みちのわくわくページ

○ 本 ミステリ(日本) IWGP 石田衣良

ブルータワー
<池袋ウエストゲートパーク・シリーズ>
PRIDE −プライド− 池袋ウエストゲートパーク]
ドラゴンティアーズ−龍涙 池袋ウエストゲートパーク\ 
非正規レジスタンス 池袋ウエストゲートパーク[ 
Gボーイズ冬戦争 池袋ウエストゲートパークZ 
灰色のピーターパン 池袋ウエストゲートパークY

反自殺クラブ 池袋ウエストゲートパークX (U〜Xはタイトルのみで感想なし)
電子の星 池袋ウエストゲートパークW 
骨音 池袋ウエストゲートパークV 
少年計数機 池袋ウエストゲートパークU
池袋ウエストゲートパーク 
赤・黒(ルージュ・ノワール)池袋ウエストゲートパーク外伝

PRIDE −プライド− 池袋ウエストゲートパーク] 
石田衣良著(2010年) 文春文庫
★ねたばれあり!!★
シリーズ第一部完結巻らしい。(2012.10)
☆データBOXの蜘蛛
携帯電話を失くしたIT企業の部長松永が、タケシの紹介でマコトのところに相談にくる。
携帯には会社の機密情報が入っていて、拾い主という男が返還の条件に600万円を要求してきたのだ。
交渉現場に現れた3人の若者は、Gボーイズによって敢えなく降参するが、携帯に保存されていたデータは、社外秘の情報だけではなかった。
松永の不倫相手の女性オリエを撮った写真を見て、虫取り名人の蜘蛛と呼ばれるパソコンオタクの男が、オリエの部屋に侵入しようとしていたのだった。

☆鬼子母神ランダウン
都内に急速に増えつつある自転車、自転車がいかに危険なものであるかという前置きがあったので、これまでの本シリーズの感じから、事故を起こした少年(あるいは少女)側からの視点を期待したのだが、被害者側の犯人探しの話に留まった。
白いフレームのピストバイク(自転車の種類らしい)と接触して、少年がけがをする事件が起こった。
犯人は逃走し、被害者のマサヒロは足を骨折してしまう。少年サッカーの選手だった彼は、怪我で選手生命が危ぶまれる事態に陥り、弟の無念をはらすため、姉のナナが犯人捜しを始める。
捜査中の彼女と出会ったマコトとタカシは、ナナに協力することに。
そんな美人でもなくどちらかというとぽっちゃりした体型のナナにタカシが一目ぼれするという、意外なサービス設定つき。

☆北口アイドル・アンダーグラウンド
池袋の地下アイドル、イナミは、悪質なストーカーに付きまとわれていた。
ストーカー退治を依頼されたマコトは、ボディガードを兼ねて、彼女のライブやCDのジャケット撮影に同行し、マイナーで濃厚なアイドルとファンの世界を垣間見る。
話の展開と犯人の正体は至って普通。

☆PRIDE −プライド−
シリーズ第一部最終話は、連続レイプ犯を追う被害者の美少女を中心に据え、若者ホームレス自立支援組織の若きリーダーが絡むという、いささかきわどいテーマに挑んでいる。
マコトは、リンという美少女からワンボックスカーに乗った4人組の連続レイプ犯探しを依頼される。
リンは、3年前に彼らに襲われたのだが、彼らはその後も犯行を重ね、広域指名手配犯B13号として警察に追われていた。最近彼らは池袋周辺に頻繁に出没していた。
一方、雑誌のコラムのネタに困っていたマコトは、話題になっている池袋のホームレス自立支援組織HOP(HOUSE OF PRIDE)を取材する。代表を務める若手弁護士の小森は、用心棒のような屈強な男たちをスタッフとして使い、若いホームレスのみを支援の対象として、ビジネスライクに事業を展開していた。
その後GボーイズのメンバーでHOPの支援を受けているヤスに話を聞いたマコトは、支援対象者に支給される保護費のうちのほとんどが必要経費としてHOPに吸い上げられている実態を知る。
最初から予想される通り、レイプ犯とHOPの小森の関係が明らかになる。
途中でほのめかした通り、リンが再び彼らに襲われ、怒りに燃えたマコトは、Gボーイズの武力と、知りあいのハッカーゼロワンの情報収集力を味方に、反撃を開始する。
リンという女性がなんとも強烈な印象を残し、清々しいラストとはなるが、彼女が二度も襲われるのは、なんとも気が滅入る展開ではある。



