みちのわくわくページ
時間

○タイムトラベルの本(海外) 1895〜1989年

<製作年順>
〜1900年:タイムマシン(ウェルズ) 
1950年代:ビロードの悪魔(カー)、永遠の終わり(アシモフ)、 38世紀から来た兵士、 (「地球の静止する日」所収 エリスン)、 夏への扉、輪廻の蛇、時の門(ハインライン)、 トムは真夜中の庭で(ピアス)
1960年代:タイムパトロール(アンダーソン)、 幻の砂丘(「地球の静止する日」所収。サーリング&ギブスン)、 10月1日ではおそすぎる(ホイル)、 時間線を遡って(シルバーヴァーグ)
1970年代:ふりだしに戻る(フィニイ)、 時間衝突(ベイリー)、 時間飛行士へのささやかな贈物(ディック)、  ある日どこかで(マシスン)
1980年代:タイムスケープ(ベンフォード)、  未来からのホットライン(ホーガン)、 アビヌスの門(パワーズ)、 リプレイ(グリムウッド)、 ライトニング(クーンツ)
タイムトラベラー(短編集)

タイムマシン The Time Machine
H・G・ウェルズ作(1895)
阿部知二訳  創元推理文庫 「ウェルズSF傑作集1」所収
初めてタイムマシンが登場した小説。
タイムマシンによる最初の時間旅行が、文明の発達した輝かしい未来ではなく、荒廃した80万年後の世界であるというのは、とても衝撃的だった。(2003.2)

映画化: 「タイムマシン」(1959年) ジョージ・パル監督、「タイムマシン」(2002年) サイモン・ウェルズ監督

ビロードの悪魔 The Devil in Velvet
ジョン・ディクスン・カー著 (1951年)
吉田誠一訳 ハヤカワ文庫
悪魔と契約して過去の人間に乗り移らせてもらうという伝奇的なタイムトラベルもの。時間旅行よりも旅先の時代での主人公の活躍を主体に描く。
大学教授ニコラス・フェントンは、17世紀後半に起きた毒殺事件の謎の解明を熱望し、悪魔と契約を交わして、過去の世界を訪れる。
舞台設定を17世紀に移した謎解き中心のミステリだと勝手に思っていたので、活劇的内容にいささか面食らう。
チャールズ2世が治めるイギリス、ロンドンで同名の若き王党派の貴族ニコラス・フェントン卿に乗り移った彼は、毒殺事件の謎を追う一方、王党派の一員として、熾烈な抗争に身を投じる。事件の被害者である妻のリディアと恋に落ちながらも、愛人のメグも気になる存在。恋に活劇にミステリの謎解きにさらには怪しげな悪魔との取引にと、老練な精神に若い肉体を持ったフェントンの冒険は、いろんな要素がもりだくさんで飽きない。
当時のイギリス史などほとんど関心外なので、王党派だの円頂派だのグリーン・リボン党だのシャフツベリー卿だのと言われてもちんぷんかんぷんだし、愛人メグ・ヨーク(正体はやがてわかる)の役回りも最初は意味不明で混乱した。
路地での決闘や襲撃してくる60人の敵を使用人の協力を得てわずか6人で迎撃する当たりでようやく本作品の楽しみ方を習得できてきた感じ。チャールズ2世に謁見し、なんやかんやあってロンドン塔に拘禁される当たりはもう歴史ロマン活劇の乗り。と思いきや、最後には見事な謎解きが控えている。
タイトルは、未来を予言するかのような発言をするフェントン卿を恐れた17世紀の人々が、彼がいつもビロードの衣服を着ていることを踏まえてつけた呼び名。このあとフェントンが現代に戻ったかどうかについての言及はない。(2006.6)

