲し気に咆哮するブラキオサウルス、ユニークな石頭の恐竜ステイギモロクなど、悲喜こもごもでバラエティに富んでいる。オーエンと彼がかつて世話したヴェロキラプトル、ブルーとの再会もよい。
 ラストについては賛否両論のようだが、恐竜の本土上陸は、クレイトンの原作小説「ジュラシック・パーク」にもすでにあったように思う。3作目でどう風呂敷をたたむのか、尻つぼみにならないでほしい。
「ジュラシック・パーク」(1993)「ロストワールド/ジュラシック・パーク」(1997)に出ていたジェフ・ゴールドブラムが同じマルコム博士役でちょっとだけ出演、太って年取っていたけど、ぎょろ目でそれとわかった。(2018.8)
<関連作品>
ジュラシック・ワールド」(2015年)
「ジュラシック・パーク」(1993年)、「ロストワールド/ジュラシック・パーク」(1997年)、「ジュラシック・パークV」(2001年)


空飛ぶタイヤ
2018年 日本 公開:松竹 120分
監督:本木克英
原作:池井戸潤「空飛ぶタイヤ」
主題歌:サザンオールスターズ「戦う戦士(もの)たちへ愛を込めて」
出演:<赤松運送>赤松徳郎(赤松運送社長。長瀬智也)、赤松史絵(徳郎の妻。深田恭子)、門田俊一(整備士。阿部顕嵐)、谷山耕次(整備課長。六角精児)、高嶋靖志(営業担当。大倉孝二)、安友研介(運転手。毎熊克哉)、宮代直吉(専務。笹野高史)、
<ホープ自動車>沢田悠太(販売部カスタマー戦略課長。ディーン・フジオカ)、小牧重道(車両製造部課長。ムロツヨシ)、杉本元(品質保証部若手社員。中村蒼)、野坂康樹(販売部部長代理。村杉蝉之介)、長岡隆光(販売部カスタマー戦略課社員。近藤公園)、室井秀夫(品質保証部課長。和田聰宏)、柏原博章(品質保証部部長。木下ほうか)、狩野威(常務取締役。岸辺一徳)、
<ホープ銀行>井崎一亮(本店営業本部調査役。高橋一生)、濱中譲二(本店営業部部長。津田寛治)、巻田三郎(本店専務。升毅)、小茂田鎮(自由が丘支店課長代理。渡辺大)、頭取(津嘉山正種)、益田順吉(販売ディーラー。木下隆行(TKO))
<そのほか>
高幡真治(港北中央署刑事。寺脇康文)、榎本優子(週刊誌の記者。小池栄子)、
野村征治(野村陸運社長。柄本明)、相沢寛久(富山ロジスティックス総務課長/元整備課長。佐々木蔵之介)、
進藤治男(はるな銀行蒲田支店銀行員。筒井巧)、
柚木雅史(浅利陽介)、柚木妙子(谷村美月)
中小企業が大企業相手に渡り合って名誉を挽回すると言う、訊いただけで痛快そうな話。
トレーラーの脱輪事故が起こり、空を飛んだタイヤが歩行者の女性を直撃し即死させてしまう。自動車製造元の大企業ホープ自動車の品質保証部は、事故車を使っていた運送会社赤松運送の整備不良が事故の原因だと報告。しかし、自社の整備状況にミスがなかったことを確信する赤松運送の社長赤松徳郎は、社の名誉挽回のため、一人で真相究明に乗り出す。
宣伝ポスターなどでは、赤松社長役の長瀬智也と、ホープ自動車側の沢田役のディーン・フジオカ、ホープ銀行の井崎役の高橋一生の3人の顔がどーんと出ていたが、井崎は他の2人と絡まず、地味に有能さを見せるのみで、映画はほぼ赤松と沢田の話となっている。
事故が起こってからの赤松運送の窮状が描かれたあとは、沢田を中心としたホープ自動車社内の話に移り、沢田は割とすぐ品質保証部の主張を疑い始める。
赤松が、大企業を相手に煮え湯を飲まされた運送業者の人々を訪ね、ホープ自動車のリコール隠しの真相を追っていく様子は、ミステリーみたいでおもしろかった。
