みちのわくわくページ

○ 映画(〜2000年) さ行   

<日本映画・外国映画、あいうえお順>
ザ・クラッカー 真夜中のアウトロー(1981)、 座頭市地獄旅(1965)、 さらば愛しき女よ(1976)、 さらば冬のかもめ(1973)、 シャイニング(1980)、 新幹線大爆破(1976)、 仁義(1970)、 
仁義なき戦い 頂上作戦(1974)、 仁義なき戦い 完結篇(1974)、 昭和残侠伝シリーズ(1965〜)、 
散弾銃(ショットガン)の男(1961)、 十三人の刺客(1963)、 十二人の怒れる男(1957)、 12人の優しい日本人(1991)、 次郎長三国志シリーズ(1952〜54、1963〜65)、 

シシリアン(1999)、 静かなる男(1952)、 深紅の文字(1926)、 関の弥太っぺ(1963)、 空の大怪獣ラドン(1956) 

ザ・クラッカー 真夜中のアウトロー   THIEF /  VIOLENT STREETS
1981年 アメリカ 123分
監督:マイケル・マン
出演:フランク(ジェームズ・カーン)、ジェシー(チューズデイ・ウェルド)、オクラ(ウィリー・ネルソン)、バリー(ジェームズ・ベルーシ)、レオ(ロバート・プロスキー)、
昼間は中古車屋、夜は一匹狼の金庫破りのフランクをカーンが演じてかっこいい。
最後は、自宅を燃やして殴り込みというのが、アメリカ映画には珍しい。(2021.5)


座頭市地獄旅
1965年 日本 87分
監督:三隈研次
原作:子母沢寛
音楽:伊福部昭
出演:座頭市(勝新太郎)、十文字糺(成田三樹夫)、お種(岩崎加根子)、佐川粂(林千鶴)、佐川友之進(山本学)、六平(丸井太郎)、弁次(五味龍太郎)、ミキ(藤山直子)
時代劇チャンネルで見る。
キザでクールな人斬り侍十文字を、成田がいい感じで演じている。
道中知り合った子どもが病気になり、薬を買いに行った市は襲撃にあって薬を落としてしまう。地べたを這って薬を探すが、もうちょっと先にある薬の箱に気づかない市。もどかしい思いで見ていると、やっと薬に手が触れ、市と同様、こっちも安堵する。
こどもの母親お種とのやりとりが粋。
最後は武家の兄妹の敵討ちの助っ人を引き受けて、十文字と対決。同宿のよしみなどお構いなく殺しあう二人がよい。(2018.3)

さらば愛しき女よ Farawell, My Lovely
1976年 アメリカ 95分
監督:ディック・リチャーズ
原作:レイモンド・チャンドラー「さらば愛しき女よ」
出演:フィリップ・マーロウ(ロバート・ミッチャム)、ムース・マロイ(ジャック・オハローラン)、ヘレン・グレイル(シャーロット・ランブリング)、バクスター・ウィルソン・グレイル判事(ジム・トンプソン)、ジョージー(ジミー・アーチャー)、ジェシー・ハルステッド・フロリアン(シルヴィア・マイルズ)、レアード・ブルーネット(アンソニー・ザープ)、ジョニー(シルヴェスター・スタローン)、ベルマ(?)、
ナルティ刑事部長(ジョン・アイアランド)、ビリー・ロルフ刑事(ハリー・ディーン・スタントン)
DVD(復刻シネマライブラリー:株式会社ディスクロード)を買ったので家で久しぶりに見た。(ライナーノートを書いているのは、西部劇の愛好家サークル「ウエスタン・ユニオン」の仲間である布施亜紀(なりつぐ)氏であるが、これが12ページにわたる労作で、判事役を犯罪小説の名手ジム・トンプソンが演じているなど、コアな情報が満載である。)
出所したての大男ムース・マロイにヴェルマという名の女を探してくれと依頼された探偵フィリップ・マーロウは、彼女の名と彼女が以前働いていた店の名のみを手がかりに探し始める。
ハードボイルドと言いながら実はおセンチでものうい、チャンドラーの小説のムードが満載の映画である。
巨漢のギャング、マロイの武骨で一途なヴェルマへの想いが哀愁を誘うが、マーロウとナルティ刑事との関係や、父親を亡くした野球少年に対してマーロウが見せる気遣いなども、ウェットでしみじみした気分を味わわせてくれる。(2017.5)

