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○ 日本映画 ギャング&探偵

<主にあいうえお順>
赤い波止場、 暗黒街の顔役 十一人のギャング、 黄線地帯(イエローライン)、 拳銃(コルト)は俺のパスポート、 探偵事務所23 くたばれ悪党ども、 
恋と太陽とギャング、 花と嵐とギャング、 神戸国際ギャング

赤い波止場
1958年日活 白黒101分
監督:桝田利雄
出演:富永次郎(石原裕次郎)、杉田圭子(北原美枝)、野呂刑事(大阪志郎)、マミー(中原早苗)、ママ(轟夕起子)、チーコ(岡田真澄)、ミッチン(清水マリ子)、パクさん(柳沢真一)、勝又(二谷英明)、土田(土方弘)
左撃ちのジローこと富永次郎は、東京で事件を起こし、ほとぼりを冷ますため神戸の松山組に草鞋を脱いでいる。 松山組は、麻薬の密売絡みでレストランの店主杉田を謀殺していた。東京の大学を止めて帰郷した杉田の妹圭子に、次郎は一目惚れする。
魅力的な次郎に惹かれていく圭子に、神戸の刑事野呂は違う世界の男だからやめろと忠告するが、野呂自身も、次郎の人間性に惚れ込み、逮捕して更正させたいと思っているのだった。
やがて、次郎の命をねらう殺し屋土田が東京からやって くる。
「生まれた時から首まで泥に浸かってい」ながら筋の通った生き方をする粋でかっこいいヤクザを石原裕次郎がゆうゆうと演じている。彼の魅力が存分に堪能できる傑作。
中原早苗が次郎をひたすら思うナイトクラブの踊り子マミーを好演。ジローを慕う若者チーコ役の岡田真澄とその恋人役の清水マリ子もいい。
逃亡のため香港行きの船を待つ、という最後の方の設定は「望郷」の翻案らしい。(2004.5)


暗黒街の顔役 十一人のギャング   
1963年 東映 91分
監督 石井輝男
出演 権藤(鶴田浩二)、東野(杉浦直樹)、沢上(高倉健)、海老名(江原真二郎)、葉室(町田京介)、広岡(高英男)、まゆみ(三原葉子)、ユキ(瞳麗子)、山之内美和(木暮道代)、芳賀(丹波哲郎)
黒部(安部徹)、金光(梅宮辰夫)
ジョージ(アイ・ジョージ)、くめ(吉川満子)、路子(本間千代子)、沢上の助手(由利徹)
20数年前に観てぜひもう一度観たかった日本ハードボイルド犯罪映画の傑作。レンタルビデオ屋で見つけて一も二もなく借りてしまった。
とてつもない金額の現金強奪計画を企てる二人の男。彼等は、計画実行に必要な人材を集め、スポンサーと交渉して資金を調達し、ついに犯行にこぎつけるが……。
鶴田浩二の相棒を演じる杉浦直樹が本当にかっこいい。ソフト帽に白いトレンチコートという出で立ちで登場、「女は気障な男が好きなんだろ」と女(三原葉子だ)にぬけぬけと気障に言い、高倉健をいきなり平手打ちしたりする。クールなのに結局女に弱いところもまたよかったりする。
情婦の太股をなでてほくそ笑む鶴田浩二、挑発されていきがるトラック運転手の高倉健、女主人に対してやけに礼儀正しい情夫兼ボディガードの丹波哲郎などが見られて楽しい。
中でも最後に侠気を見せる高倉健は、任侠シリーズとは一味違った魅力を披露してくれる。
銃の使い手の江原が今にも裏切りそうな危ない雰囲気をずっと醸し出しているのもいい。

ところで、「十一」という数字がずっと気になっていた。権藤と東野で2人、銃の使い手の三人とトラックの運転手の沢上で6人、スポンサーの山之内とその情夫芳賀で8人、権藤の愛人ユキと、得体の知れない女まゆみを入れても10人にしかならない。銃のディーラーや敵役の黒部一味は入れないだろうし、やっぱり数が合わないのだが、「オーシャンと十一人の仲間」のリメイク作品「オーシャンズ11」(2001)を見たあとで改めて観るとなんとなく分かった気がした。 オリジナルの方(見てないのだが)は公開が1960年。「十一」はここから来ているのではないだろうか。綿密な犯罪計画、人数集め、スポンサー捜し、そして実行、という展開が「オーシャンズ11」にそっくりだ。結果はまさに天国と地獄ほどの差があるのだが。(2003.7)
新文芸坐の高倉健一周忌で「恋と太陽とギャング」と二本立てだったので、見た。
やはり、どう数えても10人しかいない。ポスターには梅宮辰夫がけっこう大きく出ているが、彼は阿部徹ら率いる横取りを企む敵対組織の一員なので、11人目とは言えない。
ネットで検索して出てくるデータベースでは、杉浦の役名が「別当」となっているが、映画の中では、「トウノ」と呼ばれている。東野か当野か桐野かまた別の字か漢字不明。
石井輝夫監督のギャング映画を二本続けて見て今更ながら思ったのだが、映画のハードボイルド的雰囲気は、三原葉子によって崩され、独特のへんてこりんなものになっているような気がする(けなしているわけではない)。(2015.11)
このひと言:「どうせこうなりゃ勝って監獄、負けりゃあ地獄だ!」(No.4)

