みちのわくわくページ

○ 日本映画(2004・5年)

<見た順(降順)>
2005年: ALWAYS 三丁目の夕日、 亡国のイージス、 姑獲鳥の夏、 ローレライ、 
2004年: 笑の大学、 69シクスティナイン、 ニワトリはハダシだ、 ハウルの動く城、 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ!夕陽のカスカベボーイズ

<2005年>
ALWAYS 三丁目の夕日
2005年 「ALWAYS三丁目の夕日」製作委員会 133分
監督:山崎貴
原作:西岸良平「三丁目の夕日」
出演:茶川竜之介(吉岡秀隆)、古行淳之介(須賀健太)、鈴木則文(堤真一)、鈴木トモエ(薬師丸ひろ子)、一平(小清水一揮)、六子(堀北真希)、ひろみ(小雪)、宅間医師(三浦友和)、キン(もたいまさこ)
昭和33年、東京の下町で繰り広げられる人間模様。
小さな自動車修理会社鈴木オートの社長とその妻子、集団就職で東北から上京してきて鈴木一家に住み込みで働く六子。子ども相手の駄菓子屋をしながら作家を目指す青年茶川と、赤の他人の茶川に引き取られるはめになった淳之介少年、 友人の子淳之介をもてあまし茶川に押しつける飲み屋のママひろみ。
彼らの生活がふんだんなエピソードともに語られる。黄昏色に染まるロケセットの背景に聳える竣工中のCGの東京タワーは、物語の進行とともに背丈を伸ばしていく。
人情とか貧しさとか不便さとかなつかしさとか、そういうものに感じ入って、豪快な親父(「屁が出ちまう」から芋は食わない)に、けなげな少年たちに、ほっぺの赤い田舎娘に、しょぼくれた文学青年に、孤独な医師に、笑わされ泣かされる。
夥しいばかりの昔懐かしい大道具・小道具は、資料を研究して再現されたのだろう。細部をつつけばあらは出るだろうし、監督は若いからよくわかってないと、同時代を生きた人なら言いたくなるのかも知れない。これよりちょい後に生まれた私は、昭和の親父はそうそう簡単に女子どもに頭を下げたりしないだろうと思いつつも、画面の美しさを楽しんだ。寝起きのこどもの髪の毛にはかわいい寝ぐせがみられ、走る時はげたで全力疾走する。心配りのある映画だと思う。 (2005.11)


亡国のイージス
2005年 AEGIS ASSOCIATES 127分
監督:阪本順治
原作:「亡国のイージス」福井晴敏
出演:千石先任伍長(真田広之)、如月行1等海士(勝地涼)、宮津副長(寺尾聴)、風間水雷士(谷原章介)、竹中船務長(吉田栄作)、杉浦砲雷長(豊原功補)、ヨンファ(中井貴一)、ジョンヒ(チェ・ミンソ)、ドンチョル(安藤政信)、渥美内事本部長(佐藤浩市)、瀬戸内閣情報官(岸部一徳)、梶本総理大臣(原田芳雄)
最新鋭の防空システムを搭載した海上自衛隊のイージス護衛艦「いそかぜ」 が、乗っ取られた。犯人は、日本国に反旗を翻した宮津副長以下「いそかぜ」の幹部候補生と、元某国工作員ヨンファの率いるテロリスト・グループ。宮津は、 一人息子をDAIS(防衛庁情報局)によって死に追いやられたことから、ヨンファと手を組んだのだった。アメリカが極秘裏に開発した殺人ガス兵器 GUSOHによる東京湾攻撃を盾に、彼らは日本政府にとてつもない要求をしてきた。
一度は離艦したものの、再び艦内に潜入した先任伍長千石は、謎の若き1等海士如月とともに、反撃に出る。
宮津一派の反逆の動機がいまいち不鮮明で説得力がない。豊原の砲雷長はなか なかいいが、対照的に他の幹部候補生はもう少し活躍してもいいのではと思った。原田芳雄の総理大臣は、こういうタイプの総理をしばらく見ていないなという ようななつかしい感じがした。心の傷を持つ若者如月行は原作で一番人気のキャラらしいが、名前からしてかっこよすぎで、いくらなんでもあまりにも男前な役 回り。(いや、勝地涼、いいんだけど。)
しかし、なによりも、真田、中井、佐藤の40代半ばトリオの競演が楽しい。
普通にまっとうな感覚を持った中年男性が日本を救うという設定は痛快だ。 「ラストサムライ」ではかなりかっこいいところを見せてくれた真田広之だが、最近は脇役ばっかりだったので、これくらい活躍してくれるとうれしい。 い。中井貴一の仇役も目がすごく悪そうでいい。それに比べると佐藤浩市は地味な役回りだが、内面の葛藤を極力押さえて物静かな男を好演している。 (2005.8)