さらば冬のかもめ  THE LAST DETAIL
1973年 アメリカ 104分
監督:ハル・アシュビー
出演・ビル・バダスキー(ジャック・ニコルソン)、ラリー・メドウズ(ランディ・クエイド)、マルホール(オーティス・ヤング)

BSの放映を録画して見た。
アメリカ海軍の隊長夫人の募金箱から金を盗もうとして懲役8年の刑をくらった若い水兵メドウズを、二人の下士官バダスキーとマルホールが刑務所まで護送する。
メドウズは、ぼーとしていて万引きの癖はあるがごく純朴な青年。隊長夫人への忖度から重すぎる刑を言い渡された彼を哀れに思ったバダスキーらは、娑婆の見納めにと、メドウズに酒を飲ませたり、実家に立ち寄って母に会わせてやろうとしたり(これは母が不在で果たせず)、娼館で初体験をさせたり、寒空の下でバーベキューをやったりと、いろいろお節介を焼くのだった。
ニコルソンがそのへんにいそうな、クセがあるけど人のいいアメリカ人水兵を演じていて興味深い。通信兵なので、ホテルの部屋で、メドウズに手旗信号を教えるのもよい。
3人が遭遇する日蓮宗のサークルで「お題目」としてアメリカ人が「ナンミョーホーレンゲキョー」を連呼しているのは、珍しかった。
何十年も前に名画座で見たときと印象は変わらず。もの悲しくもほんわかする佳作であった。(2018.5)

シャイニング THE SHINING
1980年 イギリス 119分
監督:スタンリー・キューブリック
原作:スティーヴン・キング
出演:ジャック・トランス(ジャック・ニコルソン)、ウェンディ(シェリー・デュバル)、ダニー(ダニー・ロイド)、ハローラン(料理人。スキャットマン・クローザース)、ウルマン(バリー・ネルソン)、グラディ(フィリップ・ストーン)、ロイド(バーテン。ジョー・ターケル)

公開以来、久しぶりに録画で見る。
売れない作家のジャックは、山の上にある休業中のホテルに管理人として雇われる。彼は、妻のウェンディと幼い息子のダニーとともにホテルにやってくる。ホテルでは、以前、やはり冬期の管理人を任された男が、妻と双子の娘を惨殺するという事件が起こっていたが、ジャックは気にしなかった。
ホテルの中は、だだっ広く、迷路のように部屋と廊下が広がっていて、ホテルの外には、文字通り生垣で作られた巨大な迷路が設置されていた。ダニーは、子供用のカートでホテルの廊下を走り回るが、やがて殺された双子の姉妹の姿をしばしば目にするようになる。彼は、シャイニングと呼ばれる霊能力を持っていたのだ。
一方、ジャックは執筆に集中しようとするが、閉ざされ、孤立した空間で過ごすうち、次第に邪悪なものに精神を蝕まれていき、ついに、家族を襲い始める。
最初のうちは、美しい映像とホテルの中にあふれる不穏な空気に引き込まれてぞくぞくもするのだが、ずうっとそうなので、やがて幾分飽きてきてしまう。
ウェインディ役のシェリー・デュバルの顔が個性的過ぎて慣れない。彼女の服の趣味も、あえてそうしているのだろうが、カラフルさが逆にやぼったくてうざい。
みるべきものは、映像美よりも、ジャック・ニコルソンの顔だと、今回は思った。秀逸な演技力というよりは、むしろ顔芸というにふさわしい。こちらは見ていて飽きることがない。(2019.12)

十二人の怒れる男 12 ANGRY MEN
1957年 アメリカ 白黒 95分
監督:シドニー・ルメット
脚本:レジナルド・ローズ
出演:陪審員8番(ヘンリー・フォンダ。建築家)、同1番(マーティン・バルサム。中学校の体育教師でフットボールチームのコーチ。陪審員長として議長を務める。)、同2番(ジョン・フィードラー。銀行員)、同3番(リー・J・コッブ。会社経営者。息子とうまくいっていない。)、同4番(E・G・マーシャル。株式仲買人)、同5番(ジャック・クラグマン。工場労働者。スラム育ち。)、同6番(エドワード・ビンズ。塗装工。)、同7番(ジャック・ウォーデン。セールスマン。このあとヤンキースの試合に行く予定。)、同9番(ジョセフ・スィーニー。老人。)、同10番(エド・べグリー。会社経営者。)、同11番(ジョージ・ヴォスコヴェック。時計職人。移民。)、同12番(ロバート・ウェッバー。広告代理店宣伝マン。)