黄線地帯(イエロー・ライン)
1960年 日本 新東宝 79分
監督・脚本:石井輝男
出演:殺し屋衆木一広(天知茂)、小月エミ(三原葉子)、真山俊夫(吉田輝雄)、桂弓子(三条魔子)、パイラーの政(鳴門洋二)、ホテルのマダム(若杉嘉津子)、新聞社デスク(沼田曜一)、洋モク売りのおばさん(小野彰子)、ムーア(スーザン・ケネディ)、阿川(大友純)、松平義秀(中村虎彦)、詩人(川部修詩)
ケーブルテレビで後半だけ見て、おもしろかったと言ったら、家人がDVDを借りてきたので、最初から見直した。
依頼人の裏切りに遭い、警察に追われる身となった殺し屋が、通りがかりの踊り子エミを人質に、東京から神戸に行き、自分を陥れた売春組織の黒幕に報復する。エミの恋人で新聞記者である真山は、エミの行方を追って神戸の盛り場カスバをさまよう。
殺し屋に連れ去られる際に、エミが手がかりとして赤いハイヒールと百円札を残していくのだが、この2つの小道具の使い方がたいへんよい。エミが東京駅で汽車に乗るときに脱ぎ捨てた赤いハイヒールは、すぐに真山が見つけるが、エミがメッセージを書いた百円札(板垣退助の茶色のやつ!なつかしい!)は、靴屋→弓子→政→洋モク売りを経て真山にたどりつくという正に天下の回り物ぶりを見せる。
天知が演じる「蛇のような目をした」男は、不遇な環境に生まれ育ち、犯罪に手を染める冷酷な殺し屋。貧乏人をいたぶる悪い奴しか殺さないという方針を貫いていたのに、騙されて心正しい税関長を殺してしまい、憤る。状況説明に必要なんだろうが、クールな見かけの割に、かなりおしゃべりである。そして、エミには手を出さない。
同行を余儀なくされるエミは、素っ頓狂なまでにあっけらかんとしている。その斬新なキャラクターには、びっくり仰天である。
ごちゃごちゃした狭苦しい路地と安っぽいホテルの部屋など、セットによるカスバの街並みがまた味があって、いい。
日活や新東宝などによる、この時期のてきぱきした絵空事丸出しの犯罪アクション映画の雰囲気は独特で、何でいいのかうまく言えないのだが、やっぱり好きだ。(2013.10)

拳銃(コルト)は俺のパスポート
1967年 日本 日活 84分・白黒
監督:野村孝
原作:藤原審爾
音楽:伊部晴美
挿入歌:「あいたいぜ」ジェリー藤尾
出演:上村周治(宍戸錠)、塩崎駿(ジェリー藤尾)、美奈(小林千登勢)、島津(嵐寛寿郎)、島津二代目(杉良太郎)、千崎(島津組の幹部。江角英明)、大田原(佐々木孝丸)、金子(大田原組の幹部。本郷淳)、津川(船の手配師。内田朝雄)、なぎさ館の女将(武智豊子)
「日活映画100年の青春」という企画上映で見た。昔、テレビ放映の録画を見たが、映画館で見るのは初めて。
殺し屋の上村は、大田原組から敵対する島津組組長の暗殺を依頼される。暗殺達成後、太田原幹部金子の手配により相棒の塩崎と空港から外国への逃亡を図るが、島津組にばれて、船による逃亡に計画が変更される。港近くのなぎさ館という旅館で船が出るのを待つ上村と塩崎だったが、手配師の津川の仲介により島津と大田原は和解して手を組み、上村と塩崎は双方から命を狙われることになるのだった。
前半は、上村の島津組長狙撃の様子が、たんたんとひたすらプロっぽく描かれる。
中間は、なぎさ館で待機する二人と館で働く女美奈との絡みなどがあってちょっと淀むが、ジェリー藤尾がいきなりギター弾いて甘い声で「あいたいぜ〜」と歌い出すなどなごむシーンもある。
島津組の殺し屋が、上村の所在を突き止めるため、金子の車を追う尾行シーンがよかった。昔風の二台の車(型とかまるでわからない)が道を行ったり来たりするだけなのだが、緊迫感があってどきどきした。
最後は、埋め立て地で、上村対多人数の対決。
対決を控え、前夜からの上村の準備の様子が淡々と描かれる。手製の爆弾をつくるときに秒針の動きに合わせて豆電球がつく実験を何度も見せたり、スコップで墓穴のように見える即席の塹壕を掘ったりなど、ハードボイルド感満載でぞくぞくする。
横移動のカット。上村が、走りながら、散弾銃で向こうにいる敵を倒す。2発撃って弾が尽き、走ったまま、散弾銃を投げ捨て、拳銃を抜いて、撃つ。かっこいい。(拳銃はタイトルはコルトだが、上村が所持しているのはベレッタ。)
口笛を交えた音楽は、マカロニ風。
殺伐として、風通しがよく、無邪気で、渋い。宍戸錠主演作の中でもかなり好きな映画である。(2012.9)


