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○ テレビドラマ 刑事フォイル

刑事フォイル

刑事フォイル Foyle's War
制作:2002年〜2015年 イギリス ITV
企画・脚本:アンソニー・ホロヴィッツ
出演:クリストファー・フォイル(マイケル・キッチン)、サマンサ(サム)・スチュアート(ハニーサックル・ウィークス)、ポール・ミルナー巡査(アンソニー・ハウエル)、アンドリュー・フォイル(ジュリアン・オヴェンデン)

第二次世界大戦中のイギリスの町ヘイスティングスを舞台に、戦時下で起こる事件の解決にあたる敏腕警視正フォイルの真摯な仕事ぶりを描く。
ナチスへの憎悪から生じる国内在住のドイツ人に対する差別があったり、逆にイギリス国内において反ユダヤ主義を訴えるグループが出てきたり、物資不足にあって金儲けを企む企業や個人の犯罪や軍内部のセクハラ、スパイの潜入、シーズンが進むと、ドイツ兵やアメリカ兵も登場するなど、戦時下の世相を描くとともにそれを反映する犯罪が扱われ、興味深い。
終始物静かに信念を貫くフォイルのベテランならではの捜査は安心して見ていられるし、軍の輸送部隊から派遣されてきた女性運転手のサムと負傷して復員した有能な部下ミルナ―とのチームもよい。時折登場するフォイルの息子で空軍の戦闘機パイロットのアンドリューとのやりとりにより、フォイルは、大切な息子を戦場に送る父親としての顔もみせてくれる。田舎の地味な一刑事であるフォイルが、できるやつとして各方面で一目置かれているのが痛快である。
1回1回丁寧に話が作られていて、飽きない。派手なアクションはないが、人と人とのやり取りで見せる、行き届いたミステリであり、テレビドラマとはこういうものだと思わせる。(2015.11)
★回によっては、もろに犯人ネタバレあります!!★


<各エピソードと感想> 
※エピソードの邦題、原題、製作年、舞台設定は、番組HPやウィキペディアアによる。未見の回あり。シーズン3以降は感想簡略化。
●シーズン1 (2002年製作)1940年のヘイスティングスが舞台
○第1話「ドイツ人の女」The German Woman
第二次大戦下、イギリス国内在住のドイツ人は危険度をランク付けされて監視され、収容される者も出ていたが、地元の有力者ボーモントは、ドイツ人の妻グレタのため知人らに手をまわして監視の目を緩めてもらっていた。町がドイツ軍の爆撃を受け、ドイツ人への風当たりが強くなる中、グレタが乗馬中に殺害される。収容されたドイツ人の伯父の救済をボーモントに拒否された青年、爆撃で死亡した若い娘の父と恋人、グレタを嫌う義理の娘と結婚を反対されているその恋人などが、容疑者として浮上する中、フォイルは地道な捜査を進めていく。
第1回にあたり、ファイルは、新しい運転手として派遣されてきたサムが女性であることに戸惑いつつも彼女を迎え入れ、戦場で片足を失って失意にある元部下ミルナ―を見舞って捜査の協力を依頼する。
○第2話「臆病者」The White Feather
ドイツ軍が侵攻し、まもなくイギリス本土に上陸するという噂に人々は不安と恐怖を抱きながら毎日を送っていた。フライデー・クラブという反ユダヤ主義組織の集会が開かれ、会場を提供したホテルの女主人マーガレットが会合のさなかに何者かに殺害される。組織のリーダーであるスペンサーと間違って殺されたのか、それとも彼女に恨みを抱くものが殺したのか。マーガレットに脅迫されて送電線を切るという罪を犯した少女イーデスのボーイフレンドの漁師や組織を嫌っていたマーガレットの息子が容疑者とされる。
ドーバー海峡を越えて対岸にイギリス軍兵士の救助に向かう漁師父子の話が泣かせる。
ミルナ―が義足をつけ、警官として復帰を果たすが、障害者となった夫を受け入れられない妻との間はぎくしゃくしている。
○第3話「兵役拒否」A Lesson in Murder
○第4話「レーダー基地」Eagle Day
空襲を受けた家の瓦礫の中から、家主の男が刺殺死体で発見される。犯人を追うフォイルの捜査と並行して、近くの空軍基地に配属になったアンドリューの話が描かれる。彼は、最新のレーダー装置の試験のための飛行をするパイロットとして呼ばれたのだが、レーダー開発チームには妙な緊張が漂っていた。横暴な上司のふるまいが容認されついには部下の女性を死に追いやっていたが、戦争に勝つため、軍はそれを隠していた。やがてアンドリューまで魔の手が伸び、彼は命を狙われた上、スパイの容疑をかけられる。フォイルは、屈せず、真相の究明に当たる。
サムの父が来訪し、娘を家に連れ戻そうとする話が絡む。
レーダーのテストのための飛行で、アンドリューが初めてイギリスの戦闘機スピットファイアを操縦し、その性能の素晴らしさに興奮するところがほほえましい。