二・二六事件当夜にタイムトラベルしながら、当の事件とは全く無関係な個人的事件の解決に終始した「蒲生邸事件」と対照的。

永遠の終り  The End of Eternity
アイザック・アシモフ作(1955)
深町真理子訳 ハヤカワ文庫
銀河帝国(ファウンデーション)シリーズで、無限の宇宙空間に挑んだ著者が、唯一、永遠の時間に挑戦した作品。
過去を矯正し未来の平和を守る時間管理機関<永遠(エターニティ)>。
エリートである<永遠人>の男が、<普通人>の女性を愛してしまった。
ミステ リ・タッチで<永遠>の謎が解き明かされていく。(2003.2)


38世紀から来た兵士(1957)
短編集「地球の静止する日」所収

夏への扉 The Door Into Summer
ロバート・A・ハインライン作(1957)
福島正美訳 ハヤカワ文庫
私が時間ネタSF好きになるきっかけとなった作品。
トラブルに巻き込まれた主人公が、過去と未来を行ったり来たりして、道を切り開いていく。
話が進むに連れて、そこかしこに散りばめられていた謎がびしびし解けていくのが何とも痛快。
猫好きではないけれど、この作品に出てくる「猫が扉を探す」話はいい。(2003.2)


トムは真夜中の庭で  Tom’s Midnight Garden
フィリパ・ピアス著(1958年 イギリス)
高杉一郎訳 岩波少年文庫
登場人物:トム(現代の少年)、ハティ(ヴィクトリア朝時代の少女)、アベル(庭師)、バーソロミュー夫人(アパートの持ち主の未亡人)
弟のピーターが麻疹にかかり、隔離のため、ロンドンから遠く離れた叔父夫婦の家で一夏を過ごすことになったトムは、友だちのいない田舎の生活に退屈しきっていた。
伯父さんのアパートのロビーには、大きな古時計があった。古すぎる時計は、針が指し示す時間とは違うトンチンカンな時を告げる。
そんな時計が13時を打った晩、こっそり階下に降りたトムは不思議な風景を目にする。 目の前に緑の大庭園が広がっていたのだ。そこは、ヴィクトリア朝時代、アパートが大きな屋敷だったころの世界だった。
トムは、繰り返し庭園を訪れるようになり、両親が死んで屋敷に引き取られていた少女ハティと知りあう。緑の生い茂る庭園で、トムとハティは、遊びながらいっしょに時を過ごすようになる。
が、やがてハティは少しずつ成長していき、二人の「時」は残り少なくなっていく。
時を越えて存在するイチイの木や古いスケート靴、聖書の黙示録第十章一から六までの「もう時がない」という一節が二人を隔てる時の長さを物語る。
友だちを求める子どもの思いと昔をなつかしむ老女の思いが胸を打つ、極上のファンタジーである。(2005.8)


輪廻の蛇 All You Zombies
ロバート・A・ハインライン作
”The Unpleasant Profession of Jonathan Hoag”(1959)に収録
井上一夫訳 ハヤカワ文庫「ハインライン傑作集2 輪廻の蛇」所収
タイトルは、自分の尻尾を呑み続けるギリシャ神話の蛇のこと。それが示すのは、果てしなく巡る時間の輪。
究極のタイムパラドックス小説とされる。(2003.2)


時の門 By His Bootstrap
ロバート・A・ハインライン作
”The Menace from Earth"(1959)に収録
稲葉明雄訳 ハヤカワ文庫「ハインライン傑作集4 時の門」所収
自分が自分と闘う様子をさらに別の自分が見ている。
時間を行き来することで陥る自分だらけの世界は、息苦しい閉塞感に満ちている。(2003.2)

関連作品:広瀬正著「タイムマシンの作り方」(集英社文庫)に、「『時の門』を開く」というレポートが載っている。
広瀬正が「時の門」のひとつひとつのシーンを時間軸に沿って図表化し、作品中における時間旅行の整合性を緻密に検証している。