ホープ自動車から2億円の金を提示され、社長ならがまんして受け取らなきゃと思いつつ、突っぱねた赤松に喝采を送りたくなるのは、やはり映画ならではの痛快さか。
どきどきわくわくするような、長瀬とフジオカの対決を期待したが、そういう展開にはならなかったのは、ちょっと残念だった。(2018.7)


万引き家族 SHOPLIFTERS
2018年 日本 公開ギャガ 120分
監督・脚本・編集:是枝裕和
出演:治(リリー・フランキー)、信代(安藤サクラ)、亜紀(松岡茉優)、翔太(城桧吏)、ゆり/樹里/凛(佐々木みゆ)、柴田初枝(樹木希林)、柴田譲(緒方直人)、柴田葉子(森口瑤子)、川戸頼次(雑貨屋主人。柄本明)、亜紀の客(池松壮亮)、前園(高良健吾)、宮部(池脇千鶴)、北条保(山田裕貴)、北条希(片山萌美)
カンヌ映画祭最高賞を受賞し、大ヒット中の疑似家族ドラマ。
貧困、雇用、年金なりすまし受給、子どもの虐待など、現代日本での問題の数々を織り込んで、家族とは何かを問う。というと、救いがなくて暗そうだが、そんなことはない。
前半の、古ぼけた狭い狭い一軒家で6人の老若男女ががちゃがちゃしながら生活している様子は、いろいろ不便そうで不潔そうで、貧乏くさいが、至って楽しそうである。往年の日本映画、たとえば森崎東監督の女シリーズで描かれた、新宿芸能社の経営者夫妻とストリッパーの女性たちの雑居生活をほうふつとさせるが、森崎映画のような濃厚さと下品さはなく、こちらはそこはかとなく淡白である。監督が違うと雰囲気がだいぶ違うのが、おもしろい。
信代がスリップを着ているのを見て、なつかしかった。夏の暑い日に畳の部屋で大人の女性がスリップ1枚でうちわを扇いでいる、というのは昔の日本映画ではかなりよく見かけたものだ。いまどきスリップかい!と突っ込みたくなったが、やりたかったのかなあと思って見過ごすことにした。
これは昭和を回顧した映画ではなく、現代の話である。昭和然とした愉快な家族は、現代においては偽の家族でしかないということか。
メディアの宣伝によって、彼らが疑似家族であることは、公開前にそこら中に知られてしまった。それを知らずに、え、でもこの家族、なんか違和感ない?と思いながら見たかった。(2018.7)


ピーターラビット PETERRABBIT
2018年 アメリカ 95分
監督:ウィル・グラック
原作:ビアトリクス・ポター
出演:ビア(ローズ・バーン)、トーマス・マグレガー(ドーナル・グリーソン)、マグレガーじいさん(サム・ニール)、声の出演:ピーターラビット(ジェームズ・コーデン)、ベンジャミンバニー(コリン・ムーディ)、フロプシー(マーゴット・ロビー)、モプシー(エリザベス・デビット)、コトンテール(デイジー・リドリー)
台湾旅行の際に、チャイナエアラインの飛行機の中で見る。
子どもが小さい時にいただいたマグカップや皿やスプーンでイラストを日々目にし、小型絵本を子どもに読んであげたこともあるので、だいぶ親しみのあるキャラクターである。
絵本の有名な絵と同じショットが出てきて、おお!と思う。
絵本の話の中身は忘れてしまったが、映画の中でうさぎのピーターたちが置かれた状況はなかなかシビアである。ピーターは、両親と三つ子の姉妹と従兄弟のベンジャミンと暮らしていたが、ある日、農園が作られ、住んでいた場所を追われる。農園を営むのはマグレガー老人。ピーターの父は、マグレガーにつかまってパイにされてしまい、母もその後死んでしまう。
ピーターは、畑に忍び込んでは作物を荒らし、偏屈老人のマクレガーといがみあっていた。隣に住む女流画家のビアは、動物好きで、何かとピーターたちをかばってくれる。ある日、畑でピーターたちを追い回していたマクレガーは、突然倒れ、そのまま死んでしまう。