ドラゴンティアーズ−龍涙 池袋ウェストゲートパーク\ 
石田衣良著(2009年) 
文春文庫
☆キャッチャー・オン・ザ・目白通り
マコトは、キャッチセールスで被害にあった3人の女性たちから捜査の依頼を受ける。
相手は、テレビで有名なおねえキャラのエスティシャン、ブラッド宮元が率いるエステ会社。
マコトは、タカシとともにセールス要員として社内に潜入、テレビでみせる柔和な顔とはうってかわって暴力的で高圧的な態度をとる宮元の姿を目撃する。
☆家なき者のパレード
ホームレスの間で不穏な事件が起こりつつあることを感じとった、支援組織のヨウイチは、マコトに捜査を依頼する。
マコトは、ホームレスたちのもとに通い、彼らの間に何が起きているのかを探ろうとする。
やがて、ホームレスからあぶれ手帳(日雇労働被保険者手帳)を奪っていく3人組の存在が明らかになる。しかし、その裏にはある企業の陰があった。気骨のあるホームレスのガンさんを中心に、彼らは弱者から盗んで利益を貪ろうとする建設会社を糾弾するため、パレードを決行する。
☆出会い系サンタクロース
彼女いない歴28年の太ったサラリーマンが、「出会い部屋」でしりあったアヤという女の子を好きになり、彼女を助けるため、マコトに協力を求めてくる。
アヤは、母親が借金をした闇金融会社に返済をするため出会い部屋での労働を強いられていたのだった。
マコトは、サルを巻き込んで、闇金とつるんでいる出会い部屋の経営者に追い込みをかける。
☆ドラゴンティアーズ−龍涙
中国から研修に来ていた少女郭順貴(クー・シュンクイ)が、茨城の工場から脱走した。
1週間後の査察までに彼女が戻らないと他の研修生249名は中国に強制送還されてしまう。
マコトは、研修生のアドバイザー、リンから彼女を探して工場に連れ戻すよう依頼を受ける。
が、クーは池袋の中華街を仕切る組織東龍を頼り、その保護下にある店で仕事を得ていた。
東龍のバックには、サルの所属する氷川組と対立する京極会がついていた。リンはサルに働きかけ、東龍に揺さぶりをかける。
時給300円で過酷な労働を強いられる中国の研修生の実情を知ったマコトは、リンと東龍の間で板挟みになって困る。
クーは、中国にいる病気の父の手術代を稼ぐため東龍に身を寄せたのだが、自分が工場に戻らなければ、他の249名は中国に帰らなければならない。
過酷な労働とはいえ3年間で中国の貧しい農民の生涯賃金を得ることができる日本での研修は、研修生にとっては千載一遇のチャンスなのだった。
悩んだクーは、父の手術をあきらめ、マコトの案内で最後の「池袋の休日」を楽しむ。
が、そこでリンが、マコトの家族を巻き込んだ意外な突破口を開いてみせる。(2012.4)


非正規レジスタンス 池袋ウェストゲートパーク[
石田衣良著(2008年)
文春文庫
<ネタばれあり!>
マコトが、春、夏、秋、冬に起こった4つの事件について語るといういつものパターンだが、今回は、4つとも親と子の関係についての物語となっている。(2011.4)
☆千川フォールアウト・マザー
2010年夏に大阪で起きた若いシングルマザーによる2幼児遺棄事件を受けて書かれたと思われる。
マコトの店をときどき訪れる、若い母親ユイと3歳の息子カズシ。
ユイは、夜勤のパートをしてぎりぎりの生活を続けていたが、カズシを置いて出かけた間に事故が起こってしまう。
追いつめられたユイに怪しげな男が接近する。
マコトは、彼女たちのことを気にかける自分の母親の依頼で、ユイの新しい恋人の正体を探る。
彼女らに対して自分は何もしてやれないとマコトは言うが、手が空いてるときに子ども預かってやれよと思ってしまった。
マコトのマザコンぶりがちょっと気恥ずかしく、可笑しい。