中高生のころテレビで見て以来、久しぶりにDVDで見る。
昔見たときは、陪審員制度という制度と、一般のアメリカ人同士の議論がかなり珍しく、「怒れる」という放題も不思議な感じがしたが、熱く議論する、といった意味合いなのかと思ったことを覚えている。
そして、真犯人を見つけるのでなく、あくまでも被告の有罪か無罪かのみを目的とする議論がとても新鮮で、印象に残っている映画だ。日本語でいうと「有罪」と「無罪」だが、英語で言うと、「有罪でない」と「有罪」である。無罪なのではなく、有罪とは言えないということなのだと、改めて気づかされれる。
最初有罪11、無罪1だった票数が、逆転していって、ついには全員が「無罪」とする。最後の一人が、どうやって意見を変えるか、個人的事情に持っていて自分をさらけ出さざるを得ない状況に追い込まれるのはなんとも気の毒だが、そのくらいつきつめないと納得のいく逆転にはならなかったのだろう。
昔はよくわからなかったが、移民やスラム育ちの者や老人など、登場人物の多様性がわかって見ると、さらにおもしろかった。(2020.10)

12人の優しい日本人
1991年 日本 116分
監督:中原俊
脚本:三谷幸喜と東京サンシャインボーイズ
出演:陪審員1号(塩見三省。40歳。女子高体育教師。陪審員長。)、同2号(相島一之。28歳。精密機械製造会社員。最初にひとり有罪を主張。妻と別居中。)、同3号(上田耕一。49歳。喫茶店店主。甘党でアル中。)、同4号(二瓶鮫一。61歳。元信用金庫職員。)、同5号(中村まり子。37歳。商社庶務係。メモ魔。)、同6号(大河内浩。34歳。医薬品セールスマン。)、同7号(梶原善。32歳。職人。)、同8号(山下容莉枝。29歳。主婦。)、同9号(村松克己。51歳。歯科医。議論好き。)、同10号(林美智子。50歳。クリーニング店経営者。)、同11号(豊川悦司。年齢不詳。弁護士と称する役者。)、同12号(加藤善博。30歳。大手スーパー課長補佐。)、
守衛(久保晶)、ピザの配達員(近藤芳正)

偶然オリジナルを見た直後に放映したので、録画で見る。みな若い。塩見三省など渋いおじさんのイメージしかないから、十一人の陪審員たちの勝手な言い分に振り回されるリーダーの青年役にはかなりの違和感を覚えたが、だれだって若いときはあるのだ。
被告は、美人で不幸な子持ちの女性。夫殺しの罪で起訴されている。殺人の証拠はけっこうそろっているのだが、陪審員たちは被告に同情して十一人が無罪に手を挙げる。が、どんなにかわいそうでも罪は罪、と一人の青年だけが有罪を主張する。かくしてそれぞれが言いたい放題の話し合いとなり、有罪が増えていってこれは判決が覆るかと思われるが、でも、それもまた一転して。と、迷走する陪審員たちの議論をおもしろおかしく描く。最後に一人残った「有罪」派が、個人的事情から主張していた意見を引っ込めざると得なくなるというのは、オリジナルと同じである。(2020.10)


新幹線大爆破  SUPER EXPRESS 109
1975年 日本 東映 153分
監督:佐藤純弥
出演:沖田哲男(高倉健)、古賀勝(山本圭)、織田あきら(大城浩)、藤尾信次(郷^治)、
倉持(運転指令長。宇津井健)、青木(ひかり109号運転士。千葉真一)、田代(ひかり109号車掌長。福田豊士)、森本(ひかり109号運転士。小林稔侍)、
国鉄総裁(志村喬)、新幹線総局長(永井智雄)、東京運転所係員(中田博久)、救援列車運転士(千葉治郎)、東京駅電話交換嬢(志穂美悦子)、宮下(国鉄公安本部長。渡辺文雄)、菊地(鉄道公安官。劉雷太)、須永(警察庁刑事部長。丹波哲郎)、花村(警察庁捜査一課課長。鈴木瑞穂)、千田刑事(青木義朗)、後藤刑事(黒部進)、刑事(北大路欣也)、佐藤刑事(川地民夫)、官房長官(山内明)、航空会社カウンター係(多岐川裕美)、磯村(露木茂)、女医(藤田弓子)、 平尾和子(妊婦。田坂都)、東郷あきら(ロックミュージシャン。岩城滉一)、靖子(沖田の元妻。宇都宮雅代)、賢一(沖田の息子。菅原靖人)、古賀の兄(田中邦衛)