彼の後にやってきたのは、遠い親戚の青年トーマス・マクレガー。彼は、ロンドンの大きなおもちゃメーカーに勤務していたが、人事に不満を抱いて店内で暴れ、首になってしまったのだ。潔癖症で動物嫌いの彼とピーターらは、壮絶なバトルを開始する。
が、一方で、トーマスとビアは恋に落ちていく。ビアの前では動物好きを装うトーマスだったが、ある日、両者の戦いが激化して、ビアの家を壊してしまう。動物嫌いであることがばれてビアの非難を浴びたトーマスは町を去るが、家が壊れたビアまで町を出ていくことに。ビアを引き留めたいピーターは、自分の行き過ぎた行動を反省し、トーマスを呼び戻すため、ベンジャミンとロンドンに向かうのだった。
イギリスの湖水地方の田園風景が美しい。
動物たちは、いわゆるモフモフしていてかわいいのだが、ピーターはやんちゃというよりけっこう乱暴者でジャイアンみたいなやつで、だんだんおじさん面に見えてくる。一度そう思うと、もうおじさんうさぎ(おじさん面の青年うさぎなのだが)にしか思えなくなってきて愉快だ。当初は、自分たちの家と食べ物の確保のためにトーマスと戦っていたのだが、次第にビアと恋仲になっていく彼に嫉妬し、恋敵をやっつけたい一心で、攻撃がエスカレートしてしまう。ただかわいいだけの動物映画ではなく、厭世的なことを言う鶏が出てきたり、ビアとトーマスの大人の恋愛が描かれたり、愉快でほのぼのしたギャグがある一方、ピリッと辛いのもあって、なかなか楽しい。
ピーターとのんびりした従兄弟のベンジャミン(茶色の毛に茶色のシャツを着たセンスのなさを何回となくけなされるのが可笑しい)のコンビもなかなかよい。(2018.6)


レディ・プレイヤー1 READY PLAYER ONE
2018年 アメリカ 140分
監督:スティーブン・スピルバーグ
原作:アーネスト・クライン「ゲームウォーズ」
出演:ウェイド/パーシヴァル(タイ・シェリダン)、サマンサ/アルテミス(オリヴィア・クック)、エイチ/ヘレン(リナ・ウェイス)、ダイトウ/トシロウ(森崎ウィン)、ショウ/ソウ(フィリップ・チャオ)、ノーラン・ソレント(ベン・メンデルスゾーン)、フナーレ(ハナ・ジョン=カーメン)、アイロック(T・J・ミラー)、オグデン・モロー(サイモン・ペッグ)、アノラック/ジェームズ・ハリデー(マーク・ライラン)
近未来。すさんだ現実世界には希望をもてず、若者たちは「オアシス」と呼ばれるVR(ヴァーチャル・リアリティ)世界でのゲームを楽しんでいた。オアシスの創設者ハリデーは、亡くなる際に遺言を残す。それは、オアシスに仕掛けた謎(3つの鍵)を解き、隠された宝(イースターエッグ)を最初に見つけた者に、莫大な遺産とオアシスの後継者としての権利を与えるというものだった。
叔母とその恋人とスラムのアパートに住み肩身の狭い思いをしている17歳の若者ウェイドは、オアシスではパーシヴァルと名乗り、友人のエイチとともに、鍵の争奪戦に参加していた。最初の鍵を見つけた彼は、一躍オアシスの有名人となる。彼は、「アキラ」の金田バイクを駆る美少女サマンサや、ダイトウ、ショウなどと知り合い、仲間とともに、エッグ獲得を狙う巨大企業101の陰謀に立ち向かっていく。
「オアシス」と現実世界でのできごとが並行して描かれ、オアシスで知り合った仲間と現実世界で出会う場面が、いちいちよい。
80年代の映画やゲームのキャラクターがふんだんに出てきて、「シャイニング」まで出てくるのは、たしかに楽しいのだが、ポップカルチャーにそんなには思い入れがないので、ガンダムやゴジラが登場してえんえんと続く戦闘シーンなどは、実はちょっと飽きてしまった。
