みちのわくわくページ

○ 本 C・J・ボックス

<ジョー・ピケット シリーズ>
フリーファイア、 裁きの曠野、 沈黙の森
(※ページ末にシリーズ作品一覧記載)

フリーファイア  FREE FIRE
C・J・ボックス著(2007年)
野口百合子訳 講談社文庫(2013年)
シリーズ第7作。

前作で、猟区監理官を辞めたジョーは、義母の夫が営む牧場で牧童頭をしていたが、やがて知事から直々に呼び出され、管轄区域を持たない猟区監理官に任命され、イエローストーン国立公園で起こった殺人事件の再捜査のために派遣される。
半年前にクレイ・マッキャンという弁護士が、キャンプ中のボランティア要員である若者4人を射殺する事件が起こった。犯行直後、彼は近くの公園事務所に自首したのだが、信じられないことに無罪放免となる。イエローストーン公園は、ワイオミング州、モンタナ州、アイダホ州の3州にまたがっているが、犯行はほんのちょっとだけ土地が公園内にかぶるアイダホ州内で行われた。公園のアイダホ州の部分は細長く面積もごく小さいが、法規に従うと、裁判はアイダホ州で行われ、そのごく限られた区域から陪審員12名を選ばなければならないことになってしまい、事実上不可能であることから、マッキャンは放免されたのだった。以後、その区域は「死のゾーン」と呼ばれるようになる。
ジョーは、バカにされかっとなって殺したというマッキャンの供述に疑問を抱き、彼と被害者らの関係を探り始める。公園側スタッフは、ジョーの来園を歓迎しないが、案内兼監視係の女性レンジャー、ジュディ・デミングは彼に快く接し、ジョーも彼女に好感を抱く。
豪快に吹き出る間歇泉を初め、とにかく広大で雄大で自然美にあふれた公園内の様子が描かれていて、心湧きたつ。
公園内にのみ生息する微生物の発見に絡む業者の利権争いが、殺人事件に結びついてくるという展開は、このシリーズでは馴染みのあるものであるが、法律の穴をつくという秀逸なアイデアと破天荒なスケールで広がるイエローストーンの自然の壮大さとそして非情さが示されることで、読み応えのあるものとなっている。
ジョーの過去もいろいろ明かされ、父との再会などもあるが、このあたりの事情は陰鬱で、すっきりした気分になれないのだった。(2015.1)


裁きの曠野  IN PLAIN SIGHT
C・J・ボックス著(2006年)
野口百合子訳 講談社文庫(2012年)

★ネタばれあり!!
シリーズ第6作。知人に勧められたので、1作目から5作飛ばしてしまうことになるが、1作目の次に本作を読んだ。その間にいろいろ展開があったようだが、巻末にこれまでの説明が載っているので、だいたいの展開はわかった。謎解きよりも、ワイオミングの風景とジョーの言動や家族や人とのやりとりがおもしろいので、とりあえずそれでよしとして、時間ができたら間の作品も読みたい。
1作目で7歳だったジョーの長女のシェリダンは、14歳になっている。
彼女の友人ジュリーの家は、先祖代々広大なサンダーヘッド牧場を経営するスカーレット一族。
ある日、ジュリーの祖母で一族の長で地元の勢力者であるオパール・スカーレットが忽然と姿を消す。牧場の利権を巡って、彼女の息子たち、長男で議員のアーレンと、武骨なカウボーイのハンクが対立し、町の住民も二分して、町は不穏な空気に包まれていく。
一方、ジョーがかつて関わった事件で殺されたアウトフィッター、オート・キーリーの弟で前科者のジョン・ウェイン・キーリーは、弟と義妹と娘を亡くしたことからジョーを逆恨みし、復讐の計画を立てて、ジョーと彼の家族をねらう。キーリーは、ハンクがアーレンとの対立に備えて募集した用心棒の一人となり、さらにアーレンの二重スパイとなることで、両陣営を行き来してスカーレット家の内情に通じて金儲けを企みながら、ジョーを監視し、動物の死体を使った嫌がらせなどをして、ジョーたちを追いこんでいく。
ということで、サンダーヘッド牧場における兄弟の対立とキーリーの復讐という2つの話が同時に進行する。
牧場の話は、アメリカ西部らしい骨肉の争いで、二人の兄の対立から完全に外されている三男のワイアットも含め、三兄弟のキャラクターはなかなか興味深いが、ハンクの人となりがはっきりしてきたあたりで、ひどいことになってしまい、最後の真相解明もだいぶ駆け足なので、ちょっと欲求不満が募る。
キーリーは、ありがちな悪党で、1作目のウェイシーの方が強烈だったように思う。彼が、ビル・モンローと名乗り、それが「ブルーグラスの父」と呼ばれる歌手の名であることから、ジョーが偽名であることに気づくのは、よかった。
ジョーは、自分を目の敵にする農林漁業局局長のランディ・ポープから理不尽に扱われ、有能とはいえないマクラナハン保安官の捜査に難儀しながら、我慢に我慢を重ねて仕事を続けて行くのだが、ついに堪忍袋の緒が切れる、という展開。(2014.12)