タイムパトロール Guardianns of Time
ポール・アンダースン作(1960)
深町真理子・稲葉明雄訳 ハヤカワ文庫
時間旅行が可能になった未来で、時間犯罪を取り締まる時間管理局タイム・パトロールが設立された。
第1章、2章では、タイムパトロールとなったエヴァラードの、イギリスビクトリア朝時代と古代ペルシャでの活躍が描かれる。
第3章「邪悪なゲーム」は、アメリカ進出を目指す13世紀の蒙古人の豪傑とエヴァラードとのスリリングな出会いを描く。
第4章「滅ぼされるべきもの」では、カルタゴ対ローマの戦いでハンニバルが勝利したため、様相が激変してしまった世界が描かれる。ひとつの世界の消滅ということの重さを背負いつつ、エヴァラードは歴史矯正のため時間旅行に旅立つ。 (2003.2)


幻の砂丘(1964年)
短編集「地球の静止する日」所収

10月1日ではおそすぎる October the First is Too Late
フレッド・ホイル作(1966)
伊藤典夫訳 ハヤカワ文庫
内容をほとんど覚えていないので、裏表紙の紹介を抜粋する。
「過去、現在、そして未来へと不断に流れゆくべき”時”が反逆を開始した。(中略)やがて地上に出現するのは異形の新世界−あらゆる時代が同時存在して地図上に描かれ、古代ギリシャへの船旅さえもが可能となったのだ!」
主人公は音楽家なので、音楽関係のタイトルが章ごとにつけられていたと思う。(2003.2)


時間線を遡って Up The Line
ロバート・シルヴァーバーグ (アメリカ 1969年)
中村保男訳 創元SF文庫
2059年。ギリシャ系アメリカ人の青年ジャッドは、時間サービス公社による時間観光旅行のガイドとなって、ビザンチン帝国と現代を往復する。
自分の祖先がビザンチンの貴族であることを知った彼は、休暇を利用して自分の祖先に会いに行く。
ジャッドは数々の性遍歴を重ね、自分の祖母に欲情し、曾曾多曾祖母に激しい恋慕の念を抱く。性描写は、「フリーセックス」の時代に書かれたものであることを思わせるが、同時にビザンチン史における歴史上の出来事の数々も詳しく描かれていて興味深い。
しかし、本作のおもしろさはタイムパラドックスの扱いにある。
歴史上の大事件を見物に訪れる観光客が時(現在時間)を経るにしたがってしだいに増え、その歴史的事件の場が観光客でいっぱいになってしまうだろうという累積パラドックスや、時間旅行中の人は過去の変更による影響を受けないという移動排除のパラドックスなどが精密に描かれ、後半、ほんのちょっとしたあせりから56秒前に移動して自分の分身を生み出してしまったジャッドを襲う混乱は読み応えがある。(2004.2)


ふりだしに戻る Time and Again
ジャック・フィニィ作(1970)
福島正美訳 角川文庫
80年前に投函された手紙の謎を追って、1880年代のニューヨークへの時間旅行を果たす男。
まだ自由の女神もないニューヨークの古き良き時代がノスタルジックに描かれる。
時間旅行の方法は、セットや衣装で過去の状況をそっくりに再現し、「自分は過去にいるんだ」と信じることで転移するというもの。このような試みが、政府の秘密プロジェクトとして行われているという、かなりファンタジックな時間旅行もの。(2003.2)


時間衝突 Collision with Chronos
バリントン・J・ベイリー作(1973年)
大森望訳 創元推理文庫
対抗する二つの時間流が正面衝突する(ひとつは過去から未来に流れる時間、もうひとつは未来から過去に流れる時間)という時間SF。(2003.2)

時間飛行士へのささやかな贈物 A Little Something for Us Tempunauts 
フィリップ・K・ディック作(1974)
浅倉久志訳 ハヤカワ文庫「ディック傑作集2 時間飛行士へのささやかな贈物」所収
世界初の時間飛行に挑戦した時間飛行士たちが向かったのは、予定していた未来ではなく、わずか数週間後の未来。そこで彼らが目にしたものは自分たちの死?
タイムパラドックスを扱った短篇。(2003.2)