エッグの発見場面に至って、敵味方ともに感動して見入っているのはよかった。


シェイプ・オブ・ウォーター THE SHAPE OF WATER
2017年 アメリカ 124分
監督:ギレルモ・デル・トロ
出演:イライザ(サリー・ホーキンス)、半魚人(ダグ・ジョーンズ)、ストリックランド(マイケル・シャノン)、ジャイルズ(リチャード・ジェンキンス)、ホフステトラー博士(マイケル・スタールバーグ)
囚われの半魚人と、口のきけない孤独な女性イライザの恋。
国の秘密機関である研究所に、密かに謎の水棲生物が輸送されてくる。夜間勤務の掃除婦イライザは、青く光る鱗に全身を覆われた半魚人の姿を目にし、「彼」に心引かれていく。
当局による半魚人の生体解剖を阻止するため、イライザらは半魚人救出を計画し、ソ連のスパイは半魚人暗殺を計画する、二つの企てが同じ夜に決行され、さらにその企てに研究所の警備担当官が気づいてしまい、果たしてイライザは半魚人を脱出させることができるのか!?というサスペンスが盛り上がるあたり、わくわくする。ソ連のスパイの介入によって事態がひたすらイライザと半魚人に優位に動いていくのが、うまくいきすぎると思いつつも気持ちがいい。それまでひたすら憎々し気なふるまいを見せていた警備担当官ストリックランドの買ったばかりの新車がぐしゃっとつぶされるのが痛快だった。
ゲイの画家ジャイルズ、イライザの同僚の黒人女性ゼルダ、家庭人の一面を見せつつもやはり一身に憎まれ役を負うストリックランドと、脇の人々がなかなか面白い。
イライザの首の傷跡がついた理由については最後まで明かされないが、彼女が切り落とされたストリックランドの指をいとも平然と拾って紙袋に入れたり、半魚人を間近に見ても動じなかったりする様子から、むごいことや異常な状況に慣れている、これまでいろいろ辛い目に遭ってきた人なのだなということが窺え、それゆえ異形の者を受け入れて幸せそうになっていくのが、なんか切なくてよかった。
半魚人はもっと暴れるのかと思ったら、そんなに暴れなかった。暴れる半魚人、薄幸なヒロイン、二人の悲恋! というハードな感じかと思ったら、割と能天気な展開なのもよかった。(2018.3)


15時17分、パリ行き  THE 15:17 TO PARIS
2018年 アメリカ 94分
監督:クリント・イーストウッド
出演:スペンサー・ストーン(本人)、アンソニー・サドラー(本人)、アレク・スカラトス(本人)、ヘイディ(アレクの母。ジェナ・フィッシャー)、ジョイス(スペンサーの母。ジュディ・グリア)、校長(トーマス・レノン)、マーク・ムーガリアン(本人)、イザベル・リサチャー・ムーガリアン(本人)、アヨブ(犯人。レイ・コラサーニ)
実話を数多く映画化してきたイーストウッドが、実際に事件に関わった人物本人をキャストに起用して映画化。
2015年、オランダのアムステルダムからフランスのパリに向かう高速列車内において、銃乱射事件が起こった。乗り合わせたアメリカの若者3人が犯人を取り押さえ、大惨事になるのを阻止した。その3人の若者と、犯人に撃たれて九死に一生を得た乗客の男性とその妻などを事件の当事者本人が演じる。
パリへ向かう高速列車。車内のトイレから銃を持った男が出てきて、廊下にいた乗客の男性の首を撃つ。車内はパニック状態となり、観光旅行に来て電車に乗っていたスペンサー、アレク、アンソニーの3人も、座席の陰に身を隠す。が、スペンサーは犯人に突進し、アレクが加勢して犯人を取り押さえる。犯人捕獲後は、アンソニーと乗客の医師も加わって撃たれた乗客の救命活動に努め、乗客は一命をとりとめる。