☆池袋クルンナップス
マコトは、タカシの紹介で、早朝に池袋の街を清掃するボランティアグループのリーダー、カズフミと知り合う。
彼は、実は池袋サンシャインの隣に新設された巨大複合施設池袋ミッドシティの運営会社の社長桂の息子だった。
やがてカズフミが何者かに誘拐され、誘拐犯は、身代金の運搬人としてマコトを指名してくる。
なんとなく先が読めてしまうし、マコトが大物社長相手に若干説教じみたことをいうのもいつもの展開だが、なんかもう水戸黄門的に楽しんでいる感じだ。

☆定年ブルドッグ
マコトは、Gボーイズのメンバー経由で、若い女ハルナから、しつこくつきまとう元彼のカズマをなんとかしてほしいという依頼を受ける。
カズマは、つきあっていたときに撮ったハルナのいかがわしい写真を携帯で送りつけ、彼女を恐喝していたのだった。
ハルナはそのことを父親には絶対知られたくないと言うが、カズマは警察官の父親の携帯にも同じ写真を送りつけていた。
父親は、元部下で柔道の達人である大垣という老人にカズマの捜査を依頼していた。大垣は、実直で無骨で恐ろしく強いクマのような男。マコトは、彼と協力して、カズマを懲らしめる算段をたてる。

☆非正規レジスタンス
ネットカフェ難民の若者サトシと知り合ったマコトは、日雇いで派遣の仕事をしている若者達の悲惨な実態を知り愕然とする。
ある日、サトシは3人組の男に襲撃され、けがをする。他にもサトシと同じ人材派遣会社ベターデイズに登録している若者が襲撃されていたが、彼らはみな組合を通してベターデイズに対し使途不明の費用の返還要求の訴訟を起こしているという共通点をもっていた。
その組合、東京フリーターズユニオンの代表である女性モエの依頼で、マコトはベターデイズに潜入し、犯人探しのための囮となる。
モエは、なぜかメイドのコスチュームをしている。ロリータファッションに身を包んだプレカリアート問題(不安定な雇用・労働状況における非正規雇用者および失業者の問題。[参考:ウィキペディア])の運動家として知られる作家雨宮処凛(あまみや かりん)氏を意識したとしか思えないが、モエは実はベターデイズの社長の娘。つまり、2話目と同様、この話でも、大金持ちの父親とそれに反発してボランティアに取り組む実子という構図が出てくる。
悲惨なのは、劣悪な状況で働かされる派遣労働者の若者たちだけでない。彼らがなりたくてしようがない正社員も過酷な勤務状況に苦しみ、トップの経営者も不幸、誰もが辛い状態にあるが、最後は一転、すべてがハッピーに収まる。
展開としては安易な気がするが、筆者が訴えたいのは、こういう問題が今日本で起きているということなんだろう。


Gボーイズ冬戦争 池袋ウェストゲートパークZ 
石田衣良著(2007年)
文春文庫
☆要町テレフォンマン
マコトは、電話で見知らぬ男から、振り込め詐欺のグループから抜けたいという依頼を受ける。
彼は、自分が犯した詐欺のせいで老女が自殺したことを知り、足を洗いたくなったのだが、詐欺グループは会社組織になっていて、暴力団ともつながりがあり、やめることは許されないという。
マコトは、その暴力団がどこかをつきとめ、手を打とうとする。
電話口で声を使い分け、さまざまな人間になりすますことができるヨウジは、なかなかおもしろい。マコトがあっさりだまされる二人の出会いがいい。

