みちのわくわくページ
飛行機 飛行機の映画、空を飛ぶ映画 (2000年〜) 

<製作年順(降順)>
トップガン マーヴェリック(2022)、 ハドソン川の奇跡(2016)、 フライト・ゲーム(2014)、 永遠の0(2013)、 飛べ!ダコタ(2013)、 風立ちぬ(2013)、 
名探偵コナン 天空の難破船(2010)、 ハッピーフライト(2008)、 フライトプラン(2006)
アビエイター(2004) 名探偵コナン 銀翼の奇術師 (2004) 

フライト・ゲーム Non-Stop
2014年 アメリカ/フランス 107分
監督:ジャウマ・コレット=セラ
出演:ビル・マークス(航空保安官。リーアム・ニーソン)、ジャック・ハモンド(航空保安官。アンソン・マウント)、マレニク(保安局捜査官。シュー・ウィガム)、カイル・ライス副機長(ジェイソン・バトラー・ハーナー)、ナンシー(CA。ミシェル・ドッカリー)、グウェン(CA。ルピタ・ニョンゴ)、ジェン・サマーズ(ジュリアン・ムーア)、トム・ボーウェン(スクート・マクネイリー)、ザック・ホワイト(ネイト・パーカー)、オースティン・ライリー(コリー・ストール)、ファーヒム・ナシール(医師。オマー・メトワリー)、トラヴィス・ミッチェル(コリー・ホーキンス)、ベッカ(少女。クウィン・マクコルガン)
★犯人はバラしてませんが、多少ネタバレしてます。★
ニューヨークからロンドンに向かう旅客機の中で、飲んだくれの航空保安官が、正体不明のハイジャック犯を相手に孤軍奮闘する。
一般の乗客に紛れて、機内の警備に当たる航空保安官ビル・マークスの携帯電話に不審なメールが送られてくる。指定口座に15000ドルを入金しないと20分に一人乗客を殺害すると脅迫する内容だった。ビルは同乗している同僚のハモンドのいたずらと思い問い詰めるが、彼は否定する。やがて、意外な形で最初の殺人が行われてしまう。
CAのナンシーと、隣の席の乗客ジェンに協力を請い、ビルは密かに犯人を捜し始めるが、型どおりの調査と称する強引なやり方に、乗客は不審を募らせる。
機長が2人目の犠牲者となり、地上の保安局の調査で振込先口座がビルの名義になっていることが判明すると、本部はビルを犯人と疑い、副機長はビルへの協力を拒む。
やがて、ハイジャックは報道機関の知るところとなり、ビルを容疑者とする報道が開始され、機内の乗客もこれを知る。NY市警の警官ライリーを始めとする乗客が、ビルを取り押さえようとする。
ビルは、機内という限られた空間と次の殺人まで20分という限られた時間のなかで、犯人と疑われながら、150名の乗客の中から犯人を捜さなければならなくなる。
どんどん悪化していく事態の中、ビルの焦燥が伝わってきてはらはらどきどきするが、決して善人面ではなく、飲んだくれでもあるビルに「信じてくれ」と言われて戸惑うナンシーやジェンの気持ちもよくわかる。さらに、犯人は娘のオリビアを楯にしてビルを脅迫してくる。娘の名がオリビアだということを知ってはいても、彼女が病死したことを知らないやつが犯人であるということに気づいた観客は、ビルがオリビアの話をしたジェンにも疑惑の目を向けることになる。
そして遂に犯人が判明するが、どうも釈然としない。これは、この手のミステリにはありがちなことで、同様の飛行機内サスペンス「フライトプラン」の場合もそうだった。でも、それまでのはらはらどきどきを楽しめたということで、まあいいかなという感じだ。
爆弾が発見され、騒然となる機内。異常事態の中、副機長が着陸において地味に手腕を発揮するのがうれしかった。飛行機を脱出不可能な密室ということでのみ扱わず、飛ぶ機械としての機能を活かした盛り上がりをみせてくれて、よかった。(2014.9)