探偵事務所23 くたばれ悪党ども
1963年 日本 日活 89分
監督:鈴木清順
原作:大藪春彦「探偵事務所23(ツースリー)」
出演:田島英雄(探偵。宍戸錠)、千秋(笹森礼子)、サリー(星ナオミ)、真辺(川地民夫)、美佐(楠侑子)、熊谷警部(金子信雄)、神父(佐野浅夫)、畑野(信欣三)、吉浜(上野山功一)、入江(初井言栄)、堀内(土方弘)
宍戸錠追悼の意味も込めてウェブ配信で見る。
暴力団同士が武器の取引の最中に何者かに襲撃され武器弾薬を奪われる。
強奪団の一味の一人真辺が逮捕される。探偵の田島は、熊谷警部に真辺を使ったオトリ捜査をもちかける。真辺の釈放を待って警察署前に群がる暴力団員たちの目を欺いて、田島は真辺を連れて逃走する。彼の案内で武器密売の元締め畑野に会い、仲間に入りたいと申し出る。
畑野は、手下に田島の身元を調査させる。田村と名乗り、実家の住所に教会の番地を使った田島だが、熊谷警部が手を回し、田島の父は神父の格好をして田島を待っているのだった。このとき、熊谷警部まで神父に変装しているのがなんとも愉快だったが、そのせいで後々、田島は正体がばれてしまうのだった。
ナイトクラブで、ダンサーのサリーと宍戸錠が、ミュージカルさながらに小粋に歌い踊るシーンが見られて、得した気分になる。
武器強奪団とそれを追う暴力団と警察と、捜査のために潜入した探偵が入り乱れる。男たちが、作戦の段取りや経緯を叫ぶのだけど、早口すぎて何を言ってるのかよくわからなく、わからくてもまあいいかと、元気のいい乱戦を、楽しく見た次第である。(2020.1)