☆詐欺師のヴィーナス
マコトは、キヨヒコという若者から、ある女性の気持が知りたいという恋愛相談まがいの依頼を受ける。
キヨヒコは、工場に勤務する契約社員で、女性とつきあったことがない冴えない男。
駅前のキャッチセールスでセクシーな美女エリーの勧誘に合い、つまらない絵を高額で買わされてしまったのだった。
マコトはカモを装って、エリーの勧誘を受けるが、嘘だらけの彼女の言葉の中に真実らしいものを発見する。
キヨヒコは、エリーの本性を知ってなお絵に価値を見いだすのだった。

☆バーン・ダウン・ザ・ハウス
自宅を放火し、祖母に重度の火傷を負わせた中学生の少年ユウキ。
マコトは、ちょくちょく町で遭遇するユウキが店先を通るのを見つけて声をかける。
事件から1ヶ月たち、ユウキは鑑別所から西池袋の自宅に戻ってきていたのだが、学校に行かず、街をぶらつくことが多くなっていた。
そんな彼に、池袋の町で起こっている連続放火事件の疑いがかけられていた。
マコトは、系列の店が被害にあったということでGボーイズ、羽沢組系氷高組、京極会系山根組ら裏の面々と、ユウキの両親から、放火犯の捜査を依頼される。
ユウキの無実を信じるマコトは、Gボーイズの協力を得ると共に、ユウキも連れて犯人捜査に乗り出す。傷ついた少年の再生がさわやかに描かれる。

☆Gボーイズ冬戦争
Gボーイズのチームが立て続けに謎の目出し帽軍団に襲撃される。
襲われたのはいずれもGボーイズナンバー2のヒロトの系列のチームだった。
タカシへの疑惑と敵意を募らせていったヒロトは、ついにGボーイズからの離脱とタカシへの宣戦を布告する。
マコトは、池袋の裏社会のパワーバランスを崩そうとする動きを察知する。
レンタルビデオ店員をしながら映画監督を目指すアキヒロの自主映画に出演することになったマコトは、撮影につきあいながら、池袋侵出を目論む組織の策謀を暴き、Gボーイズの内戦を阻止しようとする。
最強といわれる伝説の傭兵「影」も登場して、池袋に不穏な空気が張りつめる。
タカシとマコトが互いへの友情をストレートに表す場面が見られる希少な回でもある。(2010.9)


灰色のピーターパン 池袋ウェストゲートパークY 
石田衣良著(2006年)
文春文庫
解説にもある通り、そこはかとなくマンネリ化を感じさせつつも作品ごとのタイムリーな話題とマコトの魅力と語り口で読ませる。
池袋の裏通りで展開するショート・ストーリーは、都合良く進むし、甘すぎると思うこともしばしばだが、小説の中でくらい、こうしたピュアな物語に出会ったってばちは当たらないよな、とマコトっぽくつぶやいてみる。(2010.6)

☆灰色のピーターパン
マコトは、名門私立校初等部5年生のミノルに仕事を依頼される。
ミノルは、シャッター音が聞こえないように改造した携帯電話を使って女性のスカートの中などを盗撮した写真をネットで販売して大金を稼いでいた。
が、同じ学校の高等部の不良にそのことを知られ、恐喝される。
誠は、ミノルとともに相手の高校生3人組と会い、まるく治めようとしたが、そこに同校OBで野獣のように凶暴な丸岡という男が絡んでくる。マコトは、サルの人脈を用いて、丸岡の撃退を画策する。

☆野獣とリユニオン
果物屋の店先に表れた若い女性チヒロから、マコトは、ある少年の足を壊してくれという不穏な依頼を受ける。
そいつは、2000円を奪うためにチヒロの兄ツカサを襲った。その際、ツカサは膝を踏みつけられ、一生杖なしでは歩けない身になってしまい、調理師になる夢をあきらめなければならなくなった。
なのに、犯人はたった7カ月で少年院を出て、のうのうと池袋の町を徘徊しているというのだ。
傷害事件の加害者と被害者が出会ったらどういうことになるかという興味深いテーマで一気に読ませる。