永遠の0
2013年 日本(公開 東宝) 144分
監督・脚本・VFX:山崎貴
原作:百田尚樹「永遠の0
主題歌:サザンオールスターズ「螢」
出演:宮部久蔵(岡田准一)、佐伯健太郎(三浦春馬)、佐伯慶子(吹石一恵)、清子(風吹ジュン)、松乃(井上真央)、長谷川(平幹二朗)、井崎(濱田岳/橋爪功)、武田(三浦貴大/山本學)、景浦(新井浩文/田中泯)、大石賢一郎(染谷翔太/夏八木勲)、小山(上田竜也)

原作の小説を読んでから映画を見た。
太平洋戦争中、極力戦闘を回避し、生きて家族のもとに帰ることをなによりも大事に考えていた航空兵がいた。しかし、彼(宮部)は、特攻を志願する。彼はなぜ死を選んだのか。
という謎を、現代の若者であり宮部の孫である健太郎が探っていく。健太郎は祖母の松乃の葬式で、祖父の賢一郎とは血がつながっておらず、実の祖父である宮部は終戦の年に特攻で戦死したと聞かされる。彼は、姉の慶子と共にかつて宮部の戦友だった老人達に会い、話を聞いていく。宮部を臆病者と呼ぶ長谷川、病床にあって宮部のことを切々と語る井崎、会社の重役で忙しい身であるにも拘わらず健太郎のために時間を割いて宮部の話をする武田、ヤクザの親分で義侠心にあふれた景浦らである。
この映画で、零戦を見るのが楽しみだった。山崎貴監督なら零戦をかなりいい感じで撮ってくれるだろうと期待し、期待に違わず、いい感じだった。
気合の入った零戦の映像を別にしても、原作の映画化に当たって、話のつくりや映像の出し方に工夫がされていると思った。
原作には、「特攻は自爆テロだ。」というジャーナリストが登場する。映画では、健太郎が友人に誘われていった合コンの席で、若者が小馬鹿にしたように同じことを言う設定になっている。
老人たちの話も順番を変えている。慶子と健太郎は景浦には一度追い返され、その後再び健太郎が一人で訪ねていくという展開になっている。
が、私は、原作を読んだ後に宮部という人物に対して抱いた違和感を、映画でも感じてしまった。
映画を見ながら、原作者が描きたかったのは、特攻へ行けと言われ誰もが志願をする、あるいはせざるをえない状況の中で、それを拒む兵士がいたらどうなったかということなのかしらと思った。特攻は拒否しようと思ったからって拒否できるものなのか。それは興味深いテーマだと思ったが、しかし、彼は結局特攻を志願する。そして、宮部がなぜ特攻を志願したかは、原作でも映画でもメインテーマとなっているにも関わらず、原作でも映画でもあいまいだ。死んでいった仲間たちへの思いから特攻を志願するということになっているが、そのへんの葛藤は描かれない。十死零生の特攻など作戦と呼べない、だから特攻には行かないという景浦の方がよほどわかりやすいが、景浦にしたって特攻を拒否し続けることが可能だったかどうかは疑問である。
宮部は、凄腕の戦闘機乗りだけど戦闘は好まない、常に物静かでやんちゃさに欠けるが、同僚を思いやる男気があり、生きて帰りたいのは自分の命が惜しいというよりは家族を守るためである。とても立派な人物であるが、しかし、彼が戦争や国や飛行機に対してどのような思いを抱いていたかは不明である。私には、彼は時代と乖離しているように感じられた。原作を読んだ時もそうだったのだが、映画は時間SFものを撮ってきた山崎監督でもあることだし、宮部を平成の若者がタイムスリップしたものだとすれば、奇想天外だけど違和感はなくなるかもしれないと思った。(健太郎が高校生くらいだったら、未来の彼が過去に行っちゃったことにして、ハインライン的輪廻の蛇のような展開になったりして、などと余計な想像を巡らせてしまったりもした。)
多くの人が感動したと述べており、劇場で見ていたときも周囲からすすり泣く声が聞こえた。にも関わらず、私はどうも宮部を生身の人間としてとらえきれなかった。(2013.12)