列車に乗り込む乗客たちの様子から始まり、時間を追って事件の経過が描かれるのかと思いきや、事件は一瞬で収束する。では映画では他に何が描かれているのかというと、三人の若者の少年時代から現在にいたるまでである。学校生活になじめず校長室に呼び出しを食らってばかりいた彼ら3人の出会いと別れ、そしてそのあとは主にスペンサーに的を絞って、彼のこれまでの人生を追う。彼はあこがれのアメリカ空軍に入ったが、第一志望のパラシュート救出隊には合格できず、ポルトガルで衛生兵としての訓練を受けている。アレクは軍人だった父の血を引いて、オレゴン州兵となり、アフガニスタンに派遣されている。アンソニーについてはあまり詳しく描かれないが、大学生か大学出の民間人である。スペンサーとアンソニーはイタリアを旅行して、ドイツでアレクと合流、3人はアムステルダムで狂乱の夜を過ごした後、パリを目指す。
ラストのパレードが実際のニュースかなんかの映像だろうというのは分かるが、フランスのフランソワ・オランド大統領による表彰はどっちなのかわかりにくく、検索すると、どうやらあれは実際の大統領の映像と別撮りの映像をうまくつなげているらしい。
ずっとぱっとしなかった若者が、英雄になる瞬間をとらえた映画なのだろうが、なんだか不思議なものを見た思いがした。
イーストウッドというと、とにかく突き詰める人というイメージがある。演技とは何か、フィクションとは何か、とことん追及してたどり着いた境地なのだろうか。イタリアの運河を行く観光船に乗って旅先で知り合った女の子と自撮りに興じるアンソニーとスペンサーの楽し気な様子が割と延々と映される。別にさほど退屈ではなく楽し気でいいなと思うのだが、でもこれって若者が観光してるだけだよなあとも思い、なんだか実験映画みたいだとも思った。(2018.3)


スリー・ビルボード THREE BILLBOARDS OUTSIDE EBBING, MISSOURI
2017年 イギリス/アメリカ 116分
監督:マーティン・マクドナー
出演:ミルドレッド・ヘイズ(フランシス・マクドーマンド)、ウィロビー署長(ウディ・ハレルソン)、ディクソン(警官。サム・ロックウェル)、アン・ウィロビー(署長の妻。アビー・コーニッシュ)、ロビー・ヘイズ(ミルドレッドの息子。ルーカス・ヘッジズ)、アンジェラ・ヘイズ(ミルドレッドの娘。キャスリン・ニュートン)、チャーリー(ミルドレッドの元夫。ジョン・ホークス)、ペネロープ(チャーリーの恋人。サマラ・ウィーヴィング)、レッド・ウェルビー(広告店長。ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ)、パメラ(ケリー・コンドン)、ジェームズ(バーの店主。ピーター・ディンクレイジ)、ディクソンのママ(サンディ・マーティン)、アバークロンビー(ウィロビーの後任。クラーク・ピータース)
アメリカ、ミズーリ州の田舎町エビングを舞台に描かれる人間模様。
ミルドレッド・ヘイズは、町の広告店に依頼して、人も車もほとんど通らない道路端にある古い3つの看板に広告を出す。それは、娘を殺した犯人の捜査について一向に進捗のない町の警察を批難するものだった。ミルドレッドの娘アンジェラは、その道路端で強姦され殺されたのだった。名指しで糾弾されたウィロビー署長は真摯にミルドレッドに事情を説明しようとするが、暴力的で差別主義者のディクソン巡査はミルドレッドの行為に腹を立てる。
この映画については、予測不能の展開などと言われているが、どんなふうかというとこんな感じだ。