☆駅前無認可ガーデン
マコトは、タカシの先代、元池袋Gボーイズのリーダー、シンジから依頼を受ける。
シンジは、風俗で働く母親たちの子どもを深夜まで預かる無認可保育園を運営しているが、保育士テツオにかけられている疑いをはらしてほしいというのだ。近隣の公園で子どもが猥褻な行為をされる事件が頻出し、軽い知的障害のあるテツオが母親たちから疑いの目で見られているという。
マコトは、Gボーイズのメンバーを手足のように使って、事件が頻発する公園を張り込ませ、幼い子供だけをねらう異常性愛者を捕まえようとする。

☆池袋フェニックス計画
池袋で、風俗業を一斉に取り締まるフェニックス計画が警視庁組対部により、敢行された。
同作戦に入れ込んでいるイケメンの瀧沢副都知事が地元の集会にも顔を出し、商店街の主婦たちの人気を集めていた。
が、近所の街角から夜の稼業の人々が姿を消し、果物屋の売上げも激減、マコトは、完全に町を無菌状態にしようというこの作戦が気に入らない。
作戦の詳細を知らされず直前に摘発実行の知らせを受ける、所轄署の警官たちも不満を覚えていた。
そんなとき、マコトは清楚な音大生イクミから、姉のカズミの救出を依頼される。カズミは、ホストクラブにはまって巨額の借金を抱えてしまい、返済のためデリヘルのマンションに半ば監禁された状態で働かされていた。そこは、関西系暴力団京極会配下の池上組系列の風俗ビルで、正式に届け出を出しているデリバリーヘルスということで、フェニックス計画の摘発を免れていたのだった。
マコトは、カズミを風俗に追いやったホストのダイキとホストクラブ「ブラックスワン」を罠に掛け、カズミを救出する作戦を企てる。
所轄署署長で昔なじみの礼兄に話を通し、Gガールズの協力を得て実行した作戦は、しかしマコトの思惑を超え、フェニックス計画の裏に隠された重要機密に行き着いてしまう。
マコトを兄貴分と慕うコウイチが襲撃され、マコトは重要人物との対決に臨む。


反自殺クラブ 池袋ウェストゲートパークX 
石田衣良著(2005年)
文春文庫
☆スカウトマンズ・ブルース
☆伝説の星
☆死に至る玩具
☆反自殺クラブ


電子の星 池袋ウェストゲートパークW 
石田衣良著(2003年)
文春文庫
☆東口ラーメンライン
☆ワルツ・フォー・ベビー
☆黒いフードの夜
☆電子の星


骨音 池袋ウェストゲートパークV 
石田衣良著(2002年)
文春文庫
☆骨音
☆西一番街テイクアウト
☆キミドリの神様
☆西口ミッドサマー狂乱(ライブ)


少年計数機 池袋ウェストゲートパークU 
石田衣良著(2000年)
文春文庫
☆妖精の庭
☆少年計数機
☆銀十字
☆水の中の目


池袋ウエストゲートパーク
石田衣良著(1998年) 
文春文庫
19歳の真島誠は、池袋西口の商店街にある実家の果物屋を手伝いながら、気ままな毎日を過ごしている。
池袋の少年たちを牛耳るGボーイズのリーダー、タカシとは高校時代の友人、地元のヤクザ羽沢組の若衆サルとは中学時代の同級生、池袋署の刑事吉岡の信用も あつい。宙ぶらりんな位置にいながら各方面から一目置かれている誠が、持ち前の頭の回転の速さと度胸の良さと人脈の広さでもって、池袋の若者たちを襲うト ラブルを解決していく連作ミステリー。
ひとひとつの作品に魅力的な脇役が登場して飽きさせない。クールでかっこつけな誠の語り口は、いきいきとして躍動感がいっぱい。(2004.2)