姑獲鳥(うぶめ)の夏
2005年 小倉事務所 123分 
監督:実相寺昭雄
原作:「姑獲鳥の夏」京極夏彦
出演:京極堂(堤真一)、関口巽(永瀬敏之)、榎木津礼二郎(阿部寛)、木場修 太郎(宮迫博之)、中善寺敦子(田中麗奈)、久遠寺涼子/梗子(原田知世)、久遠寺嘉親(すまけい)、久遠寺菊乃(いしだあゆみ)、久遠寺牧朗(恵俊 彰)、内藤(松尾スズキ)、原澤(寺島進)、中善寺千鶴子(清水美砂)、関口雪絵(篠原涼子)、傷痍軍人[水木しげる](京極夏彦)
昭和27年夏、東京。不気味な噂が流れる久遠寺産婦人科医院。院長の娘婿の牧朗が一年半前に突然密室から姿を消し、妻の梗子はそれ以来二十ヶ月もの間妊娠 し続けているというのだ。
古書店主にして陰陽師の京極堂こと中善寺秋彦が、旧家において発生した殺人事件の謎を解く。
原作においてかなり鮮明な個性を見せる登場人物たち、榎木津、木場、敦子の配役は、ぴったりはまっていると思う。堤の京極堂は、重量感が有りすぎて、原作 から受けた飄々とした感じがあまり見受けられなかったのだが、これはこれでいいかな。関口はうじうじした奴ってだけでこっちが引くほどの神経症的な変人ぶ りが出ていなかったのが残念。愛人を亡くして暴走する寺島進はいい。
予告篇でいきなり仰角の本棚と天井のショットが出たときに、心の中で「やったね!」と叫んだ、つまり、例の部屋(書庫)に入ってから天井ばかり見ていた関 口の視点をとらえるという、謎解き上相当重要なポイントがここで示されていると思ったのだが、これは私の一人合点。あれは、例の部屋ではなく「京極堂」の 一画であり仰角にもさして意味はないようなのだった。めまい坂は思っていたほどくらくらしなかったし、クライマックスの死体出現シーンはいまいちわかりに くかったし、話はややこしすぎて途中からどうでもよくなってくる。でも、なぜかがっかりしたという気は起きない。堤、阿部、宮迫が好きなせいもあるのかも 知れないが、個人的には好きな映画。(2005.8)

関連作品:「魍魎の匣」(2007年)