録画で、ついに見る。
新幹線に爆弾がしかけられ、走行速度が80キロ以下になると爆発するという、当時の最新制御装置ATSの機能を逆手に取った犯行に、国鉄新幹線総局と警察はどう対応するのか、そして犯人たちの動向はいかに、ということで、盛り上がる、タイムリミットならぬスピードリミット爆弾クライムサスペンスアクション。ひかり号の造形もなつかしく、当時夢の超特急として話題となったことが思い出される。
前半、間一髪のポイント切り替えにどきどきはらはらした。国鉄新幹線指令室にある電光路線図がよかった。指令室の様子は怪獣映画を思わせた。後半、救援列車と並走してのガスバーナーとガスボンベの受け渡しシーン、間にいきなり模型丸出しのひかり号2台が疾走するカットが挿入されるが、これでさらに盛り上がるか、特撮のちゃちさのあまりテンションが下がるか、で、乗れるか乗れないかが分かれると思う。ここは、寛大に盛り上がった方が断然楽しい。弟の千葉治郎から兄の千葉真一へ渡されるのもなんかうれしかった。
その緊迫した列車の場面の合間に、犯人側の沖田、古賀、織田の事情が差しはさまれ、せっかくの流れが打ち切られるようでもあるが、これが却ってじりじりした焦燥感を煽ってよかった。(2020.6)
余談:一定のスピード以下になると爆弾が爆発するという設定は、1994年のアメリカ映画「スピード」で使われたが、その前にこれがあったということだ。「スピード」のあとは、人気アニメ名探偵コナンの劇場第1作「名探偵コナン 時計仕掛けの摩天楼」にも出てくる。山手線もどきの環状線に爆弾が仕掛けられ、60キロ以下になると爆発するというのをコナンが阻止するという一件があって、クライマックスの摩天楼の爆弾騒ぎよりも盛り上がって、コナンの劇場版おもしろいと思った覚えがある。

仁義 LE CERCLE ROUGE / THE RED CIRCLE
1970年 フランス 140分
監督:ジャン=ピエール・メルヴィル
出演:コーレイ(アラン・ドロン)、ボージェル(ジャン・マリア・ボロンテ)、ジャンセン(イヴ・モンタン)、サンティ(フランソワ・ペリエ)、故買人(ポール・クローシェ)、看守長(ピエール・コレット)、マッティ警視(アンドレ・ブールヴィル)、監察官(ポール・アミオット)、リコ(アンドレ・エキナン)
製作:コロナ・フィルム

