みちのわくわくページ

○ 本 ハードボイルド(海外) 鉤爪

<鉤爪シリーズ>
鉤爪の収穫、 鉤爪プレイバック、 さらば、愛しき鉤爪(エリック・ガルシア)

鉤爪の収穫 Hot And Sweaty Rex
エリック・ガルシア著(2003年)
酒井昭伸訳 ヴィレッジブックス ソニーマガジンズ
ヴェロキラプトルの恐竜探偵ヴィンセント・ルビオを主人公とするシリーズ3作目。
相棒アーニーを失った心の傷からハーブ中毒に陥ったルビオは、ハーブ中毒者更正会に通い、ハーブを断って立ち直りつつあった。
彼は、友人で歌手のトミーを通して、LAのヴェロキラプトル・マフィアを仕切るフランク・タラリコから、マイアミのハドロサウルス・マフィアの一員であるネリー・ハグストロームを尾行する仕事を依頼されるが、これがきっかけとなって、マイアミの恐竜マフィアの抗争に巻き込まれていく。
ハグストロームが所属するファミリーのボス、ジャック・デューガンは、ルビオのかつての幼なじみにして無二の親友、その妹のノリーンは、ルビオの元恋人であった。
一方、マイアミのヴェロキラプトル・ファミリーは、フランクの弟エディ・タラリコがボスだった。フランクの依頼により、ルビオは、友人の女探偵ハドロサウルスのグレンダをお供に、マイアミに飛ぶ。ルビオは、タラリコ・ファミリーとデューガン・ファミリーの間をいったりきたりするという、危険きわまりない状況に陥る。
やがて、エディの放った刺客が、ルビオの目の前でジャックを襲撃する。
軽快な語り口は語らず。冒頭の競馬場でのシーン、馬の扮装をつけて競馬に出ている元ファミリー幹部のラプトル、スチューウィーの件などは愉快に読めるのだが、しかし、話はどんどん陰惨さを帯びてくる。延々と続く恐竜と恐竜の殺し合いに、ルビオもどっぷり浸かってしまう。
ルビオは、尾行のターゲットであったハグストロームに反感を持ち、彼がノリーンの今の恋人であると知ったことでさらに彼への嫌悪を募らせるが、熾烈な抗争の中で、やがてルビオとハングストロームは、互いを認め、友情を抱くまでになる。 そこらへんと、通報者に対して見せる温情がルビオらしくてほっとする。が、話の展開は、最後の最後までハード。(2010.7)


鉤爪プレイバック Casual Rex
エリック・ガルシア著 アメリカ(2001年)
酒井昭伸訳 ヴィレッジブックス ソニー・マガジンズ
登場人物:ヴィンセント・ルビオ(LAの私立探偵/ヴェロキラプトル)、アーニー・ワトソン(ルビオの相棒/カルノタウルス)、ルイーズ(アーニーの元妻 /ティラノサウルス)、ルパート(ルイーズの弟/ティラノサウルス)、サミュエル(祖竜教会幹部/イグアノドン)、キルケー(祖竜教会幹部/ヴェロキラプ トル)、ボーモント・ボーレガード博士(精神科医/アンキロサウルス?)、ウェンデルとバズ(双子の祖竜教会教徒/カルノタウルス)、ミンスキー(大家兼 歯科医/ハドロサウルス)、ジュールズ(扮装整形業者/ヴェロキラプトル)、ダン・パタースン(LA市警巡査部長/アパトサウルス)、謎のアンチマインド コントロール専門家(ディプロドクス)
恐竜ハードボイルドシリーズ第2弾。
1作目では故竜となっていた相棒アーニーが健在だった頃の話。息の合った二人の仲良しぶりが楽しめるが、それだけに切なさも味わえる。
謎の宗教組織祖竜教会に取り込まれたアーニーのかつての義弟を救うため、 ヴィンセントとアーニーは組織の集会に参加し、祖先達に近づく教えを受けることに。
扮装を脱ぎ捨て原始の恐竜の姿に戻ることにあこがれを抱き、麻薬のような 芳香を放つ教会幹部の女性キルケーに心惑わされつつも、教会内部に隠された恐るべき秘密を暴いていくヴィンセント。
クールな相棒アーニーとのやりとりが愉快。
ハワイの孤島での、原始化した恐竜との戦いなど、恐竜ならではのアクション が読みどころ。
雄の恐竜のくせにヒトの雌の扮装を身にまとっている恐竜ドラッグクイーンに して腕の立つ扮装整形業者のジュールズが魅力的。
「祖竜」「他竜(他人)」「尋ね竜(尋ね人)」「革(はだ)」など、恐竜絡 みの訳語も楽しい。(2006.5)


さらば、愛しき鉤爪 Anonymous Rex
エリック・ガルシア著 アメリカ(2000年)
酒井昭伸訳 ヴィレッジブックス ソニー・マガジンズ
登場人物:ヴィンセント・ルビオ(LAの私立探偵/ヴェロキラプトル)、アーニー・ワトソン(ルビオの相棒、故人/カルノタウルス)、タイテルバウム (トゥルーテル探偵事務所所長/ティラノザウルス)、ダン・パタースン(LA市警巡査部長/アパトサウルス)、グレンダ(NYの私立探偵/ハドロサウル ス)、レイモンド・マクブライド(謎の死を遂げた財界の大物/カルノタウルス)、ジュディス・マクブライド(レイモンドの妻/?)、サラ(レイモンドの元 愛人/ヒト)、ドノヴァン・バーク(クラブオーナー/ヴェロキラプトル)、ジェイシー(ドノヴァンのフィアンセ/コエロフィシス)、ヴァラード博士(遺伝 学者/トリケラトプス)
人の皮をかぶって生きる恐竜たちが登場するハードボイルドシリーズ第1弾。
恐竜とハードボイルド、それぞれに愛着を持つ私のような身にとっては夢のコラボというところ。
LAの私立探偵ルビオ(実は恐竜)は、相棒アーニーの死後、恐竜評議会の委員をクビになり、仕事もほされてハーブ浸り(ハーブは恐竜にとって酒あるいは麻 薬なみの効果を及ぼす)の日々を送っていた。
かつての得意先からクラブ放火事件についての調査を依頼された彼は、久しぶりに探偵家業に乗り出す。
調査の方向は、大物恐竜の謎の死に向かい、ルビオは生前のアーニーが残した捜査の足跡をたどることに。やがて、事件は異種族間婚姻という恐竜界のタブーへとつながってい く。
人間社会で生き残るためサイズを小型化し、本来の姿を隠して生き続ける恐竜たち。
恐竜であることがばれたら身の破滅なので、人型のスーツを脱いだところをヒトに見られるわけにはいかない。
例えば、スーツの金具の調子が悪くて物陰で直そうとしているところにヒトが通りかかったら、もう大変。 こう書くとばかばかしくて読む気にならないかも知れないが、とにかく軽快で愉快、おだやかな性格のルビオがいざというときには鉤爪をむき出して凶暴な恐竜と 化すのも、陰惨ではなくどこか痛快でユーモラス。そんでもってちゃんとハードボイルドの要素は押さえているので、ほろりとくるところはしっかりほろりと来る。
ルビオが「ジュラシック・パーク」のヴェラキラプトルの扱いのひどさに憤ったり、ハーブの名を連発するサイモン&ガーファンクルの名曲「スカボロ・フェア」をヤクチュウの恐竜の唄だとするなど、細部も楽しい。(2006.4)

本のインデックスに戻る
トップページへもどる