飛べ!ダコタ
2013年 日本 配給アステア 109分
監督:油谷 誠至(あぶらたに せいじ)
音楽:宇崎竜童
主題歌:石井里佳「ホームシック・ララバイ」
出演:森本千代子(比嘉愛未)、木村健一(窪田正孝)、森本新太郎(村長。柄本明)、村上敏江(洞口依子)、高橋源治(消防団長。ベンガル)、浜中幸三(校長先生。螢雪次朗)、石川(通訳をさせられる大学講師。山本浩司)、佐吉(綾田俊樹)、木村とよ(中村久美)、篠田和子(芳本美代子)、松乃(園ゆきよ)、望月(佐渡稔)、ブラッドリー少佐(機長。マーク・チネリー)、ディヴィット少尉(ディーン・ニューコム)、母の写真を入れたペンダントを持つイギリス兵、太めのイギリス兵、上海総領事
予告編で目にしたダコタに釣られて見に行く。
太平洋戦争終戦後まもないころ、佐渡島の村で実際にあった出来事がベースになっている。
昭和21年(1946年)1月、佐渡島高千村の海岸に、外国の飛行機が不時着する。機はイギリス空軍の輸送機ダコタ(DC-3)で、数名のイギリス兵と東京に運ぶ途中だった上海総領事を乗せていた。
終戦から1年も経っておらず、複雑な思いを抱く島の人々は、元敵国の兵士たちへの対応に戸惑う。が、村長の新太郎(柄本明が好演)は、自宅で経営する旅館へ招くことを決意し、娘の千代子は彼らを快く迎える。
島の人々は、それぞれ事情を抱えている。消防団団長の高橋は、息子を戦争でなくしている。敏江は息子の戦死の報せを信じず、生還を待っている。兵学校で訓練中に足を負傷して帰ってきた健一は、自宅にこもり、鬱々とした日々を過ごしている。千代子と健一は互いに想い合っているが、健一は彼女に対しても心を閉ざしたままだ。手のひらを返したように軍国主義から民主主義に一転した社会に対し、彼が胸の内に抱える怒りとやりきれなさが推し量れて、切ない。
村に「のた」と呼ばれる大波がくる時季になる。「のた」は、「来るかもしれないし、来ないかもしれない。だが、来たら手遅れだ」というもの。島の人々は、力を併せて人力で海岸にあった飛行機を高台まで引き上げる。機長のブラッドリー少佐が感謝の言葉の途中で感極まって口ごもり、それまで話した内容を通訳しようとする石川を、村長が、その必要なはないと押しとどめる。なんでもかんでも説明過剰の昨今の風潮にあっては、稀少な、いい場面だ。
飛行機の整備がすんでも、離陸するためには滑走路が必要だった。そこで海岸に500メートルの滑走路を造ることになる。イギリス人と島の人々が総出で石を運び、並べ、固める工事を行う。
出発の日、島の人々が海岸に並んで見守る中、ダコタは、完成した滑走路を走行して、飛び立っていく。
予告編やチラシの宣伝からほぼ想像される通りの展開、ほぼ想像されるいい話が、たんたんと描かれる。島の人もイギリス人も地味だがそれぞれ丁寧に個性が描かれている。佐渡の海が美しく、千代子がたびたび訪れる海岸の斜面の東屋に吹く海風は強くて寒いが、気持ちがよさそうだ。押しつけがましいところがなく、見ていて心地のいい映画である。
が、飛行機に関しては、物足りなかった。タイトルにダコタとあるが、主眼は人間ドラマの方に置かれ、飛行機への思いはうすい。整備の様子があまり描かれず、どこが壊れたのか、ちゃんと直せたのかが不明で気になる。最後の離陸のシーンも感動的だと思うのだが、飛行機好きとしては、もっとダコタが見たかった。滑走路を走行するにあたっては、これでもかというくらい、いろいろなアングルで撮って魅せてほしかった。やったあ! 飛んだあ!ともっと高揚したかったというのが、正直なところだ。(2013.10)
補足:舞台となる高千村は、佐渡島北部沿岸に位置していた村で、明治22(1889)年に発足、昭和31(1956年)に北海村と合併して相川町となり、2004年の大型合併で佐渡市に組み入れられる。現在、佐渡市に高千という地名が残っている。