コロナ感染防止のための自粛の許でステイホームを実行し、ちょっと前に録画したのを久しぶりに見た。中身とはまったく関係ないのだけど、冒頭いきなり「CORONA PRESENTS」って出て驚いた。製作したところがコロナフィルムというのだった。
とてもよいけどちょっと変な映画という印象だけあって、中身はほとんど忘れていた。
アラン・ドロンとジャン・マリア・ボロンテとイヴ・モンタンら犯罪に手を染めた男たちが強盗を計画・実行する話で、ボロンテが車のトランクに隠れているってことと、モンタンがアル中で爬虫類の幻覚に苦しみつつも狙撃の名手でなんか調合して特殊な弾をつくって(その経過が波打ったちょっと不思議なワイプ画面でつながれていたことも記憶通りだった)ライフルで鍵穴を撃って金庫を開錠するところ(今回見たら三脚にライフルをつけて高さを調整しときながら結局手持ちで撃っていたのだった)くらいしか覚えていなかったのだが、今見てもおもしろかった。
特に、コーレイ(ドロン)とボージェル(ボロンテ)の出会いのシーン。みているうちに思い出してきて、かなり好きなシーンだったことも思い出した。
出所したコーレイが元ボスからせしめた現金で買った車に乗ってパリに向かう途中、レストランで食事を取る。一方、列車で刑事に護送されていた犯罪者のボージェルは列車から飛び降りて脱走し、森を抜け、レストランの駐車場に駐車していたコーレイの車のトランクに隠れる。検問を抜け、人気のない原っぱでコーレイは車を止め、「出てこい」という(コーレイはラジオで放送されていた逃走犯がトランク潜んでいることに気づいていたのだ)。ボージェルはトランクから銃口を向けて出てくる。ことばを交わしたあと、銃をつきつけているボロンテにドロンがたばこのパッケージとライターを投げる。ボロンテは、たばこを受け取り、銃口を下げて地面に落ちたライターを拾い、たばこを吸う。で、二人は組むことになり、ボージェはたばこを吸ったままトランクに戻るのだった。たばこが男と男の心の交わりを描く重要な小道具となりえた、いい場面だ。
ちょっと違う映画の話になるが、アラン・ドロンと言えば、「さらば友よ」(1968年)でブロンソンとたばこの火を分かちあうラストーシーンも思い出される。中学生か高校生のころテレビで見て、その渋さ、かっこよさにぞくぞくしたものだ。
こういうシーンはもう作られないだろうか。思い着く限りでは、「荒野の七人」のリメイク「マグニフィセント・セブン」(2016年)で、瀕死のジョシュ(クリス・プラッド)に、敵方の無名のガンマンがたばこをくわえさせ一服させてやるというシーンがあった。だが、喫煙シーンが敬遠されがちな最近の状況においては、たばこのやりとりなどもうあまり見られないそうになく、そう思うとさびしい。たばこ代わりにミントやのど飴を分かち合っても絵にならなさそうである。
コーライが出所して向かったビリヤード屋のビリヤードが、エイトボールでなく、赤と白の玉を使う4つ玉だったのもなつかしかった。(あとでエイトボールの台もでてきたが、コーレイがやったのは四つ玉。) (2020.4)


<仁義なき戦い>シリーズ作品
仁義なき戦い(1973)  監督:深作欣二 脚本:笠原和夫
仁義なき戦い 広島死闘篇(1973)  監督:深作欣二 脚本:笠原和夫
仁義なき戦い 代理戦争(1973)  監督:深作欣二 脚本:笠原和夫
仁義なき戦い 頂上作戦(1974)  監督:深作欣二 脚本:笠原和夫
仁義なき戦い 完結篇(1974)
 監督:深作欣二 脚本:高田宏治
関連本:「映画はやくざなり」(笠原和夫)

仁義なき戦い 頂上作戦
1974年 東映  98分
監督: 深作欣二
原作: 飯干晃一
出演:広能昌三(菅原文太)、武田明(小林旭)、岩井慎一?(梅宮辰夫)、岡崎(小池朝雄)、藤田(松方)、ひろし(小倉)、八名信夫、打本(加藤武)、山守(金子信雄)、槇原(田中邦衛)、江田(山城新伍)
新文芸坐の松方弘樹追悼特集で久しぶりに見る。
仁義なき戦いシリーズにおいて、松方弘樹は3回違う役で出ているが、本作で演じる病気持ちのまじめなやくざ藤田は、もっとも地味で渋めの役どころである。
敵味方の筋がぐちゃぐちゃになって抗争激化の様相を呈してきたところで、警察の頂上作戦によって幹部が逮捕され、クライマックスは血で血を洗う大激突、とはならないのが、フィクションではなく実録のなせる展開であり、それがまたさらにすっきりしない感じになって、本シリーズの味となる。寒風が吹きこむ拘置所の廊下での武田と広能のやりとりに、再び痺れた。(2017.4)