●シーズン2
 (2003年製作)1940年のヘイスティングスが舞台
○第5話「50隻の軍艦」Fifty Ships
毎回そうなのだが、この回は特にいろいろな話が同時多発する。サムの下宿先が空爆を受け、混乱に乗じて家主の宝飾類が盗まれる。フォイルは、消防隊のグループに疑いの目を向ける。
焼け出されたサムは新しい居住先が見つからず、ミルナ―の家、監房、フォイルの家を転々とするが、このことは特に本筋には絡まない。
同じころ、アメリカ人の実業家で金持ちの有力者ペイジが英国を訪れ、フォイルの知人宅に身を寄せる。その近くで、消防隊チームの一人である青年の父親が、射殺死体となって発見される。
さらにその夜、海外から不法侵入した男がスパイとして捕えられる。
ドイツ側のスパイが、上陸の際にたまたま海岸で行われた殺人の様子を目撃していて、それを突き止めたフォイルが、スパイから目撃証言を得るという展開がおもしろかった。ここでも戦争に勝つため、ペイジの悪行を見逃す当局に対し、正義を貫こうとするフォイルの心意気が切なくも力強い。
○第6話「エースパイロット」Among the Few
トラックの炎上事故により、戦時下で配給制となっている石油が盗まれていることが発覚し、フォィルらが捜査に乗り出す。フォイルは、不本意ながらサムを石油貯蔵所に潜入させ、石油の横流しの証拠を追う。
一方、アンドリューは近くの基地に配属になり、友人で空軍のエースパイロットのレックスとともに出撃を繰り返していた。彼らは石油貯蔵所に勤める女の子たちと知り合う。
石油の横流しは、貯蔵所の管理者の妻である経理係とナイトクラブの経営者が企んでいたのだが、それに加担させられていたトラック運転手のコニーが、何者かに殺害されるという事件が起こる。彼女はレックスの恋人で、妊娠していたことが判明すると、レックスは自分の子だと断言するが、コニーの日記からアンドリューの写真が発見されたため、アンドリューが有力な容疑者となってしまう。実は、アンドリューの写真はレックスが落としたものだった。レックスはコニーとは深い関係にはなく、彼が思う相手はアンドリューだった。ゲイであることをコニーに知られたレックスは、そのことをばらされたくなくてコニーを手にかけてしまったのだ。フォイルに真相を知られ、悲痛な思いを抱えて出撃したレックスは撃墜され、戦死する。純粋に友の死を嘆く息子のアンドリューを慰めるフォイルは、レックスの思いを一人で受け止めるのであった。
○第7話 「作戦演習」War Games (※脚本:アンソニー・ホロヴィッツ、マイケル・ラッセル)
イギリスの大手食品会社幹部がナチスと交わす密約と、それを食い止めようとする判事の策謀が交錯する。密約の証拠を得るため、判事は知り合いの前科者の青年マーカムを会長のウォーカー宅に侵入させる。が、証拠の書類はみつからず、マーカムは逃走の際、ウォーカーの息子サイモンに肩を撃たれる。ウォーカー親子は盗難届をださなかったが、マーカムは高価そうな小箱を盗んでいた。(この小箱が重要な証拠となることが、フォイルらの捜査によりやがて判明するのである。)
一方、ドイツ軍の侵略に備え、正規軍を敵役にして地元防衛隊の演習が行われることになり、フォイルは審査官として呼ばれる。演習に紛れてマーカムが何者かに射殺される。
国のため、資源回収を行い、古紙を集める子どもたちのグループの存在が、暗くなりがちなトーンを和らげている。証拠隠滅のためウォーカー親子が書類を燃やしているときに、子どもたちが古紙回収のため邸に侵入して古紙の束を持ち帰り、その中に重要な書類が紛れていたという展開は、お見事。
○第8話「隠れ家」The Funk Hole
食糧庫を襲った3人組の強盗。一味の青年の一人が警備人に撃たれ死亡する。首謀者の食糧店主はもう一人の青年に死体の埋葬を強要し、青年は自分の勤務先の屋敷の近くに死体を埋める。
その屋敷には、戦火を避けてきた富裕層の人々が「隠れ家」として滞在していた。
フォイルは強盗事件を追って「隠れ家」での捜査を進めるが、突然本庁から停職処分を言い渡される。先日のロンドン空襲の際に、人々を扇動する言葉を発したということで「扇動罪」に問われているというのだった。全く身に覚えのないことだったが、捜査は行われておりその間フォイルは自宅謹慎、ロンドンから主任警部コリアーがやってきてフォイルの仕事を受け継ぐが、やがて「隠れ家」で殺人事件が起こる。
フォイルは自宅から抜け出し、ミルナーがひそかに渡してくれた捜査報告書にあった、フォイルと似た名前の別人を訪ねる。扇動的な言葉を発したのは彼で、彼は当局の空襲避難誘導のミスによって家族を失っていた。
コリアーの真の狙いもそこにあった。彼は、空襲で亡くなった家族の仇を打つため、「隠れ家」に身を寄せる一人の男、避難誘導を間違えた男の殺害を計画し、実行したのだった。