沈黙の森 Open Season
C・J・ボックス著(2001年)
野口百合子訳 講談社文庫(2004年)
登場人物:ジョー・ピケット(ワイオミング州猟区管理官)、メアリーベス(ジョーの妻)、シェリダン(ジョーの娘。7歳)、ルーシー(ジョーの娘。3歳)、オート・キーリー(アウトフィッター)、ヴァーン・ダネガン(元猟区管理官。ジョーの元上司)、バド・バーナム(郡保安官)、ウェイシー・ヘイダマン(猟区管理官。ジョーの同僚)
★ネタばれあり!!
アメリカ、ワイオミング州の大自然を背景に展開するミステリー。猟区管理官ジョー・ピケットを主人公とするシリーズの第1作である。
地元の人気者で名物管理官だったヴァーンの後を継いだジョーは、着任早々、釣りをしていた州知事を誤って検挙したり、密漁者に銃を奪われたり、妻には考え事をしているときの顔がぼうっとしてばかみたいに見えると言われたりする、少々不器用で茫洋とした男である。
飛鳥射撃の名手で動くものを撃つのは得意だが、停止している標的を撃つのは苦手なため、射撃の成績もよくない。
ある夜、アウトフィッター(猟を始めアウトドア活動のサポートをする地元ガイドのようなものらしい)のオート・キーリーが、銃で撃たれ、ジョーの家の裏庭で死体で発見される。彼は、かつてジョーに密猟がばれたときにジョーの拳銃を奪った男だった。死体の傍らにはクーラーボックスがあり、中には動物の糞が入っていた。ジョーは、同僚のウェイシーの案内で、保安官助手らとキーリーがよくキャンプをしている山奥の野営地点に捜査に行く。そこにはキーリーの仲間である2人のアウトフイッターの死体があった。居合わせた男が銃を向けたため、ウェイシーと保安官助手が彼を射殺する。事件は一件落着と思われたが、ジョーには腑に落ちない点がいくつかあった。
ジョーが単独で動きだすと、捜査を妨害する者が現れる。始めはささやかなものだったが、やがてジョーは管理官の職を追われる事態になり、家族の命が危機にさらされてゆく。
ジョーは、犯人が身近な者たちであったことにショックを受ける。これまでへりくだってきた相手に強硬な態度を見せ、娘の命を狙う犯人を容赦なくやっつける。痛快である。
犯人も犯人の意図も割とあっさりわかってしまって謎ときは大したことないのだが、舞台となるのがワイオミングの大森林地帯であるのが気持ちよく、絶滅種の発見とそれが大事業に及ぼす影響など、犯人の動機が森林地帯ならではの説得力があるもので、新鮮に感じた。
ジョーの幼い娘たちが、ミラーズ・ウィーゼルという絶滅種の小動物(いたちのようなものらしい)を発見して、大人たちに秘密にしているというのもいい。
自分らの利益のためにせっかく発見された希少種を皆殺しにする犯人らを悪者としつつも、動物保護を訴える側の人々に対しても批判的な作者の視点にも好感を持った。(2014.12)


<ジョー・ピケット シリーズ>

沈黙の森 Open Season (2001)
Savage Run (2002)
凍れる森 Winterki (2003)
神の獲物 Trophy Hunt (2004)
震える山 Out of Range (2005)
裁きの曠野 In Plain Sight (2006)
フリーファイア Free Fire (2007)
復讐のトレイル Blood Trail (2008)
Below Zero (2009)
Nowhere to Run (2010)
Cold Wind (2011)
Force of Nature (2012)

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