仁義なき戦い 完結篇
1974年 東映  98分
監督: 深作欣二
原作: 飯干晃一
脚本: 高田宏治
出演:<呉・広能組>広能昌三(組長。菅原文太)、氏家厚司(若頭。伊吹吾郎)、佐伯明夫(桜木健一)、水本登 (野口貴史)清元忠(寺田誠)、<呉・市岡組>市岡輝吉(広能と兄弟分。松方弘樹)、神戸泰男(唐沢民賢)、完方良三(白川浩三郎)
<広島・天政会>武田明(天政会会長、武田組組長。小林旭)、松村保(天政会理事長→会長代理→会長・武田組。北大路欣也)、かおる(杉田の娘。のち松村の妻。野川由美子)、大友勝利(天政会副会長・大友組組長、反松村。宍戸錠)、間野豊明 (大友組若頭。山田吾一)、早川英男(天政会幹事長・早川組組長、大友寄り。織本順吉)、久保田市松(早川組若頭。高並功)、加賀亮助(早川組。八名信夫)、江田省一(天政会理事。江田組組長。山城新伍)、金田守(江田組。木谷邦臣)、愼原政吉(天政会理事・呉・愼原組。田中邦衛)、鶴達男(愼原組。国一太郎)、守屋等(愼原組。川谷拓三)、杉田佐吉(天政会参与。経理担当。鈴木康弘)、山守義雄(金子信雄)、
<ほか>河野幸二郎(天津敏)、大久保憲一(内田朝雄)、千野巳代次(旅人。曽根晴美)
浅草名画座閉館前日に見た。
シリーズ完結編。第二次広島抗争は、第四作で終焉を迎え、その後の話となっている。
天政会の内輪もめと、会に不参加の広能組・市岡組との抗争が描かれる。
いまさら私などがごちゃごちゃ書くものでもないので、手短に。久しぶりにいきなり完結篇だけ見ても、やはり血がたかぶる映画である。武田と広能がホテルで話すシーンに、ぞくぞくする。松方、北大路、伊吹、宍戸、織本、男たちが、ひたすらかっこいい。(2012.10)


散弾銃(ショットガン)の男
1961年日本 日活 84分
監督:鈴木清順
主題歌:「夕日に立つ男」「ショットガンの男」(唄:二谷英明)
出演:渡良次(二谷英明)、奥村節子(芦川いづみ)、政(小高雄二)、春江(バーのママ。南田洋子)、西岡(西岡製材所社長。田中明夫)、奥村(私設保安官。高原駿雄)、鎌(悪党3人組の1人。江幡高志)、勝(3人組の1人。郷^治)、寅(3人組の1人。野呂圭介)、黒沼(商店主。佐野浅夫)、金(嵯峨善兵)、村長(浜村純)、アコーディオン弾き(織田俊彦)
ロケ地:天竜川大森林地帯、岐阜県中津川市(高樽の滝、付知川上流域)、神奈川県丹沢 (by日活データベース)

チャンネルねこで放映していたのを録画して見る。
散弾銃を持った男良次が、山間の製材所を訪れる。彼は、恋人を殺した男を追っていた。
製材所で働くのは荒くれ者の男たちで、中でも政は何かにつけて良治と対立した。政は、血の気の多い男で、いいヤツなのか、実は良治の恋人を殺した犯人なのか、判断のつきかねるところで引っ張る(意外な正体はラスト近くで明らかにされる)。また製材所の社長西岡が用心棒として雇っている前科者3人組も怪しげである。村には警官がおらず、何者かに妻を殺された奥村が、犯人を見つけるため私設保安官となっていたが、気の弱い彼は製材所の男たちからバカにされていた。
小さな村なのにやたら人がいて割と大きな酒場がある。酒場には、ピアノ弾きならぬアコーディオン弾きのおじいさんがいて、途中、良治はそのアコーディオンを借りて、夕焼けをバックに唐突に歌を歌ったりもする。
芦川いづみは、良治を慕う清純な娘節子を演じ、南田洋子は対照的なバーのママの春江を奔放に演じて気持ちがよい。
前科者3人組が、日活アクションならではの面構えでたいへんよい。
山の中に西部劇のような岩場があったり、突然一面のお花畑(実はケシの密栽培畑)が出てきたりするかと思うと、最後は海に出て波打ち際での格闘になる。芦川いづみが砂浜を走りに走って、良治に追いすがる。
話はとっちらかってとりとめなく進むが、なんだかその野放図さに余裕が感じられてこんなのびのびした映画の作り方は今は到底できないのだろうなとも思い、おもしろいといえばおもしろい。(2017.2)