ある日どこかで Simewhere in Time(Bid Time Return)
リチャード・マシスン作(1975)
尾之上浩二訳 創元推理文庫
時間旅行は、「ふりだしに戻る」の方法の小規模版ともいうべきもので、過去の衣服に身を包み、ひたすら過去に行くことを念じることで果たされるが、この場合は、不治の病に冒された男の激しい恋心が起こした奇跡とも言える。
思いを遂げて死んでいく男と、突然目の前に現れ消えていった男を思って生き続けなければならない女と、どちらが悲劇的であるか。
最初の出会いから長い年月を経て彼女が果たした彼との再会は、あまりにも切なく悲しい。(2003.2)

映画化: 「ある日どこかで」(1980年) ヤノット・シュワルツ監督 

タイムスケープ Timescape
グレゴリイ・ベンフォード作(1980)
山高昭訳  ハヤカワ文庫  上・下巻
世界を破滅から救うため、光よりも速い粒子タキオンを使って過去へ通信を送ろうと試みる1998年の科学者と、その通信を受け取ることになる1962年の科学者の様子が交互に描かれる。
未来が過去に、過去が未来につながるループ現象を扱ったハードSF。(2003.2)


未来からのホットライン Thrice upon a Time
ジェームズ・ホーガン作(1980)
小隅黎訳  創元推理文庫
情報を過去へ送り込む時間間通信による干渉が引き起こすタイム・パラドックス。
原題は、三たび発生した”初めての”出会いのこと。(2003.2)


アヌビスの門
ティム・パワーズ著 (1983年 アメリカ)
大伴墨人訳 ハヤカワ文庫(上・下巻)
中年の英文学者ブレンダン・ドイルは、大富豪ダロウが発見した、時空の「孔」を抜けて行う時間旅行に同行し19世紀初頭の世界に赴く。
そこではエジプトの邪教を奉じる魔術師が大英帝国の転覆を企てて暗躍中だった。
事件に巻き込まれ、乞食に身を落としながらも、二十世紀に戻る道を捜しもとめるドイルは、自分が研究していた謎の詩人アッシュブレスに助けを求めようとするが、彼の足取りはようとしてつかめなかった。
不死を願う億万長者、実在の詩人コールリッジ、詩人バイロンのカー(魔術によって複製された本人そっくりの偽物)、男装の麗人、あごのない一つ目の謎の老人、顔におしろいを塗りたくって竹馬に乗った道化姿の乞食の元締め、バネのついた靴で跳ぶように歩く魔術師のカー、「犬面ジョー」と呼ばれる毛むくじゃらの連続殺人犯、信心深いジプシー等等、奇怪で怪しい人物が入り乱れるSF伝奇ロマン。
いろいろな話がもりだくさんだけど、次々と身体を他人と入れ替えていく「犬面ジョー」の件が、一番おもしろく読めた。
アッシュブレスの正体、謎の老人の正体が、時間の経過とともに明らかにされるのが時間ネタSFらしいところ。ドイルは、前半と後半で文字通り人が変わったよう。(2004.11)


リプレイ Replay 
ケン・グリムウッド作(1986)
杉山高之訳 新潮文庫
43歳で死ぬ瞬間に18歳の自分にタイムスリップした男。
人生を思い通りにやり直すが、死の瞬間を逃れることはできず、気がつくとまた過去の時代に戻っていた。
記憶はもとのまま、何度も何度も人生をやり直す男の魂の遍歴。(2003.2)


ライトニング Lightning 
ディーン・R・クーンツ作(1988)
野村芳夫訳 文春文庫
孤児院で育ち苦労しながらも流行作家となって活躍するローラ。
彼女には、危機に陥ると、どこからか現れて救いの手をさしのべてくれる”守護神”がいた。閃光とともに時を越えて現れるその青年の正体は?
過去を変えようとしても「時間は執拗にその修復を試みる」という時間旅行ものの自然の法則が明確に示されている。(2003.2)

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