●シーズン3
(2004年製作) 1941年のヘイスティングスが舞台
○第9話「丘の家」The French Drop
・丘の上の家に、イギリス軍による極秘の「特別訓練所」が開設され、勝つために手段を選ばない、殺人などの攻撃方法が教えられている。トップの大佐の先走りで起こったミスにより若い兵士が戦死するが、自殺として隠ぺいするための偽装が行われる。「今は沈黙を。戦争が終わったら真相を。」という保安局特殊作戦執行部の幹部ピアース女史(エリー・ハディントン)の訴えに沈黙せざるを得ないフォイルの辛さが伝わってくる。
○第10話「癒えない傷跡」Enemy Fire
○第11話「それぞれの戦場」They Fought in the Field  (※脚本:ボブ・ヘイランド)
・墜落した爆撃機から逃れパラシュートで着地したドイツ兵が登場する。捕虜担当のイギリス軍将校が、当初は田舎の刑事とフォイルを侮っていたが、その名推理ぶりに、ラストは感嘆の面持ちでフォイルを見送るのが痛快である。フォイルはドイツ語がわかることも判明する。
○第12話「不発弾」A War of Nerves
・不発弾の扱い方が描かれていて、興味深い。ファム・ファタール的美女が登場。

●シーズン4
(2006~2007年製作) 1942年のヘイスティングスが舞台
○第13話「侵略」Invasion
・アメリカ軍登場。イギリス人とアメリカ人の気質の違いが描かれていて、おもしろい。
○第14話「生物兵器」Bad Blood
・軍が密かに行った生物兵器の実験の話と、海辺で起こった町の英雄の殺人事件の話が同時進行する。炭疽菌による病気の感染が始まり、サムも病魔に襲われる。農場の牛に感染したため、軍の者が農場から牛を盗み出すのだが、ロンドンから来たばかりの警官が、「ロンドンではありえない。牛泥棒なんて西部劇みたいだ」と喜ぶのが可笑しかった。

●シーズン5
 (2008年製作) 1942~43年のヘイスティングスが舞台
○第15話「クリスマスの足音」Bleak Midwinter
・軍需工場で爆発事故が起こり、従業員の女性グレースが死亡する。家出していたミルナーの妻ジェーンが戻ってきてミルナーに復縁を迫るが、ミルナーにその気はない。ジェーンが何者かに殺され、ミルナーに疑いがかけれられる。ジェーンはグレースと親友であり、グレースの事故死には犯罪をもくろむ恋人が関係していた。イケメンの壊れた若者というわかりやすい犯人が登場。
○第16話「戦争の犠牲者」Casualties of War
・フォイルの友人の娘ナディアが幼い息子のジェームズとともに突然フォイルを訪ねてくる。家族に結婚を反対され駆け落ちをしたナディアとフォイルはずっと音信不通になっていた。ジェームズは学校が爆撃されたショックで一切しゃべらなくなっていた。一方、町では違反賭博と、破壊活動が行われていた。また、軍の極秘研究が行われている施設で秘書の夫が殺される事件が起こる。破壊活動の張本人はスペイン大使のため逮捕できず、夫殺しを計画実行した妻とその愛人も極秘研究を理由に逮捕できない。フォイルは、警視監に辞表を出す。

●シーズン6 (2008年製作) 1944年が舞台
○第17話「疑惑の地図」Plan of Attack
○第18話「壊れた心」Broken Souls (※脚本:マイケル・チャップリン)
○第19話「警報解除」All Clear
●シーズン7 (2010年製作) 1945年が舞台
○第20話「帰れぬ祖国」The Russian House
○第21話「差別の構図」Killing Time (※脚本:デヴィッド・ケイン) 
○第22話「反逆者の沈黙」The Hide
●シーズン8 (2013年製作) 1946年が舞台
○第23話「新たなる戦い」The Eternity Ring
○第24話「エヴリン・グリーン」The Cage  (※脚本:デヴィッド・ケイン)
○第25話「ひまわり」Sunflower
●ファイナル・シーズン (2015年製作) 1946~47年が舞台
○第26話「ハイキャッスル」High Castle
○第27話「エルサレムの悲劇」Trespass
○第28話「エリーズのために」Elise

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