シシリアン 虐殺の地 VWNDETTA
1999年 アメリカ(TVM) 120分
監督:ニコラス・メイヤー
出演:ガスパル・マチェシ(アレッサンドロ・コーラ)、アントニオ・マチェシ(ガスパルの父。ピエリーノ・マスカリーノ)、マチェカ(イタリア人実業家。ジョアキン・デ・アルメイダ)、トーマス・シムズ弁護士(ブルース・デイビソン)、オマリー(シムズの調査員。ダラフ・オマリー)、ヴィンセント・プロペンザーノ(アンドレア・デ・ステファーノ)、ジョバンニ・プロペンザーノ(ヴィンセントの兄、リチャード・リヴェルティニ)、トニー・プロペンザーノ(ジョバンニの息子、スチュアート・ストーン)、ミーガン(ミーガン・マッケズニー)、サミュエル(黒人の農夫、ニゲル・ショウン。ウィリアムズ)、ヘネシー警察署長(クランシー・ブラウン)、
ジェームズ・ヒューストン(クリストファー・ウォーケン)、パーカーソン(ルーク・アスキュー)、ルーゼンバーグ検事(エドワード・ハーマン)
1890年代のアメリカ、ニューオリンズで実際に起こった、市民による凄惨なイタリア移民私刑事件を描く。
両親と共にシチリアからニューオリンズにやってきたガスパルは、イタリア人実業家マチェカが経営する市場の一角に売り場を借り、一家で働く。ガスパルは、市場にくる少女ミーガンに淡い恋心を抱いたり、黒人の農夫のサミュエルや市場で反目するプロペンザーノ一家のトニーと友達になったりと、新天地での生活になじんでいく。
移民が増え、マチェカの事業は繁盛していたが、地元の実業家ヒューストンは、これを快く思わず、事業の乗っ取りを企む。市長とともに警察署長のヘネシーを抱きこもうとするが、自身もアイルランド移民であるヘネシーは、権力におもねることなく、警官としての正義を通そうとする。やがてヘネシーが暗殺され、ヒューストンらの画策により、マチェカやガスパル父子ら数名のイタリア移民が容疑者として逮捕される。
無実の罪を着せられそうになった彼らだが、マチェカの知己である敏腕弁護士シムズと有能な調査員オマリーが彼らのために奮闘する。ヒューストンと市長寄りの検事ルーゼンバーグと、シムズの法廷での対決は、見応えのある裁判劇となる。マチェカが祈った通り、法は勝つ。
が、これにより法を超えた暴力が、行使されることになる。裁判の結果に激怒したヒューストンは、市長を使って民衆を煽り、その結果、普通の人々により、壮絶な「公開処刑」が行われていく。
よそ者を排除しようとする民衆の勢いは不気味で恐ろしい限りである。これまでなじんできたガスパルの仲間の大人たちが次々と民衆の手によって容赦なく処刑されていく様子は、かなりハードで衝撃的である。
ビデオケースには、クリストファー・ウォーケンのアップが載っているが、彼の役は己の利益のみを追う非情な白人のボス。白いスーツで、民衆を地獄の行為へと駆り立てる徹底した悪役で、その後報いも受けず、思惑通り事業を乗っ取って大成功したとある。なんとも後味の悪いことだが、事実なのでいたしかたないということか。(2012.1)


静かなる男 The Quiet Man
1952年 アメリカ 129分
監督:ジョン・フォード
音楽:ヴィクター・ヤング
出演:ショーン・ソーントン(ジョン・ウェイン)、メアリ・ケイト・ダナハー(モーリン・オハラ)、レッド・ウィル・ダナハー(ヴィクター・マクラグレン)、ロネガン神父(ウォード・ボンド)、ミケリーン(バリー・フィッツジェラルド)、サラ・ティーレン(ミルドレッド・ナトウィック)、プレイフェア牧師(アーサー・シールド)、エリザベス・プレイフェア(アイリーン・クロウ)、ポール神父(ジェームズ・オハラ)、ポール神父の母(メエ・マーシュ)、ダン・トビン(酔っ払いの老人。フランシス・フォード)