ローレライ
2004年 フジテレビジョン・東宝ほか 128分
監督:樋口真嗣
原作:福井晴敏「終戦のローレライ」
出演:絹見艦長(役所広司)、木崎大尉(柳葉敏郎)、時岡軍医(國村隼)、田口 掌砲長(ピエール瀧)、岩村機関長(小野武彦)、小松機関員(KREVA)、西島水測長(井上肇)、鍋坂通信長(塚本耕司)、船田水雷長(栗根まこと)、 唐木水測員(近藤公園)、折笠一曹(N式潜正操舵手、妻夫木聡)、清永一曹長(N式潜副操舵手、佐藤隆太)、パウラ(香椎由宇)、高須技師(石黒賢)、浅 倉大佐(堤真一)、西宮元駐米大使(橋爪功)、楢崎大将(伊武雅刀)、大湊中佐(鶴見辰吾)、ジェイコブ船長(タイロン・パワーJR)、マイノット中尉 (コルター・アリソン)、マイノット中尉(老後)(ゴードン・ウェルズ)、作家(上川隆也)
第二次世界大戦末期。絹見(まさみ)少佐を艦長とする潜水艦伊507は、ある闇の計画によって企てられた東京原爆投下を阻止すべく、ミッドウェーの米軍基地に向かう。同艦には、ナチスの開発した究極の探査装置ローレライが搭載さ れていた。
男ばかりの潜水艦に美少女が乗り合わせている謎は、ナチスというなんでもありの存在のせいであっさり説明がつけられる。ローレライシステムの秘密はSFの乗りで、物語は劇画あるいは戦闘アニメ風だが、役所広司や妻夫木聡ほか、乗組員の面々に魅せられ、手に汗にぎる怒濤のクライマックスまで、わくわくしながら見た。楽しかった。
途中で乗組員の半数が下船するシーン。軍医がカメラを託す件りなど大いに泣けたのだが、あれは実際だったらああはならなかったではないか、当時の日本兵は上官が行くといったら自分は行かないとは言えずにほとんどがついていったのではないか、とも思われるのだが、そうであってはならない、という作者の思いがこめられていたような気もする。(2005.4)



<2004年>
笑の大学
2004年 日本 東宝 121分
監督:星護
原作・脚本:三谷幸喜
出演:向坂睦男(さきさかむつお。役所広司)、椿一(稲垣吾郎)、廊下の警官(高橋昌也)、青空寛太(小松政夫)
ラジオドラマ、舞台に続き、映画化された三谷幸喜脚本によるコメディ。
戦時下の東京を舞台に、厳格な検閲官向坂と銀座の劇団「笑の大学」の座付き作家の青年椿のやりとりを、哀愁と笑いを交えて描く。笑いを追求する椿は、向坂から劇団の芝居の上演許可を得るため、何度も台本を書き直して、向坂に笑いについての理解を求める。次第に椿の情熱にほだされていく向坂。芝居に警官を登場させることとなり、向坂が演じて見せる場面がある。(ここが好評のようだが、わたしはどうもわざとらしく見えてしまった。)
大河ドラマの「新選組!」などもそうだが、三谷幸喜氏は、状況設定がコメディにそぐわないものをあえて取り上げることがある。劇団の役者たちからは体制におもねていると批判されながら、上演のため必死に向坂との合意を目指す椿の真摯さは切なすぎ、その彼が召集されたことを思うと、どうにも気が滅入って笑う気になれないのだった。(2021.12)

69 シクスティナイン
2004年 東映 113分
監督:李相日(リサンイル)、 脚本:宮藤官九郎
原作:村上龍「69 sixty nine」、 主題歌:Chemistory
出演:ケン/矢崎剣介(妻夫木聡)、アダマ/山田正(安藤政信)、イワセ(金井勇太)、中村譲(星野源)、松井和子(太田莉菜)、佐藤ユミ(三津谷葉子)、ケンの父(柴田恭平)、ケンの母(原日出子)、松永先生(岸部一徳)、相原先生(嶋田久作)、フミコ先生(峯村リエ)、川崎先生(豊原功輔)、吉岡先生(小日向文世)、大滝良(加瀬亮)、成島五郎(三浦哲郎)、増垣達夫(柄本佑)、福島清(与座嘉秋)、城串裕二(桐谷健太)、書記長(瀬山俊行)、長山ミエ(水川あさみ)、工業の番長(新井浩文)、極道(村上淳)、佐々木刑事 (國村隼)、アルファロメオの女(井川遙)
村上龍の自伝的小説の映画化。妻夫木演じるやんちゃで元気なケンと、5歳年上の安藤演じる頭が良くてクールでもさっとしたアダマのコンビが絶妙。
米軍基地だのバリ封だの学生運動家だのが登場するが、69年という年代の雰囲気は希薄。ランボーもゴダールもゲバラも名前は出るが、今ひとつどんなんだかわからない。ケンについても、楽しく生きてやろうという陽の部分が全面に出され、原作の、舌先三寸で人を煙に巻く理屈っぽくてちょっと嫌なヤツの部分はあまり強調されず、権力の手先である教師や警官に抱く敵意も単にいやな奴へのそれになっている感がある。
人々の登場が唐突。ヒロインの松井和子以外、教師も、高校生も、町の人も、 ケンと関わりのある人間なのが当然であるとして、なんの前振りもなく突然現れる。でも、この説明不足はけっこう好き。
ラスト近く、橋の上で和子と話をしながら、ケンがにやけた様子でときどき8ミリカメラで彼女を撮る、その感じがよかった。(2004.8)