風立ちぬ
2013年 日本 126分
監督:宮崎駿
音楽:久石譲、主題歌:荒井谷由美「ひこうき雲」
声の出演:堀越二郎(庵野秀明)、里見菜穂子(滝本美織)、本庄季郎(西島秀俊)、黒川(西村雅彦)、カストルプ(スティーブン・アルバート)、堀越加代(志田未来)、二郎の母(竹下景子)、里見(風間杜夫)、服部(国村隼)、黒川夫人(大竹しのぶ)、カプローニ(野村満斎)
関東大震災から太平洋戦争にかけての時代を背景に、ゼロ戦の設計者堀越二郎の青年期を描く。
東大を卒業して三菱内燃機関KK(三菱重工)に入社した二郎は、幼いころから夢見ていた飛行機の設計者としての道を突き進む一方、結核を患う令嬢菜穂子と恋に落ちる。
風を駆使した菜穂子との出会いと再会は美しく、時間がないことを知った二人の恋は、穏やかで深い。
二郎は、自分では飛行機を操縦しない。彼自身の飛行は、ほぼ夢の中で行われる。そして、その夢は、イタリアの飛行機技師カプローニのそれと交錯する。カプローニは、夢の中で飛行機の素晴しさと凶暴さについて語る。
その内容は、以前私が目にした宮崎駿監督の言葉と重なる。

「星のおうじさま」で知られるフランスの作家サン=テグジュペリの作品に「人間の土地」という小説がある。郵便物を運ぶ小型飛行機の操縦士たちの過酷な任務とそれに対する彼らの誇りや僚友との友情を書いた傑作だ。何年も前に新潮文庫の改定版を買ったとき、宮崎駿監督がカバーイラストを手掛け、あとがきを書いていた。おっ!と思って読んだあとがきの文章が予想外に陰鬱な内容で愕然とした記憶がある。
飛行士であり作家であるサン=テグジュペリや作品への思いがつづられているものだとばかり思っていたら、そうではなく、そこには、飛行機がいかに凶暴なものであるか、戦争中に武器としてどれだけ多くの飛行機が作られ飛ばされ、どれだけ多くの若者が犠牲になったか、といったことが延々と記されていた。
「飛行機の歴史は凶暴そのものだ。それなのに、僕は飛行士達の話が好きだ。」と語り、文末に「(一九九八年八月、アニメーション映画監督)」とあった。

「風立ちぬ」は、そのころから監督が抱えていた矛盾をついにアニメ化した作品のように思える。
美しい画面から、戦争の悲惨さを想起することは難しい。
しかし、彼は、敢えて、戦闘場面や軍隊による軍事教練といったシーンを描くことをせず、戦争については、言葉と、飛行機の墓場という夢の中の光景のみに留めた。
「一機も帰ってきませんでした。」という二郎の言葉にどれほどの思いがこめられているのか。
アニメーション映画監督としてできうるだけのことをして、後は観客の想像力に賭けたのではないだろうか。
飛行機好きには飛行機の設計や試運転の話はかなりおもしろい。
私は、飛行機の型とかは全然わからず、今回も二郎が映画の中で作った飛行機が九試単座戦闘機というものであり、零戦の正式名称は零式艦上戦闘機ということなどは、映画を見た後に検索したり、友人の指摘で知ったのだが、飛行機と飛行機乗りの話は好きだ。
また、年代的にもわかりやすい。子どものころ、大人たちはとにかくよくたばこを吸っていたし、よく戦争の話をした。
(さらに個人的なことを言えば、数年前に亡くなった父は、零戦に憧れ、終戦間近に15歳で海軍に入隊した、最後の予科練生というべき少年だった。入隊後すぐ終戦となったので、1ヶ月にも満たない軍隊生活だったが、当時のことを克明に記した自分史を遺している。二郎の作った飛行機が当時の若者たちにどのような影響を与えたのか、そうしたことが歴然とした事実として、かなり具体的に書かれている。私としては、人ごとではないような部分があるのだ。)