「ジョン・フォード生誕120年上映」という企画で、「駅馬車」と本作が劇場公開され、久しぶりに見る。映画館での鑑賞は初めて。リマスター版で、アイルランドの緑がとてもきれいだった。
アメリカの元ボクサー、ショーン・ソーントンは、幼いころに出た故郷のアイルランドの村イニスフリーに久しぶりに戻ってきた。
彼は、かつて住んでいた家を買い取り、修繕してそこで暮らし始めるが、隣に住むダナハー家の美しい娘メアリ・ケイトに一目惚れする。
豊かな緑にモーリン・オハラの赤い髪と赤いスカートが映える。
ジョン・ウェインは、壁や靴の裏などを使ってマッチに火をつけ、たばこに点火し、マッチを投げ捨て、たばこを吸って、たばこを投げ捨てる。腕を往復させるジョン・ウェイン独特のものを投げ捨てるしぐさが何度も堪能できる。
ショーンは、出会って早々にメアリに結婚を申し込むが、彼女の兄で、一家の長であるレッドは、ショーンを嫌い、二人の結婚に反対する。乱暴者の巨漢であるレッドとの諍いを避けるショーンを、メアリは臆病者と思うが、ショーンはボクシングの試合で対戦相手を死なせてしまったことがあり、心に傷を負っていたのだった。
ショーンは、唯一彼の正体に気付いたプレイフェア牧師に相談をする。ウォード・ボンド演じる豪快なカソリックの神父の陰に隠れてしまっているようだが、この地味なプロテスタントの牧師さんもなかなかよかった。
 旧弊な慣習を重んじつつも、酒好きで気のいい村人たちは、ショーンとメアリの恋の行方を見守り、ショーンとレッドの対決に大いに盛り上がり、村はお祭り状態となる。
 物語後半に大男同志の殴り合いが延々と展開する、至極豪快なホームドラマだ。 (2014.10)

深紅の文字 THE SCARLET LETTER
1926年 アメリカ 90分 白黒 サイレント
監督:ヴィクトル・シェーストレム
原作:ナサニエル・ホーソーン「緋文字」
出演:へスター・プリン(リリアン・ギッシュ)、アーサー・ディムズデール牧師(ラース・ハンソン)、ロジャー・プリン/チリングワース(ヘンリー・B・ウォルソール)、パール(ジョイス・コード)
ギンレイホールで行われた「神楽坂映画祭2018サイレント映画特集・活弁とピアノ演奏による三人三夜」の第二夜、柳下美恵さんのピアノ伴奏つきの上映で見た。
17世紀のボストン、不義の子を身ごもったヒロインが、胸にA(姦淫の烙印)の文字を刺繍した服の着用を命ぜられ世間からの仕打ちに耐えながらも、相手の男(牧師)の名誉を守るためその名を隠し通す。派手なアクションシーンはないのに、群集シーンの迫力がすごい。
不寛容だった時代の話というが、今日日の日本のネットでの腐れインターネッターどもによる不倫叩きの炎上騒ぎと変わらない、というより映画の中の群集は顔を見せているだけむしろマシだ。(2018.10)


空の大怪獣ラドン
1956年 日本 東宝 82分 スタンダード カラー
監督:本田猪四郎
特技監督:円谷英二
音楽:伊福部昭
出演:川村繁(佐原健二)、キヨ(白川由美)、西村(小堀明夫)、柏木久一郎(平田昭彦)、伊関(記者。田島義文)、葉山(松尾文人)、須田(草間璋夫)
和光市民文化センターで開催された伊福部昭生誕百年祭の映画祭で見る。
いわずとしれたラドン。
前半は、九州、阿蘇地域の炭坑の中で起こった坑夫の連続殺人事件に端を発する謎を巡ってミステリ仕立てで話が進む。
やがて、巨大なヤゴのような生物メガヌロンがあっけらかんと姿を見せるが、こんなのがいきなり出てきたらそれは驚くはというくらいそこそこ大きさのある不気味な怪物である。
が、メガヌロンは単なる前振り、その後、各地で原因不明の災害が起こる。
真相を究明しようと炭坑の奥深く進んでいった技師の川村は、そこから遠く離れた草原で記憶喪失の状態で発見される。
阿蘇の砂千里で恋人の写真を撮っている最中に被害に合って死んだ若者は、カメラの中に謎の物体が写り込んだ写真を遺していた。
子どもの頃テレビで観て、写真の端に影のような翼の一部が写っていて、それが博士の助手が持ってきたプテラノドンの資料のイラストの翼と一致するところでかなり興奮したのを覚えている。今見ると、なんで向きも縮尺もいっしょやねん!と思いつつ、ここはやっぱりよかった。
やがてラドンがその巨大な姿を見せ、それからはラドン退治の話になり、阿蘇の火口での有名な悲しいラストへと続く。
ラドンの攻撃はほぼ翼を煽ぐことによって起こす風のみ。ものすごく強い風で町の建物が次々に吹き飛ばされていく特撮は、やはりすごかった。見応えがあった。 (2014.4)

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