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○ 本 ミステリ アンソロジー

天外消失(ハヤカワ・ミステリ)

天外消失 Off the Face of the Earth and Others Stories
早川書房編集部編 ハヤカワ・ミステリ(2008年)
早川書房が1972年に発行した「世界ミステリ全集」の18巻(最終巻)「37の短編」に掲載されていた作品の中から、他のアンソロジーで見られないものなど14編を所収。(2009.11)
☆ジャングル探偵ターザン Tarzan, Jungle Detective
エドガー・ライス・バロウズ作 斉藤伯好訳 (1966年訳)
ジャングルの中で類人猿とともに育ち暮らしている白人の男ターザンが、はぐれ者の猿に連れ去られた雌猿を仲間の猿とともに追う。猿の擬人化がどうにもなじめない。ターザンの父親グレイストーク卿の白骨死体が出てくるあたりが、往年の人気 シリーズの一遍らしく、郷愁を誘う。
☆死刑前夜 The Human Interest Stuff 
ブレット・ハリディ作(1938年)  都筑道夫訳
アメリカとの国境からちょっと南にあるメキシコの鉄道線路建設工事現場を舞台に、逃亡中の殺人犯とそれを追う男との友情が描かれる。工事が完成した後に待っている運命を知りつつも、技師としてもくもくと作業を進めていく二人の男の姿が感動的的な秀作である。語り口に気のきいた工夫があるが、それは予想できる範囲のもので、むしろ予想して読むとより感慨深い。
☆殺し屋 Stan le Tueur
ジョルジュ・シムノン作(1944年) 長島良三訳
パリ市警のメグレ警部ものの短編。数人のポーランド人による強盗団がバリのホテルに 潜伏しているとの情報を得たメグレは、部下たちを動員して張り込みを続けていた。一味のボスは、スタンと呼ばれる、凶悪な殺人者。スタンの正体をつきとめようとするメグレの前に、一人のポーランド人が現れる。オゼップと名乗るその男は、人生に絶望し死を望んでいるので強盗団の殲滅に協力したいと申し出てき た。最初は相手にしなかったメグレだが、あまりにもしつこい申し出に、彼をスタンの愛人と思われる女と接触させることに。オゼップと強盗団の関係とは?  急展開の末に暴かれる真相は苦い。
☆エメラルド色の空 The Case of the Emerald Sky
エリック・アンブラー作 小泉喜美子訳(1956年訳)
チェコからの逃亡者チタール博士の名推理を描くシリーズの一遍。急死した老富豪の体内から致死量を超える砒素が発見される。どのような形で砒素が盛られたのか、チタール博士が意外な経路と犯人を暴く。
☆後ろを見るな Don’t Look Behind You
フレドリック・ブラウン作(1953年) 曽我四郎訳
裏世界の大物ハーレイに印刷の腕を見込まれ、彼と組んで偽札づくりを始めたしがない印刷工ジャスティン。ハーレイが殺され、偽札の原盤をめぐってかつての仲間から拷問を受け殺されかける。なんとか生き長らえたジャスティンだったが、彼は、ハーレイの死を信じることができず、ハーレイの亡霊とともに生き、やがて殺人鬼と化していく。ジャスティンの一人称語りで展開するスリリングな一遍。 短編集「真っ白な嘘」の最後に収録されたと言うが、今回も巻末に載せるべきではなかったかと思われる。
☆天外消失 Off the Face of the Earth
クレイトン・ロースン作 阿部主計訳(1956年訳)
収賄容疑で捜査中の地方検事キーラーが、突然姿を消した。尾行中の刑事が見守る中、 ずらりと並んだ電話ボックスのひとつに入り、そのまま、いなくなったのだ。しかも、予言者を自称する奇妙な人物ズィーズクが、そのことを予言していた。奇術師マリーニーが、「天外消失」の謎を解く。
☆この手で人を殺してから Being a Murderer Myself
アーサー・ウィリアムズ作 都筑道夫訳(1959年訳)
南アフリカの田舎で養鶏場を営む男ウィリアムズが告白する殺人の話。別れた女に押しかけられて、煩わしさのあまり彼女を殺してしまった彼は、その死体をどうやって処理したか。ブラックで衝撃的な展開。酒場で酔うと六連発の早撃ちをしてみせてくれるという地方警察の巡査部長セロンとのやりとりも読ませる。
☆懐郷病のビュイック The Homesick Buick
ジョン・D・マクドナルド作  井上一夫訳(1959年訳)
テキサスの町で銀行強盗が起こる。8人の犯人のうち7人は逃走するが、1人は、ビュ イックの運手席にいるところを銀行の隣の荒物屋の主人に撃たれて死亡する。車と死体が1つずつという重大な証拠が残されながら、警察は犯人についてめぼしい手がかりを得ることができなかった。が、14歳の少年が、警察が調べ尽くしたビュイックから、犯人の逃走先を示す意外な手がかりをみつける。
☆ラヴデイ氏の短い休暇 Mr.Loveday’s little Outing
イーヴリン・ウォー作 永井淳訳(1969年訳)
富豪の娘アンジェラは、州立精神病院に入院する父の見舞いに行き、そこで父に付き添っているラヴデイ氏に会う。ラヴデイ氏も患者のひとりだったが、患者たちの世話をして、病院の職員からも患者からも好かれていた。どうみてもまともな彼が病院にとどまっているのを気の毒に思ったアンジェラはあれこれ手をつくして、彼の外出許可を得る。死ぬ前に一度外へ出てやりたいことがあると語っていたラヴデイ氏は、その夢を実現させるのだった。今読むとすぐ先がわかってしまうが、発表当時はけっこう衝撃的な結末だったのかもしれない。
☆探偵作家は天国へ行ける Heaven can Wait
C・B・ギルフォード作(1953年) 宇野利泰訳
映画「天国からきたチャンピオン」の原題と同じタイトル。死んだ人間が再び地上に降り立つという設定も似ているが、こちらは自分の死後の世界ではなく、死んだ日をもう一度繰り返す。有名な推理小説家が、死ぬまでの経過を繰り返すことで、 自分を殺した犯人をつきとめるというもの。
☆女か虎か The Lady, or the Tiger?
フランク・R・ストックトン著(1882年) 中村能三訳
中学か高校の英語の教科書に出てきた話であることを途中で思い出した。 これぞ究極の選択という興味深い状況設定だが、結論は読者に委ねられているところが斬新。
☆白いカーペットの上のごほうび Body on a White Carpet
アル・ジェイムズ作(1959年) 小鷹信光訳
チンピラの男がゴージャスな女の罠にはまって死体処理をさせられる話。エッチで軽快でちょっとなつかしい雰囲気。
☆火星のダイヤモンド The Martian Crown Jewels
ポール・アンダースン作(1958年) 福島正実訳
地球と火星・金星間を宇宙船によって行き来することが可能になり、貿易もさかんに行われている未来が舞台。 無人宇宙船に積まれた火星の宝冠ダイヤが、地球から火星に到着するまでの間に何者かに奪われた。シアロックという名の火星人の探偵が登場、地球人の警部の依頼で、密室状態の宇宙船で発生した事件の謎を解く。
☆最後で最高の密室 The Locked Room to End the Locked Room
スティーヴン・バー作(1965年) 深町眞理子訳
密室状態の邸で起こった富豪殺人事件の真相を、知人の精神医が解明する。 彼を殺した犯人はどこへ消えたのかがポイント。

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