そうした時代背景や、菜穂子との恋愛などもあってか、世間では、大人の映画だと言われている。
しかし、それでも、青少年に見てほしいと私は思う。
宮崎駿の新作アニメであれば、老若男女が見に行くであろうし、内容は、表面的には、小学校高学年以上であれば理解できるだろう。
庵野棒読みすぎとか、たばこ吸いすぎでやだとか、飛行機好きでないとおもしろくないとか、戦争のことを知らないとわからないなどと思うかも知れないが、わからないからと言って切り捨てず、わからないなりに、想像力を掻き立てて、漠然とでもいいからこういうことかしらと思いを巡らせてほしい。そして、よかったという人はもちろん、ぴんとこなかった場合でも、その印象ごと見たことを記憶にとどめてほしい。
形にした以上、作品は残る。そのまま記憶の彼方に葬り去られてしまうかも知れないが、何年も後になってまた見る機会があるかもしれない。見る年代とともに印象の変わる映画がある。映画と見る側、ともに年月を経てなし得るものもあるはずだ。(2013.7)


ハッピーフライト
2008年 フジテレビジョン・アルタミラピクチャーズ・東宝・電通(公開東宝) 103分
監督・脚本:矢口史靖
主題歌:フランク・シナトラ「カム・フライ・ウィズ・ミー」
協力:ANA
出演:<ボーイング747-400、ホノルル行き1980便 機内>鈴木和博/副操縦士(田辺誠一)、原田典嘉/機長(時任三郎)、齋藤悦子/CA(綾瀬はるか)、田中真里/CA(吹石一恵)、山崎麗子/チーフパー サー(寺島しのぶ)、カツラの乗客(笹野高史)、クレームをつける乗客(菅原大吉)、新婚の乗客(正名僕蔵、藤本静)、乗客(竹中直人)、CAに憧れる女 子高校生、アロハシャツの 家族連れ、
<ターミナル>木村菜摘/グランドスタッフ(田畑智子)、グランドスタッフ(平岩紙)、グランドマネージャー(田山涼成)、風邪で欠席の機長(小日向文 世)、悦子の母(木野花)、悦子の父(柄本明)、太田/荷物を間違えられた乗客、航空機オタク三人組、
<オペレーション・コントロール・センター(OCC、航空会社部署)>高橋昌治/オペレーション・ディレクター(岸部一徳)、ディスパッチャー(肘井美 佳、中村靖日)
<管制塔(国土交通省管轄部署)>管制官(長谷川朝晴、いとうあいこ、江口のりこ、宮田早苗)
<整備部>ライン整備士(田中哲司)、ドック整備士(森岡龍)