ニワトリはハダシだ
2003年 ザナドゥ 114分
監督:森崎東
出演:大浜勇/サム(浜上達也)、桜井直子(肘井美佳)、大浜守(原田芳雄)、 金子澄子(倍賞美津子)、金子千春(守山玲愛)、立花薫(加瀬亮)、桜井直道(石橋蓮司)、桜井貴美(余貴美子)、灰原(岸部一徳)、朽木(柄本明)、金順礼(李麗仙)
知的障害を持つ少年をめぐって繰り広げられる善悪入り乱れての騒動。
15歳のサムは自閉症特有の記憶力の良さから、そうとは知らずに検事局の汚職事件に絡む極秘事項を丸暗記してしまう。証拠隠滅のため、警察とヤクザの混成チームがサムを捕らえて少年院に放り込もうとする。これに対し、潜水士の父大浜、在日朝鮮人の母澄子、小学生の妹千春、養護施設の直子先生、新米刑事の立花が、サムを守るために立ち上がる。
時は現代、舞台は京都の舞鶴ということになっていて在日朝鮮人たちの歴史も語られるが、アジアのどこかの国の今ではないいつかとしか思えないような独自の世界が展開する。それは、年柄年中疲れている日本人に発破をかけるために作られたパラレルワールドかもしれないと思った。
かぶりものの鳥の羽根、弥勒菩薩の額入り写真、両親を「チチ」「ハハ」と呼ぶこと、なにかにつけて老若男女が古い歌を口ずさむことなど、細部は好みが分かれそうだが、とにかくいろんなものががちゃがちゃと散らかっていって、気がつくと強力なパワーを噴出している。くるくるとよく動く直子先生を追っているうちに、いつのまにかこっちも元気になっている。否が応にも気持ちを上向かせ てくれる映画だ。(2004.12)


ハウルの動く城
2004年 スタジオジブリ  119分
監督:宮崎駿ハウル
原作:ダイアナ・ウィン・ジョーンズ「魔法使いハウルと火の悪魔」(徳間書店刊)
声の出演:ソフィ(倍賞千恵子)、ハウル(木村拓哉)、カルシファー(我修院達也)、マルクル(神木隆之介)、かかしのカブ(伊崎充則)、荒地の魔女(美輪明宏)、サリマン(加藤治子)、ヒン(原田大二郎)
陽気で華やかな母や妹とは違って、自分の中に閉じこもりがちな少女ソフィ は、魔法使いハウルと知り合ったことから、荒地の魔女に呪いをかけられ、老婆にされてしまう。
戦争が続く19世紀のヨーロッパを背景に、美しく謎に満ちたハウルと、老婆になって前向きに生きることを知ったソフィとの心のふれあいが描かれていく。
ハウルは相当魅力的。ソフィと初めて出会って空中を散歩するところなど、これぞ女の子の夢という感じ。ロマンティックなシーンだった。
炎の悪魔カシフィール、ハウルの弟子の少年マルクル、かかしのカブ、魔女サルマンの愛犬ヒンなど、脇を固めるキャラもことごとくかわいい。
これに比べて肝心のソフィの存在があまり強力でないのが残念。ソフィばあさんは、これまでの宮崎監督作品に登場したおばあさんたちに比べて見劣りするというほどではないにしても、ことさら元気がよいとは思えない。老人だけど中身は若い娘、というおもしろさや、呪いのことを人に言えない状況のもどかしさなども今ひとつ伝わらなかった気がする。ハウルとソフィのラブストーリーに徹底 して欲しかったが、やっぱりそれはちょっと違った。
ハウルの城はとてもいい。もっといっぱい、もっと近くで、動くところを見ていたかった。(2004.12)

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