看板にでかでかと出したくなるほど捜査をちゃんとしてくれない警察署長とは、一体どんな悪徳警官なのかと思いきや、ごくまっとうな男が登場、「ある決闘」での悪ボスぶりとは一転、ハレルソンが演じる警察署長は頼りになりそうな、家族思いの警察署長で、癌で余命いくばくもないというのに冷静で落ち着いている。(自分が癌を患っていることを町の人たちのほとんどが知っていることを彼だけが知らない、というのが田舎っぽい。)
ミルドレッドがその死を悲しんでいるアンジェラは、割とヤンキーな娘で、母娘の中はあまりよくなかったようである。最後に出かけるとき、母と娘は激しい口喧嘩をし、車を使いたいというアンジェラに対してミルドレッドは歩いて帰れといい、アンジェラは「レイプされても知らないからね!」という捨てセリフを残していたのだった。 
署長は癌が進行する前に自ら命を絶つ。尊敬する署長を失ったディクソンは暴走し、広告店のレッドを襲って大けがを負わせる。なんだか救いがなくなってきたなと思っていると、実にしっかりした黒人の新署長が赴任してくる。
看板を焼かれたミルドレッドは、ディクソンの仕業と思いこみ、火炎瓶で警察署を焼き打ちにする。署内には誰もいないことを確かめるため何度も電話をかける。誰も出ないが、じつはディクソンがいる。ディクソンはウィルビーが自分に遺した手紙を読んで感激していたため、電話に出るどころではなかったのだ。だが、誰もいないことを確認したと思ったミルドレッドは、火炎瓶を投げまくって警察署を燃やし、ディクソンは重度の火傷を負う。
重傷のディクソンは、病室で自分が暴行を加えたレッドと同室になる。包帯でぐるぐる巻きにされていて顔が見えないため、自分に暴行した張本人とも知らず、レッドは不自由な体でそばにやってきて、ディクソンに水を差しだしてくれるのだった。
退院したディクソンは、ある日パブで自慢そうにレイプ殺人の話をしている男を見つけ、彼こそがアンジェラ殺しの犯人だと確信する。(犯人が見つかるとしたら、酒場で酔った犯人が犯行について口を滑らせるような場合だと、ウィロビーの手紙に書いてあった通りのことが起こるのである。)ミルドレッドもその知らせを受けるが、しかし、後で人違いだっだことがわかる。
というわけで、暗い先行きが見えては覆り、好転しそうだと思うと当てが外れ、物語は一筋縄では進まない。が、一貫して、地味だけどエキセントリックな人たちのなんともやりきれない話である。
なのになんでこうも後味が悪くないのか。ミルドレッドは、決して好感を抱きたくなるようなおばさんではないのに、なぜあんなにかっこよく見えるのか。いやなやつっぽさを全面に出して登場したディクソンがなんでだんだん憎めなくなってきてしまうのか。
それはつまり彼らがいいわけも泣き言も言わないからではないだろうか。彼らは、ただ、自分はこうなったからこうやるんだということで行動し、「わたしってこんなにかわいそう」といった自己憐憫のかけらも見せない。
たとえば、ミルドレッドは、自分が車を使わせてやらなかったせいでアンジェラが殺されてしまったし、看板を焼いたのは実は自分の元夫のチャーリーなのにディクソンが犯人だと思って警察署を焼いてしまい、しかも中に人がいないことを電話で確認したにも関わらずディクソンがいて火傷を負わせてしまった。でもそのことをミルドレッドは口にしない。「あのときアンジェラに車を貸しておけばよかった」とか「看板を燃やした犯人はディクソンに間違いないと思った。チャーリーだとは思わなった。」とか「警察署に人がいるとは思わなかった、だって、何度も確認したんだから。」とか「私のせいじゃない」あるいは「全部私のせいだ」と言わない。ただ、画面で状況がわかりやすく淡々と示され、そのことがどのような思いとなって彼女の中にあるのか、それについては、観る者の想像に委ねられている。これは観る者にとってはとても手ごたえの感じられることで、ありがたい。