★池袋ウエストゲートパーク
池袋で連続女子高生絞殺未遂事件が発生。犯人は池袋のストラングラー(首絞め魔)と呼ばれるようになる。そのころ誠のチームにいた女子高生が襲われた。犯 人を追う誠は、タカシが率いるGボーイズの協力を得て、ストラングラーとおぼしき男を追いつめる。
★エキサイタブルボーイ
地元の暴力団羽沢組組長の娘真央が行方不明になり、誠はその捜索を依頼される。彼女のお守り役をしていた構成員は、誠の中学時代の同級生サルだった。さら に今はひきこもりとなっている高校時代の友人和範の協力を得て、誠は真央を連れ去ったワゴンの行方を追う。
★オアシスの恋人
かつての同級生で今は風俗嬢となっている千秋から、誠は恋人のイラン人の救出を依頼される。
彼女の恋人カ シーフは、千秋に覚醒剤を売った売人とヤクザの取引現場に乗り込み取引中の覚醒剤を燃やして逃走したのだった。
誠は、メカに詳しい友だち3人とチームを組み、売人をはめるための工作をする。

★サンシャイン通り内戦(シヴィル・ウォー)
池袋の街は、少年たちのカラー戦争で殺気立っていた。
青は、タカシが率いるGボーイズのチームカラー、赤は謎のダンサー京一が率いるレッドエンジェルズの色で、敵の色を身にまとっているだけで無関係の人間が襲われるほど、状況は緊迫していた。
誠は、少年たちのドキュメントを撮りたいというビデオジャーナリスト加奈のガイドを引き受けた。重たいカメラをひょいひょいと振り回す加奈に惹かれる一方 で、ガールフレンドの明日香に悩まされる誠。
やがて、少年達の背後に広域暴力団京極会の影がちらつきはじめる。誠は例のメカ好きの3人とひきこもりの和範を引っ張り出してプロジェクトチームを結成、終戦に向けて動き出す。



赤・黒(ルージュ・ノワール) 池袋ウエストゲートパーク外伝
石田衣良著(2001年)徳間書店
小峰渉(映像ディレクター)、平山(セブンライブス雇われ店長)、村瀬(フリーのヤクザ)、鈴木(銃撃係)、サルこと斉藤富士男氷高組若衆、ガジリ屋末 永、伝説の張り師アベケン、アグネス(平山の愛人のフィリピーナ)、香月(女優、小峰の恋人)
博打の借金返済のため、カジノの売上げ金を狙う狂言強盗に加わったフリーの映像ディレクター小峰。
銃撃係の鈴木が、リーダーの村瀬を射殺し、金を奪って逃走。
狂言がばれた小峰はカジノの元締め氷高組に多額の借金を負うことに。
金を取り戻すため1ヶ月の捜 査期間を与えられた小峰は、組の若衆サル(斉藤)とともに犯人捜査に乗り出す。IWGPシリーズではマコトやタカシに押され気味のサルが、ごくまっとうで頼りになる男に見える。
鈴木を操っていた組織の正体を知った小峰は、敵の妨害に遭いながらも、一矢 報いようと意を決す。
伝説の張り師アベケンを探しあて、彼の協力を得て、黒夜(ハイイエ)と呼ばれる暗黒街の賭場に乗り込む。
冒頭いきなり村瀬が死んでしまって面食らう。 後半、いきなり伝説の張り師などが出てきてまた面食らう。でもそれはいい。日活アクションみたいなノリで楽しめる。素人の小峰が意地を見せるのもいい。

★以下ネタバレ!!
しかし、個人的なこだわりだが、映像業界に身を置く者として小峰のとった行動は裏切りに等しい。
制作費を使い込むなんて、映像屋のプライドにかけてやってはいけないことだ。現実にそういう人はたくさんいて、制作者が夜逃げして脚本料を踏み倒された脚本家の話などよく聞くが、小説のヒーローがやるべきことではない。 勝ったからいいというものではない。だから私としては、ハッピーエンドとはとても思えない。 (2006.5)

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