<野外>バードさん(ベンガル)、雑誌記者(森下能幸)、航空機を撮影する中年男コンビ
羽田空港。ホノルル行きの航空機が離陸し、緊急事態によって引き返してくるまでの顛末を描く。
国際線初搭乗の新米キャビン・アテンダント(CA)悦子と、このフライトが機長昇進試験を兼ねているコーパイ(副操縦士)鈴木がメインになっているが、機 内だけで なく、フライトを見守り指示を出すオペレーション・コントロール・センター(OCC)、管制塔、客の対応をするターミナル・カウンター、ドックの整備士な ど、様々な部署で働くスタッフの様子が、てきぱきとテンポ良く描かれていく。飛行機を飛ばすために、これほどたくさんの人たちが関わっているのかと改めて 驚かされる。(航空機への指示は、管制塔が行うものと思っていたのだが、この映画では、多くの指示を航空会社の部署であるOCCが出している。管制塔のス タッフは公務員ということになっているので国の機関らしいことはわかるのだが、こことOCCの関係というか、どういう役割分担になっているのかが、ちょっ とわかりにくかった。)
とにかくすごい数の人が出てくる。スタッフだけでなく、乗客や航空機マニアなど、有名俳優も混じえた多数の登場人物には、端役にまで実はいちいち名前 があるみたいだ。当然、ひとりひとりの出番は少なくなるのだが、みんな生き生きしていて好感が持てる。
威圧的で怖そうだが、頼りになるベテラン機長を時任が好演。寺島しのぶの演じるチーフパーサーの敏腕ぶりもすごい。片膝ついて低い姿勢からクレーマーの乗 客をなだめるところなど、聞き分けの悪い殿を諫める時代劇の武将のようだ。グランドスタッフの菜摘を演じる田畑の元気のよさもよいし、「バードさん」のベ ンガルはなかなかしぶい(離着陸の障害になる野鳥の群れを空砲で脅して追い払う「バードさん(バードパトロール)」という航空スタッフの存在は初めて知っ た)。
前半は、航空業界のさまざまなお仕事の紹介を楽しく見ていられるが、後半は一転、それぞれの部署のプロがその手腕を発揮して緊急事態に対処する様子をはら はらどきどきしながら見守ることになる。
機内の報告から即座に事故の原因を究明し状況を把握する一方、台風の通過による天候の変化をチェックするOCCの面々、サービス係から保安 要員へと変わるキャビン・アテンダントたち、そして、コクピットで刻々と変わる状況を見極めながら操縦する鈴木と脇で指示を出す原田。地上と上空での見事 な連携は、 宇宙飛行士 の生還を描いたアメリカ映画「アポロ13」を思い出させる。専門用語が飛び交って素人には細かいことはよく分からないのだが、緊迫感はひしひしと伝わって くる。2時間弱、飛行機のことを、たっぷり楽しめる映画になっている。(2008.11)

このひと言 (No.38)「エマージェンシーなんて俺も初めてだから、どっちが操縦桿握っても大した違いはないよ。」

アビエイター The Aviator
2004年 アメリカ 171分
監督:マーティン・スコセッシ
出演:ハワード・ヒューズ(レオナルド・ディカプリオ)、ノア・ディートリッヒ(ジョン・C・ライリー)、フィッツ教授(イアン・ホルム)、グレン・オデ カーク技師(マット・ロス)、ジョニー・メイヤー(アダム・スコット)、ジャック・フライTWA社長(ダニー・ヒューストン)、キャサリン・ヘップバーン (ケイト・ブランシェット)、エヴァ・ガードナー(ケイト・ベッキンセイル)、フェイス・ドマーグ(ケリ・ガーナー)、エロール・フリン(ジュード・ロ ウ)、ジーン・ハーロウ(グウェン・ステファニー)、ホアン・トリップ(アレック・ボールドウィン)、ブリュースター上院議員(アラン・アルダ)、ローラ ンド・スイート記者(ウィレム・デフォー)
1930〜40年代のアメリカを一世風靡した大富豪ハワード・ヒューズの、映画と飛行機にかけた人生を描く。
少年時代のエピソードが、母親に潔癖性の元を植え付けられたようなことだけしか示されないのはなんとも物足りない。もう少し飛行機好きの片鱗とか見せてほ しかった。
父親が遺した工作機械会社を弱冠18才で受け継いたハワードは、莫大な財力を思いのままにして、ハリウッドで映画を製作し、自前の飛行場を持って飛行機を 開発する。「地獄の天使」のひたすら雲を求めての撮影や、「ならず者」の検閲のエピソードなど映画の話もかなり興味深かったが、やはり、自ら操縦桿を握っ てテスト飛行をする飛行士(アビエイター)としての彼の姿に胸がときめく。一度目は赤カブ畑に突っ込む愉快な不時着、二度目はベバリーヒルズの住宅地に 突っ込んで自身が大怪我をする悲惨な不時着となるのだが。
ウィンスレットが、個性的で活気に満ちた女優キャサリン・ヘップバーンを魅力的に演じている。二人で夜間飛行をするところはロマンティックなムードにあふ れている。病的なまでにきれい好きのハワードが、キャサリンの飲んだ牛乳に口を付けるあたりに、彼女への愛が感じられる。
デカプリオは、時として醜男に映るのもいとわない熱演ぶりでよい。(2005.4)

関連本:「ハワード・ヒューズ」

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