恋と太陽とギャング
1962年 日本 東映(ニュー東映) 87分
監督:石井輝男
原作:藤原審爾
脚本:佐治乾、石井輝男
出演:石浜伸夫(高倉健)、石浜典子(小宮光江)、常田(丹波哲郎)、真佐(清川虹子)、ルミ(三原葉子)、衆木(もろき)(江原真二郎)、光男(山下敬二郎)、嵐山(亀石征一郎)、亀さん(由利徹)、山内(千葉真一)、留美子(本間千代子)、黄(三島雅夫)、幹部A(山本鱗一)、子分A(日尾孝司)、子分B(八名信夫)
新文芸坐の「高倉健一周忌 健さんFOREVERあなたを忘れない」という特集プログラムで見た。
20〜30年前に、同じシリーズの「花と嵐とギャング」を見たが、こっちは初めて。
ゴージャスなホテルで密かに開かれている裏カジノの金を強奪しようとするギャングたちの話である。
健さんは、ソフト帽に背広といういでたちの、出所したてのどもりのギャング石浜伸夫の役。
冒頭、カジノに乗り込み、拳銃片手にパトロンぽい外国紳士の傍らに立つ日本人の美女をかっさらって、逃げる。女の手を引いて、夜の道を走り、路地裏に逃げ込む。やがて、二人の会話から彼らは夫婦であることが判明する。このオープニングがとてもいい。
伸夫の義母真佐は、かつて暗黒街で鳴らした姉御のようだが、今は落ちぶれている。
そんな真佐と伸夫に常田という気障な男から、カジノ強盗の話がもちかけられる。常田は、綿密な強奪計画をたてていた。
衆木ら拳銃使い、一時的にホテルを停電にするための電気技師の亀さん、金を運ぶ役の踊り子のルミ、ホテルのボーイのルミの弟光夫などが仲間に加わる。ルミは、常田の情婦というか、常田がルミの情夫というか、とにかく常田の頼みで、ルミは馴染み客の黄に計画実行に必要な金の出資を依頼する。
へっへっへと不気味に笑う衆木役の江原真二郎は、「花と嵐とギャング」でも「十一人のギャング」でも同じような、今で言う危ない奴の先駆けのような役回り。三原葉子に「気持ち悪い笑い方」と言われるが、確かに気持ち悪い。で、案の定、裏切りを企む。知り合いの堅気のパイロット、山内(千葉真一である。)に逃走のためのヘリの操縦を打診する。光夫とルミも金を持って逃げるつもり、中国人の金持ち、黄もルミにめろめろなだけでなく、儲け話の臭いをかぎつけ、あわよくば横取りをとねらっている。
粋なオープニング、犯罪計画と人集め、あっちでもこっちでも裏切りの企み、ヘリによる逃走と来て、最後は海辺の掘立小屋にたてこもっての銃撃戦。ガラスを銃尻で割り、カジノの追手を迎え撃つ。信夫は、叫びながら1人外へ飛び出して、敵を次々撃ち倒すが、その一方で、盲目の可憐な少女が札束とは知らず、大空を行くヘリから紙幣をばらまく。銃撃戦の決着はわからないまま、必然性なく空しくもさわやかなラストとなる。めちゃくちゃぶりが楽しい昭和の日本B級ギャング映画であった。(2015.11)

花と嵐とギャング
1961年 日本 東映(ニュー東映) 84分
監督:石井輝男
原作:藤原審爾「花と嵐とギャングたち」
脚本:佐治乾
出演:スマイリー健(高倉健)、香港ジョー(鶴田浩二)、佐和(小宮光江)、正夫(小川守)、圭子(荒井茂子)、まさ(清川虹子)、楽隊(江原真二郎)、ウイスパー(曽根晴美)、権じい(打越正八)、山藤/ツンパ(沖竜次)
20〜30年前に一度見たきりでほとんど覚えていないのだが、「恋と太陽とギャング」を見たついでに載せておく。
印象に残るのは、やはり不気味に笑う江原真二郎の「楽隊」。銃を楽器のケースに入れて持ち歩いていることから、こう呼ばれていた。
後半は、北海道に場所が移る。健さんが、逃げる相手を追って、北海道の広々とした土手の上を、拳銃をぶっ放しながら、走る。フルショットで、撃ちながら、走る。それがよかったことを覚えている。(2015.11)

神戸国際ギャング
1975年 日本 東映 98分
監督:田中登
脚本:松本功、山本英明
出演:団(高倉健)、大滝(菅原文太)、マキ(真木洋子)、前原(和田浩治)、中尾(夏八木勲)、五郎(伊藤敏孝)、ポチ(石橋蓮司)、丸山(田中邦衛)、ノウガキ(ガッツ石松)、楊(大滝秀治)、朴(丹波哲郎)、西村刑事(戸浦六宏)、美佐子(磯野洋子)、ハッピー(泉ピン子)

だいぶ前にケーブルテレビで録画したものをやっと見る。
昭和22年の神戸。終戦後の港町を舞台に、あるギャング(やくざではない)団の面々の生きざまを描く。高倉健と菅原文太が最初で最後の共演をしている。
ギャングの面々は、ボスの団、ナンバーツーの大滝、復員兵の中尾(サングラス姿で渋い)、紅一点のマキ、五郎、ポチ、ノウガキ、保、丸山らである。リーダー然とした団に対し、暴力的な大滝はなにかにつけて不満を抱いている。団の白いスーツと、大滝のまっ黄色なスーツ姿が印象的である。
当時の神戸には、団ら日本人のギャング、中国人の楊が率いる九龍同盟、在日朝鮮人の朴が率いる三國同盟、そしてGHQの米兵たち(MP)が入り乱れ、それぞれの陣営が己の利益をむさぼろうとしてしのぎを削っていた。団たちは、楊と手を組み、朴と対立するが、ついに朴を手にかけてしまう。単身逮捕・収監された団は、半年後、脱走する。大滝との溝は深まり、大滝と悪徳MPや悪徳警官が加わったダイヤ強奪計画決行の際に、両者は派手な銃撃戦となり、団と大滝が対決する。
罵声と銃声が飛び交い、セリフの聴き取れない映画を久々に見た。(2019.10)

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