後になって、ミルドレッドは、ディクソンに「警察署に火をつけたのはわたしだ」とだけ告げ、ディクソンは「他にだれがいる」といったような返事を返す。そうしたあっさりとした会話がしぶいのだ。(2018.2)


ダークタワー THE DARK TOWER
2017年 アメリカ 95分
監督:ニコライ:アーセル
原作:スティーヴン・キング「ダークタワー」
出演:ガンスリンガー/ローランド・デスチェイン(イドリス・エルバ)、黒衣の男/ウォルター・オディム(マシュー・マコノヒー)、ジェイク・チェンバース(トム・テイラー)、アラ(クローディア・キム)
異次元世界のヒーローと現代の超能力少年が世界を壊そうとする幻術使いの男と戦うSFファンタジーアクション。
中間世界と呼ばれる異次元空間にダークタワーという黒い塔があって、世界を支えている。塔を破壊しようとする男ウォルターと塔を守る使命を持つ男ローランドとの戦いに、根本世界(現代)の超能力を持った少年ジェイクが巻き込まれる。
ローランドは、最後のガンスリンガーである。ガンスリンガーとは、塔を守る使命を帯びた騎士のようなものらしく、剣の代わりに銃を武器とする。アーサー王の剣エクスカリバーから作った拳銃、旧式の45口径リボルバーを何丁も身に着けていて、すばらしい銃撃の技を見せる。早撃ちもさることながら、瞬時にして弾を込める技がすごい。
対するウォルターは、幻術を使う。彼が一言命じれば、人は自分の意志に反して、人を殺し、自分を殺す。(だが、ローランドにはこの幻術が効かない。)彼は、超能力を持った子どもを拉致してきて、その力を利用して塔を破壊しようともくろんでいる。
ジェイクは、現代のニューヨークで暮らす少年だが、夜ごとに中間世界の夢を見ていた。彼が精神に異常をきたしていると考える母と継父は、施設に預けようとする。しかし、迎えに来た二人の男女は、施設のスタッフを装ったウォルターの部下であった。
彼を中間世界に拉致しようとする彼らの手を振り切ったジェイクだったが、異世界間移動ができるポータルの場所をつきとめ、中間世界へ入る。荒野でジェイクは、ローランドに出会う。圧倒的な勢いを振るうウォルターに父を殺され、最後のガンスリンガーとなったローランドは、塔を守るという使命がもはや達成不可能であると諦め、ただ復讐のためだけに生きているのだった。
スティーブン・キングの同名の原作も読んでみようかなと思ったら、全7巻、文庫本では2巻目以降は上下巻あるいは上中下巻からなるという壮大な物語だと知って、読む気力が失せてしまった。そのようなものを映画はたった95分のシンプルな活劇にしちゃったもんだから、原作ファンには評判がよくないようだ。
しかし、わたしとしては、ガンマンと少年が知り合い、ふたりで悪いやつをやっつけるという話になっているのが、すっきりとしてわかりやすく、おもしろかった。母を失ったジェイクが、復讐のみに駆られるローランドをいさめるところなど泣かせる。空き缶を並べて、ローランドがジェイクに銃の撃ち方を教えるシーンもなつかしくていい。ローランドが唱える「我々は手で撃たない。心で撃つ。」云々のガンスリンガーの信条も、フォースとか、東洋武術とかを思わせるようで興味深かった。(2018.2)

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